確定申告の税額控除

確定申告の税額控除

確定申告を作成する際に、どの税額控除(Tax Credit)が該当するか知ることは重要です。税額控除は税金を計算した後、税額から直接、控除されます。確定申告は終わったばかりですが、来年のために今から押さえておきましょう。

子どもや学費に関する控除

子女養育費税額控除(Child and Dependent Care Credit)は、13歳未満の子ども(扶養家族)のベビーシッターやデイケアなどの費用が対象の税額控除です。所得に応じて基準額の20~35%が控除可能です。夫婦合算申告の場合は、夫婦共に働いていること、扶養家族と該当課税年度の半年以上同居している必要があります。基準額とは、それらの費用の支払額、子ども1人当たり3,000ドル(2人目以降は6,000ドル)に対し、夫婦の稼働所得のいずれか低い方の金額を元に算出します。
子女税額控除(Child Tax Credit)は、納税者の17歳未満の子ども一人当たり、年間1,000ドルを控除できます。
高等教育税額控除(American Opportunity Tax Credit)では、大学の授業料や関連する費用を2,500ドルまで控除することができます。調整後総所得(Adjusted Gross Income)80,000ドル未満、夫婦合算申告の人は160,000ドル未満の納税者が適用対象です。適用期間は4年で、少なくとも1学期間、ハーフタイムで就学している必要があります。
生涯学習税額控除(Lifetime Learning Credit)も大学の教育費と相殺する目的で定められた控除の一つです。適用期間は定められておらず、納税者1人当たり、最大2,000ドル(年間10,000ドルの教育費の20%)まで控除が受けられます。

 

勤労所得税額控除

アメリカの勤労所得税額控除(Earned Income Tax Credit)は、低所得者の労働意欲を高めることを目的に制定され、条件を満たせば、還付金が申請できたり、所得税に控除が認められたりします。税額控除の金額は、納税者の所得、19歳以下で納税者と同居など複数の条件を満たす適格扶養児童(Qualified child)の有無や人数、独身、夫婦合算申告などの申告内容により異なります。
 
勤労所得税額控除が認められるための基本条件は以下になります。
・納税者、扶養者、適格扶養児童全員がソーシャルセキュリティーナンバーを保有している
・夫婦個別申告ではない
・2016年度内の収入に関して以下の条件を満たしている。①納税者の年間投資所得(Investment Income)が、3,400ドル以内、②外国所得控除(Form2555 or Form2555EZ)を申請していない、③16年度の所得金額が、少なくとも1ドル以上である

 

外国税額控除

日本など、アメリカ以外で支払った所得税は項目別控除(Itemized Deduction)、または外国税額控除(Foreign Tax Credit)で控除できます。アメリカ国外で得た所得が対象となり、控除は1年の繰戻と10年の繰越が可能です。
税額控除の上限は「(米国外の所得÷全世界所得)×アメリカの税額」で求められます。アメリカの税額とは、全世界所得に対してアメリカの税率を掛け合わせて算出された税額です。
アメリカ・カリフォルニア州は外国税額控除が認められていません。この控除に関する租税条約は米政府と各国が交わした取り決めで、州と交わした取り決めでないからです。カリフォルニア在住の納税者は全世界所得を申告する義務があるので、海外所得に対してカリフォルニアと外国から二重課税されます。
 
(2016年5月1日号掲載)

項目別控除とは?

項目別控除(Itemized Deduction)とは、 自分でさまざまな支出を申告して所得控除を得る方法です。どのような支出が控除できるか知っておくことで、確定申告の際により多くの所得控除を確保できます。

税法上で米国居住者と扱われる人は、確定申告で、決められた額を申請する定額控除(Standard Deduction)か、項目ごとに細かく申請する項目別控除が利用できます。項目別控除は定額控除以上の控除を利用できる場合もあり、多くの人が項目別控除を選択しています。項目別控除は大別して6つのカテゴリーがあります。

医療費(Medical Expense Deductions)

自己負担した医療費の一部を申請できます。具体的には、調整後総所得(Adjusted Gross Income:総所得から決められた所得控除を引いた所得)の10%以上を医療費として自己負担した場合、10%を超えた金額を医療費控除として申告できます。対象となるのは、診療費、入院費、医薬品費、医療器具、コンタクトレンズやメガネの購入費用などです。

税金(Taxes You Paid)

連邦、州、自治体等に対象期間内に払った各種税金が対象です。不動産税、固定資産税、自動車の登録費用等に加え、前年分の所得税も対象になります。

利子(Interest You Paid)

