どうすればいいの? ”帰国後”のわが子にぴったりの私立中学・高校の見つけ方

ライトハウス電子版アプリ、始めました

私立中学・高校の大きな特色の一つは、「生徒一人一人を大切にしてくれる」ことです。つまり、”個性”を認めること。そのことこそが、子どもたちの未来が開かれる礎となっています。創立以来の独自の教育理念(育てたい人間像)を大切にしながら、日々改革を行っている私学。校風や教育内容の面でぜひ「わが子に合った学校」を選んでください。わが子が輝くことができる私学が必ずあるはずです。

森上展安先生プロフィール
もりがみ・のりやす
◎学習塾経営を経て、1988 年森上教育研究所を設立。中学受験と私学中等教育に関するリサーチ、エッセイ、講演、コンサルティングなどを行う。保護者を対象にほぼ毎週著名講師による「わが子が伸びる親の『技』研究会」(oya-skill.com)を主宰。

【企画協力】森上教育研究所
【制作】(株)エデュケーショナルネットワーク『私立中高 進学通信』編集部
(ライトハウス 2018年 秋冬の増刊号掲載)

 
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☞POINT
・偏差値や大学進学実績は分かりやすい指標だが、それだけでは学校の”本当の姿”は分からない。
・できるだけ実際に学校へ足を運ぶことが大切。
・随時学校見学を実施している学校が多く、親身に対応してくれます。

 

思い込みや昔のイメージにとらわれないようにしよう

学校探しを始める時に、気を付けなければならないのが思い込みや、保護者が中学生・高校生だった頃のイメージ。私立中学・高校は、日々進化していることに注目しましょう。

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意外に知らない子どものこと。「わが子にとって」が重要

「子どものことは保護者が一番よく知っている」ことは事実でしょう。ただ、意外に知らないことも多いはず。親子で子どもの将来の夢や希望について話し合えば、どのような学校を選べばいいかが分かってきます。そうすることで、受験生本人はもちろん、家族の皆さんが納得できる学校を選べます。家族みんなが納得して決めた学校だからこそ、その学校に合格するために、受験生はがんばれます。家族の皆さんも十分なサポートができ、それが何よりも子どもの励みになります。
 
また、「保護者の価値観は絶対」と思ってしまうケースもあり、例えば「良い学校は偏差値の高い学校で、そこへ入学して偏差値の高い大学へ進み、有名企業に入社するのが人生の幸せ」や「親戚はみな、〇〇大学の付属校から〇〇大学へ進学しているから、□□ちゃんもね」といった具合です。あくまでも「わが子にとってどうなのか」を大切にし、家族が納得したうえで志望校を決めていくことが大切です。

多くの私学が「改革」を実施

一方、固定観念は容易に崩せるものではないかもしれません。ですが、「気に入った(入っていた)学校」のみに興味を向け、「他の学校は考えない」という事態は避けましょう。気に入っている理由は何なのでしょうか。有名だから? マスコミが注目しているから? もちろん、それが悪いわけではありませんが、「わが子にとってどうなのか」を考えてほしいのです。事実、昔のイメージとはまったく異なる学校が少なくありません。先生の熱意、教育内容、大学進学実績などが進化しています。そのため、世間の評価、期待値も変わってきています。実際に足を運んで現状を知ることが重要です。

入試の変化は帰国生に追い風

ところで、現在の高校1年生が大学受験に挑む「2020年度大学入試改革」にも注目。①「知識・技能」、②「思考力・判断力・表現力」、③「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」について、多面的・総合的に評価する入試へ転換する改革です。世界はボーダーレス化・情報化・AI(人工知能)化が進み、日本は少子化による人口縮小の時代に突入。このような状況下で日本が生き残り世界に貢献するためには、これまで以上に、豊かな発想力を持ち、自分で行動でき、しかも優れたコミュニケーションスキル持った「帰国生のような人材」を育成しなければなりません。
 
そのため、ここ数年私立中学校の試験内容に新風が吹いています。一般入試の多くは、2教科(国算)、4教科(国算社理)です。しかし近年、適性検査型・総合型・思考力型・PISA型・自己アピール(プレゼン)型、そして英語入試など、21世紀のグローバル社会に対応していくための潜在能力を問う入試が激増しています。大学、社会に出て本当に役立てることができる力を、6年間で伸ばしていこうというものです。このような入試は、異文化の中で貴重な生活を送ってきた帰国生にとっては、ピッタリの入試です。多くの帰国生は、他者を受け入れつつ、自分自身を見つめ自分らしさを大切にしてきたため、自ら調べ考え判断し、表現・行動する力が培われているからです。新タイプ入試にも視野を広げれば、一般の受験生より幅広く受験校を選択することができます。

☞POINT
・「子どものことはよく知っている」と過信しないようにしよう。親が特定の学校にこだわりすぎるのも考えもの。
・多くの私学が昔のイメージとは変化している。
・”大学入試改革”にも注目。

 

わが子にぴったりの学校を見つけるため、学校のどこをどう見ればいいの?

