帰国子女として日本の大学を受験する場合の準備(出願・願書・入試・面接・自己推薦)

Q. 日本の大学の帰国子女入試。出願時期と受験に必要な準備は?

滞米10年、現在12年生の長女はアメリカの大学への出願を準備していますが、突然「日本の大学へも出願したい」と言い出しました。今の時期から、帰国子女入試の受験や出願は間に合うのでしょうか?

A. 大学によって異なる。受験準備は現地校の学習を。

松本輝彦(INFOE代表)

帰国子女大学入試

日本の大学が、海外の高校で学んだ生徒を選考するための入学試験、「帰国子女入試」は、受験資格、試験日時、試験内容、選考方法などが、受け入れる大学によって大きく異なります。

大学のねらいは、日本で得られるものとは異なった資質や能力を、海外の教育で身に付けてきた学生を入学させ、国内高校出身者へ刺激を与え、教育効果の向上を図ることにあります。

4月入学の場合

現在、現地校12年生のお子さんの場合、卒業は2007年6月ですが、日本の大学への入学は一般的に08年4月になります。アメリカの大学と併願の形で受験する場合の、帰国子女入試受験の手順を説明しましょう。

①アメリカの大学に出願する
②出願後、現地校卒業まで、SATとTOEFLを受験し続け、高得点を目指す
③07年5月頃から、募集要項・願書が配布されるので、希望大学のものを入手する
④現地校卒業前に、必要ならば先生からの推薦書を入手しておく
⑤卒業後、現地校から最終成績証明書(Final Transcript)や在籍証明書などを発行してもらう
⑥07年8月から翌年の3月の間、希望の大学に合格するまで出願と受験を繰り返す
⑦08年4月大学入学
以上は、本当に大まかな手順です。受験する大学により、大きく異なることを理解してください。

9月入学の場合

帰国子女を受け入れる大学の中には、07年9月に入学できる大学が20校程度あります。この場合、手順はほぼ同じですが、早いところで1月、通常は3月以降の出願となります。なかには、アメリカの大学のように、書類選考だけで合否を決める大学もあります。

現地校での学習を第一に

帰国子女入試は現地の高校で、何をいかに学び、ユニークな資質や能力をどのように身に付けてきたかを判断するものです。ですから合格のためには、現地校での勉学が最優先です。世界中のどこの国の大学であろうと、高校で精一杯勉強してきた受験生を求めています。

日本の大学では、日本語による講義や授業が原則です。そのため、授業を受けるのに必要な最低限の日本語力の判定は、日本語試験や面接などを通して行われます。「帰国子女入試では、国内の受験生と同じ知識や日本語力を期待されている」というのは誤解です。

現地校の勉強をしっかりして、UCに入学を許可されるような卒業生なら、早稲田、慶應、上智など私立有名大学への入学は、大きな問題ではありません。

英語のみで学べる日本の大学

国際化の波が本格的になり、英語だけで授業を行う大学が最近増えてきました。上智大学国際教養学部、立命館アジア太平洋大学、早稲田大学国際教養学部がこの代表です。これらの大学へは4月または9月に入学が可能で、アメリカにいる間に、出願・合否の判定が受けられる入試の形式もあります。

アメリカでの滞在が長く、高校を卒業する予定の人が、これらの大学に進むメリットとして、
①日本語よりも英語のほうが学習言語として伸びていて、大学での勉強も英語で授業を受けたほうがより深く理解できる
②大学時代を日本で過ごすことにより、日本人の大人としての生活習慣や日本語力が確実に身に付く
③卒業後は、アメリカの大学院に進学したり、日本で就職したりと、選択の幅が広くなる
などが挙げられます。要するに、社会人として、日英両語で読み書きも自由にでき、日米の社会生活習慣も身につけた、レベルの高いバイリンガルになれるので、将来の活躍の可能性が大きく広がるのが魅力です。

最近、大学進学についてのご相談が急激に増えてきました。特に、アメリカと日本のどちらの大学に進学するかで悩む、長期滞在の高校生が増えています。これまで、日米の教育の狭間で、努力して身に付けてきたバイリンガルの能力と、バイカルチャーの体験を活かせるような選択をし、社会人となった時に実践的な武器を獲得できるような努力を、ぜひ続けてもらいたいと心から願います。がんばってください。

