キンダーから大学まで、1人の子供に必要な学費はいくらですか?

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A. 現地校に通う子ども達に必要な学費について考えてみましょう

松本輝彦(INFOE代表)

ご質問の「学費」は学校に直接納付するお金のことで、各家庭で必要な「教育費」とは区別して使われます。今回は、現地校に通う子ども達に必要な学費について考えてみましょう。

公立校

カリフォルニア州では、K-12と呼ばれる「キンダー(K)から12年生(18歳)」までが義務教育です。この義務教育段階の公立学校の学費は、全て税金で賄われ、無料です。ちなみに、カリフォルニア州の各学校区が支出する児童生徒当たりの教育費の平均は年間8千600ドルで、全米平均9千600ドルよりも低くなっています(2005~2006年度)。

小学校(キンダーを含む)・中学校に通う子ども達が、学校へ直接お金を持っていくことはまずありません。高校で受講するクラスにより多少の金額の材料費などが徴収されることが、稀にある程度です。

日本では、公立学校でも、給食費以外の、勉学に必要な道具・材料費などが必要で、小さな金額であっても義務教育の9年間の総額は無視できない金額になります。さらに、高校の学費は無償ではなく、公立で年間約25万円、私立で約45万円必要だとの調査結果があります(2008年)。

私立校

義務教育段階の教育を私立の学校で受けさせる保護者も多くいます。しかし、アメリカでは、日本のような、私立校に対する税金から支出される公的補助は基本的にありません。そのため、学校運営に関わる費用のほとんど全額を、学費として徴収する必要が出てきます。

ただし、私立の学校は、設立母体が宗教団体から収益目的の私企業まで、また設立目的も地域貢献からエリート教育までと、非常に多様性に富んでいます。そのため、それの学校の学費も年額数百ドルから数万ドルまでと、大きな差があります。

その他の教育費

音楽やスポーツなどの習い事を除いても、学校外での学習(学校外学習)、例えば学習塾(予備校)・家庭教師・通信教育などの費用が、日本の家庭支出に占める割合が大きくなってきています。

アメリカでは、学校での勉強が中心で、中学・高校入試の受験の必要性はほとんどありませんので、一般的にこれらの教育の出費は考える必要はありません。しかし、渡米直後の英語や現地校の勉強サポート、日本語習得のための補習授業校、日本への帰国の準備の学習などの、海外子女教育特有の出費も、学校外学習の費用に含める必要があります。

大学の教育費

カリフォルニア州立の4年制大学の学費が、近年急激に高騰しています。カリフォルニア大学(UC)の最近の年間授業料は約7千ドル、カリフォルニア州立大学(CSU、Cal State)では約4千ドルとなっています。これらはカリフォルニアの州民の授業料で、市民権や永住権を持たない大学生はこれらの金額に加えて、UCで1万8千ドル、CSUで1万ドルが必要になります。これらの金額に、寮費・生活費等で約1万5千ドルが追加になります。

私立大学の授業料も同様に増額の一途で、年間授業料3万ドルを越す学校も稀ではありません。かつては返還の必要のない給付奨学金(grant)を得てサバイブする学生が多くみられましたが、近年では返還義務のある貸与奨学金(loan)で学業を続けて大きな借金を残して卒業する学生も多くいます。

参考までに、日本の大学教育費(学費+生活費)をみてみると、国公立大学へ自宅から通学する場合の年間約100万円から、下宿して私立大学に通う年間約250万円までの差があります。もちろんこれらの数字には、私立大学の医学・歯学などの特別に授業料の高い学部は含まれていません。

大学の教育費の高騰は、日米を問わず保護者の大きな負担となりつつあり、住宅購入に次ぐ「人生で二番目に高い出費」であることに間違いはありません。

2009年の学費・教育費?

2008年半ばからのアメリカに端を発する経済不況の波は世界中に広がっています。このような経済状況は、確実にカリフォルニア州や学校区の財政に影響を及ぼします。その影響が、公立校に通うお子さん達の教育にどのような変化をもたらすのか注意が必要です。「クラスで使う紙や鉛筆などの文房具用品の寄付を頼まれました。」というお話を、最近保護者からお聞きしました。また、州立大学の学費を、たとえ学年途中でも値上げせざるを得ないのでは、という新聞記事も見られます。

2009年最初のこのコラムが、暗い世相を反映してが、学費・教育費の話になりました。しかし、今年が皆様・お子さんにとって明るい1年になることを、心から願っています。

(2009年1月1日号掲載)

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