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ライトハウス編集部
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「日本人の美しさ」inロサンゼルス開催
去る10月11日日曜日、Redondo Beach Performing Arts Centerにて、ジャーナリストの櫻井よしこさんを招いて講演会を開催した。
明治時代の良き日本人像から現代の教育問題までを、
650人の観客を前に、たおやかな口調で語った。
また、第2部では、プリンストン日本語学校高等部主任の冷泉彰彦さんを迎え、櫻井さんと対談。民主党に政権が変わった日本の今後を語っていただいた。

どこにいても日本人として立派に生きていく。
そうすることで、世界の人々から尊敬され、
立派な日本という国を作る機会になる



■第1部 櫻井よしこ講演

「日本人の美しさ」は歴史の中から生まれる

「日本人の美しさ」というのは、日本人が築いてきた歴史の中から生まれてきます。戦後の日本は、ひたすら前を向いて歩んできました。しかし、現在の私たちの生活が、過去の文化、文明と切り離せないものだということに、私たちは気付かなければいけません。

日本の原点を教えてくれるのは、古くからの「日本人の心」ではないかと思います。江戸時代には、多くの人たちが自分の果たした役割を書き残し、それを幕府が審査して、褒美をあげていました。それらの多くが、「親の面倒を看た」といった、人のためになることをしたと書き、「発明をした」などの自分自身が立派な仕事をしたと書いた人は、驚くほど少なかったのです。つまり、日本独特の人と人との絆は、自分ではなく、他者が中心であるということだと思います。


幕末から明治の始めには、多くの外国人が日本を訪れました。日本は遅れた国だと思っていた彼らは、日本を実際に訪れてみて、本当にびっくりしました。例えば、開国の2年前に日本にやって来たイタリアの海軍中佐、(ヴィットリオ・)アルミニオンは、「下層の人々が、日本ほど満足そうにしている国はない」と書き残しました。ジャパノロジストのE・モースは、「道徳や品性というものは、西洋では教育を通して与えられるものだが、日本人はこうしたものを生まれながらに持っている」と、書いています。彼らを驚かせた日本の文化、文明の水準の高さに、私たち日本人がもう1度気付き、自信を持つべきだと思います。

1920年代初頭の国際社会の再現?

しかし、この美しい文化、文明は、1853年に開国した途端に蝕まれ始めました。

黒船来航から3年後、初代駐日公使のタウンゼント・ハリスが、下田にやって来ました。その2週間後にはアメリカの国旗を翻させ、日記にこう書きました。

「変化の予兆がする。この国の民の真の幸福にはつながらないであろう。不安の時代が到来する。民にとっての不安であり、不幸であるかもしれない」。

ハリスは、アメリカやヨーロッパの文明が、遥かに優れたものであると考えていました。しかし、優れた文明が国民を幸福にするならば、欧米の文明は日本の文明に劣っていたということを、彼は認めていたことになります。国際政治とはこういうものです。いかに優れた文明を築き、その中で人々が心優しい絆を築いているとしても、地球上にほかの多くの民族が住む限り、民族間の関係はまた別の次元で展開されるのです。つまり、日本は無力だった故に、美しい国土の一部を奪われ、美しい文明を変えていかざるを得ませんでした。

それから百数十年が過ぎ、平成の時代の今、国際社会が非常に大きく変わってきています。

約90年前の1920年代、アメリカは見事に外交方針を変え、その中で我が国は孤立していきました。ワシントン海軍軍縮会議では、米中が主に諮は かって、国際社会における日本の後ろ盾であった日英同盟を破棄しました。そして、同会議で米、英、中、仏対日本という対立構造ができ、日本は孤立していきました。これが、今また起きようとしています。


「日本人らしい生き方」とは何かを考えてみる

ブッシュ政権第2期の時から、米中の結び付きが顕著になってきました。アメリカは、中国は対立するには大き過ぎると考え始めたのです。オバマ政権になり、今年7月下旬の米中戦略経済会議では、経済、安全保障、テロ問題、地球環境問題などが話されました。しかし、ウイグルの人々の抵抗運動の最中にも関わらず、オバマさんは人権問題についてひと言もおっしゃらなかった。

これは、人類、そして日本人にとって、極めて深刻な変化であると私は考えております。超大国2つが力を合わせ、異民族の弾圧にも目を向けないといったルールが確立されるとすれば、これは重大なことであります。さらに、この構図の中に、かつて日本が味わった孤立への道が生まれてくるのではないでしょうか。


私は、オバマさんを責めているのではありません。むしろ、日本人として今、本当に多くのことを考えなければなりませんと、申し上げているんです。その場面、場面で、そこにいる人々、政府が、どのような言葉を発し、どのような行動を取ったかによって、歴史は構築されていくわけですから、私たちの行動と言葉と要望で、それぞれの政府をどこまで動かすことができるかというのが、まさに歴史を築く力なのです。そのことをぜひ、アメリカに住む皆さんにも認識していただきたいのです。

さらに、人間は自分ひとりのために命をもらったのではありません。これから生まれてくる人々のための自分でもあることを認識し、「日本人らしい生き方」とは何かをもう1度集中して考えてください。

そして、どこにいても日本人として立派に生きていく。そうすることによって、世界の人々も幸せにして、世界の人々から尊敬され、立派な日本という国を作る機会になるのだと考えていけば、毎日が充実し、生きがいにつながっていくのではないかなと思います。お互いに一生懸命頑張りましょう。


