ファイナンシャル・ニーズの基礎知識

アメリカの大学の学費は高額ですが、質の高い教育は決して富裕層だけのものではありません。適切な教育を受ける権利は全国民に与えられるべきというのがアメリカの基本的な考え方であり、それを実現する手段の一つが、ファイナンシャル・ニーズベースの奨学金です。

ファイナンシャル・ニーズとは

家庭の所得が学生の学費を全額負担するのに十分ではないと判断された場合、その不足分がファイナンシャル・ニーズです。正確には、授業料や寮費、食費など1年間にかかる学費の総額がEFC(Expected Family Contribution:家庭が1年間に負担できる学費の上限額)を上回っている場合、学費とEFCの差額がファイナンシャル・ニーズとなります。
 
EFCの算出方法には、FM(Federal Methodology)とIM(Institutional Methodology)の2種類があります。FMは連邦政府が定めた算出方法でFAFSA(www.fafsa.ed.gov)のサービスを利用します。IMは各大学が独自に行う算出方法で、主にカレッジボードのCSS PROFILE(collegeboard.org/css-financial-aid-profile)というサービスを利用します。
 
FAFSAは全ての大学で利用されていますが、IMを採用する大学はCSS PROFILEを併用します。従って、IM採用の大学にニーズベースの奨学金を考慮してもらうためには、FAFSAとCSS PROFILEの両方に登録する必要があります。CSS PROFILEの登録は、12年生の年の10月1日以降、FAFSAは同じく1月1日以降に登録できます。

ニーズベースの奨学金

ファイナンシャル・ニーズの一部を負担するプログラムをファイナンシャル・ニーズベースの奨学金と言います。ニーズベースの奨学金には、政府が負担するものと大学が負担するものがあります。ファイナンシャル・ニーズが全てカバーされて、どの学生も無理なく進学できることが理想ですが、それを実現している大学は少数です。
 
ニーズベースの奨学金は大学にとって大きな負担となります。Pell Grant(連邦政府の奨学金)は最大で5千ドル程度であり、ニーズを全てカバーするには、かなりの部分を大学が負担することになります。ニーズを100%カバーすると謳っている大学は全米で50校程度ありますが、実際はその中に学生ローンやワークスタディー(キャンパス内でのアルバイト)などを組み込んでいる大学が大半です。なお、ニーズベースの奨学金の対象は主として米国市民、および永住者であり、非移民ビザの学生や外国人留学生にも適用される大学は少数です。
 
適切な教育を受ける権利は全ての学生に与えられるべきという信念を貫く大学は、アドミッションでニーズ・ブラインドという方針を示しています。ニーズ・ブラインドとは、アドミッションの際に学生の経済状況を一切考慮しない、つまりファイナンシャル・ニーズの大小がアドミッションに影響しないことを意味しています。アプライする学生にとって大変魅力的ですが、ニーズ・ブラインドを採用する大学は経済的に恵まれた一部の大学に限られます。
 
進学した際に実際に支払う学費の予測には、ネットプライス・カリキュレーター(NPC)が便利です。NPCは各大学がウェブ上で提供している無料のサービスで、EFCや連邦政府や州政府から得られる奨学金、大学から得られる奨学金などのおおまかな情報が入手できます。ただし、これは簡易的なものであり、またメリットベースの奨学金は含まれないため、実際の学費とは異なります。

アドミッションで不利?

ニーズ・ブラインドではない多くの大学では、ファイナンシャル・ニーズがあるとアドミッションで不利になるのでしょうか。結論から言うと、あまり気にする必要はありません。なぜなら、大学にファイナンシャル・ニーズをカバーする義務はないからです。メリットベースの奨学金の額が個人の評価で決まるように、ニーズベースの場合も個人の評価によります。上位の合格者には手厚く、下位の合格者には少なくと、差をつけられるのです。
 
従って、ファイナンシャル・ニーズの有無が合否に影響するのではなく、個人の評価が奨学金の額に影響すると考えるのが妥当です。ニーズは100%カバーするけれどニーズ・ブラインドではない大学では、ニーズのない学生を優遇する可能性はありますが、それでも自分を高く評価してくれる大学なら問題にはなりません。自分の価値を高め、その価値を高く評価する大学を受けることが奨学金獲得の王道と言えるでしょう。
 
(2015年8月16日号掲載)

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