競争心を育てる

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「バイリンガル子育ての秘訣」船津 徹(TLC for Kids代表)

アメリカは自由と平等を重んじる国です。万人に自由と平等を保障するということは競争が激しい社会ということでもあります。集団や協調を重んじる日本では子育てや教育に競争を持ち込むことは少ないですね。しかし、競争文化の国アメリカでの子育てでは「競争心の育成」に目を向けることが必要です。日本で競争心が強いというと、他人を踏み台にしたり、自分の利益のために手段を選ばないなど、否定的なイメージがあります。一方、アメリカで「competitive」といえば、自己の能力を高めるために努力を惜しまない、意思が固い、負けず嫌いで粘り強いなど、肯定的に見られる場合がほとんどです。アメリカ人は本当に競争が好きです。自分が競争に参加することも、競争を見ることも好きです。競争が生活のあらゆる場面に浸透しているので、アメリカ人家庭では、ごく当たり前に、子どもを幼い頃から競争に参加させます。勉強もスポーツも競い合わせて能力を向上させるのがアメリカ流です。

個性とチャレンジ精神の育成

競争に参加させる目的は個性と才能の錬磨、そしてチャレンジ精神の育成です。スポーツ、音楽、勉強、さまざまな分野の競争に参加することで、子どもは「自分は何に向いているのか」を知ることができます。個性に気付き、能力に磨きをかける。それを自覚させるために多くの競争を経験させるのです。また、困難に立ち向かう力、敗北から再び立ち上がる力、失敗を恐れずチャレンジする力、プレッシャーの中で実力を発揮する力、絶対に諦めない根気強さなど、たくましい精神力を育てるには競争を体験させるのが一番です。目標達成のためにコツコツと努力する経験は人間の資質の中で最も大切な「自信」を大きく育ててくれます。もちろん競争は一握りの勝者と多くの敗者を生み出します。確率では敗者になる可能性が高いのに競争に参加させるのは、子どもがアメリカ社会で生きていく上で欠かせないトレーニングだからです。競争と向き合う訓練をせずに厳しい競争社会に放り出す方が、保護者として、よほど無責任なのです。

充実した子どもの競争環境

アメリカの競争文化を支えているのが競争環境の豊かさです。スポーツを例にとりましょう。ほとんどの競技はシーズン制で、一年間に2、3の異なる競技に参加できます。複数競技を経験することで偏りのない運動能力を開発できると同時に、子どもが自分の才能や好みに合った競技を見つける助けとなります。多くの競技は参加者の年齢やレベルによって細かく分類されており、初心者から上級者まで、自分の能力に合った競争に参加できるようになっています。この仕組みがあらゆる競技に根付いているので、子どもは自分と同レベルの相手と切磋琢磨しながら技能を向上させていくことができるわけです。アメリカで特筆すべきが、両親を始め、競争に関わる人の「勝敗へのこだわりが少ないこと」です。もちろん競争に参加する目的は勝つことです。しかし、勝つために一所懸命努力したのであれば、負けても、それは勝利と同様に高く評価されます。真剣勝負の中にも「ゲームを楽しめばよい」「負けても次に勝てばよい」という寛容さがあるので、誰でも気軽に競争に参加できるのです。反対に「やるからには勝たねばならない」と勝敗へのこだわりが強過ぎると、子どもに恐怖心や不安感を植え付けてしまい、実力を発揮できなかったり、競争を楽しめなくなったりします。子どもに健全な競争心を育てるためには、どのようなレベルで競うにせよ、両親が「全力を出し切ればよい」という姿勢を保つことが大切です。

競争経験を積ませよう

アメリカで子どもが自己実現を図っていくためには、競争を避けることはできません。大学受験、就職、昇進、転職と、子どもの未来は厳しい競争の連続です。もちろん敗北や挫折もあるでしょう。しかし、次の目標に向かって立ち上がり、自己研鑽を怠らない精神が育っていれば、どんな困難も力強く乗り越えていくことができるはずです。真剣に競争と向き合う経験は、子どもの人生に必ずプラスの影響をもたらしてくれます。アメリカは健全な競争心を育てる環境が整っていますから、両親は「社会に出すためのトレーニング」と捉え、積極的に競争経験を積ませてあげてください。
 
(2014年8月1日号掲載)

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