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現地情報誌「ライトハウス」が過去に取り上げた、アメリカ芸能界ゴシップ情報や、著名人・有名人へのインタビュー記事など。

ライトハウス編集部
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坂東眞理子ロサンゼルス講演会報告

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 去る8月31日、日本で大ベストセラーとなった『女性の品格』の著者、坂東眞理子さんがレドンドビーチ・パフォーミングアーツセンターで講演会を開催した。当日は1千人を越える観客が来場、坂東さんの人生観や、今後の日本社会で女性はどうあるべきかなどの話に、熱心に耳を傾けた。
 第2部では、在ロサンゼルス日本国総領事館の元領事、海部優子さんとの対談が行われ、第1部とは違った和やかな雰囲気で、会場は大きな笑いと拍手に包まれた。


第1部 講演

男性と張り合わず
女性として生きる


 こんにちは。このロサンゼルス講演に、私自身がとても感動しています。

 さて、今の日本社会は豊かで、お金万能主義の風潮があります。そのため、「当たり前」とされてきたことが、どんどん失われました。

 日本は、若い女性にやさしい社会ですが、25歳を過ぎると急に周りの対応がきつくなります。かといって、まだ一人前になりきれていない。そういうつらさのなかで働く女性が読者の中心で、「肩の力が抜けました」「ほっとしました」という感想をたくさんいただきました。当たり前のことを当たり前に、長期的に頑張ればいいんだと、皆さんわかったのです。

 元々日本は女性が強い社会でした。表向きは男尊女卑でしたが、家庭内では女性が強かった。なぜなら、女性も働いていたからです。母親となった女性は尊重され、特に家長の母親は隠れた権力者でした。この風潮は昭和30年代くらいまで続きましたが、同時期の高度経済成長期に、男性は外で働き、女性は家庭で家事や育児をする体制になりました。日本の雇用体制も男性中心となり、女性は男性をサポートする存在となりました。

 しかしその後、時代の流れと共に社会も変わり始め、バブル以降は女性の生き方に再び変化が訪れました。女性の進学率や就職率は上がり、日本政府も、働く女性を応援する態勢を本格的に整えようとしています。

 これからの女性は、男性と同レベルで働こうとするのではなく、女性らしさを大事にしながら生きていく。そうすることで、日本社会に質的な多様性を提供することができるのです。


子供の教育は
多様な価値観で行う


 戦後日本は、「個性重視」「創造性向上」という発想に転換しました。本来、そういう高い目標を達成するには、きちんとした基礎固めが必要です。しかし今の日本では、基礎は二の次。いきなり個性や創造性を発揮させようとします。

 これからの日本人に必要なのは、バイタリティー。丈夫な身体と丈夫な心です。失敗してもくじけず挑戦する、こういう人間を育てなければなりません。そのためには、子供のしつけを変える必要があります。90点の答案に対して「何で100点取れなかったの」ではなく、「良かったね、90点じゃない!」と言ってあげる。スポーツや芸術なども評価するなど、色んな長所を認めるのです。子供たちは小さな成功を実感すると、それが小さな自信となり、やがては丈夫な心と身体を持った人間へと成長します。「子供を愛するのが親の責任」「何でもやってあげるのが愛情」と思っている親は、逆に子供たちのバイタリティーを失わせています。

 また、「人に迷惑をかけてはいけません」「早く自立しましょう」というしつけだけでは、子供の人生は寂しく、もったいないものになります。せっかく生まれてきたのだから、社会に役立つ人間に育てる必要があるのではないでしょうか。


