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ライトハウスの特集

アメリカでの教育・進学、ビザ・法律、市民権・永住権、観光・レジャー、求人・仕事、グルメ・レストランなど、現地情報誌「ライトハウス」の過去の特集をご紹介。

移民法最新事情2008【PART 1-1】

Lighthouse編集部

私たち日本人が、出入国や滞在する際に、常に頭に入れておくべきなのが、移民法の最新知識。アメリカで生活する上で、避けて通ることのできないこの移民法について、基本情報をおさらいしつつ、最新事情について、移民法弁護士に聞いた。



【PART 1】各ビザの基礎知識と最新事情
非移民ビザに関する基礎知識と手続き方法を、最新情報を盛り込んで解説

◆ビザウェイバー

 アメリカでの滞在期間が90日以内の場合、日本人はビザを取得する必要がない。これは「ビザウェイバー」と呼ばれるビザ免除プログラムのため。日本は米国からビザウェイバーが認められた数少ない国の1つなのだ。ビザウェイバーを利用するには、次の条件を満たさなければならない。
(1)日本国籍のパスポートを持っていること
(2)帰りの航空券を所有していること。行き先は日本を含む米国外であること。ただし、
   最終目的地がカナダ、メキシコの航空券は、その国の居住者でない限り認められないので注意
(3)入国の際に、移民局の係員により、米国に移住する意志がないと判断されること
(4)過去に米国移民法において違法行為をしていないこと
 ただし、この90日を1日でも越えると不法滞在となるから注意が必要。オーバーステイの記録は数年前のものも残されているので、心当たりがある場合は、大使館に問い合わせた方がいいだろう。
 また、90日以内だからといって、間を置かずに何度も訪米したり、1年のほとんどをアメリカで過ごしたりしている場合も、入国審査でマークされやすい。90日以上の旅行、勉学、就労を目的として、一時的であっても、アメリカに生活の基盤を移すのであれば、ビザを取得しなければならない。



◆短期商用ビザ(B-1)
◆観光ビザ(B-2)

 B-1は短期商用ビザと呼ばれ、市場調査、商談などを目的に米国を訪れる人のビザだ。アメリカでの就労は認められない。
 滞在期間は最長6カ月まで。ビジネスが長引き、90日以上滞在する場合は、その理由を明確にすることが必要。きちんと証明できない場合は、ビザが発給されないこともある。
 一方、B-2は観光ビザで、90日以上6カ月まで滞在できる。延長は病気など、緊急時のみ認められる。
 ただし、前述のように、日本人はB-2ビザを取得しなくても、ビザウェイバーで90日間は合法的に滞在できるため、東京のアメリカ大使館や大阪の領事館は、B-2ビザの発給には消極的で、審査も厳しくなっていると言われている。



◆学生ビザ(F-1・M-1)

 F-1ビザは、アメリカの語学学校、コミュニティーカレッジ、大学・大学院など、移民局からI-20と呼ばれる入学許可証を発行することを認められた教育機関へ就学することを目的に、米国に入国する学生のためのビザ。ビザの期限は最長5年だが、必要が認められれば延長することもできる。
 学生のビザ取得にあたっては、就学先の学校からI-20、就学中の学費、生活費などが十分にあることを示す財政証明書(銀行の残高証明書などが一般的)、履修後は母国に速やかに帰国する意思を示す書類(日本に家族が居住する住所があることなど)を用意し、日本国内のアメリカ大使館か領事館で申請する。
 一方、M-1ビザは、メーキャップ、ジュエリーデザイン、理容、パイロット養成学校など、職業訓練、技能養成を目的とする専門学校で就学するためのビザだ。取得方法や条件はF-1と同じ。
 学校のカリキュラムの一部である学内でのパートタイム就労など、特別に許可された場合を除いては、学生ビザでの就労は許可されない。しかし、両ビザ共にオプショナル・プラクティカル・トレーニング(OPT)と呼ばれる実務研修期間があり、これを申請すればF-1は最長1年間、M-1は6カ月間、合法的に働くことができる。 ただし、語学学校生にはOPTが与えられない。
 F-1の場合は、卒業後に限らず、在学中もOPTが利用できる。しかし、在学中に利用した場合は、卒業後に利用できる期間がその分短くなる(パートタイムで就労した場合は、フルタイムの半分の期間として計算される)ことを理解しておくこと。また、卒業後に発行されるOPTはフルタイムのみで、卒業日から14カ月以内で完了しなければならない決まりになっている。
 なお、実務を通して、学校で学んだことを研修することが目的なので、就労する職種は履修内容に合致していることが条件になる。また、注意しなければいけないのが、連続して働かなければならないということ。OPT期間中に休暇を取って一時帰国をする場合、入国審査で問題になることがあるという。帰国前には移民法弁護士に相談した方が良いだろう。
 OPTの申請は学校を通して行い、学生ビザのステータスのまま取得することができる。学業修了日前に、パスポートサイズの写真2枚、I-20とI-94のコピーをI-765に添え、移民局に申請する。
 2003年以降は、学生ビザ保持者の行動が把握できるシステムSEVIS(Student and Employee Visitor Information System)が導入され、移民局と政府、教育機関をインターネットで結び、データベースで管理されるようになった。このため移民局は、学生ビザ保持者の不法就労、通学していないなどの問題行動を瞬時に把握することができる。また、学生ビザで滞在中に違法な行為をした場合は、例えビザが切れていなくても、再入国の際にそのビザが無効になってしまうことも覚えておきたい。



