ライトハウス
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ライトハウスの特集

アメリカでの教育・進学、ビザ・法律、市民権・永住権、観光・レジャー、求人・仕事、グルメ・レストランなど、現地情報誌「ライトハウス」の過去の特集をご紹介。

学ぶ意思を尊重する
アメリカ高等教育の仕組み(3)

Lighthouse編集部


学費と奨学金

アメリカでは「贈与」が
中心の奨学金

一般的なアメリカの大学の学費は、年間8千ドルから4万5千ドル。それ以上かかる大学も多い。大学進学資金は、多くのアメリカ人にとって進学の大変な障害となっている。保護者に学費を頼らない(頼れない)学生も多いので、高校卒業後に数年働いて、お金を貯めてから進学するということも多い。

また、政府機関や各種団体による奨学金や学生ローンもさかんに利用されている。奨学金(scholarship)と言えば、日本では返還が必要な「貸与」が中心だが、アメリカでは返還不要な「贈与」を意味している。州立・私立を問わず、一定未満の収入水準の場合に贈与される奨学金は各種あるが、学費を無料にすることを決めたスタンフォードやハーバード大学などの例も、大学独自の奨学金と言えるだろう。その他、企業や同窓会団体などが、数多くの奨学金や資金援助の制度を提供している。

これらの奨学金制度は、日本と同じように学生の年収と成績によって判断されるが、貸与ではなく贈与なのでハードルは高く、学費免除などの場合には、卒業生として大学と同窓会の名誉を高めてくれることを期待される、天才的な才能やプロ選手レベルのアスリートでないと受けられない。

一方、カリフォルニア州では「Cal Grant」という一般的な奨学金制度もある。ただしこれは、基本的には生活に恵まれない学生に対してのもので、いくら成績が良くても、年収が高い場合には受けられない。


留学生の奨学金は
日本学生支援機構へ

こういったアメリカの奨学金に一般的な日本人学生、特に留学生扱いとなる日本の高校を卒業した、日本国籍を持っている学生が割り込むことは難しい。しかし、その一方で、留学生はビザを取得する前には、学費の支払い能力があることを証明しなければならない。そのため何らかの資金援助が必要なケースも多いだろう。フルブライトの奨学金に申し込むこともできるが、こちらもハードルは高い。

一般的に言えば、日本学生支援機構(JASSO)による「第2種奨学金(海外)」の貸与を受けることが現実的だ。これは、海外の大学・大学院進学予定者を対象に(短期大学は対象外)、進学をする前に申し込む「予約制度」となっており、申込書類の請求・提出先は、日本国内にある高等学校となる。

募集受付は留学をする前年度の6〜10月で、貸与月額は3〜12万円の5段階の選択制だ。申込資格は、留学の前年度に日本国内の高等学校、専修学校高等課程を卒業見込みの者、もしくは、募集受付時においてそれらの学校・課程を卒業後2年以内の者となっている。

対象となるのは、勉学意欲がありながら、経済的理由により進学に困難がある者、学位取得を目的として積極的に海外の大学に進学を希望する者、海外の大学を卒業する能力を有することについて在学学校長の推薦がある者、となっている。英語力が不足しているために、ESLコースなどを受講する場合は、奨学金の貸与対象期間とはならないが、語学コースを終え、予約の年度内に正規の課程へ進学できる見込みがあれば、予約候補者として対象になる。正規の課程へ進学した月以降、奨学金の貸与が開始される。

留学の前年度に日本国内の高等専門学校、短期大学又は専修学校専門課程を卒業、または卒業後2年以内の者で、海外の大学の正規の課程に編入学を希望する者も対象となる場合がある。所得による基準やそれを証明する書類などが必要になるので、早めの準備が必要。提出書類については、出身校に問い合わせて遺漏のないようにしたい。

大学院対象の奨学金についても受付期間は同じだが、申し込み書類の請求先は日本国内に在学中の大学または出身校になる。貸与月額は5〜15万円の5段階の選択制。その他の条件も、大学進学の場合とは異なる。
 また在学中に短期留学をする、専修、専門、高等専門学校(4、5年のみ)、短期大学、大学・大学院に在学する学生を対象とする奨学金もある。詳しくは日本学生支援機構のウェブサイト(www.jsso.go.jp)で確認しよう。