利子も控除の対象です。住宅ローンの支払いに含まれる利子はここで申告します。ローンを組んでいる銀行から届く「Form 1098」という書類で支払いを証明できます。

寄付(Charitable Contribution)

寄付を行った場合、その金額を控除として利用できます。金銭でも物品でも申請できますが、IRSが認可している特定団体への寄付のみが対象です。

事故や盗難損失(Casualty and Theft Losses)

事故や犯罪などに巻き込まれた場合、被害額を計上できます。利用できるのは、調整後総所得の10%を超えた額のみです。賠償が行われた場合、内容によっては課税収入として計上する必要が出てきますので、裁判所からの賠償命令に目を通しておくことが必要です。

仕事の費用およびその他の控除

会社から償還されない仕事関係で使った費用のうち、調整後総所得の2%を超過する額を計上できます。また、確定申告作成のために支払った会計士費用もここで計上できます。ただし、この2%のルールに該当しない雑費もあります。主に、ギャンブルによる損失、故人のために支払った遺産税、償却債権保険料などです。
項目別控除は、多額の支出があった年にはぜひ利用したい制度ですが、気を付けなければならないのは監査の対象になった場合、ここに記入した事柄の証明を求められる可能性があることです。これらの支出は一部を除き、当局に報告されない取引、つまり自己申告です。悪質な確定申告作成サービスでは、依頼人を喜ばせるために適当な控除をでっちあげて記入し、還付金を捏造することがあります。もちろん、それが税務当局に発覚した場合、その支出を証明できなければペナルティーと発覚した期間分の利息が上乗せされた追徴金を支払わなければなりません。虚偽の申告は大変にリスクがあり、避けるべき行為ですし、控除に関する記録の保管と、作成された確定申告の精査はとても大切なことです。
 
(2016年9月1日号掲載)

確定申告でどこまで項目別控除が申請できる?

1年365日、生活や仕事のためにさまざまな支出があります。このうち、確定申告で経費として控除できるものは限られてきますが、職業や状況によっては意外なものを項目別控除として利用できることもあります。確定申告が近づくと、経費がどこまで項目別控除として利用できるのか気になるのではないでしょうか。商品、項目別に事例を見てみましょう。

洋服

洋服の購入費は一般的に項目別控除の対象となりません。もし、項目別控除を申請するならば、その洋服が仕事上で絶対に必要だと説明できなければいけません。ユニフォームや防護服などが会社から支給されず、自費で購入している場合、項目別控除の対象となり得ます。基本的なルールとして、仕事以外でも着る服は、項目別控除の対象とはなりません。

美容整形

美容整形もほとんどの場合、項目別控除の対象になりません。しかし、特殊な例として、あるストリップダンサーが豊胸手術費用を税金から控除できたことがありました。これは、彼女の手術がダンサーという仕事をする上で、必要不可欠なものであるということと、彼女のキャリアがこの手術によって劇的に向上したことをIRS側に認めさせられたからです。

身体改造

IRSは単に健康のためにかかった経費の控除は一切認めていませんが、体に関わる仕事に就いている人には、外見維持にかかった費用の控除を認めています。例えば、プロのボディービルダーのボディーオイル代などです。
また、プロのアスリートは、試合のためのスポーツコーチングや、トレーニング費用の控除が認められています。しかし、彼らがダイエットにかけたお金や、栄養のためのサプリメントは控除の対象になりません。なぜなら、それらは仕事のためであると同時に、私的な消費でもあるからです。

メイク

化粧品関係の費用を項目別控除として申請することはとても難しいです。
これは、前述の洋服の項目別控除の考え方と似ています。モデルが写真撮影のためにするメイクは控除の対象となりますが、同じメイクを仕事以外でも続けてしていてはいけません。あくまでも、仕事目的の場合だけが控除の対象となります。また、控除を申告するつもりであれば、化粧品の購入は、プロ向けの専門店から購入し、レシートの保管をしておくべきです。

性転換手術

ある男性は自分が男性であることに幼い頃から違和感を覚え、最終的に医師の勧めで性転換手術を受けました。初め、IRSはこの費用の控除を認めませんでしたが、裁判所は、「性同一性障害は、深刻な場合、性転換手術を受けることが望ましい」と、彼の治療費を医療費として認めました。
これにより、彼のホルモンセラピーおよび性転換手術にかかった治療費は控除が認められましたが、豊胸手術費は控除として認められませんでした。現在、性転換手術にかかる治療費は医療費として項目別控除が認められる傾向にあります。
控除できる品目の共通点は、それが仕事や健常な生活を行う上で必要不可欠であること、そしてその処置が一般的であるという点です。とはいえ、項目別控除の対象となるかを見極めるのはなかなか難しく、IRSのルールも厳しいものです。悩ましい時は、専門家に相談することをお勧めいたします。
 