(2006年11月1日号掲載)

Q. 12年生で米国の志望大学に入れず。日本の大学への出願は可能ですか?

 

A. 日本の大学の出願は夏から開始。英語で学べる大学など、多様化

松本輝彦(INFOE代表)

帰国子女大学入試

来年4月に日本の大学に入学したいと考えている海外の高校卒業生対象の「帰国子女入学試験」の受験は、これから準備しても十分可能です。入学までの流れを簡単に説明しましょう。

①入試スケジュール:
帰国子女大学入試は、日本の大学の半数以上にあたる約400大学で実施。出願・入試は夏から来年春にかけて、おおまかに私立大学から国公立大学の順で、出願は8月中旬から来年1月頃まで。出願の約1カ月後から入試が始まり、来年3月まで続きます。

②受験資格の確認:
在米年数の確認が重要です。3年以上なら問題ありません。

③出願:
入学願書の記入だけでなく、高校の最終成績証明書、推薦書、保護者の海外在留証明書などの入手や受験料の送付など、早めに準備を始めましょう。夏休みに入ると学校の事務も休暇に入ります。出願に不可欠な現地校からの卒業証明書や成績証明書が入手困難になる可能性があるため、早めの発行依頼が必要です。所定の推薦用紙がある大学の場合は、現地高校の教師による記入・署名が必要なので、こちらも急いで準備を。統一試験結果の提出については、「必ず提出」「提出が望ましい」「不要」など、大学によって異なります。受験希望の大学から提出の要求がなければ受験の必要はありません。SATは6月、TOEFLは7月上旬の試験までの結果が提出できます。

④入学試験:
出願書類の審査の合格者に9月上旬からの筆記・面接試験を課す大学がほとんどです。筆記試験科目は大学、学部、専攻により大きく異なります。しかし、帰国子女入試では、小論文と面接試験は必ずあると思ってください。

⑤発表:
試験後およそ1週間で合格発表。掲示、郵送、大学のウェブサイト上での表示やEメールで連絡があります。発表時に入学手続きの書類が渡され、入学金や授業料の一部の支払いが早い時期に必要な大学があります。必要な金額は、学部や大学によって大きく異なりますが、私立大学文系学部で100万円、国立大学で50万円くらいだと思ってください。

入試は、大学・学部により、内容・時期も大きく異なるので、急な受験の場合は専門家のアドバイスを受けることを強くおすすめします。

英語で学べる大学

英語で行われる授業だけを受けて卒業できるプログラム(学部・学科)を設ける日本の大学が増えています。英語でリベラル・アーツ(国際教養)の教育を行う大学が中心ですが、最近は、国・公・私立を問わず、英語で学べる大学のチョイスが広がりました。受験資格が外国人だけの大学もありますが、英語力の十分な受験生確保のために、帰国生が受験できる大学も多くあります。

そのプログラムで身に付けた英語力とコミュニケーション能力は、国際化を進める企業の強い期待を受けて、卒業後の就職に大きな成果を上げています。海外で身に付けた国際性、言語力を将来の武器に、帰国後も大きく伸ばすことができるでしょう。特に在米が長くなり英語で勉学を望む海外生の進学の選択肢として理想的です。

背景:米大学進学事情

米国の大学、特に州立大学への進学にあたり、
①入学が難しい
②入学後、4年での卒業は難しい
③授業料の高騰
④卒業後の就職が大変
などの現状が報告されています。①~③は、財政難で州からの補助金が減り、入学定員や教職員が削減されたことが理由です。また、最近の急激なドル高・円安を反映して、日米の生活費も含めた大学費用を比較した場合、日米で大きな差がなくなってきました。そのため、卒業後の就職事情を考慮して、日本の大学進学を真剣に検討する家庭が増えてきています。

大学選びは慎重に

大学教育のグローバル化によって、日本の大学(就職状況も)は大きく変化しています。世間の評判だけではなく、お子さんの将来のために本当に必要な大学教育は何か、そのための大学は日本かアメリカか、慎重に選んでください。