「抽選システムはほぼ間違いなく、
09年度から導入されると見ています」
(レビン弁護士)

◆専門職ビザ(H)

 Hは専門職ビザと呼ばれ、H-1B、H-2A・B、H-3・4がある。そのうち日本人の取得者が多いのが、専門的技能を持つ労働者用のH-1Bだ。
 H-1B取得の条件は、申請者が4年制大学以上の学位、もしくは、それに相当する実務経験を持っていることだ。大学での1年間の教育が3年の実務として計算されるため、短大卒の場合は6年間、高卒の場合は12年間の実務経験が求められる。また、申請職種も4年制大学卒業以上の知識を必要とする専門的な職種でなければならず、大学で取得した学位や実務経験も、ビザを取得し就労する職種と関連していなければならない。給与についても職種ごとに労働市場での指標となる平均額が公表されており、雇用主はこの金額以上の賃金を雇用者に支払うことを確約しなければならないことになっている。
 H-1Bの発給数は、年間6万5千件と決められている。1990年に暫定的にその数を増やし、最高で19万5千件まで引き上げられたこともあったが、04年度(03年10月から04年9月までの会計年度)より発給数が元の限度枠まで戻されてしまった。
 このため、年度末前に限度枠に達して申請が締め切られる事態が発生、これがビザ申請者および雇用主にとって、極めて厳しい事態を招いている。07年度は、申請開始から2カ月も経過していない5月26日には締め切りの発表が行われたが、08年度は何と、申請開始日に申し込みが殺到、実質1日で申請が締め切られてしまったのである。
 「昨年は4月1日が日曜日だったため、2日が申請開始日だったのですが、この日1日で6万5千件以上の申請が殺到。移民法で“1日で締め切ってはいけない”と定められているので、翌3日も書類は受理されましたが、結果たった2日間で14万5千も件の書類が集まったのです。そのため移民法に基づいて抽選が行われ、抽選に漏れた人、4日以降に申請した人は、審査すらしてもらうことができず、差し戻されてしまったのです」と、瀧恵之弁護士は話す。
 今年4月1日から申請が受理される09年度は、さらに多くの申請が殺到することが懸念されている。
 「開始日の4月1日に30万近くの申請が集まることも十分考えられます。昨年、ビザが取得できなかった人たちの多くが、今年再び申請すると考えられるからです」(瀧弁護士)。

導入が確実視される
申請の抽選システム

 そこで現在、移民局で検討されているのが抽選システムの導入だ。申請者に必要書類をすべて準備させ、申請開始日に提出させるのではなく、開始日前に抽選を行い、当選者のみに本申請を認めるというものだ。申請者にとっては、時間と手間、そして費用のかかる書類準備を済ませてから抽選に漏れるよりも、抽選に当たってから書類を準備すれば良いので、時間と費用の節約になる。また、移民局にとってもコスト削減につながる。
 「大量に集まった申請書類を返送するだけでも、移民局には莫大な手間と費用がかかっています。私は、抽選システムはほぼ間違いなく、09年度から導入されると見ています」と、ケビン・レビン弁護士は話す。抽選システムが導入される場合は、間もなく発表される可能性が高いので、H-1Bビザ申請を検討している人は、移民局の動きを詳細に見守った方がいいだろう。
 いずれにしろ、申請する場合は、書類が4月1日に確実に移民局に届くよう、準備は早めに進めるべきである。「3月から始めたのでは遅いですね。今すぐ準備を開始すべきです」とアドバイスするのはレビン弁護士。「日米間で必要書類のやり取りをしている間に、あっという間に時間が過ぎてしまいます。4月直前に慌てずに済むよう、一刻も早く準備を開始すべきです」とのこと。
 4月直前になれば、移民法弁護士も多忙を極める。「毎年、4月前は依頼が殺到し、どの弁護士も大忙しです。多忙を理由に、希望の弁護士に依頼できなくなる可能性もあります」と話すのは瀧弁護士だ。「それから、書類の一部は、エバリュエーションカンパニーと呼ばれる第三者機関で審査をしてもらわなければならないのですが、このエバリュエーションカンパニーにも書類が殺到、昨年は『これ以上は依頼を受け付けられない』と、3月半ば以降は審査を受け付けてくれないところも多数出ました。こうなってしまうと、我々としてもどうしようもありませんから」。
 6万5千件の発給枠とは別に、05年度より追加枠として、2万件の特別枠が設けられた。この特別枠は、アメリカの教育機関で修士号もしくは、それ以上の学歴を修得した者のみが対象となっている。こちらも08年度は、4月30日に上限に達しているが、6万5千件の一般発給枠に比べると競争率は低い。
 「経済的、時間的に許せば、大学院に進学して修士号を取得した方がいいですね」と、レビン弁護士がアドバイスするのはこのためだ。「修士号を持っていれば、H-1Bを取得できる可能性はずっと高くなります。申請数が増えたことに伴い、審査もますます厳しくなっていますが、修士号があれば申請が認められる可能性も高くなります」。
 瀧弁護士も同様に、「MBAを持っている人はやはり強いですね。汎用性のある学位なので、幅広い業界、職種でH-1Bが取得できます」と話す。
 一生懸命勉強して大学を卒業。必死の就職活動の末、ビザスポンサーを引き受けてくれる雇用主を見事見つけ、無事就職。学歴や職歴、就労する仕事も、H-1Bビザ取得の要件を満たしている。しかし、残念ながら、これで安心するわけにはいかないのが現状なのだ。H-1B取得の要件をすべて満たしていても、「応募者多数」という理由だけで、ビザが取得できない可能性がある。

