健康保険に対するぜいたく税

通称「Cadillac Tax」と呼ばれるぜいたく税は、一般的に必要とされるものよりも高水準の健康保険に加入している場合に、その水準を上回る金額に対して課税されるものです。


導入の経緯

国民が適切な医療行為を受けられるようにと、アメリカでは2014年から国民の健康保険加入が義務付けられました。しかし、今まで健康保険に加入していなかった低所得者層を加入させるには、費用の一部を国が負担する必要があります。そこで目に留まったのが、福利厚生で健康保険が充実している企業に勤める従業員です。一般的な水準を上回る健康保険でカバーされている従業員からぜいたく税(Cadillac Tax)を徴収することで、国家負担分を軽減する狙いがあります。
 

NBAの例

少し話が逸れますが、プロバスケットボールリーグの「NBA」では、チームごとに先発枠15選手の総給与額の上限(Salary Cap)が設けられています。しかし、上限を超えてでも「有名で技術力の高い選手を集めたい」と考えるチームもあります。そこで誕生したのがぜいたく税(Luxury Tax)です。これを支払うことによって、総給与額の上限を超える選手を獲得することが認められ、その税金は他チームに均等に分配されます。ぜいたく税は「税金」と呼ばれていますが、リーグの罰金であり国に支払うわけではありません。健康保険とスポーツを単純に比較することはできませんが、今回のトピックの理論と似ていると言えるのではないでしょうか。
 

課税対象者

企業が提供している健康保険の年間保険料で、個人プランで1万200ドルを超える場合、または家族プランで2万7500ドルを超える場合、その余剰分に対して40%のぜいたく税が課されます。65歳前に退職したり、職業上危険な環境で仕事をする必要がある場合は金額が高くなり、個人プランは1万1850ドル、家族プランは3万950ドルを超えると、やはりその余剰分に対して課税されます。
例えば、個人プランで年間1万2000ドルの保険料を支払った場合、720ドル「(1万2000ドル-1万200ドル)×40%」の税金を納めまなければなりません。また、家族プランで年間3万2000ドルの保険料を支払った場合は、1800ドル「(3万2000ドル-2万7500ドル)×40%」の税金を納める必要があります。
ここでいう保険料とは、企業と従業員が支払った保険料や、雇用主負担分の医療貯蓄口座(Health Saving Account)などを含みます。それに対し、損害保険や労災保険、従業員負担分の医療貯蓄口座などは含みません。
 

問題点

高齢や持病が原因で高額な健康保険に加入する必要のある人に対しても、ぜいたく税は適用されます。必要以上の医療を受けるために高額な保険を買っているのではなく、本当に必要で加入しているのに不公平と思う方も多いかもしれません。
現時点で、国民の16%がぜいたく税を課税される対象になると言われていますが、これだけではオバマケアを補助できるだけの金額を賄うことができません。それに加え、18年に向けて健康保険の費用を削減する企業が多くなることが見込まれます。それによって失われるであろう税金を補てんするために、閾しきい値が下がったり、税率が上がったりと、基準が変更される可能性も高いです。
 
(2015年7月16日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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