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気になるメリット&デメリットどう違う? 市民権vs永住権

Lighthouse編集部

アメリカに住みながら日本国籍を維持できる永住権(グリーンカード)。そして、日本国籍を脱し、アメリカ国民の一員となる市民権。

どちらも同じようにアメリカ国内に永住できるが、さまざまな局面で差が出てくるのも事実。市民権と永住権、それぞれのメリットとデメリットについて、比較してみた。

本記事は、専門家とのインタビューを基に、一般的な知識として取り上げたものです。詳細については、専門家の判断を仰ぐことを強くおすすめします。

※本記事には、後編「アメリカ市民権と二重国籍、国籍の喪失と選択」があります。合わせてご覧ください。


アメリカ永住権(グリーンカード)・市民権、それぞれの定義と取得方法

アメリカ・グリーンカード(永住権)とは?

アメリカ・グリーンカード(永住権)とは、更新することによって原則として無制限でアメリカに滞在することができ、就労もできるビザのこと。更新は基本的に10年に1度で、グリーンカードを申請・取得する方法は、大きく分けて2種類。雇用主をスポンサーとして申請する方法と、アメリカ市民や永住権保持者の家族をスポンサーとして申請する方法です。 

雇用主をスポンサーとして申請する場合、申請から永住権取得までの期間は、およそ2〜10年。申請者の資質や就業する職業の特異性によって、5つのカテゴリー(EB-1、-2、-3、-4、-5)に分けられる。 

EB-1は、科学、教育、芸術、ビジネス、スポーツなどの分野で特別な技術を持ち、その分野のトップに立つような国際的に認められている人が対象。例えば、サッカーのデビッド・ベッカムなどがそれに当たる。 
EB-2は、修士号保持者や管理職、研究者など。
EB-3は、学士号保持者、または2年以上の就労経験がある人。 
EB-4は宗教に関わる仕事をしているなど、特別なタイプの移民のカテゴリー。 
EB-5は投資家が対象のカテゴリー。通常は最低100万ドルの投資をすることが条件だが、政府が特別に定めた地域など、場所によっては、50万ドル程度の投資でもこのカテゴリーで永住権を申請することが可能。 

「これらは単なるカテゴリーであって、どのカテゴリーだと永住権が取りやすいということではありません。しかし、一般的に特殊技術を持っている人の方が取りやすいことは確かです。会計士、医者、ナース、コンピューターサイエンス、バイオロジー、弁護士、エンジニアなどの専門家や、PhD(博士号)を持っている人は有利でしょう。逆に、哲学、歴史、心理学など、専門性がない分野では、労働ビザのH-1Bや永住権を取ることは難しいです。アメリカも日本と同じく学歴社会のため、学歴が高ければ高いほど、取得に際して優先順位も高くなる傾向があります」と話すのは、サンディエゴにオフィスを構える平義克己弁護士。 

これらのカテゴリーにはそれぞれ優先日(Priority Date)が割り振られ、その優先日が自分の申請日になって("Current"になる)初めて、申請書類(I-485)の審査、手続きが行われる。 

「ちなみにEB-3は、現在、2003年以降の申請分が保留中です。しかし、移民局は1年間でおよそ3〜4年分の申請書を処理することができるので、今から申請した場合に、永住権取得まで7年待たなければいけない、ということにはなりません。この優先日は頻繁に前後するため、国務省のホームページ(http://travel.state.gov)上のVisa Bulletinを1カ月に1度程度、チェックすることをおすすめします」と、ラグナビーチとサンディエゴ双方で活動するスティーブン・ユア弁護士は現状を話す。

結婚による永住権(グリーンカード)の取得 

アメリカに滞在する日本人が、アメリカ国民や永住権保持者と結婚して永住権を取るには、「Adjustment of Status」という手続きが必要。これには現在、およそ4カ月かかっている。 

また、日本在住の日本人がアメリカ国民と結婚して永住権を取るには、在日アメリカ大使館で「Consular Processing」を行う。これには現在、およそ6カ月から1年かかっている。この期間は、同時期に申請した人が多ければ、待ち時間も長くなる。また、個人によって期間は異なり、特に過去に不法滞在していたり、犯罪歴があるケースでは長引くことがあるようだ。 

なお、永住権申請者が数年間不法滞在していた場合、日本に帰らずアメリカ滞在中にアメリカ市民権保持者と結婚すると、この不法滞在はなかったことになる。しかし、それ以外の場合は、6カ月間の不法滞在の場合は3年間、1年以上だと10年間、永住権の申請(アメリカ国内への入国も)はできない。

