日本の学校への体験入学について教えてください

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Q. 夏休みを利用して、日本の学校へ体験入学させたいのですが

私の娘は4月から小学2年生です。こちらの夏休み期間を利用して日本の学校に一時入学させようと思っています。その目的や効果について教えてください。

A. 体験入学は大変意義のあるもの

松本輝彦(INFOE代表)

学校の状況と子供の変化に注意

現地校の夏休みを利用して、日本へ帰国し、日本の学校に一時的に入学することを「体験入学」といいます。

目的

体験入学の最も一般的な目的は、「学校も含めた日本での生活体験をさせたい」です。より具体的には「日本の学校での勉強を体験させたい」。特に、日本帰国が視野に入ってきた家庭で、帰国後の学校での勉強の適応の練習として体験入学を実施する場合です。

また、滞在が長くなり、「日本語だけでの生活体験」を通して、言葉としての日本語、または日本語での勉強へのモチベーションを高めたいと考える保護者もいます。時には、保護者が一時帰国しなければならない、家庭の都合に付き合わされたケースもあります。

時期・期間・学校
現地校の夏休み開始と同時に帰国すれば、日本の学校が夏休みに入るまで約4週間。実際には2~3週間の体験入学が一般的です。小・中学生の公立学校での体験入学がポピュラーですが、私立の中学校や高校でも受け入れてくれる学校があります。

手順

公立の学校の場合を考えてみましょう。

①学校に連絡を取る
一時帰国先が通学区域となっている学校に、自分で直接連絡を取るか、親類・友人に依頼して、問い合わせます。

②問い合わせる内容
体験入学受け入れの是非は当然ですが、受け入れ可能な時期や学年、教科書や学校用品についてのルールの確認も。体験入学先の学校で、教科書の一時的な貸与ができないと、すべての教科書を購入させられたケースや、制服・体操服・上履き用の靴などの学校用品をすべて揃えることを要求する学校もありました。友人の子供の物を借りる手配が必要かもしれません。

③持参品の準備
入学後、指導してもらう先生の参考として、お子さんの日本語の力や教科の学習の理解度が判断できるような資料を準備しましょう。子供が書いた作文やテストの結果などが役に立ちます。補習校によっては、持参する資料の準備をサポートしてくれるところもあるようです。

注意点

●学校の状況の理解を
体験入学の時期は、日本の学校では1学期終了直前です。遅れている指導内容の追い込み、学期末の成績・評価、夏休みの宿題の準備など、先生と学校にとって超多忙な時期です。この時期に、短期間しか在籍しない子供の面倒をしっかり見てもらおうと期待するのは無理です。

「体験入学で、海外での日本語での勉強の遅れを取り戻そう」と意気込むお母さんがいますが、このような学校の状況を考えると、それは無理です。勉強にあまり大きな期待を抱かないことが必要です。

●子供の変化に注意
子供にとっては、渡米直後と同じくらいに緊張する環境です。短期の滞在であっても、子供の日々の変化、適応の様子に十分注意をしましょう。

小学校高学年や中学生で、友達との間でトラブルを抱えたり、ちょっとした「いじめまがい」の扱いを受けたりするケースが見られます。体験入学の目的と逆に、子供を「日本嫌い」にしてしまう場合もあります。

効果

体験入学の評価は、子供によって大きな差があります。「体験入学」は、文字通り、日本での生活を「体験」することです。良くも悪くも、現実の日本の生活を体験し、知ることです。学校だけではなく、家族全員で日本の親戚を訪問したり、旅行したりして、日本の生活をエンジョイさせてあげてください。その体験を通して日本を理解し、日本にも自分のベースがあることを知るのは、将来のアイデンティティーを確立するのに大変貴重な経験となります。

現地校の夏休みを利用しての日本の学校での「体験入学」は、大変意義のあるものです。機会を見つけ、ぜひお子さんに体験させてあげてください。

(2007年4月16日号掲載)

Q. 日本の小・中学校に体験入学します。何か注意することは?

 

A. 小学生は、楽しい思い出作り。中学生は、勉強に注意!

松本輝彦(INFOE代表)

