SUGIZO / ミュージシャン

ライトハウス電子版アプリ、始めました

90年代に活躍し、視覚的要素だけでなく音楽性の面でも、後のロックシーンに多大な影響を与えたバンドLUNA SEA のギタリストSUGIZO。解散後は、音楽の枠にとどまらず活動領域を広げ、平和活動や環境問題にも取り組んでいる。また、このほどX Japan の正規ギタリストとしても活動。クラシック音楽から始まった彼の音楽人生を振り返り、今後の展望や夢を語ってもらった。

「自分の音楽を作りたい」と
嫌いな音楽に目覚める

僕は先日、X JAPAN のギタリストとして、東京ドームで行われた再結成ライブに参加しました。あそこのステージにはもう何度も立っているので、「あぁ、帰ってきた」という感覚ですね。どう振る舞えばいいのか手に取るようにわかるから、僕にとっては居心地のいいステージでした。
 
X JAPAN のプロジェクトには、去年のアタマからサポートとして参加し始めたのですが、当初は感覚がつかみにくかったというか手探り状態。でも今回は、1年以上一緒にやってきたので、自分なりのやり方やポジションなどがわかってきて、随分スムーズでした。
 
僕の最初に触った楽器はヴァイオリンでした。両親がクラッシクの音楽家で、物心付いた頃からヴァイオリンの英才教育を受けていました。3歳から始めましたが、小学校の低学年くらいまではとても苦しかったし、嫌で仕方がなかった。言う通りに演奏しないと怒られるし、弓のアップダウンを間違えただけで叩かれるし。でも9~10歳くらいの頃かな、面白いと思い始めたんです。それは、「自分の音楽を作りたい」と思い始めたから。その探究心が芽生えてからは、作曲家になりたいという夢が出てきて、音楽がだいぶ楽しくなりました。
 
中学生になってロックに目覚めました。そのきっかけを作ってくれたのが、先日亡くなられた忌野清志郎さんと坂本龍一さんのコラボレーションシングル「い・け・な・いルージュマジック」。あの音楽には本当にショックを受けましたね。すごく衝撃的で、それからYMOとRCサクセションにハマりました。
 
高校の先輩のバンドで実際にロックを演奏するようになりましたが、自分でメンバーを集め始めたのは高2の頃。その当初から、真矢(LUNA SEA のドラマー)とは一緒でした。同じ高校でしたから。だから彼とは、もう25年くらいの付き合い。
 
僕と真矢が一緒にバンドをやっていた頃、別の高校でバンド活動を精力的にやっていたギタリストのINORAN とベーシストのJと知り合い、意気投合しました。それから数年経って、ライヴハウスでRYUICHI と知り合ったんです。そしてこの5人が合体して、LUNASEA が生まれました。
 
当時、僕らが活動していたのは東京の町田が中心。町田には町田のシーンがあって、そこで頭角を現すことが第1目標でした。数カ月遅れて、次は目黒が重要なシーンとなり、今度はそこで頭角を現す。そうやって、1つずつ上って行くことが使命でした。自分たちのスタイルやオリジナリティーなんかも追求していましたが、まずは上に上ることを最重要課題と考えていました。
 
当時はすごいバンドブーム。テレビでもオーディション番組が全盛でしたが、僕たちはそういう
ブームを一切無視していました。自分たちが良しと信じるシーンまで自分たちを持って行った方が強いと思っていたからです。これは100%的中しましたね。
 
 

本当か嘘かを見極める
鋭い洞察力が必要

自分のこれまでを振り返ってみると、夢を実現するためにしてきた努力は全然苦しくなかったし、だからといって、死にものぐるいに頑張ってきたとか、歯を食いしばって耐えてきたとか、そういうものでもなかった気がします。夢って言うのは、未来の現実。自分の夢を、どれだけ具体的に思い描けるかが問題なんです。つまり、「現実」として真剣に考えているかどうか。だから、結局は自分次第。世の中の状況で左右されるものでもないし、誰のせいでもない。夢の実現って、決して大それたことじゃないと思います。
 