(2013年6月1日号掲載)

Q. 入学願書に必要な自己PR。どんなことをアピールすべき?

日本の学校に願書を出願する際に、「自己PR項目が設けられていますが、ここではどういったことをアピールするべきなのでしょうか。日本での体験でもよいでしょうか。

 

A. 子供自身が自信を持って語れるなら、何でも、元気良く、積極的にPRを

松本輝彦(INFOE代表)

帰国子女入試における「自己PR」とは、「自分の言葉で自分自身を語らせる」ことにより、その受験生が持っている「望ましい生活習慣」や「出願書類には表れない活動や考え方」を見出し、合格判定の資料とするものです。

帰国子女が身に付けた能力やスキルを高く評価

まず、なぜ日本の学校が、海外の教育を受けた子供たちを「帰国子女」として受け入れたいのかを考えてみましょう。

ひと言で言うと、「日本で育った子供たちが経験できない、異なった教育を受けてきたから」です。その結果、帰国した子供たちは、日本の子供が身に付けられないさまざまな「宝」を身に付けているのです。

帰国子女が身に付けている「宝」には、外国語能力や国際的感覚だけではなく、「望ましい生活習慣」として、自己表明、自立・自助の精神、積極性・独自性、率直性・明朗性、奉仕の精神などが挙げられています。特に、自己表明(自分の意見をしっかり言える)、自立・自助(指示を待つのではなく、自分の判断で積極的に行動する)は、日本の学校教育の中では十分指導できない帰国子女の特性として、高く評価されています。

これらは、日本の学校の教育目標である指導要領にある「生きる力」において、具体的な能力や生活習慣とみなされているものです。「これらの能力を身に付けている帰国子女は理想の子供である」と期待されている理由がここにあります。

さらに、現地校で身に付けたスタディースキルも、日本の子供には欠如している、帰国子女の「宝」として歓迎されています。自分の意見の発表・レポート作成・プレゼンテーション(口頭・文章)などの能力は、小学校から大学まで、帰国子女に求めるスキルとして、期待されています。

現地校で目いっぱい勉強した子供が欲しい

帰国子女の受け入れをするための入学審査にあたっては、「現地校で目いっぱい勉強した子供が欲しい」というのが受け入れ校の本音です。そのような受験生を探すために、受け入れに熱心な学校は海外での広報に努力し、海外で行われる学校説明会に出向いてくるのです。そして、海外子女の実情に合わせた帰国子女入試を実施するのです。

入学審査の内容は学校により大きく異なります。それは、学校(特に私立校)は少子化の影響を大きく受けており、学校自体のサバイバルのためにも、特徴のある教育を行う必要があるからです。その教育に合う新入生を獲得するのが、海外入試を含めた帰国子女のための入試で、それぞれの学校で出願書類や面接などに工夫を凝らしています。

出願書類と面接では帰国後の適応能力を判断

入学審査は、学校が発行する成績証明書や在籍証明書等の公式文書の記載事項と、面接時の質問に対する回答などを通して受験生の姿を明らかにし、判定資料とするものです。

帰国後に入学する学校では、主要科目の勉強は当然ですが、音楽や美術、スポーツ等も学校生活の大きな要素になります。そのために、科目の勉強の様子や内容、さらに課外活動やスポーツ等について、試験官は出願書類や面接を通して子供の様子を把握し、判断していきます。音楽を頑張った子には演奏のテープを、美術の得意な子には作品の写真を提出させる学校もあるほどです。

その子供が海外にいる間にどのような友人関係を築いてきたか、といった生活の様子も、帰国後の適応能力を判断するための大きな資料となります。日常生活についての質問は、書類ではあまり知ることのできない、入学後の生活を推し量る貴重な情報です。

帰国子女入試は「加点法」積極的にアピールを

出願書類の一部としての自己PRや面接試験時の自己PRは、「受験生自身の言葉で、自分自身の長所や具体的な活動内容を、積極的に語らせる」ことにより、その受験生が持っている生活習慣・考え方などを評価し、合格判定のポジティブな資料とするものです。