体験入学

西海岸の現地校は6月中旬、日本の学校は7月20日前後に夏休みに入ります。

この時期の違いを利用して、日本の学校の生活や勉強を体験させるために、一時的に、2~3週間程度、日本の学校に通学するのが「体験入学」です。

滞米期間が3~4年を超えたり、帰国予定が近づいた家庭の小・中学生が、一時帰国の機会を利用して、出身地域の公立の学校に一時的に入学する例が多く見られます。

体験入学の間に寄宿する親戚、友人、知人宅が通学区域になっている学校に連絡を取り、体験入学の希望とお子さんの情報を伝えます。最近は、体験入学もポピュラーになって来ましたので、大きな問題なく引き受けてもらえるでしょう。あとは、学校の指示にしたがって準備してください

小学生は

「面白かった、また行きたい!」「プールでの授業が良かった」。体験入学から帰って来た小学生、特に低学年の子供から多く聞かれる言葉です。

現地校の授業では経験したことのない、音楽やプールでの授業を、大変ながら楽しんだり、学級活動での共同作業に少し戸惑ったりします。しかし、アメリカとは異なった日本の学校での体験を楽しんでくる子供が多くいます。

また、毎日の勉強でも、1人の担任の先生が多くの科目を教えるので、先生の目が行き届き、細かな指導を受けることができて、良い印象を抱き、アメリカに帰ってくる小学生が多いようです。

中学生は

「友達ができて良かった」「日本の学校は嫌い」「2度と行きたくない」。小学生と異なり、中学生の体験入学への感想は、賛成・反対とさまざまです。

中学生にとって、同級生との人間関係は大きな関心事です。アメリカからやって来た子供の持つ英語や生活態度に対して、国内の子供達は好奇心・憧れ・反発など複雑な気持ちを抱きます。帰国した子供自身も同級生が示す態度に神経質になっています。この帰国生と同級生の組み合わせで、短いけれども楽しい体験になるのか、つらい一時帰国になるのか分かれます。

また、先生に対しても、現地校との授業の内容や進め方などの違いに批判的であったり、先生の生徒に接する態度に戸惑う中学生も多くいます。

さらに、小学校高学年から中学生になると、授業内容や勉強が、子供たちの判断の基準になる場合も多く出てきます。自信を持って臨んだ英語の授業が、現地校で身に付けた英語とは違った内容や方法で指導されているのに混乱する子供が多くいます。また、算数・数学の進度や授業の進め方の違いに戸惑う場合もあります。

このように、小学校の時の体験入学と似たような経験をしても、感情の豊かな、精神的に多少不安定な思春期の真只中にある中学生同士のクラスでの体験から、子供たちが感じ学び取るものが、大いに異なるのは当然です。

学校をよく調べて

学校をよく調べてください。教育委員会(地域)や学校(校長)により、体験入学についての知識や態度に大きな差があります。「大歓迎」から「冷たい態度」まで、さまざまです。「子供たちの良い刺激になる」と、一時帰国してきた子供たちを歓迎し、さまざまな便宜を図ってくれる学校がほとんどです。

しかし、たった2週間の体験入学なのに、住民登録をして正規の入学でないため、お子さん3人分の全教科の教科書・問題集や学校指定の小物入れなどを購入させられた保護者がいました。中学生で「必ず制服」と言われ、大急ぎで近所の子供に借りた例もあります。

体験入学する時に補習校で

使っている教科書を持ち帰った方がいいのかどうかなど、先方の学校に「体験入学の受け入れ」をお願いした時に教科書・制服などについて確認してください。そうしないと、お子さんだけではなく、保護者の皆さん自身が嫌な「体験入学」を経験することになるかも?

体験入学は、貴重!

短期間の体験入学ですが、その結果が子供たちにとってプラスでも、マイナスでも、貴重な経験になることは間違いありません。できるだけプラスの経験になるよう、保護者の皆さんの事前準備をお勧めします。

(2009年5月1日号掲載)

Q. 今年の夏、中高生が1人で体験入学希望への学校

今年の夏、中高生が1人で体験入学希望。どんな学校がありますか?