永住権(グリーンカード)の取得にかかる費用 

雇用主をスポンサーにして永住権を申請する場合、申請費用は最低475ドル(2010年4月28日時点)かかる。前述のカテゴリーによっては、移民局から「Labor Certification」を得るために雇用主が求人広告を出さなければならず、これに1千ドルから3千ドルを費やすこともある。特にEB-2やEB-3カテゴリーでは、ほとんどの人のケースで必要になるようだ。そして、申請が承認されたら、移民局に1010ドルを支払い、最終的なグリーンカード申請をする。 

雇用を通して永住権を申請する人のうち、およそ95%が弁護士を通して申請を行っており、弁護士費用がこれらに加わる。なお、弁護士費用は、申請書類作成の労力や難易度など、各ケースによって異なる。例えば、労働者が数千人いるような大企業であれば永住権は比較的取りやすく、弁護士の労力も少ないため、費用は少なくて済む。しかし、労働者が数人という小企業や難易度の高い特殊なケースでは、より手間がかかるため、弁護士費用も高くなる傾向があるようだ。 

家族をスポンサーにして永住権申請をする場合、申請費用として合計1365ドルを移民局に支払う。この場合も弁護士を雇う場合が多いのは、アメリカ国民との国際結婚の場合は特に、インタビューで偽造結婚だと疑われ、却下される場合があるので、事前対策を立てたいという理由からが多いようだ。 

なお、家族ベースで申請するには、スポンサー(夫か妻)の収入が十分ある必要があるが、もし定められた最低額に達していない場合は、夫や妻以外のスポンサーを付けて申請することが可能。

関連:2016年のグリーンカード抽選(DV-2018)について
関連:アメリカ・ビザの基礎知識とその種類

市民権の申請取得の費用と条件 

アメリカ市民権を得る(帰化申請)には、一般的に、雇用主をスポンサーにして永住権を取得してから5年後以降、家族をスポンサーにして永住権を取得した場合には3年後(条件付き永住権:Conditional Green Cardを保持していた2年間を含む)から申請が可能。申請から市民権取得までにかかる期間は、地域により異なる。例えば、サンディエゴで申請した場合には、現在およそ6〜8カ月かかっている。 申請には、指紋の採取、写真撮影、面接、アメリカの歴史や政治の仕組みなどに関する簡単なテストが行われる。 

「このテストに関しては、サンプルテストで事前に勉強していく人がほとんどです。大体の人が簡単だったと言っていますね」と、平義弁護士は話す。 

市民権の申請料は675ドル。弁護士に依頼する場合、その人とスポンサーとなる人の関係によって必要書類や難度が異なるため、費用も異なる。申請には、申請日から5年間さかのぼった期間中、最低でも2年半はアメリカに滞在していなければならない。もし過去に犯罪を犯したことがある場合、その保護観察期間が終了したことを確認してから申請する必要がある。 

さらに、申請する都市に少なくとも3カ月以上住んでいなければならない。例えば、永住権を20年前に取得して以来、ずっとニューヨークに住んでいたが、ロサンゼルスに引っ越して1週間後に申請しても、却下されるということだ。 

「永住権取得後に強制送還になりうる重罪を犯し、幸い強制送還にならず、刑期が終了している場合でも、市民権申請時には過去の犯罪歴を移民局がすべてチェックするので、確実に取得できるまで永住権は維持しておいた方が安全と言えるでしょう」と、ユア弁護士はアドバイスしている。 

市民権申請手続きは自力でも可能だが、このように意外な所に落とし穴があるので、確実に取得するためには、永住権同様、専門の弁護士に相談するのが安全だと言える。


永住権(グリーンカード)・市民権、それぞれの権利と義務

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米国で日々生活する中で、永住権保持者と市民権保持者の間で最も大きな差違を感じるのが、選挙が行われる時だろう。 

永住権保持者には、アメリカの地方(市や州)、連邦のすべてにおいて、非選挙権、選挙権が与えられていない。市民権保持者であれば、地方、国政に参加することも、一票を投じることもできる(ただし、大統領になるには帰化国民ではなく、アメリカ生まれのアメリカ国民であること、または、海外で生まれても両親がアメリカ市民であること)。 

