愛知県の帰国子女受入校の状況は?

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Q. 愛知県の帰国子女受入校の情報を、海外で聞くことが少ないのは、なぜ?

 

A. 帰国生は多いが、学校が少ない。ただ、帰国子女教育に変化の兆し。

松本輝彦(INFOE代表)

帰国子女数が近畿より多い 東海・中部

下の表は、2008年度に世界中から帰国した児童生徒数を地域ごとに示したものです。

帰国児童生徒数:地域別(2008年度)

①関東が全国の約6割と圧倒的に多い
②東海・中部への帰 国数が近畿よりも多い
③他の 地域は3%以下と極めて少ない
ことがはっきりわかります。

ここで引用した調査結果で、都道府県別の帰国数を見てみると、東京・神奈川に次いで愛知県が多く、愛知の数は兵庫・大阪・京都の合計とほぼ同じになっています。

「東海・中部への帰国数が、近畿より多い」という傾向は、近年の特徴です。

学校のチョイスがない

ここで紹介したデータでは、帰国児童生徒数は東海・中部地区の方が近畿より約4割多くなっています。しかし、別の資料によると、帰国生受入校(小・中・高等)の数は、東海・中部地区の82校に対して近畿地区で129校で、逆に近畿の方が5割多くなっています。東海・中部地区は、近畿より帰国児童生徒数が多いのに、帰国生受入校が少ないのです。

さらに、別のデータで愛知県の受入校の帰国生徒数を調べてみると、愛知県の帰国生受入中学校(全10校)の70%が南山国際中学校に、高校(18校)の65%が南山国際高校に在籍しています。

この受入校の数の少なさと、南山国際中学・高校への集中が、愛知県での帰国子女受け入れ状況の現実で、「愛知県の帰国受入校のチョイスが少ない」と言われる理由です。

変わる帰国教育のニーズ

しかし、その愛知県の帰国子女教育事情も、確実に変わり始めています。

その例の1つが、来年1月に海外子女教育振興財団が愛知県豊田市に設置する「外国語保持教室」です。この新設は、愛知県三河地区に帰国してきた保護者の「帰国後も英語での教育を続けさせたい」というニーズを反映したものです。30年以上もの関東・関西での「外国語保持教室」での教育へのニーズが、数年前の名古屋教室と今回の豊田教室の開設という形で、愛知県にも広がってきている証拠です。

また、この11月に愛知県の海陽中等教育学校と名古屋インターナショナル・スクールが参加して、東海・中部からの進出企業の多いアメリカの都市で「教育フェア」を開きました。全寮制の中高6年一貫校とインター校という、一般的な中学・高校とは異なる2校の参加でしたが、会場には多くの保護者が詰めかけて、「新しい帰国教育のチョイス」を真剣に探っておられました。

このように、愛知県、東海・中部地区での帰国後の教育のニーズの変化の兆しが、はっきりと現れてきています。

 ◇  ◇  ◇  ◇

これまで、「いつでも、誰でも入学できる」という使命を与えられてきた南山国際中学・高校の頑張りは素晴らしいと思います。しかし、その結果、「受入校間の市場競争がなく」、結果的に「消費者として保護者の学校選択のチョイスが限られている」のが愛知県の現状です。

私の願いは、「帰国児童生徒の教育の選択肢と学校選択のチョイスをより広げる」ことです。帰国した子供たちが、海外で得た多様な経験や学力を自由に伸ばすことができるからです。

そのためにも、来たる11年は、愛知県や地方の帰国教育事情を積極的に、皆様に伝えていきたいと思います。10年のご愛読に心から感謝いたします。

出典:
・文部科学省『学校基本調査』
・2010年海外子女教育振興財団『帰国子女のための学校便覧2010』

(2010年12月16日掲載)

Q. 帰国受入校の選び方は?

愛知県(名古屋)に帰国します。帰国受入校の状況は?