たくさんある私学から志望校を選ぶことは簡単ではありません。ここでは、学校を見るための”視点”を紹介します。学校選びの際には、「なぜ、中学受験をしようと思ったのか」についても改めて振り返りましょう。

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帰国生の受け入れは3タイプ

「帰国生の受け入れ」体制には大きく分けて3つのタイプがあります。まずは「基本的に受け入れるだけで、帰国生を特別扱いはしない」という学校です。公立校のほとんどはこのタイプですし、私立校でも少なくありません。中学、高校卒業後も、帰国生だからと言っていつまでも特別扱いはされません。社会に慣れてほしいと考えるなら、このタイプが適しているでしょう。
 
次に一般の生徒とは別に「帰国生枠」を設けたり、帰国生入試を実施したりしている学校。帰国生の場合、国内とは大きく異なる教育を受けています。学習以外の面でもさまざまな体験をし、能力を身に付けているはずです。そういった面も評価すべきであり、入学後も生かしていこうという学校が多いようです。
 
最後は積極的に帰国生を受け入れることを含め、グローバル教育に力を入れていこうという学校です。帰国生など海外体験のある生徒を中核とした学校づくりを進めており、帰国生ならではの特性を伸ばすことを望んでいる場合や、将来的には再び海外で生活することなどを考えている場合に適した学校です。

さまざまな校風から、わが子に合った学校を選ぼう

前述の3つのタイプも大切ですが、子どもが過ごす3年間もしくは6年間を見据えるうえで、「校風」も見逃すことはできません。さまざまな校風の学校から、わが子に合った学校を選べることが、私学の大きな魅力の一つなのです。例えば、男子校や女子校は、同性のみの気軽さから生徒同士はもちろん、先生とも気兼ねなく何でも話せる環境にあります。都心部の伝統校が多く、個性あふれる校風です。共学校では男女が互いに尊重し合い、協力する姿勢が自ずと養われ、自分にはない考え方や大胆な発想などを互いに学び合えます。
 
また、大部分が系列大へ内進するのが「大学付属校」です。学校生活を通じて、中高大10年間に渡る幅広い人的交流があり、関心を抱いたものに継続的に取り組めます。系列大があっても多くが他大学に進学するのが「半付属校」。ほとんどが他大学に進学するか、系列大のない学校が「進学校」です。進学校は中高6年間を見据えたムリ・ムダのないカリキュラムを編成しています。半付属校の多くもそのような体制をとっています。

宗教校などにも注目

カトリック校は小規模校が多く、家庭的な雰囲気です。学習面・生活面ともにきめ細かい指導が特色。プロテスタント校は個人の倫理観を大切にしているため、生徒の自主性を重視。生徒の進路は多岐に渡るようです。仏教校は「共生」がキーワード。堅実で温かく穏やかな校風です。
 
伝統校は創立者の「こんな人間をつくりたい」という思いが、今も息づいています。アカデミックな取り組みが多く、自由研究や論文などにも積極的。芸術・情操教育にも熱心です。新鋭校は常にアンテナを高くして、学校が一丸となって「良いもの」はすぐ取り入れ、「自ら学校をつくろう」という活気にあふれています。
 
一方、私学の国際教育や理数教育、芸術・情操教育は、生徒が能動的に考え行動・表現する学びです。まさに、「アクティブラーニング」(主体的・対話的で深い学び)だと言えます。多くの私学では以前から、6年間一貫の中で生徒が主体的に行動できる「場」を提供してきました。その点も確認しておきましょう。

☞POINT
・帰国生を受け入れる学校は大別して3タイプ
 ①単純受け入れ
 ②帰国生枠を設定したり、帰国生入試を実施
 ③帰国生中核タイプ
・男子校・女子校・共学校、大学付属校・進学校、宗教校など、校風を見極めよう

 

大学進学実績は数字だけでなく、その”ナカミ”もじっくり調べよう

学校選びで、大学進学実績が気にならないと言ったらウソになるでしょう。ただし、数字だけでなく、「生徒一人一人の将来を見据えた教育」を行っているかどうかに注目することが重要です。

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「将来どのように生きるのか」という指導がポイント

多くの私学は一昔に比べ、国公立大、早慶上智、東京理科大、GMARCHなどへの大学進学実績が伸びています。大学進学実績がアップしている学校では、補習や講習などのサポート体制も充実していますが、キャリア教育にも力を入れていることに注目しましょう。普段の授業で視野が拡大し、さらに「将来何になりたいのか、どのように生きたいのか、そのために今何をすべきなのか」という指導を通じて、「何のために学ぶのか」という目的意識が生徒一人一人の中に高まっていきます。その結果、大学受験準備へのモチベーションが高まり、実績もアップするのです。

実績からも”個性”がわかる

一方で大学進学実績からは、その学校の進学志向、例えば入学時の学力をどこまで伸ばしてくれるのか、理系に強いのか、医学部を目指す生徒が多いのか、芸術系に多く進学しているのか、海外大への実績はどうなのか(また、それに応じた進学指導体制)なども推し量ることができます。加えて、合格者の内訳(現役生や既卒生の合格比率)や数値の分布状況からは、男子校・女子校・共学校、あるいは大学付属校・半付属校といった、学校のタイプ別の特性を把握することも可能です。大学進学実績からは、学校の”個性”を読み取ることができるのも事実です。