第2部 海部優子さんとの会談

嫌なことでもやると
守備範囲が広がります


海部:私が外務省に入った頃も女性が少なく、上司から「外務省に入ったからには女性を捨てなさい」と言われました。でも全部捨てるのはかわいそうなので「お茶くみしなさい」と(笑)。
坂東:私も1年間、お茶くみをしましたよ。当時の総理府には、「女性の問題」を扱う部署はありませんでした。在職中、私は3回も「女性の問題」を扱う業務に携わりましたが、実際は、それ以外の仕事の方が長いのです。しかし、関係のない仕事の経験が、後で自分のやりたい仕事の役に立つんです。嫌でも、やるべきことはやる。すると自分の守備範囲が広がります。
海部:女性の大役である出産と育児に関してはどうですか?
坂東:私は、子供を0歳から保育所に預けました。迎えが時間的に不可能でしたので、近所の方にお願いしていましたが、たまに都合が付かないと、母に富山から夜行電車で来てもらいました。その後父が亡くなり、母が私と一緒に住み始め、子育てを手伝ってくれるようになりました。そこでわかったのですが、子育てって1人でやると重荷でも、子供に愛情を注いでくれる誰かとやると、とても楽しい。
海部:私の場合は、幸い夫が手伝ってくれました。
坂東:アメリカは男性が協力的。日本と違うところですね。
海部:そうですね。アメリカの女性の社会進出は目覚しいのですが、保育園は高いし、6時以降は預かってくれません。小学校に入っても送迎が必要で、育児はとても大変です。
坂東:それなのに、なぜアメリカの女性は重要任務に就けるのかと考えると、アメリカは自由がきくというか、「この日は仕事、この日は子供と家庭」という風に、自分でメリハリを付けられるのでしょうね。
海部:そういう意味でアメリカ社会は、女性は働きやすく、男性も育児に参加しやすい。
坂東:家庭や子育てと関わることで、男性の人生も多様化し豊かになります。日本のように、「男の人生は職場」だと、職場でうまくいかないとストレスで、家庭内暴力になることもあります。人生がシンプル過ぎて、多様性に欠けているのです。


身内だけでなく
他人にも無償の愛を

海部:これからアメリカで頑張りたいという日本人女性たちにメッセージはありますか?
坂東:何でも上手になろうとせず、得意なところをまず完成させ、そこから活動の場を広げていくのがいいでしょう。それから、応援してくれる人を持ってください。人間は、応援団がいると力を発揮できるものです。
海部:仕事を辞め、家庭で頑張っていらっしゃる女性へのメッセージは?
坂東:報酬のある男性の仕事に対して、無報酬だけど、社会と家族を維持するための重要な仕事があります。これを女性が一手に引き受けてきました。これからは、自分の身内だけに無償の労働をするのではなく、他人にも範囲を広げることで、社会と関わってください。日本人女性は世界でも健康的で、教育水準も高い。そういうパワーのある女性たちが、その力を必要とする人たちのために使い、彼らに愛を与えていただきたいと思います。


女性らしさを保ちながら生きる
そうすれば、日本社会にも
多様性が生まれます



講演2日前の8月29日、ミツワ・トーランス店内の三省堂書店で、日系メディアを招いての共同記者会見が開催された。

Q:『女性の品格』を出版されたきっかけは?

A:昭和女子大学学長に就任し、どんな女性を世の中に送り出すべきかを考えたことがきっかけです。また、公務員として子供を持ちながら男性社会で働き、そこから得た経験を若い世代に伝えたいと思ったからです。
Q:『女性の品格』を読む男性をどう思われますか?

A:読んでくださった男性方は、「女性だけでなく、男性、ひいては日本人全体にあてはまりますね」と異口同音におっしゃいます。本の後半の「いかに生きるべきか」「社会人としてどのように行動するべきか」については、男女共に共通するところが大きいと思います。責任を取れる人間、社会や周囲の人たちに配慮できる人間になることは、性別に関係なく大事です。
Q:男女では、品格に異なる部分はありますか?

A:男性は職業的な分野で、女性はプライベートな場で、それぞれ能力を発揮することが求められます。ですから、品格の基本的な部分は一緒でも、それぞれの役割に応えているうちに品格にも違いが生まれると思います。
Q:女性にこだわった理由は?


A:私自身が女性だからということもありますが、日本の女性自体が大きく変わってきていることも理由です。私の母世代の女性は専業主婦でしたが、私の世代は、子供が生まれたら仕事を辞める世代です。今の世代は仕事を続け、家庭だけでなく社会とつながりを持ちたいと思っている世代。私が生きている間だけでもこんなに変わっているので、女性が新たなガイドラインを必要としていると思ったのです。
Q:女性の品格が変わってきた原因は?

A:社会の繁栄や少子化などが大きな理由だと思いますが、それよりも、「個性の発揮や創造力の向上が1番大切」という思想の下、次元の高い目標を子供たちに期待するあまり、「基礎」がおざなりになったからだと思います。親として、子供に良い環境を作りたい気持ちはわかりますが、子供に苦労をさせないように何でもやってあげる親の増加が、色々な問題を生じさせているのだと思います。