ライトハウス
Magazine Information

ライトハウスの特集

アメリカでの教育・進学、ビザ・法律、市民権・永住権、観光・レジャー、求人・仕事、グルメ・レストランなど、現地情報誌「ライトハウス」の過去の特集をご紹介。

幼児と小学生の対応の仕方

Lighthouse編集部


「ぼうふら現象」は親子のコミュニケーション欠如から

 両親が日本人で、アメリカ生まれ、あるいは乳児期に渡米した場合、両親が日本語を話すので、生まれて最初に覚える言葉は日本語。どこで英語を取り入れるかがポイントになるが、就学時における子供の負担を少なくするために、第1言語の発達の基礎時期(5歳ぐらいまで)を過ぎてから、プリスクールなどで徐々に英語に慣らしていくのが良いようだ。その際には、先生に「日本語だけで育ててきたので、英語はわかりません」と事情を説明し、友達はできたか、楽しくしているかなど学校生活の様子を知らせてほしいと頼んでおこう。

 ただし慌てて英語を覚えさせようとして、家庭で会話に英語を混ぜるのは禁物だ。家ではあくまでも日本語で通すのが肝心。それは就学年齢で渡米してきた場合にも当てはまる。

 「最近は現地校でもESLで、バイリンガル教育のトレーニングを受けた先生が多くなりました。以前はトレーニングを受けていない先生に『英語が弱いので、家で英語を使うように』と言われることがありました。すると親は慌てて、会話に英単語を混ぜ、構文は日本語、単語は英語という日本語でも英語でもない、どちらにも属さない言葉を使うといったこともありました。英語と日本語は使い分けることが大切で、会話に両語を混ぜるのは危険です」(ダグラス助教授)。

 現地校に通っていると英語は自然と強くなるので、家では日本語と決めたら、何があっても日本語で通す。親が英語と日本語をミックスするのは避けるべきだと、ダグラス助教授は訴える。

 英語でもない日本語でもない、何を言っているかわからない状態を「セミリンガル」と呼ぶ。子供の場合、一時的にセミリンガルになることは珍しくない。「年少の場合、周りの人間がその言語でコミュニケーションすることで、年齢相応の言語力に戻る」(『言葉と教育:海外で子供を育てている保護者の皆様へ』[海外子女教育振興財団]・『バイリンガル教育の方法』[アルク]・共に中島教授著)と指摘している。今年は日本、来年はアメリカというような極端な生活をしない限り、一時的にセミリンガルになることはあっても、永続的に続くことはほとんどないとのこと。それよりも怖いのは、「ぼうふら現象」(カニングハム公子の研究)と呼ばれるコミュニケーションの欠如からくる症状だ。

 「ぼうふら現象とは、幼稚園くらいの年齢の子が、日本語でもなく英語でもない言葉をブツブツつぶやく症状を言います。これはセミリンガルの極端な例ですが、周囲とのコミュニケーション不足によって、子供が日本語との接触の極端に少ない状態で起きる現象です」(ダグラス助教授)。


「バイリンガルはすべてがバラ色ではあり
ません」(ダグラス助教授)

小学生では何が大切か見極めることも必要

 小学生で渡米した場合、現地校に入り、突然英語での学校生活が始まる子供たちのストレスは計り知れない。土曜日の補習校はこのような子供たちにとって有益だと、ダグラス助教授は指摘する。

 「週に1度でも日本と同じ環境に戻ることができる補習校は、子供にとってホッとできる場所になります。また日本語で話ができる友達もできる。そういう環境に子供を置いてやることも大切です。補習校に入れたから英語の習得が遅くなるというデータはありません。子供に言語の使い分けを教えるのは、家に入る時に靴を脱ぐのと同じ要領だと考えれば良いでしょう」。

 バイリンガル教育における原則は、1人1言語。母親が日本語ならすべて日本語、父親が英語ならすべて英語で通すことが肝心だ。だが国際結婚の場合はどうすれば良いのだろう? 例えば母親が日本人だと、子供との会話は日本語で通せるが、夫が日本語を話さない場合、夫婦の会話は英語になる。それなのに母子の会話を完全に日本語で通してしまうと、家族全員が揃った時に、母子の会話を夫が理解できず、夫をコミュニケーションから除外することになってしまう。

 「父親がいない時は日本語で、父親がいる時は英語で、とシチュエーションで使い分けるようにしましょう。日本語の伸びは低くなるかもしれませんが、日本語を話す友達を探すとか、別の方法で補うようにすれば良いのではないでしょうか」(ダグラス助教授)。

 日本語のマンガやゲームなども、日本語との接触や日本語を使うという動機付けをするために有効。ゲームの攻略本は日本語の物しか与えない、英語のテレビは1日1時間だけだが日本語のテレビは1時間以上でもOKというような工夫をしている家庭もある。

 またダグラス助教授は、日本語の本を読み聞かせるのも非常に大切だと強調する。日本にいる子供でも、日常会話にない語彙は本から学ぶ。次はどうなるのだろうと仮説を立てたり、話の筋を追ったりなど、本を読むことは認知力発達に貢献し、それが学校での学習の基礎作りにもつながる。

 「私はいつも日本語と英語の習得は、相撲の土俵での競り合いだと言うのですが、子供が英語を話すから、日本語だと時間がかかって面倒と、ついつい押されてしまうと、日本語の習得はそれまでです。低学年の頃までは1日に何回も『日本語で』と繰り返すことになりますが、親ががんばって辛抱強く使い通さなければなりません」(ダグラス助教授)。

 子供の日本語レベルに対する親の期待度の違いで、同じ日本語を話す両親であっても、子供のバイリンガル度に差が出る。日本語は「日常会話がわかればいいレベル」を期待するのか、「仕事に使えるレベル」を期待するのかで、おのずと親からの支援の度合いも異なってくる。また、それぞれの年齢に合った親の努力が必要で、それは大学に入るまで続けなければならないとダグラス助教授は強調する。長期にわたる、親の根気強いサポートが必要なのだろう。