永住権の同時申請が
有効な解決策

 では、この事態に申請者はどう対処すれば良いのだろう。
 「永住権申請も同時に行うといいでしょう」とアドバイスするのは瀧弁護士。OPTが切れる前に就労許可(Employment Authorization)が取得できれば、合法的に働くことができるからだ。詳しくは永住権の項で説明するが、特にEB-2(第2優先枠)に該当する修士号保持者の場合は、現在のところ優先日(Priority Date)が有効になっており、申請から約半年で就労許可が取得できる可能性もあるという。
 就職したばかりの企業に、H-1Bだけでなく、「グリーンカードもスポンサーしてください」と持ちかけ、合意を得るのは、決して簡単なことではないだろう。しかし、H-1Bが取得できなければ、合法的に働くことができず、会社を辞めざるを得なくなるというのは、企業側にとっても大きなリスクとなる。この点を理解してもらうことができれば、雇用主にH-1Bと同時に永住権申請を認めてもらえる可能性がある。
 「私共では、申請者だけでなく、雇用主にも同席してもらい、H-1Bを取り巻く現状を説明し、有効だと考えられる場合には、永住権申請も同時に進めるようアドバイスしています。雇用主の理解を得られるよう、申請者も最善の努力をすべきでしょう」(瀧弁護士)。
 H-1Bの発給数を増やすことも検討されており、外国人コンピューターエンジニアを大量採用している大手ハイテク企業を中心とした、ロビー活動も活発化している。「発給数が増えることは十分考えられます」(瀧弁護士)とのことなので、移民局発の最新情報には常に注意を払っておくべきである。
 さて、これまで説明したH-1Bの上限枠は、初めて申請するケースについてのみ当てはまり、次のケースについては、この発給限度枠とは別に申請を受理している。
●H-1B保持者のビザ期間の延長
●H-1B保持者が雇用主を変更する場合
●既にH-1Bで働いている者が雇用形態を変更した場合
●H-1B保持者が2つ目のH-1Bビザを取得したい場合
 従って、現在H-1Bを保持している人は、この上限枠によって影響を受けることはない。また、H-1Bの有効期間は3年間だが、最長で6年まで延長が可能。6年間就労した場合は、1年間以上国外に滞在すれば、新たに申請することができる。なお、現在、H-1Bビザの申請から取得までにかかる期間は3カ月程度だと言われている。


「雇用主の理解を得られるよう、
申請者も最善の努力をすべき」
(瀧弁護士)

学位や経歴に合った
仕事を見つけること

 発給されるH-1Bの数が希少となって以来、申請に対する移民局の審査は、ますます厳しくなっている。審査のポイントは2つあり、1つは就労する職種が移民局の定める「Special Occupation」に該当していること。これは、アメリカで就職するにあたり、ある特別な専門分野において、理論的・実践的に高度な専門知識を使い、4年制大学卒業かそれと同等の学識を必要としている職業であることを意味している。もう1つのポイントは、申請者自身がその職種に就くにふさわしい学歴や経験を備えていること。それぞれの職業に関し、どのような学歴や経験が適しているのかについては、労働局の「Occupation Outlook Handbook」(www.bls.gov/oco/ocos084.htm)を指標にすると良い。
 「取得学位が職種と合致しているか、就労経験をビザ取得に必要な経験として移民局が認めてくれるかどうかなどは、ケース・バイ・ケースです。同じ英文科卒でも、大学や申請者によって、取得単位は異なります。学部名からは職種との関連性が見い出せなくても、取得単位までさかのぼれば、関連性が見つかる場合もあります。自身がH-1B取得の要件を満たしているかどうかは、移民法弁護士に個別に相談して判断するしかありません」とレビン弁護士は言う。
 また、そのポジションが当該企業にとって本当に必要なのか、といった点まで、詳細に審査されるというから注意が必要である。「マーケティング部門を持つ大企業で、“マーケティングマネージャー”というポジションで申請しても問題はありませんが、社員3人の企業で同じ申請をすれば、移民局は『そんな小さな会社にそのようなポジションが必要であるはずがない』と判断し、申請を却下することも十分考えられます」(レビン弁護士)。
 こじつけや小手先のごまかしは移民局には通用しない。この点を留意し、学位や経歴に合った仕事や雇用主を見つけることが大切である。