勝間和代◎セミナー直前特別インタビュー

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ライトハウス創刊20周年 記念イベント第16弾 セミナー直前特別インタビュー

2009年10月16日金曜日に、大ヒットビジネス書「レバレッジ」シリーズ著者、本田直之氏と、経済評論家・公認会計士で、外資系金融企業勤務を経て、現在、株式会社「監査と分析」代表取締役、内閣府男女共同参画会議議員、中央大学ビジネススクール客員教授として活躍中の勝間和代さんを招いてビジネスセミナーを開催する。
 
前号の本田直之氏に引き続き、今回はもう1人の講師である勝間和代さんに、当日の講演テーマやその内容について披露していただいた。
 
経済評論家・公認会計士
勝間和代 さん 
相手の1番の本質を理解し どこまでなら自分のアレンジでまねられるかを考える
 

かつま・かずよ◎東京生まれ。経済評論家、公認会計士。早稲田大学ファイナンスMBA、慶応大学商学部卒業。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得、大学在学中から監査法人に勤務。現在、株式会社監査と分析代表取締役、内閣府男女共同参画会議議員、中央大学ビジネススクール客員教授として活躍中。ウォール・ストリート・ジャーナル「世界の最も注目すべき女性50人」選出。少子化問題、若者の雇用問題、ITを活用した個人の生産性向上など、幅広い分野で発言をしており、若年層を中心に高い支持を受けている。オフィシャルサイト(www.katsumaweb.com

「学ぶ」と「まねる」は同じこと

「学ぶ」と「まねる」というのは同じだということについて本を書いたんですが、まねるというのは、イヤなニュアンスがあると思います。それに対して、実はすべてはまねることから始まるということを、皆さんにお伝えしたいんです。
 
例えば、色々な自己啓発書の内容というのは、振り返ると仏教の教典とか聖書を見ると、ほとんど書いてあります。そういうことが繰り返し色んな本に書かれ、新しいことのように紹介されるのは、つまり「本質」を自分たちの言葉で伝え直しているわけです。伝え直した言葉で初めて通じる人がいるし、昔の教典に戻って理解することもできます。1つのことを繰り返し考え、自分で消化し、まねてみる。そして、もう1度自分のやり方に差し戻し、今度は人に教えられるくらいのレベルになるまで繰り返すことによって、自分の身になっていきます。
 
まねる力は、人によって強みが違います。ビジュアルで覚える人、音声で覚える人、感覚で覚える人とか。私は比較的視覚が強いんです。見た物をそのままビデオ再生のような感じで頭の中で再生できます。お手本を見させてもらうと、その通りにできるように、何とか身体に残そうとするクセがあるんです。だから色んなことを学ぼうと思った時は、とりあえずまねます。会計士の試験を受けようと思った時も、まずどんな風に勉強するか、試験勉強をした人をまねました。トレーダーになろうと思った時は、優秀なトレーダーの仕事をひたすら見て学びました。学校を出た
ら、フォーマルな勉強手段なんてなくなりますから、その中でどうやって自分が学ぶかです。
 
まねるのは最初の10%、20%に過ぎません。残りの80%、90%というのは、結局自分の今までの経験の中から練り直して学ばないと、自分の身にならないと思います。そして、まねるプロセスですが、自分がまねようとする対象の人が、どれくらいの経験があるのか、何に対してどのような能力があり、どのように実行しているかを、純粋に考えます。その時に大事なのは、一体その人のどういう所に、私たちがちょっとやそっとじゃまねできない専門性があるかということですね。

相手の能力を理解し愚直に繰り返してまねる

「1万時間の法則」と呼んでいますが、その人が1万時間かけて学んだ、私たちがまねしたい物は何だろうと考えます。例えば、私がメークを習ったプロのメーキャップアーティストの山本浩未さんは、メークの本質として2つポイントを挙げています。1つは「上げる」ということ。人は歳をとってくると、あらゆる所が下がってきます。それを重力に逆らって上げる方法を、色んな手法で説明するわけです。
 
