日米の大学におけるメリットとデメリットは何ですか?

高校2年生の息子がアメリカの大学に残ることを希望しています。来年には仕事の関係で帰国する予定なので、日本の大学へ進学させることも考えています。日米の大学のメリットとデメリットを教えてください。

A. 日米の大学の特徴を理解し、子供の目標と性格で決める

松本輝彦(INFOE代表)

「メリットとデメリット」は何を基準に判断するかによって大きく異なります。
ここでは、かつて日米の大学で学び、現在日本の大学でクラスを担当している私自身の経験を基に、考えてみましょう。

私の体験

まず私自身の大学での体験談をいくつか紹介します。

①私がアメリカの大学で学んでいた時、教授の都合でクラスが休講になりました。すると、働きながら学ぶ受講生の1人が「授業料を返してほしい」と教授に詰め寄りました。もちろん教授が授業料返還などするはずがありません。そこで、受講生全員のスケジュールを聞いて、全員が時間の取れる日曜日に、教授の自宅で補講が開かれました。

②アメリカの大学には「Freshman Writing」というクラスがあります。大学生としての考えや意見を相手に伝え、説得する文章を書くトレーニングです。自分の考えとは、ただ単に日ごろ自分自身が考えていることではなく、大学での学習や研究を通して自分が得たアイデアや研究成果なども含みます。大学1年生が最も苦しむクラスです。

③日本の有名大学で10人ほどの学生に「勉強のために、1日何ページ本を読むか」と聞いてみました。答えは、「1、2ページ」でした。このうちの1人がアメリカの大学に1年間留学して帰ってきた際に、同じ質問をしたところ、「1週間に200ページは普通」との答えが返ってきました。この話を日本の大学教授にしたところ、「言っても読まないから、読ませない」と言われました。

④先日、日本の電車の中である大学のつり広告を見ました。そこにはとても大きな字で「友達ができます」と書いてありました。

日米の大学教育の違い

この体験に基づいて、私は、アメリカの大学は「アカデミックなトレーニング」を、日本の大学は「社会人の養成」を第1の目標としていると考えます。

アメリカの大学が行っている「アカデミックなトレーニング」とは、②や③のような読書や文章を書くトレーニングを厳しく学生に課し、学問や研究の基礎能力を身につけさせることです。学生の専攻分野での高度な知識と併せて、ここで開発されたスキルが、社会で職を求める場合に必要な能力なのです。

アメリカでは年齢や就業年数ではなく、能力や自分ができる仕事の内容により給与が決まります。より待遇の良い仕事に就くためには、何歳になっても大学に戻り、再びトレーニングを受けるという人が多いのです。

大学の立場から見ると、企業や社会が必要としている能力やスキルを学生に身につけさせる、「教育」というサービスの対価として、学生から授業料を取っているのです。もし、そのサービスが不十分であれば、①のような出来事が起こります。

日本の大学が行っている「社会人の養成」とは、高校までの(実質的な)義務教育を終えてから、就職して社会に出るまでの猶予期間(モラトリアム)に、良き社会人となるための、学生による自己トレーニングの時期を与えることです。その間、クラブやサークル活動を通して生涯の友人を見つけ、アルバイトやインターンシップを通して、卒業後に経験する社会人生活をほんの少し体験するのです。上の④の広告は、大学自身がこの考えを追認していることを示す例です。

さらに、③からも明らかなように、厳しいトレーニングは、学生から授業料を受け取るために大学側が行うサービスだという、アメリカの大学では当然の認識が、日本では欠如しています。学生の「教育」より、自分自身の「研究」の方が、大学教員にとって優先順位が高くなっているのです。

どちらの大学?

