アメリカの大学ランキングはこう作られる!

アメリカの4年制大学は全米で約2500校、その中から実際に受験する大学を選ぶのは大変な作業です。そこで、効率良く大学を絞り込む方法として、大学ランキングが広く利用されています。特に保護者は子供に受けさせる大学を選ぶ上で知名度にこだわる傾向が強く、アメリカでは大学ランキングの影響力は極めて大きいと言われています。このアメリカの大学ランキングがどのようにして作られるのかをご紹介します。

参考:アメリカ大学ランキング 2016(出典:『America’s Top Colleges』 Forbes)

2016
ランキング
大学名 場所 Common
Application
Coalition
Application
1 Stanford University Stanford, CA
2 Williams College Williamstown, MA
3 Princeton University Princeton, NJ
4 Harvard University Cambridge, MA
5 MIT Cambridge, MA X X
6 Yale University New Haven, CT
7 Pomona College Claremont, CA
8 Brown University Providence, RI
9 Wesleyan University Middletown, CT
10 Swarthmore College Swarthmore, PA
11 University of Pennsylvania Philadelphia, PA
12 Amherst College Amherst, MA
13 University of Notre Dame Notre Dame, IN
14 U.S.Military Academy West Point, NY X X
15 Northwestern University Evanston, IL
16 Columbia University New York, NY
17 Dartmouth College Hanover, NH
18 Tufts University Medford, MA
19 Bowdoin College Brunswick, ME
20 University of Chicago Chicago, IL

 

アメリカの大学にとって、学生は巨額の授業料収入をもたらす顧客であり、なかでも優秀な学生は大学に対して長期的な付加価値を生み出す貴重な存在です。従って、学生集めは大学にとって重要なマーケティング活動であり、なかでもランキング対策は各大学にとって最優先課題です。ランキングが上がれば知名度が上がり、優秀な学生を獲得しやすくなるので、大学は少しでもランキングを上げようと策を練っています。

順位を上げるための大学側の戦略

では、大学の順位はどのように決められるのでしょうか。アメリカの大学ランキングは、大学から提出されたデータや独自に収集したデータに重み付けをして数値化したものから作られます。
 
例えば、『US News&World』のアメリカ大学ランキングは、学生の満足度や卒業率、ファイナンシャル・エイドなど、数多くの指標を基に作られています。大学はそれぞれの指標ごとに評価を高める努力をしていますが、この中で大学が比較的操作しやすいのが、「合格率」「入学率」「テストスコア」の3つです。この3つの指標で評価を高めるために、アメリカの各大学は戦略を立てて実行しています。

戦略1・「合格率」を下げる

合格率は、受験者数に対する合格者数の割合です。低い合格率は難関校の証であり、ランキングに影響します。合格率を下げるのに手っ取り早い方法は、受験者数を増やすことです。そこで、アメリカの大学はさまざまな手法で学生を呼び込みます。例えば、特別に選ばれた学生のみに連絡をしたかのように装った手紙やメールを送り、学生の興味を引く方法などはよく行われています。大学にとっては合格の見込みがまったくない学生でも、受験してもらえれば母数を増やすのに役立ちます。そのため、どの大学のアドミッションも、「受験者数を増やす」ことを最重要課題として取り組んでいます。
 
アプリケーションのハードルを下げるのも効果的な作戦です。他校と共通で使用できるコモン・アプリケーションの採用や、「受験料今だけ無料キャンペーン」を実施し、受験しやすくする工夫をしています。
 
コモン・アプリケーションは、有名私立大学にアプライするためのシステムとして知られていますが、近年は他州からのアプリケーションを増やしたいアメリカの州立大学で採用される事例が増えており、今では国内で70校以上の有名州立大学に採用されています。また、コモン・アプリケーションよりも簡単に仕上げられる簡易アプリケーションを独自に用意している大学もあります。

戦略2・「入学率」を上げる

入学率(「歩留まり」と呼ばれる)は、合格通知を送った学生のうち、実際に進学した学生の割合です。入学率が高い大学は、「学生に人気のある大学」を意味するので、大学ランキングに影響します。従って、学生にとって魅力的な大学になれば入学率が上がるわけですが、一朝一夕にできることではありません。それよりも、自分の大学を本命視している学生に、優先的に合格通知を送る方が、入学率を高める上で即効性があります。そのための方法がウェイトリストの活用です。
 
