出張にかかる経費

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企業の国際化が進む昨今、ビジネスパーソンが世界各地を飛び回ることは半ば日常茶飯事と言えるでしょう。企業が国外に拠点を求めるのにはさまざまな理由がありますが、安価な労働力や新しい市場開拓といったことが主な理由です。1960年から70年代の高度経済成長期には多くの日本企業がここアメリカへ新しい市場を求めて渡ってきました。
 
そして90年代に入ると、より安価な労働力を求めてメキシコなどに製造拠点を置くことが多くなっていきます。これは日本国内の企業が東南アジアや中国などに労働力を求めた傾向と同じです。メキシコの中でも「マキラドーラ制度」と呼ばれる輸出向け製造業に対する多種多様な恩典が設けられている地域に進出する企業が多く、アメリカ国境と隣接している場所も多いので、居住はアメリカ、仕事はメキシコというスタイルの人も多いようです。
企業が国内よりも国外への比重を増やすに従って、現地の労働者への技術指導や新しい市場への営業活動といった目的での出張が必然的に増えます。今回はこれらの出張の経費計上の方法を説明していきます。

一般の経費

業務のために一般的に必要(Ordinary and Necessary)なものであれば経費計上が可能で、飛行機の旅券代、タクシー・バス代、宿泊費、食事代、電話・インターネット代などが当てはまります。他にもクリーニング代や荷物の送料まで計上可能です。食事代は一般的なビジネスミーティングなどと一緒で、税務上は50%までしか計上できません。従って、出張中の食事代は旅費とは別に記録しておくべきです。

海外出張

米国外への出張の際は、アメリカを離れていた日数によって経費に計上できる条件が異なります。
 
7日以下の場合:米国外の滞在が連続7日以下であれば、途中で休暇を挟んでも旅券を含め、全てのビジネス目的の経費を計上できます。
 
8日以上の場合:米国外に連続8日以上滞在する場合、ビジネス目的の日数とそれ以外の日数の割合を計算します。全体の75%以上がビジネス目的の場合、旅券は全額控除されますが、75%未満の場合は割合に応じて控除額が減額されます。
 
日数の算出方法は、出国日は数えず帰国日は数えます。そして、帰国日はビジネス目的としてカウントします。
例えば、アメリカから日本へ3週間出張し、うち1週間が休暇だったとします。出張中の仕事関連の総支出が4000ドル(内訳:旅券1500ドル、宿泊費2000ドル、雑費500ドル)であったとします。実際に仕事をした日数の割合は66.6%(2週間÷3週間)となり、75%を下回っているので経費としての旅券1000ドル(1500ドル×66.6%)のみが控除可能です。
宿泊費も休暇中の分まで含まれている場合は同様の処理を行いますが、今回は休暇中の宿泊費を自費で支払ったため2000ドル全てが控除可能です。従って、この出張での控除可能な経費は総額3500ドル(旅券1000ドル+宿泊費2000ドル+雑費500ドル)です。雑費の中に食費が含まれている場合はその半額のみが控除可能となります。

日割換算(Per Diem Rate)

出張で発生した実費ではなく、出張先と日付によって決められたレートで経費を計上することも可能です。例えば、東京23区内への出張は1日当たりの宿泊200ドル、食費196ドル(2014年10月1日時点)と定められています。日割換算を選択する場合は、実費の代わりにこれらのレートを使用しなければならず、一度使用すると1年間を通して使い続けなければなりません。
 
(2014年10月16日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

 
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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