日本で学生ローンと言うと、ネガティブなイメージがあるが、アメリカでは学費を支援する目的の一般的なローンを意味する。連邦政府による学生資金援助プログラム(Federal Student Aid Programs)が有名。学生ローンは他のローンに比べて金利が低く、在学期間中は返済不要となっている。

例えば、シティ・バンクが提供する学部生向けの「Federal Stafford Loan」は、連邦政府からの支援があり、最高で1万2500ドルまでの借入が可能。利子は6・0%〜(2008年8月現在)、返済期間は最長で25年となっている。他にも保護者が借りるタイプのローンもあるので、興味がある人は、www.studentloan.comを参照してみよう。オンラインでの申し込みも可能だ。ただし一般的に学生ローンは、米国市民や永住権保持者、またはそのプロセスにある者に限られている。



親子で見る
大学進学体験記

長女・絵里さんがUCSDに通う、
亀山順子さん

大学受験は、あくまでも本人の問題。でも、学費や下宿、将来、帰国のことなどを考えれば、本人の問題で片付けられるものではない。ここで、長女・絵里さんが実際にUCサンディエゴ(UCSD)で学んでいる、亀山順子さんに、親としての大学受験について、具体的な話を聞いてみた。

カレッジツアーに参加
受験校を絞り込み


娘がアメリカに来たのは1994年のこと。米国内で数回の転居の後、2003年8月にサンノゼに落ち着きました。

シニア前の夏休み、そろそろカレッジを考えよう、カレッジツアーにも行こうと思っていた矢先、日本にいる私の父が倒れ、それ以降日本を行ったり来たりするようになりました。突然そのような状況になってしまって、色々調べる精神的な余裕もなく、カレッジカウンセラーに相談の電話をかけました。お陰で2週間に1回ほどのカウンセラーとの話で、大学情報を得ることができるようになりました。

大学の選択ですが、まず費用です。寮に入る場合、生活費も含めると年間費用がUCで約2万5千ドル、CSUで約2万2千ドル、私立の場合には4〜6万ドルと聞きました。予算に関しては、アメリカの場合は奨学金、ローンなどのサポートがあるのですが、娘が多少の奨学金を得ても、私立大の費用を4年間捻出するのは難しいと考え、これは対象から外しました。州外の大学については、最初から考えませんでした。というのは、夫の仕事の関係で今後の住まいも決定していない状況の下、娘に続いて大学受験を迎える2人の息子のことも考え併せると、日本からも1番便利なカリフォルニア州以外は考えられませんでした。

私たちがカレッジツアーに行ったのはUCだけでした。サンディエゴ、サンタクルーズ、デービス、サンタバーバラの4校に、9月に入ってからバタバタと出かけたので、大変忙しいスケジュールになってしまいました。シニアになってから動き出すのでは、やはり遅過ぎでしょう。カレッジツアーに行くつもりがあるのなら、早めに計画を立てることをおすすめします。


願書に記入ミス!
親子でハラハラ


願書提出は慎重にというのは、当たり前のことですが、私たちは大きな間違いをしてしまいました。願書の最初の項目である出生地に、なぜか現住所がある「サンノゼ/カリフォルニア」と書いてしまっていたのです。記入間違いは出願無効になると聞いていたので、それに気付いた時は、親子共々大いに慌てました。

早速カウンセラーに連絡をしましたが、これといった対策はなく、各大学に電話をかけろとだけ言われました。娘はいくつかの大学に電話をかけ、センターへは訂正のメールを送り、各大学へ訂正文を郵送しました。一応手は尽くしましたが、大丈夫だという保証はなく、合格通知が来るまでは、ハラハラしました。

こうした経験からも、結局、大学受験は、本人が自分の意思で自分の力で責任を持ってするもの。先生やカウンセラー、親はそのほんの手助けをするだけだと、心から思います。


高校に期待できること
できないこと


娘の高校では、先生やカウンセラーはほとんど何もしてくれませんでした。はっきり言って、高校に期待できることは、ほとんどないような気がします。公立高校でしたが、生徒各自がチューターや外部のカウンセラーのところ、あるいは塾などに通い、マニュアルに則って大学受験の道を歩んでいました。

私たちがカレッジカウンセラーに頼ったのは、賢明だったと思っています。大学のシステムそのものを一から教えてくれ、娘に合った大学情報を提供してくれました。自分で何もできなかったのに、こんなことを言うのは気が引けますが、今から考えれば、カウンセラーが教えてくれたことは、ちょっと調べればすぐにわかることばかりでした。知識がまったくなかった私たちには強い味方でしたが、私立や州外の大学を目指す人以外には、カウンセラーは必要ないかも知れません。

