特集:社会人の大学・大学院進学 〜アメリカの短大・4年制大学・オンラインMBAまで

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経験を積んだ社会人でも、新たに大学や大学院などで学ぶことで、さらにステップアップでき、視野が広がります。人生をより豊かにするアメリカでの社会人進学を取り上げました。

アメリカにおける社会人進学~教育に投資して人生の選択肢を広げる

今回の特集に先駆け、取材対象者を募ったところ、多くの読者の皆さんからご応募を頂きました。アメリカで進学した学校の種類も、公立の2年制大学コミュニティカレッジをはじめ、4年制大学、MBA(Master of Business Administration)、そしてインターネットの台頭で普及したオンラインスクールなどさまざま。また進学理由には「人生の選択肢が広がる」「キャリアアップ」「年収を上げたい」などが挙げられました。
 
進学で気になるのが授業料。アメリカのコミュニティカレッジやオンラインスクールは比較的安価ですが、やはり4年制大学や大学院は高額(下図参照)。一方で、連邦・州政府補助金や各校奨学金プログラム、24歳以上対象の奨学金制度(http://goo.gl/jDDTN4)、母親向けの「スカラシップ・フォー・マム(www.scholarships4moms.net)」など、多様な助成金プログラムが揃っているのは、アメリカならでは。

卒業後の年収と大学授業料

 

ここからは、アメリカで社会人進学を決意した読者5人のインタビュー・体験談を紹介します。

アメリカのコミュニティカレッジから4年生大学編入を目指し邁進中(野崎薫さん/42歳)

1972年生まれ。神奈川県出身。高校卒業後、CADオペレーター*として3年半勤務。その後アメリカ人と結婚。2007年、転勤に伴い渡米。子育てしながらアメリカのコミュニティカレッジで学ぶ。離婚を経て、現在、San Diego Mesa Collegeに在学中。社会運動にも興味を持ち、署名活動(www.change.org)にも力を入れている。サンディエゴ・チュラビスタ在住。
*建築物や工業製品などを設計するソフトウェアシステム

野崎薫さん年表

35歳で一念発起。夢は数学の大学教授

家族の転勤に伴い、35歳で渡米。手に職を付けるため、短期美容専門学校への進学を考えていた時、3人の子どもを育てながら修士号を取得した友人の勧めでコミュニティカレッジへ進学しました。たとえアメリカでの大学卒業に計10年かかっても45歳。65歳の定年までの20年間を高卒の最低賃金で働くよりは、きちんとした職に就き、安定した収入や保障を得る方が将来的に良いのではないか。友人の言葉に今まで考えたことのない境地が見え、何よりも見解が広がり、また職業の選択肢が幅広くなるコミュニティカレッジを選びました。
 
早速、当時住んでいたベンチュラ郡のOxnard Collegeの入学テストを受けたところ、なんとESLと数学はレベル1のクラスからのスタート。しかしここで数学の面白さに目覚めてしまいました。その後、サンディエゴに転勤になり、地元のSouthwestern Collegeに転校したのですが、離婚を機に1年ほど休学。その後復学し、San Diego City Collegeを経て、今年の1月からSan Diego Mesa Collegeに通っています。4つのコミュニティカレッジの学費は総額約6千ドル。今年の秋にはSan Diego State University(サンディエゴ州立大学)への編入を目指し、現在出願中です。学費は大幅に跳ね上がり、年間1万2ドルもかかりますが、学生ローンを組んで進学する予定です。専攻はもちろん数学で、優秀な教育プログラムがあるので他の学校は考えていません。もし合格すれば、上の娘と同じジュニア(大学3年生)になるのでとても楽しみです。
 
将来は数学の大学教授になるのが夢。修士号や博士号を取得することを考えたら、あと6年以上は学生ですが、進学をきっかけに、時事や社会問題に興味を持ったり、何よりも自分のやりたいことが明確になったのは、大きなメリットだと思いますね。

営業畑から一転、公認会計士に(樫山リサさん)

福岡県元黒田藩士校の修猷館高校卒業。同年9月渡米。1985年6月サンタモニカカレッジ卒業後、加州毎日新聞社入社。1998年日系商社在籍中に通信制University of the State of New York/Regents Collegeを卒業。大手会計事務所や玩具メーカーなどを経て、2002年CPA資格取得。現在Applied Accountancy勤務。ロサンゼルス・レドンドビーチ在住。