もう1つは、「光をどう利用するか」。彼女の専門性というのは、メークの仕方そのものより、メークによってどうやって光を上手に利用するかということなんです。そこを理解してから習わないと、単にプロの難しい手法を習うことになってしまうんですね。見かけをまねするというより、本質をまねするわけです。
 
大事なことは、相手の1番の本質を理解すること。その上で、自分が相手の本質的なやり方を、どこまでだったら自分のアレンジでまねられるかを考えるわけです。ですので、必ず2つか3つのポイントに絞りこんで、相手の能力を理解すること。そこを基点として、相手の話を聞いて、自分でまねられることを考える。そして、それをさらに愚直に繰り返してまねるということです。この3点がセットになって初めて、自分の身に付くんじゃないかと思います。

頭ではなく皮膚感覚で学ぶ

本物の人に直接会って学ぶと、五感で学べます。頭じゃなくて身体で覚えられるんです。紙や映像だけでは言葉が弱いので、実際に皮膚感覚とか身体感覚を学ぶためには、直接会うことが重要になります。そして、なかなか言葉で説明できないことも、何回も繰り返し、気が付いたら自分の感覚でできるようになっていることが大事なんです。運動みたいなものですね。
 
ただ、本物が何十年かけて完成させてきた物を、私たちが短期間でまねて追いつけるわけがありません。例えば、ユニクロの人に聞いたんですけど、柳井さん(ファーストリテイリング会長兼社長)の代わりというのは、なかなかできないみたいですね。6種類くらい売れ筋があって、どの3種類に絞るかという時に、柳井さんの意見はやはり別格だって。ですから、私たちができるのは、せいぜい半年や1年分の過程をスキップできるくらい。そこで無闇やたらにやると、続かずに終わっちゃいます。だから、何十年の本物に対して、1年分くらいまず学んで、その後は自分で積み重ねていくんです。
 
学ぶ対象は、自分が興味のあることだったらどんどんやってみるといいです。今は学ぼうと思えばネットで簡単に検索もできますし、DVDも売っています。学ぶ材料には事欠かないですよね。なので、自分の興味がどこまで広がるかによって決まるわけで、勉強の仕方がボトルネックにはならないと思います。
 
そして大切なのは、楽しく学ぶことです。勉強とかって、すごく辛そうですけど、もっとのんきに楽しく、レジャー感覚で学びましょうって感じです。勉強っていうと身構えちゃうから、趣味感覚で続けるんです。私は、会計士の勉強も結構楽しんでいます。数字が好きなので、年次報告とか統計とか、今もよく見ていますよ。ですから、学ぶ時にも自分が楽しいことだけ、セレクトしちゃえばいいんです。
 
人生のミッションに学びをどう役立てるか
 
10月の講演は、「まねる力が人生を変える。私たちを幸せにする」というテーマにしています。色んなことをお互いに教え合って集団生活をすることが、人生にとって一番の学び、成長になります。自分の学んだことをほかの人に教えてお互いに成長し、いかに相手を幸せにできるかということが、自分たちが幸せになる鍵だと思うんです。学ぶことは自分のためですが、その結果として、社会やコミュニティー、会社に貢献できるようになって初めて、自分が幸せになれると思います。だから自分がやりたいことに対して何が足りないか、その足りないことを誰から学び、まねればいいのか考えると、毎日が楽しく過ごせるんじゃないかな。
 
日本人が日本以外の場所で暮らすのって、すごく学びが大きいと思います。ありとあらゆる事柄が新鮮なことの繰り返しですから、海外に暮らす人って恵まれているんですね。色んな物を見たり、色んな人と会ったりして、いかに毎日新しいことを学びながら、自分を成長させるか。「こういうことをやりたい」っていう人生のミッションに、学びをどう役立てればいいかっていう繋がりを、一緒に考えてほしいなと思います。

最新著書 好評発売中

『まねる力』 (朝日新聞出版)

『勝間和代 脳力Up』 (講談社)

