固定資産の税務処理と基準の明確化

固定資産の税務処理に関して、米国では2014年1月1日以降の会計年度から、新基準への変更・適用が可能になりました。これにより経費計上可能金額が拡大されるなど、取り扱い方が明確になりました。


固定資産の税務処理と基準の明確化

固定資産とは、1年以上の耐用年数を持つ事業運営に必要な財産のことです。一定の金額を超える固定資産は、取得年度に一括で経費計上せずに、税務・会計上で定められた耐用年数にわたって分割して経費計上します。これを減価償却と呼びます。
日本では、取得価額が10万円未満の固定資産は、取得年度に全て経費計上でき、取得価額が10万円以上20万円未満の固定資産は3年にわたって経費計上できるなど、取り扱い方が明確です。
一方で、アメリカでは金額規定が不明確でしたが、2014年の新基準の設定により固定資産取得時の会計判断がしやすくなったと言えるでしょう。


新基準の変更・適用

新しい基準を選択するには、米国国税庁(IRS)の承認が必要です。また、基準を変更して永続的に使用する場合、「Form 3115(Application for Change in Accounting Method)」という書類を提出する必要があります。それに対し、特定の年度のみに基準を適用する場合は、名前、住所、納税者番号、固定資産の概要を確定申告書と一緒に提出して、その都度選択(Election)する必要があります。


経費計上可能な範囲の拡大

固定資産のうち、取得価格200ドル以下で耐用年数が1年以内のものは、消耗品として経費計上できます。しかし、その金額を超えるものは固定資産として資産計上が求められます。
新たに制定された基準(De Minimis Safe Harbor)を選択すると、経費計上可能な金額が200ドルから500ドルに上がります。そして、会計監査(Audit)を受けている会社であれば、5000ドルまで取得年度に一括して経費計上できるようになります。それには耐用年数が1年以内といった決まりはありませんが、期首に書面で基準を定めておき、会計上と税務上で一貫した扱いをしている必要があります。


資産の一部改良と建物の改良

資産の一部に改良(Improvement)を加えて、その耐用年数が延びたり、生産性が上がったりした場合は、固定資産として資産計上しなければなりません。①改善(Betterment)、②修復(Restoration)、③新用途・別用途として適用(Adaption)した、という3点が見極めのポイントとなります。
前述の資産の一部改良とは別に、平均年間売り上げが1000万ドル未満の少額納税者(Small Taxpayer)が、取得原価100万ドル以下の建物に改良を加えた場合、1万ドルか取得原価の2%、どちらか小さい方の金額まで経費計上できます。例えば取得原価が40万ドルだと、その2%は8000ドル。1万ドルと比べて小さい方を計上できるので、この資産に対しては、8000ドルまで一括で経費計上可能となります。


定期的な維持費用

2014年1月1日以降、耐用年数の期間内に定期的な維持費用(Routine Maintenance Safe Harbor)が発生する場合、経費計上が可能となりました。例えば、耐用年数15年の駐車場で、5年ごとに白線を引き直すことが予測されれば、その費用は経費計上できます。ただし、頻度が10年を超えるものに対しては適用できません。
 
(2015年7月1日号掲載)

固定資産の減価償却

 

固定資産の減価償却のルールは帳簿上と税務上で差があるため、しばしば誤解と混乱を生みます。経営者のみなさんは、何に対してどのルールが適用されるか理解することが大切です。

事業のために、物件や高価な工作機械を購入しても、その取得費用は一度に経費計上できません。物件や工作機械などの固定資産は長期間にわたり利用するものなので、取得年度に1度に経費計上すると、その年度の利益は減り、それ以降の年度では固定資産から発生する収入で利益が過剰に発生し、実態と噛み合わなくなるからです。固定資産の減価償却は、その固定資産の耐用年数に応じて、適切な金額を経費計上するという考え方をします。 減価償却の対象は、1年以上の耐用年数を持つ、事業運営に必要な固定資産です。天然資源の利用が目的の土地でない限り、土地は減価償却の対象になりません。また、資産に新たな機能を付け加えたり、その耐用年数を延ばす目的で改修を行った場合、その費用も固定資産になります。なお、日本語では単に減価償却と言っても、英語ではDepreciationとAmortizationの2種類があり、それぞれ有形資産と無形資産に対する減価償却を指します。

 

固定資産の資産計上

減価償却で最も大事なのは、固定資産の価値を算出する資産計上です。固定資産の価格に加え、取得にかかった各種費用を資産価値として計上できます。例えば、工作機械を20,000ドルで購入し、その輸送費が500ドル、消費税が1,500ドル、取り付け費が200ドルかかったとすると、この工作機械の資産価値は全てを合計した22,200ドルとなり、減価償却もこの値段を基準として計算します。

 

帳簿上の減価償却

資産計上で算出した価値を耐用年数で分割し、確定申告で毎年計上していくのが、帳簿上の減価償却の基本です。耐用年数の算出方法は経営者の判断によります。業態や業種によって、固定資産の消耗速度が違うからです。例えば、会社用にトラックを1台購入したとして、週1回使うのと、毎日酷使するのではトラックが駄目になるまでの時間は変わってきます。
 また、その固定資産が耐用年数内にどの程度の仕事を行えるかを基準にした減価償却方法もあります。例えば、ある工作機械がその耐用年数内に100万個の製品を作れるとして、今年10万個の製品を作った場合、工作機械の資産価値の10%(10万/100万)を減価償却として計上できます。

 

税務上の減価償却

一方、税務上の減価償却方法は耐用年数などが明確に定められています。例えば、コンピューターなどのオフィス用品は5年、建物は27.5年などです。また、無形資産の一部を除き、MACRS(Modifi ed AcceleratedCost Recovery System)と呼ばれる法律で定められたルールに沿って申告しなければなりません。MACRSには固定資産の種類に応じた4種類の減価償却方法があります。ここで帳簿上の減価償却と税務上の減価償却に差異が発生することがあり、確定申告作成時に、この差異の修正が必要になります。
また、Section179という税務上のオプションを使えば、例外措置として一部の資産を、購入年度に減価償却として経費計上できます。購入年度の経費を大幅に増加させて節税が期待できる一方、翌年度以降は経費計上できる減価償却が少なくなるので、注意が必要です。経営者の方は、どのように減価償却を行うのが良いか専門家に確認することをおすすめします。
 
(2016年5月16日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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