樫山リサさん年表

昼は会社員、夜は学生。10年かけ公認会計士に

20代半ばに勤めていた日系商社で、営業から経理に異動したのを機に、約10年にわたり、社会人と学生の二足の草鞋を履くことになりました。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のエクステンションプログラムでは、会計、税務、会社法など18クラスを履修。その後、母校のSanta Monica College(サンタモニカカレッジ)に復学し、会計監査などを受講しました。学費はUCLAのエクステンションは1クラス250ドル~300ドルでしたが、コミュニティカレッジは1クラス50ドル程度でした。
 
最初は、基本的な会計の知識を得るために学校に通っていたのですが、そのうち公認会計士になりたいという夢が芽生え、土日はCPA Examの勉強のため対策コースにも通うように。
 
その後、無事にCPA Examに合格し、また4年生大学に必要な単位が揃ったところで、通信制University of the State of New York/Regents College(現Excelsior)に出願。働きながら、夜や週末に勉強する生活に慣れていたので、通信制でも続けられるという自信がありました。当時はオンラインクラスはなかったので、教科書を使って自宅で勉強し、期末試験は提携の地元大学で受けるだけ。通信制大学の利点は自分のペースで勉強ができること、そして学費が安いことです。卒業には約1年かかりましたが、登録代や教科書代を合わせても総額1500ドル程でした。
 
会計の学士号とCPA Examに合格したおかげで、その後KPMGやMattel社で働く機会に恵まれました。2002年には、公認会計士(CPA)を取得。現在、日系会計事務所で勤務していますが、会計監査関係の仕事もしており、これまで学んだ会計学や税務法がとても役に立っています。やみくもに勉強するだけでなく、きちんと学位や資格を取得したことで、将来の幅が広がり、何よりも自信が付いたと思います。

●樫山さんが進学したUCLAのエクステンションプログラムやサンタモニカカレッジについては以下でも詳しく紹介しています。
UCLAへの留学・進学~エクステンションプログラムの活用
サンタモニカカレッジ(SMC)~英語の語学留学も可能な2年制大学

長年の夢を叶え、弁護士へ(西尾砂由美さん/52歳)

1984年渡米。結婚し一女をもうける。その後日系企業で経理を担当。27歳で離婚。コミュニティカレッジを経て、日本の通信制大学法学部を卒業。2004年CPA取得後、再婚し44歳で息子を出産。14年12月にFlorida Coastal School of Lawを卒業。現在、公認会計士事務所Labis Global Practitioners, Inc.共同経営。ランチョ・パロス・バーデス在住。

西尾砂由美さん年表

高卒から25年間かけて法学修士号取得

昨年末に、Florida Coastal School of Lawで念願の法学修士号を取得したばかりです。大学院を選ぶ際に、オンキャンパスも検討したのですが、公認会計士としてフルタイムで働き、当時5歳の息子を持つ身では到底叶わず、オンラインスクールで学ぶことにしました。講義はライブチャットで行われ、質問があればその場でメールを送ります。学費は総額1万5千525ドルで、一般的な法科大学院に比べて約4分の1です。
 
日本で事務職として働き、渡米後に22歳で結婚。娘を出産後、日系企業で経理を担当していたのですが、離婚で過酷な体験をし、法律の知識を得たいと思うようになりました。高卒のシングルマザーで、資格もない私は、働きながらコミュニティカレッジに通い、その後日本の通信教育大学の法学部に進みました。学費は50万円程度でしたが、年に2回スクーリングがあり、仕事を休んで一時帰国していたので想像以上に大変でした。その後卒業はしたものの、生活費や娘の大学費用などの経済的な問題もあり、経理経験を生かせて、さらにより早く安定した生活を得られるという理由から、会計事務所に入所しました。そこで現在の主人と出会い、CPA取得後、2人で独立。しかし弁護士になりたいという夢をあきらめきれず、主人に後押しされてロースクールへの進学を決意しました。Florida Coastal School of Lawは、カリフォルニア州とワシントン州の司法試験認定校なので、まずは7月末にワシントン州司法試験を受ける予定です。
 
合格後は、会計士兼弁護士として税法や会社法を手掛けていきたいと思いますが、いずれは、孤児や養護施設にいる子どもたちのために養子縁組をするNPO法人を、日米で立ち上げたいと思っています。

ロースクールからMBAに進学(関 洋子さん)