ライトハウス創刊20周年 記念イベント第16弾
勝間和代&本田直之 講演会レポート

2009年10月16日金曜日、ホリデーイン・トーランスにて、ビジネス書ベストセラー「レバレッジ」シリーズの著者として有名な本田直之さんと、経済評論家・公認会計士の勝間和代さんを招いて講演会を開催した。
会場は230人の観客で満席。本田さんの愛読者や、「カツマー」と呼ばれる勝間さんの熱狂的なファンが多数集まり、ビジネスセミナーでは異例の女性の来場者が目立った。当日の講演内容をダイジェストで紹介する。
 
勝間和代 

かつま・かずよ◎東京生まれ。経済評論家、公認会計士。早稲田大学ファイナンスMBA、慶応大学商学部卒業。19歳で会計士補の資格を取得し、大学在学中から監査法人に勤務。現在、株式会社「監査と分析」代表取締役、内閣府男女共同参画会議議員、中央大学ビジネススクール客員教授として活躍中。ウォール・ストリート・ジャーナル「世界の最も注目すべき女性50人」選出。少子化問題、若者の雇用問題、ITを活用した個人の生産性向上など、幅広い分野で発言をしている。www.katsumaweb.com

 

本田直之 

ほんだ・なおゆき◎明治大学商学部産業経営学科卒。サンダーバード国際経営大学院経営学修士(MBA)。外資系企業を経て、営業支援アウトソーシング業経営に参画、JASDAQ上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業の取締役やアドバイザーとして、少ない労力で多くの成果を上げる“レバレッジマネジメント”のアドバイスを行う。また、海外で活躍する日本人起業家・ビジネスパーソンを応援する目的でJBN(在留邦人ビジネスネットワーク)を設立。東京、ハワイに拠点を構え、年の半分をハワイで生活する。www.leverageconsulting.jp

 

■勝間和代さん講演

達人から話を聞き、真似ることを繰り返せば 私たちは新しい自分になれるんです
 
『まねる力』というのは、優れた人と実際に会ったり、書籍からどうやってその力をパクるか、そのコツを書いたものです。変革の人、いわゆるチェンジメーカーたちにインタビューして、そこから何がエッセンスであるのかをまとめて、共有しようという内容です。
  
「学ぶ」と「真似る」というのは語源が同じで、違いは何かと言いますと、体系的に勉強することを「学ぶ」、いわゆる見て盗むという世界のものを「真似る」と呼んでいます。真似ることは、スポーツの学び方に近くて、良いコーチに付いてアドバイスを受けながら無意識レベルで行動できる、そこまで行かないと到達しないんです。
  
さまざまな人がスキルを習得するのに、大体1万時間かかるんですね。毎日8時間ずつやっても1250日、3~4年ほどかかる。なので、自分が何か習得したいのであれば、ひたすらやるしかない。ですが、あんまりたくさん真似ようとしても無理なんですよ。なので、ポイントを決め、それ以外は逆に止めちゃうぐらいの根性がないと、結局中途半端になっちゃうんです。
 
真似る、学ぶという知的生産を、皆さん暗記したりするものだと思っている方が多いと思うんですが、実は体感で学ぶものなんです。視覚、聴力といった感覚で学ぶ。五感で学ぶのが1番いいんです。で、結局自分が誰から学ぶかというと、周りの人から無意識に学んでいるんです。私たちが意識的に学ぼうとする時間は1日に大体30分~1時間ですが、起きているうちの残りの17時間ぐらいは、無意識に周りから学んでいるんです。無意識が意識的に学んでいる時間の17倍影響しますから、勤勉な人に囲まれれば自分も勤勉になりますし、効率良く仕事する人に囲まれると、自分も効率良く仕事ができます。

いい物は手に入れ付加価値を付ける
 
知的生産とは、ある物を組み合わせ、そぎ落とし、新しい物を創り出す、その繰り返しでしかないんです。だからこそ真似る力を使って、色んな知的生産を行っている人たちの話を聞いて、そのなかでどの知的生産の製造ラインが自分にとって参考になるのか勉強し、持ち帰って自分独自の知的生産ラインとして組み直すんです。もし自分がなるべくストレスのない人生を生きようと思ったら、自分で知的生産能力を高めるしか、今のところ現実的な方法はないと思います。それを高めるためには、人の能力を徹底的に真似る能力というのが必要なんです。
 
