ライトハウス
Magazine Information

ライトハウスの特集

アメリカでの教育・進学、ビザ・法律、市民権・永住権、観光・レジャー、求人・仕事、グルメ・レストランなど、現地情報誌「ライトハウス」の過去の特集をご紹介。

シニアコミュニティーに暮らす

Lighthouse編集部

ベビーブーマーの退職を目前に控え、シニアの生き方も選択肢が広がってきた。日本では、海外での引退生活を考える人も増えてきたという。温暖なカリフォルニアに住んでいると、いずれ親を呼び寄せたいと考える人も少なくない。シニア向けコミュニティーが確立されたカリフォルニアでは、多くのシニアたちが充実した余生を過ごしている。今回は、日系と米系のシニアコミュニティーを訪ね、それぞれの良さを検証してみた。

(2005年5月1日号掲載)


日系社会が支える、日系シニアのコミュニティー

計124 部屋ある引退者ホーム。1ベッド
ルームの部屋はフルキッチン付きで、各所
に使いやすい工夫がされている

敬老引退者ホーム

「敬老」の精神に基づいた日系人のためのホーム

 敬老シニア・ヘルスケアは、カリフォルニア州法に基づく高齢者のための各種サービスを提供する非営利団体で、ボランティアの理事により理事会が管理している。敬老シニア・ヘルスケアには敬老引退者ホーム、敬老ナーシングホーム、サウスベイ敬老ナーシングホーム、敬老中間看護施設、敬老アダルト・デイ・センターが含まれる。リトルトーキョーの東、ボイルハイツに位置する敬老引退者ホームは1975年にオープン、今年で30周年を迎える。この土地は、かつてユダヤ系老人ホームだった。高齢化する1世の老後を憂慮したジョージ荒谷さんや故フレッド和田さんなどが中心になって、5エーカーにおよぶ土地を購入するために資金集めに尽力した逸話は、弊誌でも以前に紹介した。

 敬老シニア・ヘルスケアの「敬老」の精神に基づいた、キメ細かく質の高いケアは、アメリカ国内のみならず日本からも高い関心が寄せられ、看護・福祉関係者、行政担当者、政財界から多くの視察団が押し寄せている。


敬老引退者ホーム施設長の大石剛司さん

 ボイルハイツの敬老引退者ホームは、中間看護施設と土地や施設を共有しているが、今回紹介するのは介護の必要がない人向けの引退者ホームだ。ここには現在133人の日系シニアが居住している。入居できるのは60歳以上で、これは州社会福祉局認定のRCFE(Residential Cares Facility for Elderly)のライセンスで運営するために設けられている州の規定。

 「アプリケーションは何歳で出していただいてもいいのですが、入居できるのが60歳ということです。居住期間は平均6.5年ほどですが、中には25年居住している人もいます」と話すのは、敬老引退者ホーム施設長の大石剛司さん。

 部屋のタイプはすべて家具付き536平方フィートの1ベッドルームと370平方フィートのスタジオ(1ルーム)の2種類。バルコニーが付いている部屋もあり、面積はバルコニーを除いた広さ。1ベッドルームは30ユニット、スタジオは94ユニットある。気になる料金だが、1ベッドルームは1人入居で1800ドル/月、2人入居で2100ドル/月、スタジオは1人入居のみの1570ドル/月(注:料金は毎年変化する)。入居時に必要なアドミッション・フィーは一律500ドル(初回のみ)。ただしどちらも常に満室の状態で、1ベッドルームで4年以上、スタジオで2年以上の待ち期間がある。


人気の陶芸クラスで、先生を囲んで

うれしい日本食メニュー家族も安心の24時間体制

 部屋の広さからすると若干割高感もあるが、料金に含まれるサービスを考慮するとかなりお得であることがわかる。この「料金に含まれるサービス」は以下のとおり。まず1日3度の食事付き。このうち少なくとも1食は日本食が提供され、通常のメニュー以外に選択メニューもある。また週1回の部屋の掃除とリネンのサービス。タオル、石鹸、トイレットペーパー。各種活動プログラムと催し物。送迎サービス。タクシークーポンの提供。週1回の移動郵便サービス(郵便局からの出張サービスで、切手を購入したり小包を発送したりできる)。月1回の銀行サービス(ユニオンバンクの出張サービス)。月1回の血圧・体重・体温などの測定。害虫駆除対策など、まさに至れり尽くせり。


クッキングクラスでは蒸し饅頭などさまざまな
メニューに挑戦

 さらに価値を高めるのが充実した設備だ。緊急時のためのライフラインとインターコムシステムが全室に備え付けられており、24時間体制でスタッフが施設内に常勤している。万が一の時には24時間、ボタン1つでオフィスにつながるというわけだ。これは家族にとっても心強い。

 「高齢者が1人暮らしをしていると、家族は毎日のように電話を入れて、ちゃんと食事はしたか、風呂に入ったか、電気は消したかなどをチェックする必要があります。ところがここに住んでいると、何か変わったことがあった時には、私のほうから家族に連絡を入れることになります。ですから家族も安心して生活することができるのです」(大石さん)。


夫婦で居住のジョージ&キミ・アキヨシ夫妻

 1ベッドルームにはフルキッチンも付いているが、食堂での食事がある意味で点呼の機会になっているとのこと。

 「食堂の席は決まっていますので、事前の知らせなしに食堂に来なかった人には連絡を取ります。ですから1日3回は居住者の状態をチェックできるのです」(大石さん)。

 このシステムは家族にも大きな安心を与える。また食事は栄養士のアドバイスの下、栄養価を考慮したメニューになっているので、家族は食事の内容についても安心していられる。毎日の生活の中で食事は人生をエンジョイするための重要な要素であるが、特に高齢者にとっては、食事の重要度は高い。どんなに海外生活が長くても、高齢になれば日本食が恋しくなるというもの。日本食を提供している同施設は、日系社会にとって何よりもありがたい存在であるのは間違いない。例えば3月14日のメニューをご紹介しよう。

 朝食はバイキング形式で、ハワイアンブレッド、ベーコン、ポテトナゲット、梨とプルーン、選択メニューが、スクランブルエッグ、オートミール。昼食は、大根の田楽とバーベキュー・ミートボール、ご飯、きゅうり入りグリーンサラダ、ボストンクリームパイ。選択メニューは、豆腐、うどん、焼き魚、チキン。夕食がカツ丼、もやしの味噌汁、きゅうりの漬物、フルーツ。選択メニューは、豆腐、サルスベリーステーキ、サバ味噌、ピザ。

 「全米で日本食を提供できる施設はほとんどないのでは」(大石さん)の言葉どおり、日本食が出るということで、州外や東海岸から入居してくる人も全体の1割を占めるとか。

次のページへ >>