日本の社会では、自分自身の長所を精一杯PRする機会はほとんどありません。しかし、帰国子女入試は、日本の入試のような「減点法」ではなく、長所を積極的に評価する「加点法」の入試です。日本的な考え方に閉じこもらず、受験生自身が自信を持って語れることならば、何でも、元気良く、積極的に語らせてください。それを学校も望んでいます。

(2006年1月16日掲載)

Q. 帰国子女大学入試を受験します。面接試験の準備は、何をすれば?

 

A. まず、志望動機をしっかりまとめる。それを実際に人前で話す練習を

松本輝彦(INFOE代表)

帰国子女大学入試

外国の教育課程による学校の卒業生を対象とした日本の大学の特別選抜入試のことで、帰国生大学入試とも呼ばれます。

「海外で培ってきた高度な外国語運用能力や異文化理解、国際的視野など」を身に付けた学生を求めて、選抜するのが帰国子女入試です。ほぼすべての大学の帰国子女入試で、書類審査、小論文、面接が課されます。

面接試験

「数学の筆記試験の成績が、本当に悪かったね」と面接試験の冒頭で試験官から宣告された国立大学医学部の受験生が、面接試験後には「合格」となったなど、帰国子女入試における面接の重要さを物語る例は、挙げればキリがありません。面接の形態は、受験生1名に対して面接官2~3名というのが一般的ですが、4~5名のグループ面接を実施する大学もあります。面接は基本的に日本語で行われます。

時には、外国人の面接官から英語で質問されることもあります。面接時間は、1人あたり10~20分程度が標準です。ただ、試験官との話が弾んで長くなったりする場合も多く見られます。質問内容としては、志望の動機、書類(履歴書)だけではわかりにくい海外経験に対する質問、海外の学校生活や学んできたことに対する質問、そして、受験生の回答や関連事項に対する追加質問が中心です。これらに加えて、事前に受験した小論文、学科試験についての質問も多く出されます。

志望動機が重要

「なぜ、本大学(学部・学科)を志望するのか?」という、どの面接試験でも聞かれる基本的な質問です。これらが重要なのは、試験官が最も聞きたい質問だからです。「この受験生は、自分の希望する学問分野に対してしっかりした学習動機を持っていて、入学後に将来に向けた勉学をしてくれるか」を見極めるために、試験官は面接に臨んでいるのです。

受験生自身がその答えを当然持っていることを期待しているのです。そして、この質問に「正解」はありません。受験生自身が、自分の思い、理由を、自分の言葉で述べることを試験官は期待しているのです。ですから、他の質問のように「わかりません」「知りません」という回答が許されない、「答えられないと不合格」となるものですから、受験生は必ず回答を準備しておかなければならない質問なのです。

面接の練習

受験のための面接練習は欠かせません。海外の高校生は、「日本語で、大人の質問にしっかりと答える」経験がまったくないので、練習が必要です。まず、お父さん、お母さんが、テーブルを挟んで受験生と対面して、左記に例を示した質問を聞いてください。お子さんは、その質問に、単語だけや短い答えだけではなく、1つのまとまった日本語の文章で答える練習です。

次に、ご両親の友人(人事担当者がベスト)、補習校や塾の先生などに面接官役を頼んでください。大人を相手に、「志望の動機」を日本語で答える練習です。関連する質問をどんどんしてもらってください。受験生は、質疑応答のコツを身に付けていきます。

「なぜ、経済を勉強したいのか?」の問いに、大学のパンフレットに書いてある聞いたこともない言葉で、慣れない内容を日本語で正確に答える、そんな経験のない受験生は、「できない!」と音を上げますが、当然です。しかし、5回、10回と繰り返し練習をすれば、「どう答えれば良いのか」を模索するプロセスで、受験生は本当の志望の動機を自分の言葉でまとめられるようになり、納得できる回答ができるようになります。頑張ってください。

面接(質問)の例

「志望の動機」「海外経歴」「滞在国について」「海外での経験」「海外生活で得たもの」「自己アピール」「出身校」「高校での学習内容」「課外活動」「読書歴」「入学後の学習計画や希望」「小論文や学科試験の内容」「併願校」など。

(2011年8月1日号掲載)

Q. 授業に付いていけません。ESLに変えるべきでしょうか?

現地校8年生の子供が、レギュラークラスの英語で苦労しています。周りに「ESLに戻って、Aを取って日本に帰る方が入試に有利よ」と言われましたが…。

A. 成績のためだけにクラスを変えたり、残ることはおすすめしません。

松本輝彦(INFOE代表)

入試に有利?

