アメリカの単科大学

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アメリカには、幅広い専攻や研究プログラムを有する総合大学や、学部の教育にフォーカスして質の高い教育を行うリベラルアーツ・カレッジなど、さまざまなタイプの大学がありますが、特定の学部に特化した教育を行う単科大学も数多くあります。今回は、アメリカの単科大学についてお話しします。

芸術系の単科大学

単科大学でまず思い浮かぶのが芸術系大学でしょう。音楽系大学では、ニューヨークの「ジュリアード音楽院」や、ボストンの「バークリー音楽大学」が世界的に有名です。両校とも音楽における能力は言うまでもなく、学力面においても高水準が要求される難関校で、その競争率の高さはアイビーリーグの大学をも上回ります。
 
美術系大学で評価の高い「ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン」はロードアイランド州プロビデンスに立地し、隣接するブラウン大学と共同でプログラムを運営するなど、教養教育にも力を入れています。また、カリフォルニア州パサデナの「アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン」は、世界的に有名な工業デザイナーや映画監督を多数輩出しています。

理工系の単科大学

アメリカには理工系の専攻に特化した単科大学もあります。「オーリン大学」はボストン郊外にある理工系の単科大学です。オーリン大学自体が提供するのは工学部のみですが、近隣のバブソン大学やウェルズリー大学でも、追加の学費を払うことなくクラスが履修できる仕組みがあるため、学生は幅広く学ぶことができます。
 
ちなみに、「マサチューセッツ工科大学」や「ジョージア工科大学」のように、理工系の専攻が充実した工科大学と呼ばれる総合大学がありますが、これらの大学は理工系以外にも、経済学や哲学など社会科学系の専攻も有するため、単科大学ではありません。
 
ニューヨークの「クーパーユニオン大学」は、美術、建築、工学の3つの学部を持つ小規模大学です。それぞれの学部が独立した大学のように運営されているため、3つの単科大学が集まって一つの大学を構成していると言えます。

ビジネス系の単科大学

ビジネス系の単科大学とてよく知られているのが、ボストン郊外の「バブソン大学」です。アントレプレナーシップのプログラムは世界的に知られており、このプログラムを担当する教授は全員が起業で成功した経験を持っています。前述のオーリン大学と同じく、近隣の大学と提携しているので、学生は提携校で自由にクラスを履修できます。

単科大学の特徴

単科大学は、特定の学部に特化しているため、その分野における教育プログラムが充実しています。同じような目標を持つ周りの学生と情報を共有したり、お互い励まし合いながら学べるのは、単科大学ならではのメリットと言えるでしょう。
 
一方で、単科大学ならでは制約もあります。まず、学部がひとつしかないため、一般の大学のように、在学中に自由に専攻を変えられません。主専攻は変えずに、副専攻をとりたいという場合でも、学内での対応は難しいです。小規模な大学で故に、一般教養で学べるクラスの種類も限られているので、自分が学びたいクラスが学内で提供されていない場合は、他の大学に受けにいく必要があります。

単科大学の学費

学費とファイナンシャル・エイドは、大学間で大きなばらつきがあります。基金が小さく財政基盤が弱い単科大学は授業料収入への依存が大きいため、奨学金の予算も小規模です。これに対し、大口スポンサーからの潤沢な基金に支えられて学費を抑えている大学も数多く見られます。例えば、オーリン大学やクーパーユニオンは、入学者全員に授業料の半額をメリット奨学金として授与しています。また、音楽大学として名高いフィラデルフィアの「カーティス音楽学校」やロサンゼルスの「コルバーン音楽院」は、授業料のみならず寮費、食費に至るまで全て奨学金でカバーされるので、学費は実質ゼロです。
 
芸術や工学など、単科大学が提供する専攻を有する総合大学やリベラルアーツ・カレッジも決して少なくありません。選択肢が広がれば、その分自分に合った大学に、よりリーズナブルな学費で進学できる可能性が高まります。将来の進路が決まっている場合でも、単科大学だけでなく、一般の大学も進学先候補に加え、並行して検討することをお勧めします。
 
(2015年4月16日号掲載)

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