A. 受入校が限られています。学校選びを慎重に!

松本輝彦(INFOE代表)

世界的な自動車販売数激減の影響による北米での生産削減で、日系自動車関連企業の駐在員家庭の北米から日本、特に愛知・名古屋地区への児童生徒の帰国が増えることが予想されます。先日、愛知県の帰国生受入校3校を訪問し、実情を聞いてきましたので、まとめてみます。

南山国際中学・高校

「2、3年前から漸増傾向が続いているが、この1年の急増は見られない」との帰国生受入担当者の言葉でした。

30年ほど前に「帰国子女の受け入れを主たる目的」として創立されたこの学校は、開校時から入学希望者は誰でもいつでも受け入れる「随時・全員受け入れ」をポリシーにしてきました。

「現在も全員受け入れていますか?」との質問には、「入学・編入時期や学年によっては、入学ができない生徒も出てきています」との回答でした。

また、「通学バスの定員が一杯のルートがあり、そのルートを希望する生徒が引き受けられない」というお話には、個人的に驚きました。

しかし、学校が名古屋の中心地から1時間以上かかり、公共交通の不便な地区にあるという特別な事情だと、私自身学校訪問をしてみて納得できました。

名古屋国際中学校・高等学校

名古屋市内の交通の極めて便利な地域にあるこの学校は、名古屋商科大学の付属校です。ほかの大学への進学もできる幅広い学力を身に付けさせる教育を目指しています。また、その学校名が示すように国際教育に力を入れており、外国の学校との交流や帰国子女の受け入れなどに積極的に取り組んでいます。

特徴のひとつは、アメリカの現地校での教育の長所を積極的にカリキュラムに取り入れていることです。そのため、アメリカ人の学校長・英語ネイティブ・日本人の教員が協力して、特徴ある教育を目指しているのが印象的でした。

名古屋インターナショナル・スクール

名古屋地区で唯一のインターナショナル・スクールとして1960年代に設立されましたが、10年ほど前に、自動車関連企業の集中する名古屋市北部の地域に校舎を移しました。現在は、この地域の企業で働く外国人の子弟を中心に、Kinderから12年生までの300人以上の児童生徒が学んでいます。

主要な授業言語は英語ですので、ネイティブに近い英語力を持った子供の入学を前提としていますが、英語力が不十分な人のためのESLクラスも提供しています。

卒業生はアメリカの高校の卒業資格に加えて、国際バカロレア(IB)の卒業資格(DP)を取得することが可能です。

愛知・名古屋地区の現状

このコラムでも紹介し、この7月に開かれた「帰国生のための学校説明会・相談会」(主催・海外子女教育振興財団)の名古屋会場のブース参加校50校のうち、愛知・名古屋地区の学校は中学4校、高校9校(公立6校・私立3校)、大学1校の計14校に過ぎず、他の参加校は関東・関西の学校が中心です。

この数字からもわかるように、愛知・名古屋地区の帰国受入状況の関東・関西に比べての特徴である、①公立志向、②少ない受入校、がはっきりしています。

さらに、ここでは具体的なデータを示してありませんが、「帰国生の南山国際への集中」も大きな特徴です。

南山国際は「全員受け入れ」るために、最も多くの帰国生が集まり、公立中学のように通学可能な地域の帰国生を受け入れています。その役割・特徴のために、学力レベルに差のある多くの生徒の指導を強いられています。

この南山国際1校への帰国生の集中が、帰国子女受入校同士の競争をなくしています。そのため、子供・保護者にとっての帰国後の教育の多様なチョイスが極めて少なくなっていると考えられます。この現状は、子供・保護者のためだけではなく、南山国際のためにも、さらに愛知・名古屋地区の教育の多様性のためにも望ましくありません。

そんな思いから、3つの学校を紹介しました。

各校の情報は、海外子女教育振興財団のホームページ(www.joes.or.jp)でどうぞ。

(2009年8月1日号掲載)

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