逆に、市民権を取得してしまうと、当然ながら日本の選挙権、被選挙権は失ってしまう。永住権保持者であれば、アメリカに住んでいながら、在外選挙人証を取得して、日本の選挙に投票することができる。なお、永住権保持者は陪審員として、アメリカでの裁判に参加する権利もない。

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H-1Bなどの労働ビザから永住権を取得した人が、特に強く感じることの1つに職業選択の自由がある。永住権を取得すれば、ビザの職種制限にとらわれず、自分が望む職業に従事することができる。しかし、例外もある。 

「永住権保持者は、特定の政府機関、例えばホワイトハウスやFBI、CIAなどの仕事に、就くことができません。また、国家の機密事項を扱う部署に所属することもできません。ただし、安全保障に関わるポジションを除き、ロサンゼルス市警察やサンディエゴ市警察では、永住権を持っていれば、働くことができます」と、ユア弁護士は説明する。 

また、平義弁護士も同様に、「永住権保持者も軍隊には入隊できますが、機密関係の部署で働くことはできません。国家公務員や地方公務員などの仕事によっては、市民権所持が就労の前提条件になっていることが多々あります。また、民間部門でも、弁護士として働くことはできても、例えばFBIの弁護士として働くことはできないといった制限があります」と話す。 

やはり国家の安全に関わる職業は、アメリカ国家に忠誠を誓った市民権保持者に制限されているようだ。

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永住権と市民権保持者に共通する国家安全保障に関わる義務に「セレクティブサービスへの登録(兵役登録)」がある。 

「永住権と市民権を保持する18歳から25歳の男性は、皆、セレクティブサービスに登録しなければなりません。しかし、健康に問題があったり、宗教の関係で義務が免除されることもあります。永住権保持者の場合、これに登録していないと、将来市民権を取る時に悪い影響が出る恐れがあります。アメリカ人の若者は、学校などで登録を呼びかけられますが、日本人に呼びかけされる機会があまりないため、このことは忘れられがちです。なお、もし登録後に戦争に行くことを拒む(兵役忌避)と、永住権保持者、市民権保持者に関わらず刑務所に送られることになります」と、ユア弁護士。

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アメリカ国外で犯罪や動乱に巻き込まれた時に、頼りになるのが在外公館や軍に代表される国家による救助。アメリカ永住権を持っていれば、市民権保持者と同等の保護が受けられるのだろうか? 

この疑問に対し、ユア弁護士は「アメリカ国外で戦争や災害に巻き込まれた場合、例えばアメリカ国民の救助にヘリコプターが降り立っても、永住権保持者は爛▲瓮螢人瓩任呂覆い燭瓠救助の優先順序は国民より低いでしょう。ただし、永住権保持者でも、アメリカ国民の配偶者であれば、優先度は高まります。アメリカ国民は、永住権を持つ狷本人瓩鯤欷遒垢襪燭瓩法軍や政府に税金を払っているのではないという考え方です。このような緊急事態の際、永住権保持者は、日本政府に助けを求めなければならないと思います」と、見解を述べる。 

なお、平義弁護士は、「ハワイ州での銃の所有は、市民権保持者のみに限られています。これは、現在は永住権保持者にも平等に提供されている社会保障や福祉サービス、その他の権利、特典が、将来は国民に限定される可能性があるということです。重要なのは、このように市民権保持者に限定することが合法であり、実際それが行われているという認識を持つことです」と話している。


強制送還と親族の呼び寄せ

 
永住を約束された永住権(グリーンカード)だが、日本へ強制送還になる可能性もある。永住権保持者が国外追放になるケースは大きく分けて2種類ある。重犯罪を犯した場合と、アメリカ国民にのみ与えられている権利を濫用することだ。

■加重重罪による強制送還 
「婦女暴行、人に向けての発砲、殺人、薬物の密輸や大量所持などの重犯罪を何回も犯すと、永住権を持っていても強制送還されます。また、過失致死の場合でもケースによりますが、永住権を失う可能性はあります。なお、飲酒運転は何度逮捕されても、人身事故でなければ強制送還の対象にはなりません」とユア弁護士。 

また、平義弁護士は、「永住権保持者が重罪を犯した場合、刑期が終わると強制送還となります。犯罪の度合いにより、1回でいきなり送還される場合もあれば、2回目以降で送還される場合もあります」と説明する。

■米国民固有の権利の濫用 
これについては、「例えば、米墨国境で移民局員に、永住権保持者であるにも関わらず、アメリカ国民だと嘘をついた場合があります。そこで、永住権保持者であることが判明すると、強制送還になります。また、選挙権がないにも関わらず、選挙に参加するのも同じことです」(ユア弁護士)。