ご質問のポイントは、一見説得力に富んでいるような、「入試に有利」という言葉の意味です。海外から帰国した児童・生徒が受験するのは、国内の子供と同じ「国内入試」か、帰国生のための特別な「帰国子女入試」です。これらの帰国後の入試について、その意味を考えましょう。

国内入試

帰国生が受験する国内入試の場合は、学校での学習成績よりも、入試当日の筆記や面接試験の結果を重視するので、目先の小さな成績を気にするよりも、受験勉強に精を出す方が合格に近いと言えます。ですから、現地校の成績は大きな役割を果たしません。

帰国子女入試

もう1つの帰国子女入試は、海外生特有の学力を期待し、それを評価して合否を決める入試です。受け入れ校は、現地校の成績を提出させて現地校での学習状況を把握します。

例えば、滞在年数が長くなるに従い成績が向上しているか?、ESLから何年でレギュラーに出ているか?、英語以外の教科の成績は?、レベルの高いクラスを受けているか?、などの視点から成績を見ます。

帰国子女と言っても、世界中から帰って来る子供たちです。現地の学校から持ち帰って来る成績表は変化に富み、それらを同じ基準で評価することは不可能です。書類審査に加えて、作文や面接試験で、より総合的に評価し合否を決めます。

アメリカでは、正式な成績証明書は高校でしか発行しません。証明書には、受講科目名、受講学年学期、成績(A~F)、取得単位数が記入してあり、それに基づいて成績の平均点であるGPAが計算され、印刷されます。アメリカの大学出願には、GPAは大変重要で、GPA3.0以下の高校生はカリフォルニア大学(UC)に出願できません。ところが、世界中から受験者の集まる日本の帰国子女受け入れ大学の場合は、UCのように厳密にGPAなどの現地校の成績を合否判定に使うことが現実的に不可能です。多少授業の成績がBからAに上がっても、「入試に有利」になりません。

マイナス面を考えて!

「ESLでAを取れば」と言うお母さんのアドバイスが、「楽してAを取りなさい」「勉強は適当に!」と子供にすすめている可能性があることを認識してください。日本の学校の勉強なら、このようなご質問自体が出てこないでしょう。日本にいれば「1点でも多く取れるように」と子供を叱咤激励するのでは? 日本では「点数=学力」という考え方ですから。

子供の本当の実力を伸ばすことを考えていますか? 目先の1つのクラスの成績より、学力を伸ばす努力をさせるように保護者がアドバイスするべきです。子供に「努力はしなくていいよ」と取れるメッセージは避けるべきでは?

私の経験では、「ESLでAを」と言うお母さんは、しばらくして「SATやTOEFLの成績はどうして上げるのか?」と相談に来られます。週5日の現地校の英語での勉強を適当にこなし、実力勝負の英語の統一試験の成績を上げるために塾に通うなどは、本末転倒です。

もし、成績が悪かったら?

もし、お子さんが一生懸命頑張ったのに「D」の成績が付いたのなら、帰国子女入試の出願書類の中に、保護者自身(高校生は自分自身)がその事情・経緯を説明する手紙を入れてください。現地校での学習振りを評価する学校ならば、必ず、この手紙を読んで事情を理解しようと努力してくれます。「そんな書類は見ません」という学校は、初めから「日本の学力」「英語力」だけを期待して、帰国生の募集をしている学校だ、と私の経験から断言できます。

最も、「自分の子供を要領良く、楽して得取れる子供に育てたい」という確固たる教育方針をご両親がお持ちならば、ここで長々と述べた私の回答など、無視していただいて結構です。(ちょっと、感情的?)。

もちろん、現実的にクラスを変わったり、ドロップすることが必要な場合もあります。そんな例は、またの機会に!