A. 寮のある中学高校で、日本体験・日本語特訓を受けられます

松本輝彦(INFOE代表)

日本への一時帰国である「体験入学」は、海外の子供たちにとって、直接、日本・日本の学校を経験する貴重なチャンスです。

小・中学生の体験入学は、帰省先の公立小学校・中学校に事前に受け入れのお願いをすれば、ほとんど引き受けてくれます。しかし、「高校生を受け入れてくれる学校がなくて、あきらめた」という話を、保護者からよく聞きます。

また、米国滞在が長く日本語の力が不十分で、子供が授業についていけそうにない、あるいは、2、3週間の長期にわたって(時には家族一緒に)寄宿できる帰省先がないなどの理由で、体験入学をあきらめているご家庭も多いと思います。

そんな中学生、高校生、保護者のために、「日本語・国語の特訓と日本の生活体験を提供する、寮のある学校」を紹介しましょう。

広島三育学院中学・高校「体験入学プログラム

一時帰国した中学・高校生が、日本の生徒と寮で寝起きを共にしながら、日本の学校生活を経験できるプログラムです。

夏休みの期間だけではなく通年で参加可能とのことで、帰国生のために通常の授業の他に国語、英語の特別クラスを開講したり、日本の文化、社会を見聞する活動も用意されています。

広島県三原市大和町下徳良296ー2
http://sites.google.com/a/san-iku.net/ja/Home

明徳義塾中学・高校「Japan Summer School 2010」

外国の学校で学ぶ生徒のための体験入学プログラムです。

2回目の今年は、7月17日からの12日間、世界中から集まった参加者全員が学校内の寮に宿泊し、午前中は授業、午後は日本の文化・自然を体験します。夏休み中の活動で寮生活をしている国内生、留学生との交流活動も、数多く組み込まれています。

午前中の授業では、基礎日本語から古文までの幅広いレベルの日本語・国語や理数科目などを、習熟度別クラスで受講します。また、午後は、水族館、植物園の訪問、カヌーでの四万十川下り、龍河洞探検などアクティビティーいっぱいです。

高知県須崎市浦ノ内下中山160
www.meitoku-gijuku.ed.jp

寮での体験入学

ここで紹介した2校のプログラムの、海外の中学・高校生にとってのメリットを考えてみましょう。

1. 子供だけで参加
家族揃っての一時帰国は、数年に1回と機会が限られます。子供の学年、日本語力などに応じ、体験入学の時期や回数を自由に決められるのであれば、教育上の効果も大きくなります。

家族で帰国する場合は、子供が寮で体験入学をしている間に、ご両親は所用を済ませ、親戚回り(時には温泉でゆっくり?)ができます。保護者と中高生がべったり一緒に親戚の家を泊まり歩くのは、両方にとって本当に大変で、子供が「日本嫌い」になることもあります(私の経験)。

2. 日本語・国語の授業
紹介したプログラムは、海外の中高生のための国語や日本語の特別クラスを設けています。それらのクラスで、子供の日本語力のチェックや補習、特訓を受けて、遅れぎみの日本語力を補強しましょう。また、24時間日本語で生活する経験は、それ以降の日本語の学習への大きな自信となります。

3. 日本人に育てる
日本の学校の寮で同年代の子供たちと24時間生活を共にすることで、現代の日本文化を体験します。たとえ、1~2週間であっても、その後に子供自身が「日本人」に育っていくための大変貴重な経験になることは間違いありません。

4. 子供の進路のため
海外が長くなったり、帰国の予定がない家庭では、「子供の将来の生活の場は、日米のどちらの方が良いのか?」と悩みます。、その際、子供のアメリカでの生活は、日々の生活を通して想像できますが、日本での生活で「日本語は通じるのか?日本で生活できるのか?」がはっきり見えないので、親の方針が決められません。中学、高校生の間に子供だけで日本に帰り、日本での生活体験を持つことは、子供自身が「日本か、アメリカか」を決める時の大きな判断材料になります。

◇ ◇ ◇ ◇

最後に、どちらの学校も自然に恵まれた(脱走不可能な!)環境にあり、安心して送り出せます。いかがですか?