■長期間国外で過ごす 
仕事で国外へ長期赴任したり、親の看護などで帰国して、1年のうち半分以上をアメリカ国外で過ごすと、永住する意志がないと見なされ、永住権を剥奪される可能性がある。 

これについて平義弁護士は、「『Re-entry Permit』を移民局から得ないで、1年以上アメリカを離れると、再入国の際にグリーンカードを取り上げられる恐れがあります。仮に1年に1回アメリカに戻って来たとしても、アメリカに住所がなかったり、仕事をしていないと、同じようなことが起こりえます。Re-entry Permitの取得は、通常2回までと言われていますが、それ以上申請している人もいます。なお、Re-entryPermitは『これからしばらく海外に行きます』という意思表示をするものです。しかし、Re-entryPermitを持っているからといって、再入国の際にグリーンカードを剥奪されずに済むという確証はありません。また、アメリカ滞在中に指紋押捺、写真撮影を行わなければならないなど、手間がかかる上に、最近では取得自体が難しくなっているのです」と説明している。 

また、10年に1度、永住権は更新を行わなければならない。これには現在、指紋押捺の費用80ドルを含め、290ドルかかる。犯罪歴がなければ、更新はインターネットで簡単にできる。 

市民権保持者には、これら海外渡航期間の制限や更新などは一切ない。

家族の呼び寄せと帰化のリスク 

親族をアメリカに呼び寄せたい場合に市民権保持者と永住権保持者を比較すると、市民権保持者の方が、明らかに有利のようだ。理由は、移民手続きの優先順位が永住権保持者よりも高いからだ。

家族をスポンサーとする移民手続きの優先順序

第1優先 米国市民の未婚の21歳以下の子供、配偶者、親
第2優先 米国市民の未婚の21歳以上の子供
第3優先 永住権保持者の配偶者、未婚の21歳以下の子供
第4優先 米国市民の既婚の子供
第5優先 米国市民の兄弟 

ユア弁護士によれば、「市民権保持者であれば、移民カテゴリーによっては、Adjustment of Statusのみなら4カ月、Consular Processingでも6カ月から1年で済みます。永住権保持者の場合、現状では少なくとも3年以上はかかるでしょう」と言う。その差は歴然のようだ。 

「例えば、永住権保持者が、日本へ帰って結婚したとします。その配偶者とアメリカで一緒に住もうとしても、配偶者の永住権取得に大変な時間がかかります。その間、合法的にアメリカに滞在できるビザを配偶者が取得できなければ、夫婦と言えども日米で別居することになります。ですから、まず市民権を取得してから配偶者を呼ぶのが賢明。また、永住権保持者は、市民権保持者と違って、自分の母親や父親を呼び寄せることができません」と、平義弁護士も呼び寄せに関して、市民権保持者の優位性を認めている。 

二重国籍についての詳細は、次項で説明するが、平義弁護士によれば、アメリカ市民権を取った時点で、何もしなくても日本国籍は自動的に抹消されるという。 

しかし、「領事館に国籍喪失届けを出さないと、戸籍上は日本人になっているので、これは国籍法違反となります。また、アメリカ市民権取得後も日本のパスポートを使い続ける人も中にはいますが、これも旅券法違反で、発覚すれば逮捕されることもあります」(平義弁護士)。 

両親もしくは一方の親が日本人で、アメリカで生まれた人については、この状況は異なるという。生後、領事館に出生届を提出することで、その子は日本国籍を有することになる。しかし、アメリカは、両親の国籍がアメリカ以外でも、アメリカ国内で生まれた子にはアメリカ国籍を与えている(出生地主義)。そのため、22歳までは日米の二重国籍でいられる。 

「22歳になる前に日本の国籍法の下、日本国籍を選ぶかどうかを申告しなければなりません。この時、日本国籍を選択すると、アメリカ国籍を放棄するよう言われますが、その手続きをしなくても、日本国籍取得を拒否されることはありません。また、日本国籍を選択したからといって、アメリカ政府は、その事実のみで、アメリカ国籍を放棄したとは見なさないでしょう。この場合、自然に二重国籍が継続するという状態になると思います」と、平義弁護士は話す。

※本記事には、後編「アメリカ市民権と二重国籍、国籍の喪失と選択」があります。合わせてご覧ください。

【取材・監修協力】平義法律事務所
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