ウェイトリストとは、欠員補充のための”補欠学生リスト”です。学生は複数の大学を受験するため、大学は定員よりも多くの学生に合格通知を送ります。合格者中、何人が入学するかを正確に予想することは難しいため、合格発表後も定員に達するまでウェイトリストから繰り上げ合格させます。
 
ウェイトリストを積極的に活用する大学が近年よく行っている入学率を上げる方法があります。まず、ボーダーライン上の学生を大量にウェイトリストに載せて、その学生に対しアドミッションを継続するかどうかの意思確認をします。そして、継続審査を希望した学生の中から繰り上げ合格者を選ぶことで、進学の意思のない学生が外しやすく、その結果入学率を高めることができます。
 
次に、「テストスコア」の評価を高める戦略についてご紹介します。
 
前述では、大学ランキングを上げるためのアメリカの各大学の取り組みとして、「合格率」を下げる、「入学率」を上げる、2つの戦略についてお話ししました。今回は、「テストスコア」の評価を高く見せる戦略をご紹介します。

戦略3・スコアを高く見せる

アメリカの大学ランキングには、実際に進学した学生のSATやACTの点数が影響します。それならば、テストスコアの高い学生を選んで合格させれば良いと思われるかもしれませんが、そう簡単ではありません。大学のアドミッションにおいて、テストスコアはあくまでも評価項目の一つに過ぎず、審査では、高校時代の成績やエッセイ等による人物評価がより重要視されます。つまりアメリカの大学は、テストスコアを重視した審査は行わないけれど、結果的に入学する学生のテストスコアは高いものであってほしいのです。
 
そのために編み出された手法の一つが、スーパースコアリングです。これは、過去に受けた複数のテストの点数の中から各教科の最高点を選び、その合計を自分のテストスコアとすることです。テストを複数回受けると、今回のテストでは読解の点数が良かったけど、数学は前回の方が良かった、ということはよくあります。このような場合に、スーパースコアリングをすることで、テストの合計点をより高く見せることができます。学生は、アプリケーションを魅力的に見せることができ、大学は、入学した学生のスコアを高く見せることができる、ありがたいシステムなのです。学生と大学の双方にメリットがあるため、スーパースコアリングを採用する大学はアメリカで急速に増えています。
 
とはいえ、スーパースコアリングで上げられる点数はさほど大きなものではなく、また全ての大学が採用すると優位性はなくなります。では、他にテストスコアを高く見せる方法はないのでしょうか。
 
最も簡単な方法は、テストスコアを水増しして発表をすることです。これは、真剣に大学選びをしている学生や保護者を欺く行為であり、許しがたいことですが、残念ながら実際に行われています。各大学から発表されているテストスコアは、あくまでも大学による自己申告です。ですから、その数字が真実かどうかを客観的に評価する方法はありません。昨年は、Claremont Mckenna CollegeやEmory Universityなどで内部告発等によりテストスコアの虚偽申告が明らかになりました。ですが、表に出るのは氷山の一角だと思われます。

そもそも、誰のためのアメリカ大学ランキングなのか

残念ながら、アメリカの大学ランキング作成者は、学生に役立つ情報を提供するためにランキングを作っているわけではありません。学生にとって価値のある大学は、その学生の学習スタイルやニーズに合う大学です。誰にでも合うオールマイティーな大学は存在しませんから、各大学がいろいろなテクニックを駆使したランキングが、受験生にとって無意味だということは、作成者自身がよく知っています。
 
では、『US News&World』や『Forbes』は、なぜ毎年ランキングを発表するのでしょうか。それは、大勢の学生や保護者がランキングを基に大学選びをしているなど、社会的な影響力が大きいからです。そして、その社会的影響力をマーケティングに利用し、順位の変動に一喜一憂している大学の存在がビジネスを作り上げています。
 
アメリカの大学ランキングは、大学から提出されたデータや独自に収集したデータに重み付けして数値化したものから作られます。しかし、毎年同じ方法でランキングを作るのでは、さほど大きな順位変動は生まれません。そこで、ランキング作成者は、データの重み付けを変更したり、評価の指標を変更して、話題性のあるドラマが生まれるように仕組みます。
 
なぜそんなことをするのかと言うと、ランキング作成者にとって最も大切なことは、毎年ランキングが変動してドラマが生まれることだからです。そして、それがその雑誌の売り上げにも影響するのです。

自分に合ったアメリカ大学ランキングを作る

受験生は、ランキング作成者やアドミッション担当者の思惑によって選ばれた大学ランキングに惑わされないようにしましょう。まずは、環境、学習スタイル、学びたいことなどを指標に大学を見比べ、自分にとって良い大学を探し出します。それを自分でランク付けしてランキングを作成すれば、より自分に合った大学を選ぶ手助けとなるでしょう。
 