また、人にもよるのでしょうが、彼らは受験を成功させるために、課外授業、ボランティアやアクティビティーなどでも、フルに活動することを強くすすめます。娘はシニアイヤーからのカウンセリングでしたので、それほどプッシュされることもなく、自分がやりたいと思うことだけをして高校時代を過ごせました。カウンセラーのノウハウは確かなものだと思いますが、画一的な指導には疑問が残ります。

娘は今UCSDで、とても充実した日々を送っている様子です。娘の専門分野は就職に有利だとは思えません。今後、彼女の将来がどうなっていくのか、皆目見当がつきませんが、自分の道は自分で拓いていこうという心意気だけは、大学受験を通じて身に付けたように感じます。


現役大学生の生活

亀山絵里さん(UCSD人類学部在学中)

高校3年生まで、自分が何を専攻したら良いかわからなかったのですが、カウンセラーのアドバイスに従ってリサーチした結果、段々興味を持つようになった人類学を専攻に選びました。アメリカの大学は3年生まで専攻を変えることが簡単にできるので、気軽に選択しました。

UCSDは家族とキャンパスツアーをした際に、「ここだ!」と思いました。他の学校と比べて具体的に何が良かったとは言えないのですが、雰囲気がとても良く、私を歓迎してくれた、と感じたのです。

大学では最初の2年は、どのような専攻でも必要な基礎教育(一般教養)をたくさん取らなければなりません。ただ私は、AP(Advanced Placement:高校在学中に受講できる大学の授業)の単位や、SATの日本語の単位を持って入学したお陰で、数学や外国語などの授業を取る必要がなく、選択科目の幅もとても広がりました。

大学で最も大切なことは、時間の管理だと思います。具体的に言うと、遊ぶことと勉強のバランスです。それから、良い成績を取るために必要なことを知っておくことです。これは何に集中しなければならないか、ということを学ぶことです。

社会科学系の授業は、読むことと書くこと、とりわけ宿題が大変です。長いものでは10ページのレポートを課されることもあります。社会科学系を専攻するなら、英語力は非常に大切です。私は3年で学部を卒業することを目指していますが、その後は大学院へ進んで博士号を取り、大学で教えたいですね。

アメリカの大学を目指している皆さんには、「Where there's a will, there is a way」という言葉を贈りたいと思います。特に日本から来た留学生は、まずは英語をしっかり学ぶこと、恥ずかしがらずに話すことにチャレンジしてください。


油利文絵さん(UCLAコミュニケーション学部在学中)

小学校の時から英会話を始めたこともあり、英語だけでなく、他の言語にも興味を持っていました。言葉や身体の使い方は国や場所によって違いますが、万国共通しているのは、私たちはみんなそれを使って何かを伝えようとしていること。自分たちの生活にあって当たり前のようで、とても大きな役割を果たしているコミュニケーションを学びたいと思いました。なかでも個人間のコミュニケーションからマスメディアまで、幅広い授業を提供し、研究も進んでいるUCLAに編入する決意をしました。

アメリカの大学の難しいところは、読む量がとても多いことです。それからコミュニケーションのクラスはエッセイテストが多いので、内容をしっかり理解し、自分の言葉で書けないといけないので、テスト前はそれが大変です。

日本人にとって1番大変なところは、教授が生徒に発言や授業参加を求めていることです。実はこれが、私がアメリカの大学に来た理由でもあるのですが、講義を聞いて、受け身で学ぶことが多い日本の学生にとって、たくさんの学生がいるなかで自分の意見を発言するのは、抵抗のあることではないかと思います。日本人にとって難しいことではありますが、これがアメリカの教育の素晴らしいところであると思います。

卒業後は日本で就職したいと思っています。UCLAで視野が広がったので、今はメディアに限らず企業のPRなどにも興味を持っています。

アメリカの大学の良いところは、自分さえ準備ができていれば、思い切り勉強できる環境が整っていることです。やるかやらないかは自分次第。大変なことも多いですが、「自分でやる」ことは「自分を成長させる」ことだと思います。まだこれが学びたいとか、これについて研究したいなど、具体的なことは決まっていなくても、最後までやり抜くという強い意志を持ってください。

(ライトハウス 2008年9月16日号掲載)