アミドッションを取り巻く環境の変化

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将来のキャリアステップであるアメリカ大学進学について、教育コンサルタントが解説します。

複雑な大学のアドミッション

「アメリカの大学の入学審査は複雑でわかりにくい」とよく言われます。「ハイスクールの成績が重要なのはわかるが、それ以外にもSATなどのテストのスコアが必要だったり、またボランティアや音楽、スポーツなどの課外活動も評価されるらしい。ぜ日本のように、わかりやすい入試にならないのか」。このようなご質問を受けることがよくあります。
 
日本とアメリカで入学審査が大きく異なる理由は、そもそも日米の大学で学生の評価の基準が根本的に異なるからです。例えば、日本の大学では、「今、優秀な学生」が高く評価されます。もっと正確に言えば、高校卒業時点において、特定の形式の入学試験でより高い得点を取った学生が評価されます。
 
一方アメリカの大学では、「今、優秀な学生」ではなく、「将来伸びる学生」が評価されます。つまり、現時点の点数ではなく、将来のポテンシャルを評価するのです。もちろん、今の高い学力が、将来さらに飛躍するために役に立つと考えられるため、現時点で優秀であることは重要です。しかしそれ以上に、今後どこまで伸びる可能性を秘めているのかがポイントとなるわけです。
 
では、なぜアメリカの大学は、学生の将来性を重要視するのでしょうか。それは、卒業生が社会で活躍することが、大学にとって最もありがたいことだからです。卒業生がさまざまな分野で活躍することで、その大学の名声が高まり、目指す学生が増えます。アメリカの大学の卒業生の多くは、出身大学に寄付などの貢献をしますが、社会で成功する卒業生が増えれば、その分大学への寄付金も増え、大学経営を支える基金が潤います。つまり、大学が長期的な繁栄を目指す上で、卒業生が社会で活躍することが最も重要であり、そのためにも、将来性の高い学生の集団を創り上げることが必要なのです。

学生のポテンシャルを見極める

では、大学はどのように学生のポテンシャルを見極めているのでしょう。これは大きなチャレンジであり、各大学は長年にわたりさまざまな方法で学生の将来性を評価してきました。例えば、多くの大学がアドミッションでSATを採用していますが、これは、SATが学生のポテンシャルを評価するのに適したテストだと考えられてきたからです。
 
最近はSATを要求する大学が減少傾向にあり、代わりにエッセイを重要視する大学が増えています。これも学生のポテンシャルをより適切に評価したいという大学の意向が反映された結果です。長年にわたる調査から、学生のSATのスコアと入学後の成果の相関関係があまり強くないことが明らかになるにつれて、エッセイを通じてしっかり人物評価をすることが、学生の将来性を判断する上でより効果的であるとの認識が高まりました。
 
このように、大学が学生のポテンシャルをより的確に評価しようと工夫を凝らしていることが、アメリカの大学のアドミッションを複雑にしている最大の理由です。アメリカの大学のアドミッションの歴史は、学生のポテンシャルを見極めるための、試行錯誤の歴史と言えるでしょう。

変わり続けるアドミッション

しかし、大学が学生を選ぶ基準は、ポテンシャルだけではありません。各大学には理想の大学像があり、その大学像を創り上げるために、学生の構成を考えながら戦略的に学生を選んでいます。その基準は多岐にわたっていますが、中でも近年注目されているのが「多様性」です。例えば、女子学生の比率の高い大学では男子学生を優遇したり、特定の人種に偏っている大学では、それ以外の人種を優遇するなど、より積極的に行われるようになってきました。つまり、目指す大学像が変われば、それに伴ってアドミッションも変わっていくということです。
 
アドミッションにとってもう一つ重要なポイントは「お金」です。2008年の金融危機以降、各大学は、限られた運営予算の中で、欲しい学生をいかに効率的に獲得していくかということに注力してきました。奨学金についても、経済的なニーズのある学生全員にばらまくという大学は減少傾向にあり、逆に欲しい学生を取ることを目的とし、戦略的に資金を投じる大学が増えています。
 
このように、アドミッションが絶えず変化し続ける中で、学生にとって大切なことは、アドミッションの変化にむやみに振り回されないことです。自分が行きたい大学に入るためにはどうしたら良いかを考えることはもちろん重要ですが、そこに固執し過ぎると、自分を無理に大学に合わせようとして、結果的に自分を見失ってしまう恐れがあります。それよりも、自分の良い面や優れている点をアドミッションにしっかり示した上で、「自分を最も高く評価してくれる大学に行こう」というフレキシブルな考え方が大切です。
 
(2011年9月16日掲載)

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