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歴史が動く大統領選挙
新政権下のアメリカを考える(1)

Lighthouse編集部

五輪の年に行われる、アメリカ大統領選挙。11月の本選挙を前に、候補者や党による熾烈な戦いが繰り広げられている。次の4年間をリードする大統領を選ぶ選挙の仕組みは複雑だ。今回はそのシステムの解説と、候補者の政策、今後の日米関係や国際関係、安全保障の行方などについて識者に聞いた。


大統領選挙について

大統領になるには?

 イギリスから独立した東部13州の結合体だったアメリカ合衆国。それを1つにまとめるために誕生したのが「合衆国憲法」で、ローマ帝国の護民官のような存在が大統領だ。

 大統領は副大統領と共に、4年の任期を務める。3選は禁止。大統領に立候補できる条件は意外と単純で、(1)35歳以上、(2)米国市民である両親の子供、または米国内で生まれた米国市民、(3)14年以上米国内に住んでいること、などだ。

 一方選挙権は、選挙人登録をしている18歳以上の米国市民であることが条件。現在日本では永住外国人に対する地方選挙への参政権が話題となっているが、面白いことに、移民が多いアメリカでも、グリーンカード(永住権)保持者が選挙権を要求するという話は聞いたことがない。そもそも選挙権は、国籍とセットというのが国際社会の常識。だからアメリカでも、グリーンカード保持者と市民との明確な一線は、「選挙権の有無」なのだ。

副大統領の重要性

 副大統領は、Vice Presidentと呼ばれるように大統領を補完し、大統領と一体化している存在。副大統領は、大統領に万が一のことがあった場合に、大統領職を継承する立場にある。だから副大統領候補は非常に重要な存在であり、大統領候補も自分のキャラクターを補う人物を選び、選挙戦を有利に導こうとする。今回、民主党のバラク・オバマ候補は、年配でカトリック信者のジョセフ・バイデン氏を、共和党のジョン・マケイン候補は、女性で若いサラ・ペイリン氏をそれぞれ副大統領候補に選んだ。


複雑な選挙制度

 投票は、少し複雑だ。まず有権者は、投票日に大統領候補者に直接1票を投じる。これを一般投票という。しかしこの投票結果がそのまま反映されるのではない。一部の州を除いて、各州で最高得票数を獲得した1人の候補が、その州に与えられた選挙人団(Electoral College)の数を獲得する。その獲得総数が多い候補者が大統領に選出されることになるのだ。

 各州の選挙人の数は、その州の上下両院議員の定数に等しい。上院議員は各州から2名ずつ、下院議員は国勢調査のデータに基づく人口により決定される。例えばカリフォルニア州は上院議員2名、下院議員53名なので、選挙人数が55名の最大票田となる。ワシントンDCからは連邦議会議員を出さないが、3名の選挙人が選ばれる。一部の州を除いて、選挙人は一般投票の結果に従って投票する。そう義務付けられているわけではないが、それが通例となっている。


大統領候補決定まで

 アメリカでは、共和党と民主党の2大政党による政権交代が行われている。両党に所属する者が大統領に立候補する場合、各州で行う予備選挙・党員集会を経て、党大会で各党から正式に大統領候補としての指名を受ける必要がある。

 大統領選挙はいつから始まるのか。本選は4年に1度の11月に行われるのだが、2006年の中間選挙の頃から、すでに非公式に立候補に向けての動きが始まっていた。


スーパーチューズデー

 今回両党の予備選は、1月3日のアイオワ州から始まり6月まで続いた。「スーパーチューズデー」と呼ばれる、主要州で一斉に予備選が実施される日(通常は大統領選挙の年の2月か3月の火曜日)までに、候補者が決定するものとマスコミは予測していた。共和党は、連邦議会議員の経験はないものの、ニューヨーク市長として9・11同時多発テロ直後に指導力を発揮したルディ・ジュリアーニ氏を有力視していたが、緒戦を軽視したことが響いて一気に脱落。代わって、1月8日のニューハンプシャー州での予備選で劇的な勝利を収めたベトナム戦争の英雄、共和党の長老的存在のジョン・マケイン氏が浮上し優勢を固めたのだ。

 一方民主党では、下馬評で優勢を伝えられた初の女性候補ヒラリー・クリントン氏が意外な苦戦を強いられ、初のアフリカ系アメリカ人候補となったバラク・オバマ氏と一進一退の激しい選挙戦を展開した。

 民主党の予備選が、実質上の大統領選挙であるかのような報道が繰り広げられた中で迎えた2月5日のスーパーチューズデー。民主党は22州、共和党は21州で予備選を行った。共和党は事実上マケインで固まったが、民主党はここでも決着が付かず、6月3日の予備選最終日にようやくオバマ氏が必要な代議員数を獲得、民主党の指名を内定させた。