(2008年4月1日号掲載)

Q. アメリカの学校での停学は、日本での受験に不利になる?

知り合いの高校生のお子さんが先日、停学処分(suspension)を受けたと聞きました。我が家はいずれ帰国して受験することになるのですが、停学歴があると日本の受験に影響するという噂を耳にしています。万が一、子供が停学になった場合、それを覆すことはできるのでしょうか。

A. 記録は送付されないが面接で聞かれることも

松本輝彦(INFOE代表)

「安全な学校」がアメリカの教育目標のひとつになっています。具体的には、ナイフ・銃などの凶器やさまざまな薬物(ドラッグ)の学校への持ち込み防止が中心ですが、学校内での暴力やセクハラも、アメリカ全体で大きな問題になっています。

学校の安全を確保するために、学校や学校区(school district)は、児童・生徒が従わなければならない、さまざまなルールを決めています。

さまざまな処分

学校の安全確保のためのルールに違反した場合、あるいは学習上の問題や態度に対して、学校や学校区は児童・生徒にペナルティーを与えます。その内容は、児童・生徒自身、または保護者を呼び出して、校長からの口頭での注意や警告、警察への身柄引き渡し、一時的に学校への登校を禁止する「停学」、その学校区の学校への通学を拒否する「退学(expulsion)」など、違反の内容、レベル、回数などに応じて多様です。

一般的には、違反行為があった場合、その児童・生徒の人権や、教育を受ける権利を尊重するため、ルールに従って、事実確認のための聴聞会などのさまざまなプロセスを経て、最終的な判断が下されます。それらの処分や判断に保護者として異議がある場合は、学校区理事会に対して、再調査を行ったり、聴聞会を開いたりすることを要求できます。

ただし、その違反が学校や学校区の裁量の範囲を超えている場合、例えば、学校内に刃渡り5インチ以上のナイフを持ち込んだ場合など、予め決められた基準を超えている場合は、犯罪行為として直ちに地元の警察に通報され、警察が捜査を開始します。

「ゼロ・トレランス」に要注意

ゼロ・トレランス(Zero Tolerance)というルールを設けて、学校の安全確保に厳しく対応している学校や学校区があります。このルールは、「凶器・薬物を学校内に持ち込んだ児童・生徒は、直ちに停学もしくは退学処分になる」という、非常に厳しいものです。

重要なのは「直ちに」の部分です。学校や学校区は、さまざまなプロセスを経て処分を決めると述べましたが、このルールでは、違反を犯した児童・生徒は、そのようなプロセスなしで「直ちに」停学や退学の処分を下されることになります。この厳しさが「ゼロ・トレランス」の特徴です。

処分にも文化の違い

日本の学校の場合、学校の裁量権の範囲が不明確で、「教育上の配慮」がアメリカに比べて実質的に非常に幅広く捉えられています。時には、深刻な校則違反であっても、担任や校長の説諭のみで済まされ、公にならないケースさえみられます。しかし、アメリカは「守るためにルールは作られている」と考えられており、現地校で学ぶ日本人の児童・生徒でも、日本では考えらないような厳しい処分を受ける場合がありますので注意が必要です。

受けた処分の記録は?

ご質問にある「停学の経歴」については、私自身これまで数多くの現地校の成績証明書などの公的書類を見てきましたが、その中に「停学」や「退学」などの記載があるものを見た経験はありません。

その理由として、ファイル(フォルダー)による児童・生徒の学校記録の管理システムが考えられます。子供たちが、アメリカで初めて入学、編入学した学校では、子供1人ひとりのファイルを作成し、その中に学業や学校生活の記録を保管します。転校した場合には、転校先の学校の要請により、前籍校はその記録を転校先に送付します。新しい学校は、このファイルにその学校での記録を追加していきます。

しかし、これらの記録の長期にわたる保存は、高校以外の学校には要求されません。高校進学時に廃棄処分にする中学校すらあります。また、高校では、卒業資格を与えるため、学業の記録(取得した科目や単位数など)は大切に保管されますが、それ以外の記録は卒業後、廃棄処分されます。