各私学の教育の根底には、独自の「教育理念」がある

大学進学実績は教育成果の一つですが、教育内容の根本には、各校独自の教育理念(育てたい人間像)があることを忘れないでください。それが受け継がれ、さらに進化しているからこそ、私学が100校あれば100の校風があると言われています。教育理念の核となるのは、「こんな人間をつくりたい」という創立者の熱い思いです。
 
学校内に創立者の像や肖像画などが飾られている私学も多いようです。先生方は、創立者の理念が明確であり、異動が少ない環境にあるからこそ、新しいことにも取り組み、全員で生徒の指導に情熱を注ぐことができます。
 
一方、中学入学時には意識していなくとも、創立者の思いは生徒の中にも息づいていきます。卒業生が集まるとそれぞれが個性的ではあるものの、どこか似た雰囲気を感じることもあります。6年間で培われた”柱”となるものが共通しているからでしょう。保護者が、その私学にわが子を入学させるのは、教育方針に賛同しているから。教育理念をよく理解しているからこそ、保護者も学校に協力的になれます。そして、生徒・先生・保護者の三位一体の教育が展開していくのです。
 
卒業から何年経っても、文化祭の見学に来たり、体育祭の応援に来たり、後輩のためにクラブ活動の指導をしたりと、多くの卒業生が母校を訪れています。同窓会が非常に盛んであることも私学の特徴です。このように、私学に集う人々が、創立者の教育理念を軸に、過去・現在・未来へとつながっています。だからこそ、学校独自の校風が生まれてくると言えるのです。
 
また、学校の雰囲気や子どもとの相性を知るためには、実際に学校へ足を運ぶのが一番です。「エリア的にも難易度的にも幅広く」を意識し、親子で納得でき、わが子が輝くことができる学校をぜひ見つけてください。

☞POINT
・大学進学実績は教育成果の一つ。ぜひ「キャリア教育」にも注目を。
・進学実績からも学校の取り組み方がわかる。
・私学には各校独自の教育理念があり、私学が100校あれば100の校風が形づくられている。
 
※このページは「ライトハウス2018年秋冬の増刊号」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

 

帰国生を大切に育てる、私立の中学・高校一貫校(抜粋)

ここでは、帰国子女を大切に育てている、首都圏の私立中学・高校を抜粋して紹介します。
学校を選択するための基準は多岐にわたります。世間の評判などに惑わされてはいけません。
志望校を決める際は、できるだけ多くの学校に足を運び、校風や教育内容の面で、「わが子に合った学校」をぜひ見つけてください。

鷗友学園女子中学高等学校

鷗友(おうゆう)学園女子中学高等学校 [女子校]
所在地:東京都世田谷区
「みんなが初めて」の中で育んでいく貴重な信頼関係
Webサイト:鷗友学園女子中学高等学校の情報は「School-Pot」へ

岡山理科大学附属高等学校

岡山理科大学附属高等学校 [共学校]
所在地:岡山県岡山市
グローバル社会を生き抜く探究力・創造力・思考力を身につける。
Webサイト:岡山理科大学附属高等学校の情報は「公式HP」へ

工学院大学附属中学校・高等学校

工学院大学附属中学校・高等学校 [共学校]
所在地:東京都八王子市
大学や社会と連携し、視野の広いグローバル人材を育成
Webサイト:工学院大学附属中学校・高等学校の情報は「School-Pot」へ

佼成学園中学校・高等学校

佼成学園中学校・高等学校 [男子校]
所在地:東京都杉並区
「心」と「知性」を未来へ
Webサイト:佼成学園中学校・高等学校の情報は「School-Pot」へ

佼成学園女子中学高等学校

佼成学園女子中学高等学校 [女子校]
所在地:東京都世田谷区
英語の佼成からグローバルの佼成へ
Webサイト:佼成学園女子中学高等学校の情報は「School-Pot」へ

渋谷教育学園幕張中学校・高等学校

渋谷教育学園幕張中学校・高等学校 [共学校]
所在地:千葉県千葉市
「帰国生」を一つの個性として受け入れ、成長させる
Webサイト:渋谷教育学園幕張中学校・高等学校の情報は「School-Pot」へ

東邦大学附属東邦中学校・高等学校

東邦大学附属東邦中学校・高等学校 [共学校]
所在地:千葉県習志野市
日常的に異文化に触れ 多様性への理解を深める
Webサイト:東邦大学附属東邦中学校・高等学校の情報は「School-Pot」へ

目白研心中学校・高等学校

目白研心中学校・高等学校 [共学校]
所在地:東京都新宿区
育てます。「コミュニケーション力」「問題発見・解決力」「自己肯定力」
Webサイト:目白研心中学校・高等学校の情報は「School-Pot」へ


 

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