私の信条は「徹底的にパクれ」=「TTP」です(笑)。いい物は手に入れ、付加価値を付けるのがTTPなんですね。うまくいってる人がいたら、徹底的に観察して、機会があればコツを聞く。コツを聞くのがなぜ大事なのかと言うと、人間って学習方法が消去法なんです。要は何かやってみて、上手くいかないことを消去し、上手くいった物だけを残すんです。こうやったら上手くいかないということを全部学習して、幹が残る。そして、幹について教えていただくのがすごく大事なんです。色んな達人の話を聞いても、完全にコピーできるわけないですから、いいエッセンスだけを手に入れて、自分が持っている幹に枝として付けて、自分のスキルを生かす方法に使うんです。

認知のスイッチが入り初めて行動できる
色んな人から話を聞くというのは、私にとってOSのバージョンアップ。私たちは、明日から役立つ知識というのを求めがちです。それよりもっと大事なことは、皆がやっていることの根幹には、どういう基礎スキルがあって、その基礎スキルを自分にインストールすることによって、自分の能力がこういう風に上がるんじゃないかといったことを考える時間なんです。
 
毎日、毎日が同じ事の繰り返しのように思えたとしても、それをコツコツ続けることによって、実は昨日より今日、今日より明日の方が、少しずつ新しいことも考えられるようになってきますし、色々なことを学べるようになる。私たちは、あることについて認知をして、「やらなければいけない」とわかることでスイッチが入り、そこで初めて行動できます。その認知のためのひとつの方法として、すでにできている人から話やコツを聞いて、スイッチを入れてもらうんです。そうやってスイッチを入れことが変わるということで、そのために真似る、すなわち達人から話を聞くということ。それをちょっとでも多くやることで、私たちは新しい自分になれるんです。

 

■パネルディスカッション

Q:勝間さんのような女性になりたいと真似るのですが、疲れて挫折してしまうという方に、何かアドバイスは?
勝間:
コンピューターに例えると、人によってハードディスクが大きい人、CPUが早い人など、構成が違うんです。だから、むやみに誰かのアプリケーションを真似ると、くたびれちゃう。その人がやっていることをOSレベルにまで落として考え、OSをコピーしてから自分のアプリケーションに上げる、というような習慣を付けると、無理がなくなるかな。そういう習慣は、身近なことからやってみるのが、一番わかりやすいと思います。
 
Q:ダラダラした生活は、やはりダメなんでしょうか?
本田:
その人にとってハッピーだったら、全然いいと思うんですね。他人と比べる必要はなくて、自分がどうしたいか。ただ、自分が本当にやりたいことは何なのかということを考えた上で、判断する必要があると思うんですけど。
勝間:それで本人が将来に不安を感じない、人生に不満足を感じていないのであれば、自由な人生です。逆に口ではそう言っていても、心の中では不安を感じていたり、努力の仕方がわからないから、努力しない人生を無理に自己肯定しているのであれば、それは不幸なことなので早めに対処するのがいいと思います。
 
Q:「無能な働き者」がいけない具体例を教えてください
本田:
スポーツでも、上達の理論やメソッド、テクニックを無視して、とにかく根性でやっても努力は報われません。基本の部分が足りない人には、レクチャーしてあげたり、本をすすめるようにしています。
勝間:無駄な努力は、努力しないよりたちが悪い。無駄な努力をしている間、他の努力をする機会、時間を失ってしまうからです。リターンを考えた努力をする癖を付けてください。
 
Q:会場の皆さんにひと言。
本田:
これだけ良い環境に住んでいるのですから、日本にいたら絶対できないことをやらないのは、とてももったいない。ぜひ、チャレンジしてみてください。
勝間:今後も皆さんと継続的なコミュニケーションを持てたらなと思います。私が発信するだけでなく、意見や感想、疑問などお寄せいただければ、できるだけのお答えをしたいと思います。
 
(2009年11月16日号掲載)

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