日本語イマージョンとは?

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「日本語イマージョン」で、日英バイリンガルになれますか?

A. イマージョン・プログラムのねらいと特徴を理解しましょう。

松本輝彦(INFOE代表)

「子供を日本語イマージョンの学校に通わせて、日英のバイリンガルに」という日本人の保護者からの質問がありましたので、ご紹介します。

イマージョンとはどういう学習方法?

イマージョンとは英語の「immerse(浸す)」が語源で、「その言語に浸りきって習得する」という意味です。

イマージョン・プログラムでは、「外国語を」ではなく「外国語で他教科も」勉強しながら言葉を学んでいきます。「英語や日本語(国語)などの言語の学習」以外の教科を、家庭での言葉以外の言語で学ぶのが、イマージョン・プログラムの特徴です。

さらに、イマージョン教育には、すべての教科を外国語で行う「完全イマージョン」(total immersion)と、教科を絞って外国語で行う「部分イマージョン」(partial immersion)の2通りがあります。

日本での英語イマージョン教育

日本国内での英語教育の広がりと深まりの結果、「英語」以外の教科を英語で教える、部分イマージョンのクラスを提供する学校が急激に増えてきています。英語がネイティブの先生が英語で教える科目は、「音楽・美術」などの実技科目から「算数・数学」、さらには「理科・社会」へと、学校により異なるものの、大きく広がってきています。

帰国子女受入校の中にも、「帰国後の英語力の伸長」を目指して、教科を英語で教えるクラスを開いている学校が増えてきました。加藤学園・玉川学園などは、国際的に評価の高いインターナショナル・バカロレア(IB)のプログラムを完全イマージョンで実施しています。一方、かえつ有明中高、立命館宇治中高、千里国際学園などでは、部分イマージョン方式で教科の一部を英語で学ぶことが可能です。

今後、小学校での英語教育を導入する新しい指導要領が実施されると、英語ネイティブの先生によるイマージョンが公立の小学校でも増えることになります。日本での英語イマージョン教育は今後さらに広がり、帰国児童生徒にとってよりレベルの高い英語での学習機会が増えることは、間違いありません。

アメリカでの日本語イマージョン教育

アメリカで、日本語イマージョン教育を実施している公立の学校があります。サウスベイ地区ではカルバーシティーのエルマリノ小学校のプログラムが有名です。

私が見学したバージニア州の公立小学校では、地元の白人の子供たちがすべて日本語イマージョンのクラスで学んでいました。午前中は日本の小学校で教えた経験のある日本人の先生が日本語だけで日本語・算数・理科の授業を行い、午後はネイティブの先生が英語・社会の授業を教えていました。

このクラスの子供たちは、小学校1年生から日本語と英語のネイティブの先生から教科の指導を受けているので、どちらの言葉でも日常会話でのコミュニケーションに不自由はありませんでした。

イマージョンでバイリンガル?

子供を日本語イマージョンの学校に通わせる場合には、次の点を頭においてください。

1. アメリカの日本語イマージョンは、家庭で使っている言語(母語・家庭言語)が英語の子供が、第2言語として日本語を学ぶプログラムです。

2. 現地校やイマージョン校に通う子供の学習言語は、小学校高学年以降で「英語」になります。それは、学校の外が英語の社会だからです。また、「言葉」だけではなく学校で学ぶ知識やスキルが、言葉を超えた「学力」を身につけるために不可欠です。

3. 会話だけではなく読み書きができ、大人になっても通用するバイリンガルに育てるには、中学2年生くらいまで、しっかりと両言語で学習することが必要です。

イマージョン教育の目的や効果は、言葉の習得だけではなく、バイカルチャー・多文化の考え方やものの見方を身につけることです。それが、子供が成長してから大きな力を発揮します。

しかし、英語や日本語でイマージョン教育を受けさせるかどうかには、そのプログラムの特徴をしっかり理解する必要があります。

(2009年6月16日号掲載)

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