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ライトハウスの特集

アメリカでの教育・進学、ビザ・法律、市民権・永住権、観光・レジャー、求人・仕事、グルメ・レストランなど、現地情報誌「ライトハウス」の過去の特集をご紹介。

現在のトレンドと今後の動向

Lighthouse編集部


「幼い子供の留学熱は、韓国で社会問題に
なっています」(キムさん)

全米最多の韓国人留学生
子供の留学熱も過熱気味

 韓国系は歴史の浅いコミュニティーであるため、ほとんどの家庭における第1言語は韓国語で、韓国語メディアへの依存度は高い。韓国系新聞として全米最大の発行部数を誇るコリアタイムス副編集長で、韓国コミュニティー担当の記者キム・サンモクさんは、韓国コミュニティーはこれからも成長すると見ている。
 「韓国人にとってアメリカンドリームはまだ健在で、それが韓国コミュニティーの成長を支える原動力になっています」。

 韓国では、40歳になるキムさんの友人にも、渡米を夢見る人は少なくないという。
 「医者など、社会的にも経済的にもすでに成功している友人でも、アメリカに移住したいという人はたくさんいます。グリーンカードの取得は大きな財産を得たようなもので、韓国では宝くじに当たったようなものなのです」。

 例えば、家族の1人がアメリカに留学し、アメリカで就職してグリーンカードを取得すると、それを礎に家族を呼び寄せるのだとか。
 韓国経済の発展は目覚しく、政府の提案した韓国のキャッチコピーは「ダイナミック・コリア」。急成長を遂げる韓国経済とグローバリゼーションの影響で競争は加速し、韓国では子供の教育に拍車がかかっている。

 韓国人が教育熱心なのは周知の事実だが、小学校どころか幼稚園でも夜中まで勉強する子供が少なくないとか。キムさんの話によると、韓国における学校以外の塾や習い事などの教育に関する平均出費額は、ミドルクラスでも月4千ドルになるという。子供の教育費を捻出するために、副業を掛け持ちする親もめずらしくない。

 アメリカの大学に留学させると、韓国で大学に行くより3倍近い費用がかかるが、塾や習い事で4千ドルも払うことを考えたら、親の負担は変わらないのかもしれない。そのため大学ではなく、小学校など幼いうちから留学させる家庭も少なくないという。
 「母親も子供と一緒に渡米し、父親は韓国に残って仕送りをする分散家庭も多く、そのため父親が寂しさから自殺したり離婚に至るなど、子供の留学ブームは韓国で社会問題を生んでいます」(キムさん)。

 特に治安が良く、学校区のレベルも高いアーバインには、キロギ・オンマ(キロギは韓国語で渡り鳥の意味で、オンマは母親)と呼ばれる人が多く住んでいる。
 「以前は富裕層にキロギ・オンマが多かったのですが、今ではミドルクラスのキロギ・オンマも少なくありません」(キムさん)。

 チェ大使によると、全米の韓国人留学生は約10万人おり、現在、アメリカで最多の留学生数を誇る。その多くは大学生だが、留学生の低年齢化の傾向は、今後も続くとキムさんは予想する。
 「国立のソウル大学でも、入試にアメリカのSATを導入しているほどです。韓国の一般企業でもアメリカの大学卒業生を歓迎する傾向にありますが、やはりアメリカンドリームが韓国コミュニティーを支えているのは間違いありません」。

 近年は、アメリカに進出する韓国企業も増え、日系社会のように韓国人駐在員も増えてきたが、まだ総数はそれほど多くない。だが駐在員でも、任期終了後もアメリカに残る人が多く、政府高官であっても、駐米任期終了後は単身帰国し、家族はアメリカに残るケースもあるという。
 頭脳の流出は、韓国国内でも問題視されているとのことだが、移民の規制が緩和された現在では、政府もこの潮流を規制する手立てはないのが現実だ。


マイノリティーとして
日系社会の指導力に期待

 韓国経済の成長とともに拡大してきた韓国コミュニティーだが、アジア系コミュニティーの一員として、他のコミュニティーと協力しなければならないという認識は高い。
 「日系社会は第2次大戦における体験から、歴史に対する認識は高く、日韓の歴史に対しても中立的な理解があります。在米の日系社会と韓国系社会はアメリカで共存しているのですから、私たちが対話を始める必要があります。私たちで対話を始めれば、例えば北朝鮮問題にしても、日本と韓国との2カ国間での対話よりも、もっと相互理解を深めることができるのではないでしょうか。日韓関係の歴史的な対立においても、在米韓国コミュニティーの存在が、解決策の鍵になり得ると思います」(キムさん)。

 またマイノリティーグループの指導者としても、キムさんの日系社会にかける期待は大きい。
 「昨年、不法移民問題でロサンゼルスで100万人のデモがありましたが、そこに日系人の姿はありませんでした。アジア系はマイノリティーに違いはなく、移民問題や差別問題など、取り上げるべき問題は数多くあります。日系社会は、他のマイノリティー社会と協力して、マイノリティーの権利を模索する原動力になってほしいと願っています」。

 キムさんの話は耳の痛いことも多いが、もしかしたらそれは、他のアジア系コミュニティーの意見を代弁しているに過ぎないのかもしれない。
 MIWON(Multi-ethnic Immigrant Workers Organizing Network)は、多民族の労働者を支援している団体で、あらゆる理由で違法の低賃金や長時間労働などの悪条件を強いられている人々に救いの手を差し伸べている。MIWONから派生して1992年に設立されたのが、コリアタウンにあるコミュニティー団体KIWA(Korean Immigrant Workers Advocates)で、移民労働者のために草の根運動を展開している。

 KIWAは96年、レストランで働く労働者とラテン系労働者を支援するために「レストラン労働者公正キャンペーン」(Restaurant Workers Justice Campaign)を立ち上げた。運動の旗手になったのは、韓国系女性たちだ。97年に、労働法に順ずる給料を得ていたのはわずか34.2%であったのが、雇用者に手紙を送り、ハンガーストライキやボイコットなどを組織的に実施した結果、2年後には61.7%が労働法に則った給料を得られるようになった(以上、参考資料 法

 私たちの先達は、太平洋戦争という激動の時代に翻弄されて、移民の国アメリカでも特異な歴史を歩んできた。アメリカ社会における、今の日系人の地位を築いてくれたのが先達であるならば、今後、アジア系コミュニティーの一員として、他のコミュニティーとの絆を築いていくのは、私たちの役目であるのかもしれない。

資料 Asian American Studies Classweb(www.sscnet.ucla.edu/aasc/classweb/winter02/aas197a/ktownrest_fp.html

(2007年3月1日号掲載)