(2013年10月16日,11月16日号掲載)

大学ランキングの裏側に潜む、アメリカの大学の意図

秋になると、大学への出願を控えた高校生は、アメリカの大学から次のようなプロモーションを受け取ることがあります。
「おめでとうございます。あなたは簡易アプリケーションで受験できる学生に選ばれました。通常のアプリケーションにあるエッセイを堤出する必要はなく、また今すぐ出願すれば、特別に受験料を無料にします。」
 
学生にしてみれば、「大学は優秀な学生に出願してもらうために学生を評価しており、自分はそれに選ばれた」と考え喜ぶものです。しかし、アメリカの大学がこれらの通知を出す本当の理由は、ほかにあります。今回は、この手紙の背景にある大学ランキングについてお話しします。

簡易アプリケーションは競争率アップのため?

名門私立大学でアドミッションに関わってきた専門家の話を前回ご紹介しましたが、その方がアメリカの大学ランキングについてこう話していました。
  
「大学ランキングは受験生にとって価値はありませんが、大学にとってはマーケティング戦略上、極めて重要です。ですから各校とも、ランキングを上げるためにさまざまなことに取り組んでいます。」
 
つまり、ランキングが上がれば知名度が上がり、優秀な学生を獲得しやすくなりますので、アメリカの大学はランキング向上のための努力をしているわけです。ランキングは、大学から堤出されたデータや独自に収集したデータに重み付けをして数値化したものから作られます。最も知られているのは『US News & World』のアメリカ大学ランキングですが、ここでは学生の満足度や卒業率など、7つの項目の評価を基に作られています。
  
この中で、アドミッションが特に注目しているのが難易度(Selectivity)です。ランキングへの影響が大きいことが理由のひとつですが、アドミッションが操作しやすいことも理由です。受験者数が増えたり合格者のGPAやSATの平均点が高くなれば、難易度が高まったと評価されます。
  
最初に述べた大学からのプロモーションは、実は難易度を上げるための手段なのです。受験者数が増えれば、合格率が下がり難易度が上がるため、大学はアプリケーションのハードルを下げてなるべく多くの学生が出願できるようにします。プロモーションでは、あたかも選ばれた学生のみに連絡をしたように書かれていますが、必ずしもそうとは限りません。その大学に入る学力がない学生でも、受験してくれれば母数を増やすのに役立ちますし、難関大学を目指す学生が受験してくれれば合格者の平均GPAやテストスコアを高めるのに役立ちます。結果、その大学の難易度向上に貢献してくれます。
  
こういった難易度の操作は一例であり、各大学ともランキングを高めるためにさまざまな工夫を凝らし、莫大な費用をつぎ込んでいるのです。以前、アメリカの大学は入学率(歩留まり)を高めるためにウェイトリストを積極活用しているという話をしましたが、この入学率を高めるのもランキングを操作するための手段のひとつなのです。
 
このように大学ランキングの裏側を知れば、ランキング自体が受験生に意味のないものであることは明白です。しかし、出願する大学を選ぶ際にランキングに左右される学生が非常に多いことも事実。大学側も、ランキングが学生に価値がないことを知りながら、他校との競争上やむを得ずランキングゲームを続けているのです。

自分だけのアメリカ大学ランキングを作る

では、受験生はどう対応をすべきなのでしょうか。まず取り組むことは、"自分の大学ランキングを作る"ことです。雑誌のアメリカ大学ランキングは、所詮他人が作ったもの。自分にとって大切なのは、アドミッション担当者の操作によって『US News & World』で選ばれた大学ではなく、自分自身で評価して選んだアメリカの大学です。自分にベストフィットの大学を探し、その中で自分だけのランキングを作りましょう。
  
もう一つ重要な取り組みは、簡易アプリケーションの誘いに乗らないことです。アドミッション・入学試験の目的は、自分をしっかり評価してもらうこと。そのためには、簡易アプリケーションではなく通常のアプリケーションを使い、エッセイをきちんと書いて評価してもらいましょう。そうすれば、単に母数を増やすだけのアプリケーションではなく、その大学にとって大切な受験生のアプリケーションとしてしっかり評価してもらえるはずです。なお、通常のアプリケーションを使っても、受験料無料等の他のプロモーションはそのまま適用されます。
  
(2012年10月16日号掲載)

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