もちろん、無理なこともあります。僕が天皇になりたいって言っても、無理ですよね。「できること」と「できないこと」の冷静な判別は重要。現実と夢のバランスですね。まぁ当の僕も、自分が求めてきた生き方通りに生きているなって感じてきたのは、やっとここ3~4年くらい前からですが。
 
僕はここ数年、環境問題にとても関心を持っています。地球は瀕死の状態で、世界の人皆がそれをもっと意識すべきだと思うんです。でも、二酸化炭素だけが温暖化を促進させているわけでもないし、そもそも環境問題は温暖化だけじゃない。温暖化ガスを減らすために原子力発電に頼ってオール電化になればいいってプロパガンダもあるけど、それにだって疑問の余地がいっぱいある。僕もまだ色々学んでる最中ですが、何が真実で何が嘘かを見極められるようにならなければいけないと思っています。ある一部の人達にだけ都合の良い情報に踊らされるのは嫌。真偽が混在する多様な情報の中で、自分がどう動けば真実に近づけるのか、どう動けば世の中を良い方向に導けるのか、常にそれを探求しながら生きています。
 
 

パワーのある所に住む
これが僕の理想です

僕は15年くらい前から、ちょっとでも時間があれば海外に行くことが趣味になっています。当時は1番好きな場所がギリシャで、次がロンドンでした。ギリシャは僕を本当の意味で癒してくれますし、ロンドンのアンダーグランドやサブカルチャーは、僕の創作活動に大きな影響を与えてくれます。ですから、ギリシャは「エネルギーの解放」、ロンドンは「吸収と研究」のために行くような感覚でした。そうすることで、自分の表現力とか次への活動体制に糧を与えることができたんです。
 
ゆくゆくは、ハワイに住みたいと考えています。素敵な自然に溢れた所で生活自体を堪能しながら、音楽にどっぷり浸かる。そういうライフスタイルが僕の夢ですね。今は東京にいて、コンクリートの中で音楽を作り、パフォーマンスをしています。でもエネルギー的な観点で見ると、そういう場所でパワーのある作品を生むのはとてもツライんですね。都会では色んな負荷がかかってくる
し、色んな邪念が渦巻いている。しかも土地のパワーは最低。僕はお台場近辺に住んでいるんですが、そこは埋め立て地ですから海のパワーも死んでいる。僕は、土地にエルギーがみなぎっている所に根を下ろし、創作活動を続けたい。土地のパワーが強い所を拠点にしておけば、ツアーなんかで世界中を旅していても、戻って来ればエネルギーをチャージできるし、癒される。そういうライフスタイルが目下の夢ですね。
 
ロサンゼルスは好きですよ。でも頻繁に来過ぎていて、第2の故郷というか、日本とあまり変わらない感じですね。でも空港は大嫌いです。この数年の空港の入管って完全に人権侵害ですよね。また、面倒臭そうに仕事をしているのをみると、頭にきます。ロスの人ってそういうところを隠さないので、正直、たまにムカッときますね(笑)。でも逆に、とてもオープンでラク。個人主義の人が多いという意味では、日本より居心地がいいです。
 
世界中どこに行っても日本人コミュニティーがあって、それを見ていると、強く生きてるってこと
は素晴らしい、と思います。僕もできるだけたくさんの場所に行って、その場所のエネルギーを感じたいし、自分のエネルギーをそこにおいていきたいと思います。ロサンゼルスというのは、僕にとってはホントに身近な場所。ここに住んでいる日本人の皆さんとこれからもっと深く関わることができたら、とてもうれしいと思っています。
 
 
 
P R O F I L E
スギゾー■ミュージシャン、コンポーザー、プロデューサー、ギタリスト、ヴァイオリニスト。1992年、LUNA SEA のコンポーザー、ギタリストとしてデビュー。2000 年のLUNA SEA 解散後、映画音楽や役者、コンテンポラリー・ダンスなど活動領域を広げ、精力的にソロ活動を展開する。また、音楽と並行しながら、平和活動や環境活動にも積極的に参加している。現在「SUGIZO」としてのソロワークのほか、伝説的トランス・ユニット「JUNO REACTOR」へ参加、10 年振りに復活した「X JAPAN」へギタリストとして加入するなど、多岐に渉って世界規模で活動中。
 
 
(2009年6月1日号掲載)

 

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