大学アプリケーション・システム最新情報

アメリカの大学のアドミッションは常に変化していますが、特に2016年は大きな変革の年になりそうです。今月と来月は、アプリケーション・システムの最新情報をお話しします。アメリカの大学では、出願書類をオンラインで受け付けます。個々の大学が独自のアプリケーション・フォームを用意している場合もありますが、近年は複数の大学で利用できる共通の出願システムを採用する大学が増えています。

①コモン・アプリケーション (commonapp.org)

コモン・アプリケーションは最も多くの大学で採用されている共通出願システムであり、アメリカの大学を受験する学生が、最初に取り組むべきアプリケーションです。難関私立大学出願のシステムとして知られていましたが、近年採用する大学が急増し、15~16年度は100校の公立大学を含む約600校で導入されています。
 
コモン・アプリケーションのエッセイは、「パーソナル・エッセイ」と「アディショナル・インフォメーション」の2つです。前者は与えられた5つのトピックから1つを選んで書きます。長さ制限は650単語以内です。後者のエッセイの提出は任意で、長さ制限は同じく650単語以内です。

②ユニバーサル・カレッジ・アプリケーション (universalcollegeapp.com)

ユニバーサル・カレッジ・アプリケーションも共通出願システムの一つです。エッセイや推薦状が不要なアドミッションにも対応できることから、より自由度の高い出願システムを求める大学を中心に採用されてきました。今年からコモン・アプリケーションも同等の対応ができるようになり、両者の違いは少なくなっています。15~16年度にユニバーサル・カレッジ・アプリケーションを採用する大学は43校で、その多くがコモン・アプリケーションも採用しています。
 
ユニバーサル・カレッジ・アプリケーションのエッセイは、「パーソナル・ステートメント」と「アクティビティー・ディスクリプション」の2つです。前者では、明確なテーマは与えられていないので、自分の考えを自由に書けます。長さ制限は650単語以内です。後者は、取り組んできた課外活動について100~150単語で書くショートエッセイです。
多くの学生は、コモン・アプリケーションを選択すると思いますが、コモン・アプリケーションで出願できるのは最大で20 校までなので、20校を超えて出願する学生は、ユニバーサル・カレッジ・アプリケーションの併用を検討すると良いでしょう。

③その他の共通出願システム

特定の地域、学校群を対象とした共通出願システムを採用する大学もあります。Apply Texas(applytexas.org) はテキサス州内の私立大学、州立大学への出願システムで、63校で採用されています。Apply SUNY (suny.edu/applysuny)はニューヨーク州立大学への出願システムで、州内の57のキャンパスで採用されています。また、CSUMENTOR(csumentor.edu)は、カリフォルニア州立大学群の23校への出願システムです。

④"新"共通出願システムの誕生

全米を代表する83校が「コアリション」というグループを作り、新たなアプリケーション・システム「コアリション・アプリケーション」を発表しました。新システムの狙いは、コモン・アプリケーション偏重で同質化しつつあるアドミッションを見直し、各大学が学生の将来性をより的確に評価することです。この新システムは16年から導入されます。コアリションには、アイビー・リーグの各校や主要なリベラルアーツ・カレッジ、州立大学などが加盟しています。
 
現在は加盟していないカリフォルニア大学(UC)系列の大学も、将来的にコアリションに加わる可能性があります。ただし、コアリションは、学生の卒業率やファイナンシャル・エイドの充実度など厳しい加盟条件を課しているため、UC全校が加盟するのは難しそうです。

各大学が採用する共通出願システム コモン
アプリケーション
ユニバーサル
アプリケーション
コアリション
アプリケーション
ポモナカレッジ Pomona,CA 私立
UCLA Los Angeles,CA 州立 ?
シカゴ大学 Chicago,IL 私立
ジョンズ・ポンプキンス大学 Baltimore,MD 私立
ハーバード大学 Cambridge,MA 私立
ミシガン大学 Ann Arbor,MI 州立
コーネル大学 Ithaca,NY 私立
デューク大学 Durham,NY 私立
リードカレッジ Portland,OR 私立
ワシントン大学 Seattle,WA 州立

