米国の税金の歴史

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税金の歴史は人類史と共にあり、判明している世界最古の(おそらく個人の)名前は会計士の物だそうです。現在では当たり前となっている税金制度ですが、アメリカ合衆国においての、税の歴史についてご存知ですか?

米国独立前の税金

18世紀、イギリスはアメリカを含め植民地に対してさまざまな租税を課していました。例えば、砂糖やたばこにかかった商品税、ボストン茶会事件の引き金となった茶税などです。このイギリスによる度重なる重課税も原因の一つとなって、市民によるアメリカ独立運動が始まり、1776年にアメリカは独立しました。

米国独立後の税金

イギリスからの独立後、連邦政府は1791年からウイスキー税などを課し始め、所得税は1861年より始まりました。当時の課税目的は、南北戦争の資金のためだったと言われています。1862年には内国歳入法(InternalRevenue Act)が制定され、アクセサリーやたばこなど幅広い範囲にわたり物品税がかかるようになりました。今でいう消費税のようなものです。またこの時、連邦遺産税(Federal EstateTax)と贈与税(Gift Tax)も設けられました。
その後、所得税は1872年に廃止されましたが、1894年に再開。この時、財産や借用した現金にも課税されるようになりました。しかし、これは憲法違反と批判が多く寄せられ、翌年には廃止に。今日まで続けられている所得税が始められたのは1913年です。当時の税率は収入に対して7%程度でしたが、第二次世界大戦中の1940年代には、94%にまで高騰しました。
また、毎年タックスリターンで提出が義務付けられている「Form 1040」は1914年にできあがり、1916年には累進課税制が制定されました。

税金と社会保障

では、連邦保険法(Federal InsuranceContribution)で定められているソーシャルセキュリティー税(SocialSecurity Tax)や医療保障(MedicareTax)の歴史も見てみましょう。ソーシャルセキュリティー税は、社会保障法で年金保険料に充てられるものです。これは、1930年代のニューディール政策での傷病、障害などによる退職後の生活保障がきっかけとなり始まりました。最初に年金の支払いが行われたのは1937年1月で、たったの17セント(現在の価値で2.87ドル)でした。年金の月額支給が始まったのは1940年からです。今日では当たり前になっている遺族給付は1939年、障害給付は1956年に加えられました。
医療保障(Medicare)は、1960年代に高齢者がプライベートでの健康保険加入が事実上不可能となり、高齢者の医療や健康への配慮が社会問題になったことから、1966年に加入を開始しました。

遺産税の仕組みと歴史

日本と全く違う仕組みなのが遺産に関する税です。日本では、相続税と呼ばれ、遺産を受け取る人が税金を支払いますが、アメリカでは亡くなった方が遺産税(Estate Tax)を払い、遺族が残金を分ける形になっています。
この遺産税、1862年の開始以来、廃止と義務付けを何度も繰り返してきました。そもそも、それまで税金を払ってきたにもかかわらず、また税金を課されるとはいかがなものか、と国民からの反発が大きいのが要因です。州によっては廃止されているので、今後どのような動きになるのか気にしておきたい税制であります。
 
(2016年10月1日号掲載)

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