ライトハウス創刊20周年記念イベント第4弾岩瀬昌美セミナー「絶対失敗しない!アジアン・アメリカン・マーケット攻略セミナー」

ライトハウス電子版アプリ、始めました

去る11月20日、弊誌のマーケティングコラム「ブランディング創造講座」の執筆者で、マルチカルチュラル・マーケティング会社のMIW社長・岩瀬昌美さんを迎え、「アジアン・アメリカン・マーケット攻略セミナー」を開催した。当日は、定員を大幅に超える90名以上の参加者が集まり、中国系、ベトナム系、韓国系マーケットへの関心の高さをうかがわせた。またセミナー最後のラッフル抽選会では、協賛のGlobal Access社提供の日本往復ビジネスクラス航空券が用意されるなど、会場は終始大いに盛り上がった。
 
 
 
 
 
 
 

南カリフォルニアは
巨大アジアンマーケット

マーケティングとはよく耳にする言葉ですが、一体何でしょう。例えば、50セントで作れる製品を3ドルで販売する場合、2ドル50セントにどんな価値を持たせるか、それを考えるのがマーケティングです。ご存知の通り、マーケティングは広告だけではなく、プライス、プロダクト、プレイス、プロモーションと色んな要素がありますが、プロモーションの過程で「誰に売るのか」を考えて始めて、対象ターゲットが明確化します。今回のセミナーでは、そのターゲットを在米アジアンマーケットにしぼり、お話を進めます。
 
2000年度のセンサス(国勢調査)によりますと、1990年から00年の人種別人口推移では、アジア系は49%増加。他人種を圧倒する勢いで増加しています。また、アジア系の5人に1人が南カリフォルニア在住と言われ、そのアジア系だけで街を作ったら、シカゴやヒューストンに匹敵する規模になります。また、アジア系1世帯当たりの平均所得は、非ヒスパニック系白人を抜いて5万7518ドルとトップ。教育水準も高いことから、今後も高所得者が生まれる可能性は高いと思われます。
 
アジア系の内訳では中国系が最多で、次いでフィリピン系、インド系、ベトナム系、韓国系と続き、日系は6位です。ですから米国企業は、中国語やベトナム語、韓国語などで広告を出しています。フィリピン人やインド人向けの広告が少ないのは、彼らは英語ができるので、それぞれの言葉の広告は他のマーケットに比べ必要性が低いためです。いずれにせよ、米国企業がアジアンマーケットを重視し、中国語、ベトナム語、韓国語に力を入れているのは事実ですし、南カリフォルニアに集中するアジアンマーケットは、マスメディアを通してマーケティングする際の格好のターゲットとなりますから、米国企業にとっても魅力的です。実際に米系の企業のマーケティングは、アジア系を重視しています。
 

日系マーケットへの
広告展開が少ない理由

同じくセンサスで、5歳以上のアジア系の実に77%が、家庭内で母国語を話すと回答しています。最高はベトナム人で93%。彼らはベトナム戦争後にアメリカに来ており、言ってみれば新しい移民。ですから、まだ家庭内での母国語使用率が高いのです。同じように、朝鮮戦争以降に渡って来た韓国系も87%と高水準です。
 
これに対して日系人は43%。日系移民の歴史は100年以上と長く、その家系を継ぐ4世・5世の日系人は、もはや家庭内で日本語を話しません。日系人人口は80万人と韓国系に次ぐ多さにも関わらず、そのうちの43%しか日本語を話さないわけですから、日系マーケットは34万人規模でしかないというわけです。200万人規模の中国系、100万人規模のベトナム系や韓国系マーケットに比べるとはるかに小規模。これが、米国企業が日系マーケットへの広告展開を躊躇する理由なのです。
 
また、アルハンブラやモントレーパークに広がるチャイナタウン、ロサンゼルスのコリアタウン、オレンジ・カウンティーのウエストミンスターにあるリトルサイゴンなどは、巨大エスニック・コミュニティーとして成立しており、企業のマーケッターには魅力的に見えます。しかし日系コミュニティーは、リトルトーキョーでもほんの数ブロックあるだけ。サウスベイ地域にも、外から見て分かるほどの日系コミュニティーはありません。ですから、限られた予算でマーケティングをする際、中国系、ベトナム系、韓国系が優先されてしまい、〝コミュニティーがない〟日系マーケットには予算を割かないのが、米国企業の傾向となっています。
 

何語をターゲットにするか
効率的なマーケティングを

アジア系で最多を誇る中国系を出身地別に見てみると、00年の段階でカリフォルニア在住の中国系のうち、32万人が中国本土出身。次いで、15万人が台湾出身、9万人が香港出身です。8年後の現在はもっと本土出身者が増えていると思われます。香港出身者が多かったサンフランシスコでもその人口は減少しており、86年には70%もいた広東語を話す香港人は、02年には53%に減少。逆に北京語を話す中国人が47%にまで増加しています。02年の移民状況でも、中国本土から6万人が渡米していますが、香港からはたった6千人。この数で推移していると考えれば、近い将来、在米中国系のほとんどが本土出身で占められることになります。ですから、これまで北京語と広東語を同等で広告を作っていた米国企業でも、北京語でのマーケティングが主流となっています。
 
また在米台湾人は、80年代には1万6千人だったのが、00年には29万人と膨れ上がりました。しかし、元々台湾人人口は少ないことから、彼らはもうこれ以上爆発的に増えないと思われます。
 
一般的に、韓国系マーケットには韓国製の物が何でも揃っており、日系が彼らをターゲットにマーケティングするのは難しいと思われがちです。しかし『コリアン・デイリー』紙による調査では、韓国系の人が選ぶ筆頭銀行は、バンク・オブ・アメリカで、全体の27・7%。次いで、僅差で韓国系のハンミ銀行が来ます。これは90年初頭に、米系銀行でバンク・オブ・アメリカだけが、韓国系マーケットに広告を出していたためです。人間は、最初に頭に刷り込まれた物を1番と考える傾向がありますから、ここ5年ほどで広告展開しているワシントン・ミューチュアルやウェルズ・ファーゴなどは太刀打ちできません。
 
ちなみに、母国語での広告が好まれるか否かのデータを見ますと、日系は30%しか歓迎しないのに対して、韓国系では80%、ベトナム系、中国系共に76%の人が好みます。つまりこれらのマーケットでは、その国の言葉で広告を作ると、大変喜ばれるということなのです。
 
これらのことを考慮し、限られた予算で効率的にマーケティングするなら、何語をターゲットにするかをよく考え、上手にマーケティングターゲットをシフトする必要があります。そうすれば、ターゲット数が多い割に広告料金がジェネラルマーケットより2桁ほど安いアジアンマーケットは、皆さんにとっても魅力的なマーケットになるに違いありません。
 

ラッフル抽選会でのひとコマ

左から、Global Access社長のウェインさん、ビジネスクラス往復航空券が当たったSAESHE Inc.の久保田美穂さん、講演者の岩瀬昌美さん

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