■第2部 櫻井よしこ×冷泉彰彦 対談

私たちが本当に「純日本人」になるには、歴史を知らなければいけない(櫻井)
最近の日本は、世代間に変な対立ができている (冷泉)

子供に遺す1番の財産はお金じゃない

冷泉さん(以下R):今回の日本の民主党の政権交代以前に、私は、きちっとした政治的な対立軸を作らなければならないと、若手のビジネスマンに言ったんです。そうしたら、その方は政治的な対立軸ではなく、「世代の対立だ」って言うんです。

「振り込め詐欺」ってありますよね。犯人グループを検挙してみると、反省の色がまったくないんです。要するに、お金を持っていても使い道がなく、人の話に簡単に騙されるような人からお金を騙し取っても、当然だって言うんですね。最近の日本では、年金問題も含めて、世代間に変な対立ができているんです。

櫻井さん(以下S):お金に起因するこの世代間の曲がった関係は、直していけると思います。例えば、日本の高齢者の世代は、自分は倹約して、子供たちに何か遺してあげたいって一生懸命働きます。その人たちには持ち家も貯金もある。ただ、それをどんな風に使うか。

子供に遺す1番の財産は、1千万のお金じゃないんです。このお金をいかに上手に使って、自立の精神で最後まで生き生きと暮らすか。立派な人間の生き方、そして夫婦仲の良い姿を子供や孫に見せることが、1番の財産だと思うんです。それに気付くことで、問題は少し解決されてくるんじゃないかと思います。

:ご高齢の方と話をしますと、自分の人生で、まだやり残したことがあって、本当にご苦労されていて、若い世代に任せることができないと。しかも、色んなことが心配で、お金は持っておくし、それを次の世代に回すことはできないというお気持ちを持たれています。


:福井県の事例をお話しします。福井県は、登校拒否や犯罪発生率の低さや子供の成績の優秀さなど、色んな面で日本の上位5位に入っています。その福井県の特徴は、3世代で住んでるご家族が圧倒的に多いことなんです。そのなかで、お母さんが働く。おじいちゃんとおばあちゃんが、昼間お孫さんの世話を看る。ここで世代のつながりができるのです。家族の収入が増え、子供を高学歴のために教育してあげられる。私は、そこに解決法があると思うんですよ。暮らし方そのものを、少しずつ心がけて変えていかなければいけません。

聖徳太子をキーに日本を学ぶアメリカ人学生

:教育の問題はどうでしょうか?

:日本の教育を考えると、心配でなりません。小学校から高校までは、教科書がスカスカのゆとり教育。大学1年生では、高校3年までに知っておくべきことを教え、3年の2学期からは就職活動ですから、勉強しません。内定をもらうと、4年生はもう勉強しませんから、日本の大学教育は、実質1年と1学期なわけです。


卒業生のうちおよそ1割が大学院に進みますが、その7割が外国人です。日本の学生は、学ぶ意欲が中国を始めとする他国の人に比べてものすごく劣ります。日本の大学院では、私たちの税金を使って、日本人ではなく他国の学生たちを教育しているんです。日本の教育は、本当の危機に直面しています。

:プリンストン大学で、日本研究をしている学生の研究テーマを聞くとびっくりします。例えば、「聖徳太子の魅力を、今でも日本の庶民は大事にしてお参りしてるってことに、ものすごく日本を感じた。それをキーにして日本を理解していくと、どんどん素晴らしい文明だってことがわかる」って、アメリカ人の大学生が言うんですよ。

:日本では、そういう学生は1人もいないですよね。今から始めなければいけません。日本の歴史を知らない人は、日本人になり切っていないんですね。だから、私たちが本当に「純日本人」になるには、歴史を知らなければいけない。聖徳太子がどんな人物だったのかとか、こんなに長い間語り継がれているのはなぜだろうとか、そこから素晴らしさがどんどん見えてきますよね。


急がば回れで、回り道をして、その道をたどり始めることが、再生につながっていくと思います。1つの成果は10年で出ると、私は思っています。10年かかって教育をしっかりやれば、多くの人が学んでいきます。

今、歴史に耳を傾けずに、「日本がバカでつまらない国だ」と言う人は放っておいて、本当に興味を持つ人に対して、「一緒に学んで、歩み始めましょう」と呼びかける。そうすることで、10年後には、少なくともどこかにたどり着くと思うんです。その先は、私よりもっと若い人たちが受け継いで、またもうちょっと先に進んでいけば、大丈夫なんじゃないでしょうか。


櫻井よしこ
さくらい・よしこ◎ベトナム生まれ。新潟・長岡高校卒。ハワイ大学歴史学部卒業後、1971年『クリスチャン・サイエンス・モニター』紙勤務。75年アジア新聞財団ニュース記者。78年アジア新聞財団東京支局長。80年NTVニュースキャスター。現在、政策提言の民間シンクタンク・国家基本問題研究所理事長として活躍中。94年度SJ賞(女性放送者懇談会賞)受賞。95年大宅荘一ノンフィクション賞受賞。98年菊池寛賞受賞

冷泉彰彦
れいぜい・あきひこ◎1959年東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒業。福武書店(現ベネッセ・コーポレーション)、ベルリッツ・インターナショナル社、ラトガース大学講師を歴任後、プリンストン日本語学校高等部主任(現職)。93年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」、『Newsweek日本版』公式HPにブログを寄稿中。NHK衛星放送の『cool japan』ではご意見番として、『朝まで生テレビ』(テレビ朝日)にも出演


(2009年11月1日号掲載)