ライトハウス
Magazine Information

ライトハウスの特集

アメリカでの教育・進学、ビザ・法律、市民権・永住権、観光・レジャー、求人・仕事、グルメ・レストランなど、現地情報誌「ライトハウス」の過去の特集をご紹介。

文化の継承を教育で促進

Lighthouse編集部


「次世代の韓国コミュニティーを
担う人材の育成を支援しています」
(チョン領事)

2世に対する教育も
韓国政府が支援

 韓国系2世や1.5世に韓国文化や歴史を伝授する役割を担っているのが、コリアンエデュケーションセンターだ。韓国コミュニティーで何世かと尋ねると、「1.5世」という人が少なくない。1.5世とは、親に連れられて幼い頃に渡米した人を指す。韓国移民のピークが1970年代後半から80年代で、その多くが政治的、あるいは経済的理由から渡米した高学歴者であったのは前号でお伝えしたが、家族連れで移民した人も多く、そのため韓国コミュニティーで「1.5世」という言葉が生まれた。

 1.5世たちは、韓国生まれだがアメリカで教育を受けたため、感覚的には2世に近い。韓国コミュニティーは彼らに、母国の文化や歴史を正しく伝える必要性を考え、ウィークエンドスクールの運営に乗り出した。ウィークエンドスクールは全米規模で展開され、Korean School Association of America(KSAA)とThe National Association for Korean Schools(NAKS)という2大非営利団体が運営している。

 「ウィークエンドスクールは小学生から高校生が対象で、毎週土曜日か日曜日に3時間、韓国語や舞踊や音楽などの伝統文化、しきたりなどを教えています」と話すのは、コリアンエデュケーションセンターのプレジデントであるチョン・テーハン領事。同センターは、韓国の教育人材開発省の運営で、管轄は南カリフォルニア、アリゾナ、ネバダ、ニューメキシコ。ウィークエンドスクールは管轄内だけで200校以上あり、約2万人の生徒が通っていると言う。
 「講師陣は、ほとんどが韓国で教員免許を持っていた主婦ですが、交通費程度の謝礼が出るだけで、基本的にボランティアです」(チョン領事)。

 そのため授業料も良心的で、半年間で200ドル以下。兄弟割引もある。またアクティビティーも盛んに行われており、各校でコンペティションなど、年間20以上の催しが用意されているという。

 スクールの運営は前述の非営利団体が行っているが、同センターでは教師陣のレベルアップを図るために、講師を対象にしたセミナーを実施している。
 「セミナーは年2回実施され、各10週間行っています。大学教授や各分野の著名なエキスパートが講演し、毎回30人から50人の先生が参加します」(チョン領事)。

 これらの費用すべてを、韓国政府が負担しているのだ。セミナー参加者には修了証書を発行して、講師陣の質の向上に貢献している。

 同センターの設立は80年で、当初は総領事館内にあった。今の立派な4階建てビルに移ったのは02年2月21日。専用ビルの購入が計画されたのは96年だが、アメリカで初めての試みとあって、韓国政府はコミュニティーに協力を求めた。そこでコミュニティーは寄付金の募集に乗り出し、計120万ドルの募金を集めた。政府の資金320万ドルと合わせて同ビルを購入したのが00年。2年の改築を経て、02年のオープンにこぎつけたというわけだ。今年は5周年記念で、先頃、祝賀会が開催された。

 「記念にセンターの壁に銅製プレートをはめ込み、500ドル以上の募金をしてくれた企業や個人637人の名前をプレートに刻んで、感謝の気持ちを表しました。500ドル未満の募金者499人の名前は、同センターのホームページに掲載し、永久保存しています」(チョン領事)。


こちらは英語の初級クラス。
30名ほどの生徒が日常会話を学んでいた 

授業料は無料
プログラムも充実

 同センターでは、ウィークエンドスクールを支援する一方で、独自の韓国文化の継承クラスも設けている。その名も韓国ヘリテージプログラム。カルチャーセンターの韓国語クラスが外国人を対象にしているのに比べて、同センターのクラスは韓国系が対象だとか。韓国語を始め、伝統美術やテコンドーのクラスまであり、14週間にわたって授業が行われる。

