日本のインターナショナルスクール(インター校)って?

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Q. インターナショナルスクールの現状について教えてください

6年生の息子を持つ母親です。そろそろ帰国する時期なのですが、日本のどこに帰るか、まだ決まっていません。日本でも英語力を維持したいので、インターナショナルスクールに通わせようと思っていますが、日本のインターナショナルスクールの現状についてお聞かせください。

A. 帰日本の法律及ばず、目的・内容も千差万別

松本輝彦(INFOE代表)

インターの定義は3通り

「インターナショナルスクール」(以下、インター)と一般に呼ばれる学校には、様々なタイプがあります。「英語力を維持したい」ということなので、「英語で教育する学校」という意味で使われていると考えてお答えします。以下の3通りがあります。

①英語を第1言語とする国が日本に住む自国民のために設立した、アメリカンスクールやカナディアンスクールなどの学校。当然、英語を使用し、それぞれの国の公立学校のカリキュラムに準じた教育を行っています。アメリカ人の外交官やビジネスマンの子弟を教育するのが目的で、数も限られているため、帰国子女が入学できる学校は非常に限られています。

②欧米の学校や大学によって日本に作られた、日本人の子供を英語で教育する学校。数は多くありませんが、アメリカやカナダの高校の日本校として、それぞれの母国のカリキュラムに従ってハイスクールの卒業資格を発行しています。欧米の大学へ進学希望の子供たちが学んでいます。

③は②と同じように日本人の子供を教育するために作られた学校ですが、日本の学校や団体によって設立された学校です。一般に「和製インター」と呼ばれています。「子供に英語を身に付けさせたい」「日本の教育ではなく、英語での教育を受けさせたい」と希望する親の増加に対応するため作られたもので、保育所や幼稚園から高校レベルまで、様々な種類があります。

インターは「各種学校」扱い

厳密に言うと、「学校教育法」の第1条に定められた学校のみが、義務教育や大学受験資格を満たす学校(1条校)です。インターは「各種学校」とみなされ、そこに通う子供は法律上、不就学児童生徒となります。インターに通う小学生が公立小学校に編入しようとした際、インターで学んだ年数は教育を受けていないと教育委員会に判断されて、インターへ入学する以前の学年に落とされて編入を許可される例もあります。

また、つい最近まで、インターの高校卒業生は日本の大学受験の資格を取得したものとみなされず、ほとんどの大学で受験のチャンスすら与えられませんでした。この状況はここ2、3年で急速に改善されていますが、日本の高校卒業生と同様に扱われるには、未だ至っていません。

また、その学校の質や評価が問題になります。日本の法律は及びませんので、文部科学省などによる学校の評価はありません。これに代わるものとして欧米の学校評価機関の認可(Accreditation)があります。代表的なものは、アメリカの評価機関であるWASC(Western Association of Schools and Colleges)ですが、これらの認可を得ているかどうかを調べる必要があります。

日本の正規学校(1条校)でも、英語だけではなく、英語による主要科目の授業を提供する学校が増えてきました。英語教育の広がりと多様化から、様々なタイプの指導方法があります。

日本の学校での英語による教育

英語の授業数を増やし、ネイティブの先生が教える学校は非常にポピュラーです。音楽・体育・美術などをネイティブの先生が教える学校が、公立学校でも見られるようになってきました。主要教科の一部をネイティブの先生が教える学校(例:立命館宇治中学/高校・京都府宇治市)や、日本で唯一、国語以外のすべての教科を英語で教える学校(加藤学園暁秀中学/高校・静岡県沼津市)も現れました。

日本の学校とインターナショナルスクールが同じ敷地の中に併設されていて、生徒がどちらの授業も受けることができるユニークな学校(千里国際学園・大阪府箕面市)や、帰国子女を主な対象として、希望者にアメリカの大学の授業科目を提供する学校(啓明学園・東京都昭島市)も出てきました。

インターナショナルスクールを選択する場合は、その学校での教育が、子供の将来に大きな影響を及ぼすことをしっかり理解する必要があります。また、日本の学校でも英語による教育を受けられる機会が広がってきていることにも目を向けてください。

最後に、子供をバイリンガルに育てたいなら、「日本では日本語による教育を中心にする」ことも、よく考えてみてください。

(2004年10月16日号掲載)