(2016年12月1日号掲載)

ホームオフィスの税金控除

小規模な事業においてはオフィスなどを賃貸せずに、自宅の一部を利用してビジネスを行う方も多いでしょう。自宅を職場として利用する際には、自宅の維持費の一部を事業の支出として経費計上することも可能です。

ホームオフィスとは、自宅を職場として利用することです。会社としてオフィスを借りている場合、賃料などを確定申告の際に経費として申告しますが、自宅をオフィスとして利用している場合も経費として控除が受けられます。起業している必要はなく、会社に雇用されて自宅を職場として利用している人も対象です。

ホームオフィスの条件

アメリカで税務上、ホームオフィスとして認可されるには以下の4つの要件の全てを満たす必要があります。
①自宅の一部を仕事のみに使用していること。私用スペースと併用せず、また、他の私的スペースと区切られている必要があります。
②定期的かつ頻繁に利用していること。例えば、週2、3回の不定期な利用では認められません。
③利用目的が「仕事(事業)」のみであること。仕事で必要な資料や本を読むだけでは、仕事で利用していると認められません。
④自宅が仕事の拠点であること。仕事に費やす時間と量を鑑みて、仕事を主にどこでしているかが鍵です。
さらに、企業の社員などの被雇用者は次の要件のいずれかを満たす必要があります。
①雇用主の都合上、自宅を職場として利用していること。
②家の一部を雇用主に貸し、その部屋で仕事を行うこと。
また、自宅の書斎で仕事の書類を書く場合、自宅の一室を打ち合わせスペースとして家族と共有して使用している場合や、家族の介護のため、会社に申し出て自宅で仕事をする場合などは控除の対象になりません。

 

控除できる費用

控除できる費用項目は多岐にわたっており、不動産税、住宅ローン、賃料、災害による損失、公共料金(ガス、水道、電気代)、保険、減価償却費、メンテナンスと修理代などが含まれます。
ただし、あくまでも業務に関連して使用した部分に留まり、例えば庭の維持費や、仕事と関係のない部屋の塗装費用などは控除できません。

 

控除金額の計算方法

従来は、自宅のスペースから仕事で使用しているスペースの割合を出し、先に記載した控除費用にその割合をかけるのが控除の計算方法でした。
しかし、2013年度より「仕事のみに利用している面積」に一律5ドルをかけて経費とする簡易な計算が可能となりました。例えば仕事で100平方フィートの面積を利用していた場合は、100×5ドル=500ドルをホームオフィス経費として控除を受けることが可能です。ただし、この方法では最大300平方フィート(1500ドル)までの控除になります。
13年以降、確定申告で従来型を利用するか簡易型を利用するかは選択が可能になりました。利用面積、費用総額に合わせてそれぞれに合った選択すればいいでしょう。
ホームオフィスを利用している、もしくはしたいと考えている人は増加傾向にあると思いますが、ホームオフィス控除の要件を満たしていないと当局に申請を拒否される企業も多くあります。先に記載した要件の他、専門家でないと判断が難しいケースも多々ありますので、控除を考えている場合は、お近くの専門家に確認をして、より有利な控除の方法を選びましょう。
 
(2016年7月16日号掲載)

勤労所得税額控除制度

低所得で源泉徴収がほとんど無いため、確定申告の申告義務も、作成する意味も無い…と思う方、ちょっと待ってください。アメリカには勤労所得税額控除制度というのがあります。もしかしたら、還付金をもらえるかもしれません。

2つの条件クリアが前提

確定申告のシーズンが間もなく始まります。所得がわずかな方の中には自分には無関係と思っている方がいるかもしれませんが、そうとは限りません。
アメリカには、低所得者の勤労意欲を高めるため、「勤労所得税額控除(Earned Income Tax Credit)」という制度があり、条件を満たせば、還付金が申請できたり、所得税に控除が認められたりするのです。
控除が認められるためには、基本的な条件と扶養者のステータスの両条件を満たす必要があります。

 