 

2016年から「コアリション・アプリケーション」という共通出願システムが新たに導入されます。では、この新出願システムの概要とアドミッションへの影響についてお話しします。
 
全米を代表する総合大学やリベラルアーツ・カレッジなど83校が「コアリション」というグループを作り、これからの時代に相応しいアドミッションの方法について検討しました。そこから生まれた出願システムがコアリション・アプリケーションです。これは、高校生活全般に関わるシステムであるという点において、既存の共通出願システムとは大きく異なります。

新システムの中核はハイスクール・ポートフォリオ

コアリション・アプリケーションでは、「ハイスクール・ポートフォリオ」を活用します。これは9年生から無料で利用できるオンライン・システムで、学生は日々の学習の進み具合や、高校に提出した論文・作品などを管理できます。また、課外活動での取り組みや成果なども載せられます。つまり、高校での成長の過程を詳細に記したダイアリーのようなものです。
 
ハイスクール・ポートフォリオは、他人と共有することが可能です。例えば、大学のアドミッション担当者と共有し、日々の取り組みに対してアドバイスをもらうことができます。共有レベルは細かく設定でき、共有したい相手を限定できます。ハイスクール・ポートフォリオは、12年生になって大学に出願する際に、アプリケーションの核となります。既存の出願システムでは、アプリケーション用に書くパーソナルエッセイが人物評価で重視されていますが、新システムでは、9年生から積み上げていったハイスクール・ポートフォリオ全体が評価の対象となります。逆に、アドミッション用にエッセイを書く必要はなくなるかもしれません。現行のアドミッションにおいても、キャンパス訪問時やFacebook等を通じて、アプリケーションを提出する前にアドミッション担当者とやりとりをする機会はありますが、ハイスクール・ポートフォリオを共有することにより、アドミッションはよりインタラクティブになると予想されます。

低所得層への進学支援

コアリション・アプリケーションの狙いの一つに、低所得層の学生に対する進学支援が挙げられます。学習や進学準備の支援が受けにくい低所得層の高校生の中には、高い潜在能力を持ちながら、その能力を十分発揮できていない学生が多い点が問題視されてきました。そうした学生は、自分のポートフォリオを共有することで、さまざまなアドバイスが受けられ、その結果大きな成長を遂げることが可能となります。低所得層から金の卵を見つけることも、大学がコアリション・アプリケーションを導入する重要な目的の一つなのです。

導入でアドミッションはどう変わるか

コアリション・アプリケーションは、ハイスクール・ポートフォリオを通じて高校生の日々の活動を評価するので、出願時におけるストレスの緩和が受験生にとってメリットであるとコアリションは指摘しています。確かに12年生の秋に行うアプリケーションに関わる作業は軽減されるかもしれません。しかし、一方でハイスクール・ポートフォリオの導入により、高校生はより長期にわたって進学準備に追われる可能性があります。今までは、進学準備は11年生から取りかかれば十分間に合いましたが、新出願システムでは、高校生は9年生からポートフォリオ作りに取り組むことになるからです。
コアリション・アプリケーションは、コモン・アプリケーションにとって変わるものではありません。後者で出願できる大学は約600校、これに対して前者は現時点で83校です。コアリション・アプリケーションが導入されても、共通出願システムの主流がコモン・アプリケーションであることに変わりはありません。
では、どちらでアプライするのが有利なのでしょうか。充実した高校生活を送ってきた学生には、コアリション・アプリケーションの方が自分自身を表現しやすいと感じるかもしれませんが、アドミッション戦略は一人一人異なるので、一概にどちらが有利とは言えません。ポモナカレッジの担当者は、コアリション・アプリケーションでアプライする学生は15%程度になるのではないかと予想しています。複数の出願方法の中から、自分の価値を大学に伝えるのに最適な方法を選んでアプライすれば良いでしょう。
 
(2015年11月16日号、12月16日号掲載)

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