Q. 日本のインター校その種類と問題点は?

帰国後、子供をインターナショナルスクールに通わせたいと思っています。日本のインターナショナルスクールの種類と問題点を教えてください。

 

A. 日本での進学の可否に注意。英語教育の日本の学校にも注目を

松本輝彦(INFOE代表)

日本ではインターナショナル・スクール(以下、インター校)への関心が、非常に高くなっています。在日外国人、国際結婚で生まれた子供、帰国子女に加えて、外国語での教育を望む日本人保護者の増加が、この人気の大きな理由です。

インターナショナルスクールの現況

一般的にインター校と呼ばれる学校は、保育園から大学院まで、日本に120校以上もあります。それらの学校は3つのタイプに大きく分けられます。

① 外国の教育をする学校
外国の政府や団体が、自国の教育制度やカリキュラムに従った教育を行う学校です。海外の日本人学校と似たような学校です。この種の学校は、日本駐在の外交官やビジネスマンの子弟を教育することを目的に作られており、その国の平均的なカリキュラムを採用し、原則的に母国の大学へ進学する指導をしています。日本では数校しかありません。

② 国際的な教育をする学校
外国の個人や団体が設立し、その国の特性を活かしながら、より国際的な視野に立った教育を目指す学校です。日本人も含めたさまざまな国籍の子供を受け入れて、英語で授業を行い、世界的に認定された卒業資格(例:インターナショナル・バカロレア)の取得や、宗教を背景とした教育カリキュラムを採用している学校が多く見られます。高校までの課程を持った学校の大半がこのタイプです。

③ 日本人の英語教育のための学校
日本の学校や団体によって設立された、日本人の子供を英語で教育する、「和製インター」と呼ばれる学校です。「英語での教育を希望する保護者の急増に応えるために、新しく作られた学校です。早期英語教育を目指した保育所・幼稚園が、日本全国で100校にも届く勢いで、近年どんどん作られています。

学校だが学校でない

①②のタイプで、伝統や実績のある学校への日本人の入学や編入は、非常に困難です。本来、これらの学校は日本人の子供たちを対象にしていないため、日本人の児童・生徒数を制限している学校がほとんどです。そのため、現実的に帰国子女が入学できる学校、また学習レベルの高い学校は非常に限られています。

また厳密に言うと、学校教育法第1条に定められた「学校」(いわゆる1条校)のみが、義務教育や大学受験資格を満たす学校です。インター校は各種学校とみなされ、そこに通う子供は法律上、不就学児童生徒となります。高校や大学への進学にあたり、受験資格が問題になる場合もあります。

プリスクール(1歳半から5歳まで)やキンダーガーテン(幼稚園・5~6歳)などは法律上無認可の教育施設が多く、さまざまなトラブルが報告されていますので、特に注意が必要です。さらに、帰国後の英語力の伸長やアメリカ的な教育を望む場合は、誰がどんな指導をしているのかをよく調べることが大切です。

大学に進学できない?

近年、文部科学省はインター校の卒業生に、日本の大学受験の資格を認める方向に動いてきています。しかし、インター校は文部科学省の認可で作られた学校ではないので、教育の質を保障することはできません。そのため、欧米の学校評価機関の認可(Accreditation)を受けた学校だけに大学受験資格を認めているのです。高校のカリキュラムを持ったインター校は日本に40校ほどありますが、卒業と同時に大学受験資格が与えられる英語での学校は17校しかないのです。学校選択にあたり、認可の有無の詳細な調査が必要です。

日本のバイリンガル校

英語教育の広がりと学校教育の多様化から、日本の学校でも英語で学べる学校が出てきました。

例えば、主要教科の一部をネイティブの先生が教える学校、国語以外のすべての教科を英語で教える学校、帰国子女にアメリカの大学の授業を提供する学校、インター校が併設されていて、どちらの授業も受けられるユニークな学校などです。

インター校を選択する場合は、子供の将来に大きな影響を及ぼすことをしっかり理解する必要があります。また、日本の学校でも、英語による教育を受けられる機会が広がってきていることにも目を向けてください。

最後に、もしも本当に子供をバイリンガルに育てたいなら、「日本では日本語による教育を中心にすること」の重要性を、よくお考えください。

(2006年9月16日号掲載)

Q. 永住予定が、突然日本帰国に。インター校での英語での教育は?

 

A. インター校で、帰国子女向けの新しいプログラムが広がる。

松本輝彦(INFOE代表)

永住者の帰国?