年間総所得確認を

まず、基本的な条件としては、納税者や扶養者全員がソーシャルセキュリティーナンバーを保有していること、さらに、夫婦の場合は合算申告していることが前提です。何より、収入については、2015年度内の場合、以下の要件が必要です。
まず、納税者の年間投資所得(Investment Income)が3400ドル以内で、外国所得控除(Form 2555 もしくはForm 2555 EZ)を申請しておらず、2015年度の所得金額が、1ドル以上あることが求められます。
その上で、納税者の調整後の年間総所得が、独身で扶養対象の年少者がいなければ、1万4820ドル以内、夫婦合算申告で年少者がいないなら、 2万330ドル以内、年少者が1人なら4万4651ドル以内、2人なら4万9974ドル以内であることが必要です。

 

扶養家族の有無なども関係

さらに、 扶養家族の有無や年齢、居住ステータスなども重要な要件です。扶養対象の年少者がいない場合は、納税者が25歳以上65歳未満で、半年以上アメリカに居住し、他人に扶養されていないことが条件です。
扶養対象の年少者の定義は、納税者の子どもや養子、継子、里子、孫、ひ孫、兄弟、義兄弟、姪、または甥でなければならず、年齢も納税者より若く、19歳未満、もしくは5カ月以上フルタイムの学生なら、24歳未満でなければなりません。それ以外にも、扶養対象の年少者と納税者がアメリカに半年以上同居していなければならず、その年少者が納税者と合算申告を提出していない(還付を得るために合算申告を提出している場合は例外)ことも必要になります。
こうして、上記の条件を満たしていれば、2015年度の場合、最高で、扶養対象の年少者が1人なら3359ドル、2人なら5548ドル、3人以上いる場合は6242ドルが控除されます。

連邦以外に控除がある州も

上記は連邦の場合でしたが、いくつかの州でも同様の制度があり、15年度からはカリフォルニア州で控除が認められるようになったほか、ワシントン州やオレゴン州にも同様の制度があります。ただし、自営業の納税者に勤労所得税額控除は認められない連邦の控除とは違いがあり、調整後の総所得の上限額にも違いがあります。
注意点として、過去に勤労所得税額控除を申請して、不備や不正、過失によってIRSに却下された場合、2年間は申請できませんし、詐欺と判断された場合は10年間申請ができない上、ペナルティーが科される場合もあります。勤労所得税額控除が適用されるかどうか、専門家に相談してみるとよいでしょう。
 
(2016年1月16日号掲載)

小規模ビジネス健康保険控除

従業員のために、さまざまな福利厚生を提供している会社従業員のために、さまざまな福利厚生を提供している会社は多くあると思います。健康保険などの福利厚生費は経費は多くあると思います。健康保険などの福利厚生費は経費として計上できますが、さらに税額控除としても利用できるとして計上できますが、さらに税額控除としても利用できる可能性があることをご存じでしょうか?可能性があることをご存じでしょうか?
 
小規模ビジネスの事業主が、従業員の健康保険料を50%以上負担している場合、小規模ビジネス健康保険控除(Small Business Health Care Tax Credit)という税額控除を受け取れる可能性があります。これは2010年度から始まり、雇用主が支払った従業員の健康保険料のうち、最大で50%(非課税法人の場合は35%)の金額が対象となります。控除の割合は変動することもありますが、16年は50%です。

 

対象企業

従業員が10人までで、その平均給与が額面2万5000ドル以下の場合は満額の控除が得られます。しかし、10人から25人と従業員が増えるにつれて、もしくは平均給与が2万5000ドルから5万ドルと上がるにつれて段階的に減額されます。そして従業員が25人以上、または従業員の平均給与が5万ドル以上になると、控除の対象外となります。

 

みなし従業員の定義と控除額

ここで言う従業員とは通年で2080時間以上働いた者を指し、120日未満しか働かなかった季節労働者などは除外されます。ですが、この控除の計算上、実際に2080時間以上働いた人のみを計上するわけではなく、従業員全体の就業時間を算出し、2080時間働いた人がみなしで何人いるかを計算することになります。16年度、5人が2080時間、5人が1040時間、3人が2500時間働いた場合の従業員数を計算してみましょう。
1.5人×2080時間+5人×1040時間+3人×2080時間(1人の従業員が2080時間以上働いたとしても、超過した時間は計算に含めません)=2万1840時間2.2万1840時間÷2080時間=10.5人この企業では、実際には13人働いていますが、控除上は2で算出した10.5の小数点以下を切り下げ、10人が働いてるとみなされます。
ちなみに、控除によって従業員数の算出方法は異なり、今回紹介したみなし従業員の算出方法は、小規模ビジネス健康保険控除のみに適用されるルールです。控除額は、みなし従業員数と、その平均給与に従って段階的に減額されます。詳しい計算方法は、専門家へお問い合わせください。

