2016年版入試動向と対策

2016年は、SATが新テストに変わり、新出願システムが導入されるなど、アメリカの大学進学にとって大きな変革の年と言えるでしょう。今回は、今後予想されるアドミッションの動向についてまとめました。

①アチーブメント重視

アメリカの大学のアドミッションは、学生の成績だけでなく人物も評価して、学生の将来性を見極めます。人物評価においては、学生のアチーブメントを重視する傾向が見られます。きちんと目標を立てて、それに向かって努力できたか、またその目標を達成できたかという点が入学審査で問われます。
ここで言うアチーブメントは、必ずしもずば抜けた成績を収めるという意味ではありません。日々の学習や活動の中で、目標を持って行動する機会はいくらでもあります。例えば、「課外活動がどんなに忙しくても宿題は必ず期限内に終わらせる」と目標に掲げて、実現できれば立派なアチーブメントです。
目標を持って行動し、それを実現する、その積み重ねが学生の成長を促し、将来の活躍につながるとアドミッションは考えて、成功体験を評価するのです。

②双方向コミュニケーション

受験生とアドミッション担当者が連絡を取り合うのは、アプライ後だけではありません。学生がキャンパスツアーに参加したり、アドミッションに質問のメールを送ったりすれば、双方向のコミュニケーションが始まります。そして、この時点からアドミッションがスタートしていると考えられます。
学生との双方向のコミュニケーションは、アドミッションにでその価値が年々高まっています。アプリケーションの中身だけで受験生の将来性を見極めるのは難しいですが、時間をかけてコミュニケーションを取ることで、学生の成長の過程が把握でき、評価しやすくなります。
16年秋から導入が予定されているコアリション・アプリケーションでは、「ハイスクール・ポートフォリオ」というシステムを通じて双方向のコミュニケーションを促します。学生は9年生からアドミッションとやり取りができ、成長を評価してもらったり、適宜アドバイスを受けたりできるようになります。
この双方向コミュニケーションは、今後さらに広く深く活用されるようになるでしょう。

③テスト・オプショナルの拡大

SATのリニューアルで、テストの役割も変わると予想されます。SATは、もともとは学生の将来性を見極めるのに役立つテストとして入学審査に取り入れられてきましたが、16年3月から高校の教育課程に沿った内容で学生の到達度を測るテストに変わります。
解法テクニックの習得や難解な語彙の暗記といった、いわゆるSAT対策の必要性は少なくなり、高校できちんと学習していれば点数がとりやすくなるはずです。大学のアドミッションにとっても、学生が大学で学習するのに十分な基礎学力があるかを判断しやすくなるのは好都合です。
一方で、高校で十分な成績を収めている学生にとって、あえてテストの結果で示すべきものはあまりありません。アドミッションも、高校でしっかり学習できている学生のテストスコアに価値を見出さなくなります。
大学のアドミッションにおけるテストスコアの占める割合は現時点でも決して高くありませんが、今後は難関校を中心にテストスコアの提出を義務付けないテスト・オプショナルのアドミッションが増えることが予想されます。最良の進学準備は日々の学習の積み重ねですから、テスト対策よりもまずは高校で満足のいく成果を挙げることを優先しましょう。

④広がる学費格差

同じ大学でも学費は一人一人異なると言われるアメリカですが、生徒間の学費格差は年々拡大しており、その傾向が今後続くことは間違いありません。一部の裕福な大学を除き、アドミッションは限られたファイナンシャルエイド(FA)の予算を、欲しい学生をとるために極めて戦略的に活用しています。
大学の学費は高騰していますが、それもアドミッションの戦略です。優先度の高い学生には多額の奨学金を提示して入学を促します。一方で、その他大勢の学生からは高い学費を徴収し、授業料収入を増やします。
学費の値上がりは今後も続き、その分大学は評価の高い学生をより充実したFAで優遇することになるでしょう。従って、賢い進学のためには、単に合格できそうな大学を選ぶだけではなく、自分を高く評価してくれそうな大学を狙い定めてアプライすることが重要です。
 
(2016年1月16日号掲載)

