誰もがはまる!子育ての落とし穴

船津 徹(TLC for Kids代表)

日本人、中国人、韓国人など儒教の影響を受けたアジア人の子育てに共通するのが偏差値主義です。「頭の良い子に育てたい!」という両親の願いは理解できますが、個性や好き嫌いを無視して知識の詰め込みをしていると、個性(その子ならではの良い部分)のない子どもに育ってしまうという、思いがけない子育ての落とし穴にはまってしまう場合があります。
私は日本とアメリカでさまざまなアジア人と接してきましたが、多くの親が偏差値の高い子どもに育てることを目標に掲げています。その結果、個性が少しずつ削られていき、たとえテストの点数は良かったとしても、判子を押したような、特徴のない子どもに育ってしまうのです。
熾烈な国際競争社会で生き残るには人とは違った強みを持っていることが必要です。親が子どもの強みを見極め、それを伸ばす子育てを実践する。これからの子育てには、偏差値主義の中で潰されがちな子どもの個性を守ってあげることが求められているのです。

21世紀に要求されるスキルとは

グローバル化や高度情報化、人工知能、ロボット技術などの新しい概念や技術によって、世の中が大きく変わりつつあることは誰もが実感しているでしょう。そんな未来を生きる子どもたちの能力をペーパーテストの点数だけで評価するなど、もはや時代遅れです。
ハーバード大学心理学部教授のハワード・ガードナー博士は多重知能という理論を提唱しています。「知能をIQ(テストで出た数値)だけで測定することはできない。人間にはIQでは測定できない多重な知能がある。だから人間には得意なこと、不得意なことがある」と彼は言います。IQ以外の知能というのは、音楽能力や運動能力、対人能力、想像力、問題解決力など、子どもの個性や強みのことを指し、自分らしい人生を歩んでいくための大切な土台になることを、私たちはもっと認識しなければなりません。
また、ハワード博士は「It’s not how smart you are. It’s how you are smart.」(どれだけ頭が良いかではない。どのように頭が良いかなのだ)」とも言います。自分の強みを知り、それを伸ばし、自己の能力をフルに発揮できる。未来の社会で活躍できるのは、そんな人材なのです。

学習の目的は考える力の育成

IQ以外の知能の重要性に触れると「では勉強させなくていいんですね」と勘違いする親がいますが、勉強は必要で、現代社会で生きていくには基本的な知識や学力がないと困ります。ただ、勉強のさせ方に工夫してほしいということです。
例えば「8+2=?」という質問の答えは一つしかありません。しかし「10を作るにはどうしたらいいかな?」という質問であれば答えは無限にあります。子どもは「1+9」「5+5」「2×5」「20÷2」と頭脳をフル回転させて考えます。答えがない問題に取り組ませることで考える力が育ちます。
子どもが時代の変化に適応するために、また、自分らしい人生を歩むためには知識の詰め込み(記憶力)だけでなく考える力の育成に目を向けることが大切です。社会でも理科でも国語でも「なぜなのか?」「本当なのか?」を考えさせるように親子の会話に配慮してください。

コミュニケーション力を育てる

子どものIQ以外の知能、すなわち強みに着目した子育てを実践すると、IQも高くなるという事実を知ってください。たとえば音楽的才能がある子に楽器演奏を教えれば、子どもには人よりも優れた特技が定着し、それは自信につながります。
自信は、ほかの学習に向かう態度にも影響します。特技ができて自信が育った子どもは、テスト勉強にも真剣に向き合えます。なぜなら「自分はできる!」と信じられるからです。だから何事も諦めずに努力を続けられるようになるのです。
 
(2017年5月1日号掲載)

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