北米全域で、5年以上の長期滞在や永住予定の子供たちが増えてきています。その子供たちは、当然、日本語よりも、現地校での英語での教育に力を入れています。しかし、その子供たちの中に、突然日本へ帰国せざるを得ないケースが目立つようになりました。

日本語より英語の方が言語レベルが高く、英語での学習の方が楽な子供たちです。このような子供たちの保護者に、「日本帰国後の教育も英語で」と希望する割合が高くなっています。そのチョイスの1つとして、インターナショナルスクール(インター校)での教育を考えてみましょう。

例:名古屋インター

昨年11月、愛知県からの進出企業の多い中西部の都市で、「愛知県受入校の教育フェア」を実施しました。そのフェアに、名古屋インターナショナルスクール(NIS、名古屋国際学園)のエリック・オルソン・キクチさんが参加され、お話を聞く機会がありました。

1964年創立の名古屋インターは、米国西部地域私立学校大学協会(WASC)と国際バカロレア機構(IBO)の正式認可を受けた、中部地方で唯一のインター校です。卒業すれば、アメリカのハイスクールの卒業資格が得られ、さらに国際バカロレア資格を取得するチャンスもあります。3~17歳の26カ国の出身国籍を持つ児童生徒約330名が学んでいます。

学校では英語

日本にあるほとんどのインター校は、英語での授業が中心です。名古屋インターでも「授業はすべて英語。保護者との連絡も英語」なので、「『アメリカでの学校教育を、日本帰国後も続けさせたい』と希望する保護者と生徒に入学してほしい」とのエリックさんのお話でした。

しかし、日本語や外国語だけで育った日本在住の子供たちのためESLクラスもあるとのことなので、アメリカの滞在年数の短い子供が入学できる可能性もあるようです。

家庭では日本語

「日本語での教育は、家庭で保護者が責任を持つ」というエリックさんの言葉もありました。バイリンガル教育ではなく、「英語での教育」のためのインター校としては当然です。

しかし、家庭で英語や外国語を話している児童生徒のために、名古屋インターでは3つのレベルの「日本語」クラスを設けています。その授業内容は、北米の補習校で勉強してきた子供にとっては簡単なようです。海外から帰国した在校生の中には、「塾」などで子供のレベルに応じた日本語の勉強を続けて、バイリンガルに育ったケースもあるとのこと。また、IBプログラムのDiplomaで「日本語」を選択すると、日本国内の高校生にとっても大変な内容の資格試験を課されますが、高いレベルの日本語での学習をする機会となります。

世界の大学へ

最近の名古屋インターの卒業生は、アメリカ、カナダ、日本の大学へ進学しています。

名古屋インターで、アメリカのハイスクール、またはIBの卒業資格を取得すれば、英語圏の大学への進学は問題ありません。しかし、これらの資格が取得できないインター校も日本にはありますので、学校選びには注意が必要です。

一方、インター校を卒業しても日本の高校卒業資格は得られませんので、国内生と同様に日本の大学受験はできません。しかし、日本の一部の大学・学部では、「国内の高校卒業生と同等の学力がある」とみなして、さまざまな試験を受験できるようになってきています。

また、名古屋大学では、外国の高校とインター校の卒業生だけのための理科系の特別プログラムを新しく開講し、名古屋インターで説明会を開いたとのことです。日本政府の「留学生30万人計画」推進のために、主要な大学で同様なプログラムの新設が増えています。

◇  ◇  ◇  ◇
アメリカの現地校と同様に、日本帰国後にインター校でも「英語は学校で、日本語は家庭で」の方法が、バイリンガル教育には必要です。そして、英語での学習で身に付いた学力で日本や世界の大学で学べる機会が急激に増えてきています。

インター校は、英語での学習に力を入れてきたお子さんの日本帰国後の学校選びのチョイスになりつつあります。

(2011年2月16日掲載)

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