2001年に日本の4年制大学法学部を卒業。同年、住友電気工業株式会社入社。法務部勤務。2012年、同社の海外留学制度に応募。2013年、USC Gourd School of Lawに入学。翌年Master of Lawを取得。現在USC Marshall IBEAR(International Business Education and Research)MBA Programに在学。ランチョ・パロス・バーデス在住。

関洋子さん年表

国際的な環境で“ビジネス共通言語”を学ぶ

日本の住友電工法務部で10年以上勤務した後、一昨年、主人と当時5歳の娘を伴って渡米、USC法科大学院に進学しました。当初は9か月のLL.M.(法学既習者対象のプログラム)修了後、Visiting Scholar(客員研究員)に進む予定でしたが、留学2年目は法律以外の分野のインターナショナルな環境で考え議論し自分を鍛えたいと上司に伝え、USCのIBEAR MBAプログラム(1年制)に進学の変更を認めてもらいました。
 
IBEARの生徒の就労経験平均は10年で、アジアを中心に10カ国以上から53名の生徒が在籍しています。現在全5ターム中の3ターム目に入ったところで、4ターム目に、International Business Consulting Projectという、チームで世界のクライアントを相手にコンサルティングを行うユニークなプログラムが始まります。クライアント企業には、費用が発生するまさに“実践”で、今から楽しみであると同時にプレッシャーも感じています。
 
社会人学生の悩みどころは、常に時間との闘いを強いられること。なかでも子育てとの両立は大変で、退職して一緒に渡米してくれた主人の理解と協力のおかげで、学生生活を送ることができていると感謝しています。実は主人も同じMBAの学生なので、車中2人で授業の予習・復習をしながら通学しています。経済的な負担もありますが、それでもこの留学から得るものは大きいですね。法務の専門性を向上させるだけでなく、MBAに進んだことで、戦略から会計、オペレーションに至るまで、生きた“ビジネスの共通言語”を学んでいるという実感があります。
 
修了後の進路は、会社の決定を待ってからになりますが、今後は法律に留まらない広い視点で、ビジネス部門の海外展開をサポートできると確信してます。

CEOが挑むブレイクスルー(込山洋一さん / 49歳)

香川県出身。国立弓削商船高等専門学校商船航海学科卒業後、1986年渡米。88年学習塾「開高塾」創立。1989年Takuyo Corporation(Lighthouse)設立。2000年国際教育事業部を開設。06年Lighthouse Career Encourage(LCE)を設立。現在Takuyo Corporation会長/CEOおよびLCE代表取締役会長を兼任。パロスバーデス在住。

込山洋一さん年表

50歳目前。経営の面白さに開眼

22歳で起業して以来、出版と教育の分野で事業を拡大してきました。出版事業は、西海岸とハワイの4拠点で行なっています。教育事業も、 年間1000名を超える学生に海外研修を提供。その一方で、会社勤めの経験がなく、我流でやってきた自らの経営に限界を感じていました。自分の能力の限界が会社の限界になってはならない、事業がブレイクスルーするための論理的な思考と知識を身に付けたい、そんな思いからMBAの取得を決めました。
 
海外出張も多いためオンラインスクールに的を絞り、昨年4月からビジネス・ブレイクスルー大学大学院の経営管理専攻で学んでいます。学費は2年制で280万円。元マッキンゼーの大前研一さんが学長を務め、優秀な経営陣による講義はもちろんのこと、多種多様な最新のビジネスモデルをケーススタディーに取り入れているのが特長です。1年次は「会社経営実務」や「問題発見思考」などを履修しましたが、なかでも大前さん自ら教鞭を執る「経営戦略論」や「新資本論」が実践的で面白かった。
 
授業は全て24時間オンデマンド。世界20カ国の学生によって交わされるエアキャンパス上の議論は、まるで教室にいるような白熱ぶり。論拠が浅いものにはどんどん突っ込みが入るから真剣勝負です。学期中は、大好きなサイクリングは封印し、出社前と帰宅後、そして週末を含め週に40時間を講義や課題に費やします。学んだことは、即経営に生かすことを心がけています。以前であれば、限られた知識や思い込みから即決して、失敗することが多々あったのですが、事実ベースで論理的に考える習慣が身に付きつつあります。現場で培った実務経験に加え、大学院で論理的かつ体系的に学ぶことで、改めてビジネスの面白さや可能性を体感しています。
 
(2015年3月1日号掲載)

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