ただし、帰国子女受け入れ校で、現地校の成績証明書の内容や見方を熟知している学校は、取得単位がゼロや極端に少ない学期がある事実を見抜き、面接時に説明を求めることも考えられますので、お子さんに注意を促してください。

(2006年6月16日号掲載)

Q. 滞米5年、帰国で日本の高校に編入。高校卒業後の大学進学が心配

 

A. 広がる入試の多様化がチャンス 帰国生入試も受験可能

松本輝彦(INFOE代表)

日本の大学入試の現状と、帰国編入後の学習についての理解が必要です。

大学入試の多様化

かつては、英・数・国などの筆記試験を受験生が一斉に受験して、その得点で合格・不合格が決まる「一般入試」を実施する大学がほとんどでした。しかし、最近は、「一般入試」以外の入学試験(特別選抜)を実施する大学が、国公私立を問わず、急激に増えてきています。特に私立大学ではほとんどすべての大学が実施しており、特別選抜で合格して入学する受験生が大学新入生の半数以上を占めるほど。国公立大学は、まだまだ一般入試での入学者が大半ですが、特別選抜の実施大学も徐々に増えてきています。

特別選抜の中で、受験者の多い「推薦入試」には

①指定校推薦:
大学が指定した高校(指定校)の受験生で、その大学・学部への進学希望者の中から、高校が選んだ生徒を大学に推薦し、受験させる入試

②公募推薦:
大学が決めた出願基準を超えた受験者が誰でも受験できる入試。通常、高校の推薦が必要

③自己推薦:
大学が決めた出願基準を超えた受験者が、個人で出願できる入試などがあります。

また、「AO(アドミッション・オフィス)入試」は、提出された書類や小論文(エッセイ)などを審査して合格者を決める入試です。アメリカの大学入学審査と同じ方法ですが、書類だけでの審査の経験不足から、面接や筆記試験を課す大学も多くあります。

これらの入試の実態を詳細に見ると、「自己推薦入試」が最も変化に富んでいます。帰国生の例では、「英語ができる」「プレゼンテーションがうまい」「研究論文が書ける」など、現地校で培ってきたスキルをフルに活かして、有名大学の合格を勝ち取る受験生もいます。

帰国子女入試

日本の高校に編入した場合も、帰国子女大学入試を受験できます。ただし、編入の時期によって受験できる大学・学部の数は大きく変わり、編入時期が遅いほど、その数は増えていきます。

帰国子女大学入試は、書類審査のほかに小論文・面接を課す大学が一般的です。これらに加えて、統一試験(SAT、TOEFLなど)の成績を要求する大学も。これらの大学を受験するには、編入した高校の卒業単位取得のための日本語による勉強と、英語での統一試験受験の勉強を並行して行う必要があります。

編入後の高校の進学担当で、帰国子女大学入試の実際に詳しい教員はあまりいません。帰国が決まった時点で、帰国後の受験について専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

帰国後の大学受験

以上のように、高校編入後の大学受験には大変多くのチョイスがあります。その中から、どんな受験をするのかで、受験準備のための勉強が大きく変わります。

例えば、理科系学部への進学志望の場合は、一般入試受験のために、アメリカの学校で勉強してきた内容とは異なる、高校での教科をしっかり勉強する必要があります。

指定校や公募推薦を考えるなら、編入後の高校の成績をしっかり上げなければ、高校の推薦枠を勝ち取れません。普通、推薦には高い評点平均(通知簿の成績の平均)を求められるので、古文・漢文、音楽、美術などでも好成績をあげる必要があります。

英語力で勝負して、自己推薦を目指すなら、英検1級やTOEFLの高得点を目指す受験勉強を頑張りましょう。

帰国子女入試を受験するなら、日本語での小論文の特訓や面接練習が重要。さらに、SATの必要な大学を受験するならば、日本語での高校の勉強と並行して、SATの勉強が必要となります。

お子さんが受験される日本の大学入試は、このように急激に変化してきています。保護者の皆さんが経験した大学入試とは「隔世の感」があるのでは?しかし、アメリカの現地校で苦労して学んできたお子さんが、帰国後、その努力を活かして志望大学に入学するためには、保護者も情報集めが欠かせません。頑張ってください。

(2012年11月1日号掲載)

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