学習に問題を抱える学生の大学進学について

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思うように成績が伸びず悩んでいる子供は少なくありませんが、成績が良くないという理由で大学進学や将来の夢を諦める必要はまったくありません。成績が伸びないの「勉強ができない」からではなく、「受けている教育が自分の学習スタイルに合っていない」からかもしれません。また、学習に身が入らないのは「やる気がない」のではなく、他に理由があるのかもしれません。
 
学習障害や発達障害などの問題を抱える子供は、適切な支援を受けることで目覚ましい成果を上げる場合が多くありますが、一方で判断の難しさや親の知識不足等の理由で、適切な対応が取られない場合も多くあります。学習面のつまずきの原因を見極め、弱点を補う方策を検討し実施することが重要で、この取り組みを大学進学後も続けることにより、満足のいく学習が可能となります。

障害ではなく個性としてのLD(Learning Disabilities/学習障害)

LD(Learning Disabilities/学習障害)の学生は、読む、聞く、話す、書く、計算する、推論するなど、 学習に必要な能力の中で著しく苦手な分野があります。 ただし、誰にでも得意・不得意はあります。そういう意味では、誰もが何らかの学習障害を持っていることになるため、これを "障害" と呼ぶのは不適切という考え方から、 アメリカの教育界ではLD(Learning Disabilities/学習障害)「学習方法の違い」(Learning Differences)と呼び、個性として扱っています。

活用したい適切な教育を受ける権利

AD-HD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder/注意欠陥・多動性障害)やDyslexia(読語障害)のような発達障害がある場合、学習に大きな影響を及ぼします。AD-HDは注意力を維持しにくかったり、さまざまな情報をまとめることが苦手という特徴があり、Dyslexiaは、文字の読み書きを伴う学習に著しい困難を抱えています。
 
アメリカでは、障害を持つ学生が教育や進学で不利益を被ることがないように、法律により適切な支援が義務付けられています。ただし、高校卒業までと大学進学後では支援内容が異なります。高校卒業まではIDEA(個別障害者教育法)により、学校が個々の生徒の課題を見極め、適切な支援の無料提供が義務付けられています。
 
一方、大学ではADA(アメリカ障害者法)とSection504(リハビリテーション法504条)により、障害を持つ学生に差別がないよう規定しています。ただし、個々の学生に必要な支援を提示するのは学校ではなく、学生本人が要求しなければならず、また、支援範囲は教育機関により異なります。
 
障害を持つ学生は、具体的にどのような支援が受けられるのでしょうか。ノートを取ることが苦手な学生には講義を録音したり代筆する支援が、教科書を読むのが苦手な学生には教科書を録音テープで聞かせる支援などがあります。また、必要に応じてテスト時間や宿題の提出期限を延長する支援も可能です。軽度の問題なら、講義の録音や、授業が受けやすい座席の確保などの支援で十分かもしれません。
 
学習障害や発達障害を持つ学生に必要な支援は、ひとりひとり異なります。そのため、どのような支援が必要なのかを見極めることが大切です。学習上の課題と必要な支援を見極めるために、さまざまなアセスメントが開発されていますので、臨床心理士などの専門家に相談し適切な診断を受けてください。その結果次第では、SATやACTなどのアドミッション・テストにおいてもテスト時間の延長や途中の休憩を増やす等の対応策(アコモデーション)を用意してもらえる場合があります。
 
ADA(アメリカ障害者法)とSection504(リハビリテーション法504条)はすべての大学に適用され、どの大学も対応可能な支援を明示しています。"ADA(アメリカ障害者法)/504 Accommodation Plan"と呼ばれるこの支援プログラムでは、ベーシックなサポートが無料で受けられます。よりきめ細かい支援を受けたい学生のために、包括的な支援プログラムを用意している大学もあります。また、学習障害を持つ学生に特化した大学もあります。どのプログラムが最も適しているか見極めるためにも、学習に問題を感じたら早期に専門家に相談することをおすすめします。
 
(2013年2月16日号掲載)

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