 正式に正副大統領候補が決定したのは、8月25日から28日のコロラド州デンバーでの民主党大会と、9月1日から4日のミネソタ州セントポールでの共和党大会であった。


一般投票は11月4日

 有権者の一般投票は11月4日。その際には、2大政党以外の諸派からの立候補者も顔を並べる。しかしこれを、泡沫候補と侮ってはならない。例えば2000年の選挙では、ラルフ・ネーダー氏(緑の党)、パトリック・ブキャナン氏(改革党)獲得の票が、もし民主党に流れていれば、ブッシュ大統領は誕生しなかったと言われるほど、票の行方を左右するからだ。

 もしマケイン氏が当選すれば、史上最高齢の大統領となり、オバマ氏が当選すれば史上初のアフリカ系アメリカ人大統領となるが、両候補とも米国本土以外の出身ということも史上初だ。

 一般投票の後、12月15日に選挙人による投票を経て、選挙人の過半数である270票を獲得した候補者が、第44代アメリカ合衆国大統領、および第47代アメリカ合衆国副大統領となる。


アメリカ大統領選挙を読むキーワード

■Republican Party (共和党)
現ブッシュ政権を支える、新保守主義の立場を取る中道右派政党。建国間もない頃の、ホイッグ党など連邦派の流れをくむ。奴隷制度反対を掲げて1854年に結成、60年にエイブラハム・リンカーンが初めて共和党から大統領に選ばれた。地方の市民、財界、キリスト教保守派を支持母体とする。経済面で市場主義・新自由主義の立場を取り、おおむね親日的。同性愛・人工妊娠中絶には原則的に反対。シンボルは象

■Democratic Party(民主党)
現政権の野党で、いわゆる「リベラル」の立場の政党。トーマス・ジェファーソンの民主共和派の流れをくむ。奴隷制度廃止に反対し、南北戦争後は、戦中にアメリカ連合国を結成した白人に支持された。現在では環境問題や人権、福祉などに重点を置き、「大きな政府」路線を取る。親中派が多く、大都市市民、労組、マイノリティーを支持母体とする。経済面では反自由貿易で国内産業保護主義の立場。シンボルはロバ

■Green Party(緑の党 )
環境問題に最大の関心を置く政治団体で、知名度そのものは高いが、連邦議会に議席を持たない。2000年の大統領選挙に同党から立候補したラルフ・ネーダー氏は、民主党のアルバート・ゴア氏の票を奪ったため、民主党支持者から非難を受けた。今回も独自候補を擁立し、法定得票数(5%)の獲得を目指す

■Primaries(予備選挙)
大統領選挙の候補者を決める選挙を指す場合もあるが、その際に選挙人登録をした各州の有権者が、特定の候補者に投票することを宣言している代議員に投票する大統領候補者決定の方式も指す。秘密投票で行われる

■Caucuses(党員集会)
文字通り各党の党員による集会。投票区から始まって、郡、下院選挙区、各州の党員集会に参加する代議員を順次選出し、最終的に候補者を決める党大会の代議員を選出する方式。集会に参加する党員は投票先を公開している

■National Convention(党大会)
大統領選挙時、候補者を指名する党大会を特に「United States Presidential Nominating Convention」と言う。候補者指名以外に、各党の活動目標などを決めるが、現在ではほとんどセレモニー化している。会場都市になれば経済的影響が大きいこともあり、誘致合戦が行われている

■Presidential Debates(大統領候補によるディベート)
大統領選挙では、民主党と共和党の候補がディベートを行うことが習慣となっている。テーマはその時点で最も論議されている課題で、各候補の議論に説得力があるか否かが、戦況に影響する。テレビで最初に放映されたのは、1960年のJ.F. ケネディ対ニクソンのディベート。当時の人口1億7900万人のうち、6600万人がテレビに釘付けとなった。これはアメリカのテレビ史上、最高視聴率。ただしこのディベートでは、若くてハンサムなJFKに違った意味で有利な影響を与えたとも言われている

■Super Tuesday(スーパーチューズデー)
多くの州で同時に予備選挙、党員集会が行われる、大統領選挙の年の2月または3月初旬の火曜日を指す。最初に使われたのは1988年3月8日。最初の予備選挙、党員集会となるアイオワ州党員集会とニューハンプシャー州予備選挙と共に、大統領選挙の前哨戦で非常に注目される。アメリカでは、開拓時代から選挙が行われた。ほぼ全員がキリスト教徒であったため、聖書に従って日曜日はすべての労働を休んだ。だから翌日の月曜日を投票日とすると、前日の日曜日から投票所へ旅をしなければならないケースも出てくるため、火曜日が伝統的にアメリカでの投票日となっている