(2010年4月1日号掲載)

Q. 一時帰国の際に日本の学校へ体験入学より長く通う方法は

小学3年生の子供の母親です。滞米3年半ですが、今後の滞在が長くなることになりました。一時帰国する際に、日本の学校に子供を通わせたいのですが、体験入学では、短すぎるような気がします。何か他に方法はありますか。

A. 学習の効果を期待するなら、年度初めの「長期の帰国」を

松本輝彦(INFOE代表)

「体験入学」とは、現地校の学年が終わってから、日本の学校が夏休みに入るまで期間、日本で学校生活を体験することを言います。長くても1カ月程度ですので、文字通り体験にはなりますが、日本語や日本の教科の学力を伸ばすことは、期待できません。

「長期の帰国」のすすめ

もしも、体験入学以上のものを望むなら、現地校を3月末で休学し、4月からの1学期間、日本の学校へ通わせることを考えてはいかがでしょうか。これを私は「長期の帰国」と呼んでいます。

私が留学するために、長女が1歳半の時に、家族揃って3~4年の予定で渡米しました。しかし、長女が小学3年生の時に、初めの予定を変更して、もう数年アメリカに住むことになりました。それまでは、言わば「仮のアメリカ生活」をしていましたが、「腰をすえた」生活を計画しなければならなくなりました。長女の日本語教育についても、充分ではないと感じました。また、日本にいる私たちの両親や親戚との絆も作ってやりたいという希望もありました。そんな時、「長期の帰国」を家内と思いついたのです。

アメリカの学校を休学

さっそく、現地校に相談したところ、「学校を2、3カ月休んでいる間の勉強内容よりも、日本の学校で学ぶ体験の方がずっと貴重ですよ」と、簡単にOKが出ました。それでも、勉強の遅れが心配だと伝えたところ、「6月は学年末の行事が多いので、実際の勉強が抜けるのは4、5月だけ。アメリカの子供も、長い夏休みの間に忘れてしまうので、秋の新学年の始めに必ず復習するから、その時に追いつけば良いです」と言われました。

担任の先生に長期欠席することを口頭で伝え、教科書を返して、現地校の「休学」手続きは簡単に終わりました。

日本の学校での生活

3月末に日本へ帰国し、長女が赤ちゃんの時を過ごした祖父母の家に。市役所で住民登録を済ませると、4月から通学する学校が決まりました。アメリカの学校からの書類は、何も必要ありませんでした。

日本の学校では、新年度にクラス替えが行われて、どの生徒もお互いによく知らない人間関係の中に入ることになります。長女もクラスの中で「お客さん」扱いされることなく、自然にクラスの一員となりました。

勉強も、クラスメートと同じ条件でのスタートです。3年生は、話し言葉での学習から、書き言葉の学習へ移る時期です。会話だけではなく、読み書きの基礎を作る大切な時期です。学習する漢字の数も増えてきます。算数でも掛け算や割り算の勉強に入ります。勉強が厳しくなる学年なのです。

長女はどんなことでも、普通の生徒として扱われ、アメリカから帰って来たとは気がつかないクラスメートもいたようです。

再び、アメリカの学校へ

そんな学校生活も、1学期の終業式に出席し、通知表をもらった時点で終わりです。事前に転出の手続きをしておきます。

長女はクラスメートに別れを告げて、同い年のいとこの家に移動し、夏休みを一緒に楽しく過ごしました。そして8月末、一時帰国した私も含めて、家族全員でアメリカへ再出発したのです。

現地校へは「長期欠席」と届けていますので、子供の学習記録は学校に残っています。ですから、アメリカに初めて来た時のような、テストや編入手続きは必要なく、新学年が始まる際の、通常の簡単な手続きで「復学」できました。一時帰国の前に、2カ月のブランクを心配した現地校の勉強も、事前に先生が言っていたように、新学年で問題が生じることはありませんでした。

我が家での20年も前の「長期の帰国」。今思い出してみると、思い切ったことをしたと感じますが、この時、長女が体験した日本語力の向上と日本での生活は、それ以後の補習校での日本語の学習だけではなく、現地校での学びにも大きなインパクトを与えました。この半年間は、長女にとって最も長い日本生活となりましたが、大人になった今でも貴重な思い出として残っています。

会社のルールが厳しいところもあり、駐在員の家庭では、「長期の帰国」は難しいと聞いたこともありますが、アメリカ滞在が長期になってきたお子さんの、教育のヒントになれば幸いです。

(2007年2月1日号掲載)

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