 「同センターのクラスは、週末は事情があってウィークエンドスクールに通えない、という子供たちのために始めました。だからクラスは週日の午後で、講師は全員が名の通ったエキスパートばかり。教材費20ドル以外は、授業料も無料で提供しています」(チョン領事)というから、韓国がいかに海外における文化の継承に、力を入れているかがわかる。

 今年2月から新しい試みとして、他のコミュニティーの人を対象にした韓国語クラスも始めた。毎週土曜日、各2時間14週間のコースで、こちらも授業料は無料だとか。記念すべき第1回目のコースには、11カ国のコミュニティーから参加があったという。

 興味深いのがリーダーシップキャンプで、こちらも対象は2世や1.5世。
 「2世や1.5世の子供たちは、親がアメリカ社会のシステムを詳しく把握していないケースが多くあります。彼らがアメリカ社会に進出して行く過程で、大学進学のプロセスや就職、ビジネスを展開するためのノウハウなどを伝授、民主的な市民を育成するのが同プログラムの主な目的です。モチベーションスピーカーによるレクチャーなども用意し、次世代の韓国コミュニティーを担う人材の育成を支援しています」(チョン領事)。


200人を収容するホール。
多額を寄贈した女性の名が冠されている

 著名な大学教授やビジネスマンなど、あらゆる分野のエキスパートを招聘し、彼らとの活発なディスカッションなども、同プログラムに組み込まれている。

 2世というと、国籍上はアメリカ人。前号で検証したように、韓国系移民は市民権を取得する比率が高いため、1.5世たちも将来的にアメリカ市民になる確率は極めて高い。そんな彼らに祖国の文化を伝承するために、韓国政府が全面的にサポートして取り組んでいる点に注目したい。

 「教育人材開発省の中に国際教育開発部門(National Institute for International Education Development)という課があり、韓国系アメリカ人の教育を担当しています。韓国系アメリカ人生徒の交換留学や、韓国人教師の海外派遣なども手がけています」とチョン領事は話す。

 駐在など一時的な滞在者が多い日系社会に比べて、永住志向が強いのが韓国社会だ。日本の文部科学省が帰国子女の再適応を重視しているのと趣が異なるのは、コミュニティーの成り立ちに起因している。韓国コミュニティーにおけるウィークエンドスクールが、本国での学校教育に標準を合わせているわけではないのも、そのためだろう。


ヘリテージプログラムの発表会の様子。
韓国の伝統芸能であるサムルノリ

私立の全日制学校も
文化の伝承が目的

 韓国コミュニティーにも私立の全日制学校が存在するが、日系のそれとはやはり教育目的も異なっている。

 「ウィルシャー小学校(Wilshire School)は、南カリフォルニア・コリアンインスティテューション(Korean Institute of Southern California)が運営する私立の小学校で、毎日1時間は韓国語や韓国文化の授業に充てられています」(チョン領事)。

 韓国の教育制度に合わせているのではなく、あくまでもその目的は韓国文化の伝承にあるのだ。

 南カリフォルニア・コリアンインスティテューションは、全日制1校とウィークエンドスクール12校を運営する非営利団体だ。全日制であるウィルシャー小学校の生徒数は100人前後で、ほとんどの生徒は韓国系。放課後にはテコンドーなど韓国文化に関する課外活動が実施されているという。


ヘリテージプログラムの発表会の様子。
韓国の伝統芸能であるブクチュム

 チョン領事に話を聞いた後、エデューションセンターを見学した。センターの中には200人収容のホールもあり、各専門家によるレクチャーなどはここで行われる。見学したのは日中のお昼時とあって、総勢50人ほどの生徒のほとんどは、1世とおぼしき熟年の人たちだった。彼らが受けていたのは英語のクラス。初級と中級のクラスが行われていた。

 2世の世代になり、親の希望通りではなく自分のやりたいことをする、という考え方の若者も増えてきていると言うから、韓国コミュニティーもこれから岐路を迎えるのかもしれない。

Korean Education Center in Los Angeles
680 Wilshire Pl., Los Angeles
☎213-386-3112
www.kecla.org

(2007年3月16日号掲載)