(参考)2015年版入試動向と対策

アメリカの大学進学をとりまく環境は日々変化しています。受験生の増加や学費の高騰などの継続的な変化に加え、アドミッション・テストや入学審査方法にも大きな変化が予想されます。今回は、大学進学を目指す学生が知っておきたい最近の動向について話します。

受験者の増加と州外大学への進学

米国内の18歳の人口は増加傾向にあり、2020年には大学生数が今よりも200万人増えることが予測されています。中でも、人口増加の激しい南部や西部では受験者数の大幅増が見込まれ、受験生にとってさらに厳しい環境となります。
競争の激化に伴い、近年は州外の大学を受験する学生が増えています。特に西部は人口に対して大学数が非常に少ないため、教育の質や学費の面でより有利な条件で進学するためには、州外の大学も含めて自分に合う大学を幅広く探すことがポイントです。実際に、西部の州からマサチューセッツ州やペンシルベニア州など質の高い大学が多く集まる州に出願する学生は年々増えています。
アメリカの大学は入学審査で学生の将来性を評価するので、学業以外の取り組みや人間性も見られます。高校の成績が重要なのはもちろん、成績以外も評価しようという傾向は年々高まっているようです。
人物評価の方法として最も重要なのがエッセイ。学生がどんなことを考えながら生きてきたのか、将来どのような展望を持っているのかなど、大学はエッセイを通じて学生の人物像を読み取ろうとします。従って、受験生はエッセイを通じて自分の良い面をどう大学に伝えるかという戦略が重要です。

SATのリニューアルで変わるテスト対策

また、アドミッション・テストの役割も見直されています。SATは、学生の将来性を見極めるのに役立つテストだと数多くの大学が入試に取り入れてきましたが、近年はその価値が疑問視されるようになりました。ここ数年は大学のSAT離れが進み、難関校と呼ばれる総合大学やリベラルアーツ・カレッジでもSATの堤出を義務付けない大学が増えています。
 
現在、学生の将来性は前述したようにエッセイなどで見極め、テストでは小中高の教育過程の中で身に付けた学力を評価すべきという考えが主流。これに伴い、近年はSATよりも高校の授業課程に沿ったACTの人気が高まり、受験者数もSATを上回っています。
SATは16年3月から新テストに生まれ変わる予定です。すでにサンプル問題も発表され、より高校の教育課程に沿った内容になることが明確になりました。現時点では正確な判断は難しいですが、解法テクニックの習得や難解な語彙の暗記といった、いわゆるSAT対策の必要性は少なくなるでしょう。高校できちんと学習することが結果的にテスト対策になることは、受験生にとって喜ばしいことです。今後はSATやACT以外にも入試の選択肢が増えますが、「学力評価は高校の成績から」という考え方は変わらないでしょう。

学費格差の拡大と奨学金制度

最近、私立大学の受験者数が急増しています。その原因に、州立大学の魅力の低下が挙げられます。州立大学は幅広い分野の教育が格安で受けられることが利点ですが、州の財政難で学費は高騰し、また一部の大学では教育の質の低下が深刻化するなど、州立大学の教育に不安を感じる学生が増えていると考えられます。
私立大学には教育の質や学生支援などで大きな利点がありますが、学費の高さを理由に敬遠する人もいます。実際に、大学の学費はインフレ率を大きく上回る割合で上昇中です。年間の学費が6万ドルを超える大学も珍しくなくなり、私立大学への進学は現実的ではないと思われるかもしれません。
しかし、私立大学は州立と比べてはるかに奨学金制度が充実しており、額面通りの学費を払っている学生は決して多くはありません。奨学金などのファイナンシャルエイド(FA)を獲得する学生は多く、自分に合った大学を選べれば、州立より質の高い教育を、州立以下の学費で受けることは十分可能です。
学費の値上がりは今後も続き、その分大学は評価の高い学生をより充実したFAで優遇することになります。従って、学生間の学費格差は年々拡大する傾向にあります。受験生は自分の希望校を受けるだけでなく、自分を高評価してくれそうな大学を見極めることもますます重要になるでしょう。
 
(2015年1月16日号掲載)

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