それでは、どちらの大学がいいのでしょうか?それは、大学生となるお子さん自身の目標と性格で決まります。「独立心が強く、自分の道を歩む」タイプならアメリカの大学へ、「寄らば大樹の陰で、安定を求める」タイプなら帰国子女入試制度を活用して、日本の有名大学へ進学することをおすすめします。もちろん、これが、私の限られた経験を基にした、私の独断であることは、ご理解いただけると思います。時には、家1軒分の費用を投資することになる大学教育です。教育の中身について、よくお考えください。この回答が、決断のための刺激剤になれば幸いです。

(2006年8月1日号掲載)

Q. 日本の大学への進学方法とメリットについて教えてください

駐在が10年を超え、12年生の息子がアメリカ、日本のどちらの大学に進学するべきか迷っています。日本の大学進学方法、メリットなどを教えてください。

A. 最大のメリットは、バイカルチャーになれることです

松本輝彦(INFOE代表)

帰国子女大学入試

Q:「日本の大学への進学の可能性はあるのか?」
A:「帰国子女大学入試」が受験できます。帰国子女入試で大学が求める学生は、アメリカの高校で精一杯勉強した人です。現地校では英語で学んでいるので、日本語よりも英語での学力が伸びていることを大学は期待します。高校生として生活している場所で、何語であろうとしっかり学んだ学生は、短期間で日本語を習得し、日本の大学で学ぶことができます。

Q:「入試は、難しいのか?」
A:首都圏の私立大学や国立大学の一部には、受験者も多く、難易度も高い大学がありす。しかし、大学が募集している帰国子女の定員は受験者の少なく見積もっても2倍はあるので、浪人をする人はほとんどいません。もちろん、医学部などの入学が極めて難しい学部はあります。

英語で学べる大学

Q:「日本に、英語で勉強できる大学はあるか?」
A:最近、英語での授業だけを受講して、卒業できる大学が増えてきました。国際化の波の中、日本の高校を卒業した学生・各国からの留学生・帰国子女などがお互いに刺激し合いながら、共に学んでいます。海外滞在が長くなって日本語より英語での学習が楽な場合は、これらの大学を選択し、学ぶことのメリットは大きいと思います。

編入できる大学

Q:「アメリカの大学で2年学び、その後、日本の大学に編入できるか?」
A:アメリカの大学のように編入を受け入れる大学はほとんどありません。アメリカのシステムを採用している上智大学(国際教養学部)・国際基督教大学などは、編入の可能性がありますが、得単位の認定が厳しく、在籍年数が長くなる場合があります。

日本の大学進学のメリットは?

Q:「アメリカの高校卒業後、日本の大学に進学するメリットは?」
A:最大のメリットは日本語と英語のバイリンガル、両国の生活習慣や文化を身に付けた、バイカルチャーになれることです。もし、アメリカ生活が長く英語での勉強を日本の大学で続けても、大学の外での日本語の生活の中で日本の文化や社会常識を習得することにより、日米両国だけではなく、その国際的感覚を生かし、世界に通用するスキルを身に付けられます。教え子には、そうして活躍する若者が多くいます。

どちらの大学かいつ決めればいいのか?

Q:「日米、どちらの大学に進むか迷っている。どんなタイミングで決めればいいの?」
A:アメリカの大学は、12年生の11月・12月に出願です。まず、この出願時にベストの成績が出せるよう全力でチャレンジしてください。現地校での勉強をしっかりしていれば、日本の大学の受験準備はそれから始めても遅くありません。アメリカの大学の合否の連絡は3月頃です。合格した大学から1校選び、5月初めに入学希望の届出をします。日本の大学出願・受験は、現地高校を卒業後の夏以降です。アメリカの大学を決めて、日本の大学に挑戦して、最終的に進学先を決めることも可能です。

第1志望のアメリカの大学に入れなかったり、日本の大学の方に気持ちが向いている受験生は、合格したアメリカの大学に「入学時からの休学」や「入学の延期」の届けを出して、日本の大学を受験する場があります。また、9月からアメリカの大学で学びながら、日本の大学の入試日に日本に一時帰国して受験する人もいます。そして、運良く日本の第1希望の大学に合格した場合、アメリカの大学を正式に退学して、日本の大学に進学します。

日本の大学は、現地の高校でしっかり学んでいれば、さまざまな方法で進学が可能です。お子さんの未来のために、一度その可能性を考えてみませんか?具体的な資料については、ご連絡を。

(2007年12月16日号掲載)

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