 

従業員以外の健康保険

この控除は、従業員に対して支払った健康保険料のみが対象となっています。ですから、個人事業主やパートナーシップのパートナーに対して支払った健康保険料は税額控除の対象となりません。しかし、個人事業主健康保険控除(Self-Employed Health Insurance Deduction)という所得控除の対象になりますので、従業員に支払った健康保険料と、それ以外の人に支払った健康保険料を帳簿で区別して記録しておくとよいでしょう。なお、所得控除とは課税所得を決めるための控除で、税額控除とは課税所
得を基に算出した税金から差し引かれる控除のことです。また、オバマケアの成立で、正社員が50人以上の会社は、正社員に保険を提供する義務が生じました。正社員が50人未満の会社で、正社員が個人で保険に入り、それを雇用者が経費として立て替えると、その行為に対して雇用者に税金が課されます。15年からこの税金の取り立てが厳格化していますので、経営者の方はご留意ください。
 
(2016年11月16日号掲載)

就職・転職にかかる出費

アメリカでは学校が始業する9月に合わせて、夏が就職や転職の季節とされており、多くの人がキャリアアップや新しい職場のために求職活動をします。この転職にかかる費用の一部を確定申告時の控除として利用できる可能性があることはご存知でしょうか。
 
Job Search Expenseと呼ばる職探しにかかる出費が控除の対象ですが、3つの条件があります、①初めての就職ではない、②同じ職種への転職である、③再就職までの期間が長過ぎない。
求職費用の代表例としては、就職支援機関(Employment and Outplacement Agency)への支払い、履歴書作成や送付にかかった費用、就職活動のための旅費などが挙げられます。
 
確定申告の際には、基礎控除と項目別控除のどちらか一方を選択しなければなりません。
基礎控除とは、税法上の居住者であることを条件に国から与えられた一律の控除です。2014年は、独身で申告すれば6100ドル、夫婦合算では1万2200ドルが適用されます。
項目別控除は州税、固定資産税、住宅の支払金利、寄付、求職費用などを足し合わせたものです。
上記の2つのうち、控除額が高額な方を選択することで、最大限の税制優遇措置を得ることが可能となります。そのため、求職関連費用を含む項目別控除の合計額が基礎控除額を上回った場合のみ、求職費用が申告書に反映されます。
ただし、控除額は求職費用全てではなく、調整後総所得(Adjusted Gross Income)の2%を超えた額となります。例えば、調整後総所得が6万ドルで出費が3000ドルの場合、3000ドルから1200ドル(6万ドル×2%)を引いた1800ドルが控除額となります。

引越し費用

就職・転職活動の結果や社内の辞令で配属先が変わる場合など、今の住まいから遠く離れた所へと引っ越す必要が出てくることもあるでしょう。
次の3つの条件を満たすとアメリカでは引越し費用が控除となります。①新しい職場での仕事に関連している(仕事の開始日から1年以内で、引越し先から職場への距離が以前より短い)、②通勤距離テスト(旧住所から新しい職場への距離が旧住所から以前の職場への距離よりも50マイル以上遠い、または最初の仕事の場合は旧住所から新しい職場への距離が50マイル以上離れていること)、③就業時間テスト(新しい職場周辺へ引っ越し後、最初の12か月間において最低でも39週間を正社員として働いていること)。
 
引越し費用控除における対象費用は以下のものです。①家財移動にかかった費用(一時的に倉庫などに預けておく場合はその移動費用や倉庫費用を含むことも可能)、②新住所への旅費(旅券や宿泊費は控除対象ですが、旅行中の飲食費は不可)、③車移動の場合のガソリン代(その実費、または1マイルあたり26セントの標準率を計上できます。旅費は全て引っ越しに関連する必要がありますが、途中で観光地に立ち寄ったりその他の理由で寄り道した場合は一部控除の対象外となります)。
例えば、転職のためボストンからニューヨークへ引っ越し、1カ月後にフルタイムの仕事を開始したとしましょう。通勤距離テストは問題なく通過しています。そこから先39週間仕事を続ければ就業時間テストも通過できるため、引越し費用の控除を取ることが可能です。もし、年末時点や確定申告書締め切り日に就業時間テストを満たしていなくても控除可能です。しかし、実際は就業時間テストを満たせなかったという場合もあります。その際は、翌年にその控除額を収入として申請しなければなりません。
 
(2014年9月16日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

「ここが知りたい米国税務・会計」のコンテンツ