プロデューサー/脚本家 デビッド・ショアー

ライトハウス電子版アプリ、始めました

第3の答えで唸らせるのが私の使命

David Shore
カナダで弁護士をしていたが、クリエーティブな仕事がしたくて、ロサンゼルスに引っ越して脚本を書き始めた。『Law & Order』に数本書いた後、94年にカナダ騎馬警官を描いたCBSの『Due South』のスタッフライターに迎えられた。97年デビッド・ケリーの下で『The Practice』を経て、『Family Law』『Century City』など法廷/弁護士ドラマ制作に携わった。04年、異色作『House, M.D.』を創作、エミ-賞最優秀賞脚本賞を受賞して押しも押されもせぬプロデューサーになった。
 
Photo:©2005 FOX BROADCASTING COMPANY. Credit:Isabella Vosmikova / FOX

「私を皮肉で、惨め、怒れる男にした方々にも感謝します」とはエミー賞受賞時のデビッド・ショアーのスピーチ。弁護士を廃業して、ハリウッドに来て10年余り。最新のヒット作『House, M.D.』で、主人公・ハウスを通じて下積み時代の憂さ晴らしを楽しんでいる。

エミー賞受賞時には「こんな私に誰がした!」的スピーチでしたが、あれってハウスの性格ですよね?

ショアー(以下S):その通り。これまで口にできなかったことをハウスに託して、思いっ切り憂さ晴らしです(笑)。

最初から偏屈な主人公で行こうと?

S:ハウスは言いたい放題、したい放題、本音で生きています。本音対建前、感情対論理を対比したかったのと、善人よりも偏屈親父の心を垣間見る方が面白いとの判断です。

番組の人気の秘密は?

S:この手の偏屈親父が中心のドラマはこれまでになかったし、病因究明に注ぐハウスの情熱が受けていると思います。現実にはあそこまでできないでしょ。

病院や保険会社と闘ってくれて命が助かるなら、無礼でも良いかと思いますよ。

S:自分のためなら、ハウスみたいな人間に前線で闘ってほしいはず。

「パイロットを書いた後、難病奇病を次々と探せるか不安で」とプレスツアーで笑っておられましたが?

S:2年目までどうにか保ちました。スタッフライターは常に目を光らせていますし、医療コンサルタント2名が詳細をチェックしてくれます。

業界へ入ったきっかけは?

S:企業弁護士を辞めて、映画の脚本を書いていた友達を頼って、トロントから出て来ました。『Million Dollar Baby』の脚本家、ポール・ハギスが、94年に創作したテレビ番組『Due South』に、スタッフライターとして雇われたのが最初です。

『The Practice』のデビッド・ケリーも元弁護士、転職組の脚本は奥深いですね。

S:「実社会」未体験の大卒が書く本より、酸いも甘いも噛みわけた転職組の方が、体験を基に書けるから強いです。

芸能界はカナダ出身者が多いですね。

S:言葉の壁がないですからね。文化的背景がちょっと違うので、外部の人間として米国を客観視できるからかな?

お手本は?

S:デビッド・ケリーのおかしくて哀しい作風が大好きで、手本にしてきました。転職組の先輩ですし、ミシェル・ファイファーと結婚しようと思っていたので(笑)。『The Practice』でケリーから学んだのは、「こんな見方だってできる」と提起すること。正論、反論の上に、第3の答えを出して唸らせるのが私の使命だと思っています。

次のデビッド・ショアーを目指す人にアドバイスを。

S:給料をもらっていると、時間拘束されている分、とにかく絞り出してでも書く。凝縮された時間枠で、あがきながら書く体験は貴重です。書いて、書いて、書きまくる。そして、人に読んでもらう、これしかないですよ。

[業界コボレ話]
05年の新番組31本が始まって約2カ月。『Just Legal』『Sex, Love & Secrets』『Head Cases』『Inconceivable』がキャンセルされた。ソニー撮影所で『Just Legal』の主演、ドン・ジョンソンを見かけたばかりだ。
05年末まで続くかどうかという番組も数本。『The Apprentice』のマーサ・スチュアート版は水曜日8時から、9時放映の『E-Ring』と入れ替えになった。服役体験をひけらかすマーサが『Lost』に勝てる訳がないから、『E-Ring』だけでも救おうというNBCの苦肉の策だ。面白くないものはどう逆立ちしても面白くない。
意外に高視聴率をあげているのは『Criminal Minds』『Ghost Whisperer』、やっと1シーズンを確保した『Invasion』、苦戦の『Related』、まだまだ目が放せない。

「アメリカTV・インタビュー」のコンテンツ