給与・報酬の申告フォーム

従業員でも委託契約者でも、両方、賃金を支払うことに変わりはありませんが、その申告フォームは「Form W-2」を使うか「Form 1099-MISC」にするかの違いがあります。正確なフォームを知ることが、雇用主にとっては非常に重要です。

「Form W-2」と「Form 1099-MISC」

ビジネスオーナーが、労働者を従業員として雇用する場合、例年1月から2月ごろに給与額などをまとめた「Form W-2」を、従業員に送付します。これは、源泉徴収票のようなもので、そこには、Social Security Taxの源泉徴収額なども記載されています。
一方、委託契約でサービスの提供者に600ドル以上を支払った場合、ビジネスオーナーは、支払額を明記した書類「Form 1099-MISC」を契約者と税務当局に提出します。
上記いずれの書類を提出すべきかは、労働者を従業員と捉えるか委託契約者とみなすかで異なってきます。提出書類の種類によって、Payroll Taxの支払方法が異なるので、ビジネスオーナーは注意が必要です。

 

3つの基準で判断

では、両者の違いをどう見極めればいいのでしょうか。それには3点の重要なポイントがあります。
まず、第1には、労働者がビジネスオーナーの直接の管理下にあって、一貫して会社の指示・指導の下にあるかどうかという、その指導権限に着目します。仕事の進め方、機材や備品などの決定、仕入れ先の選定などをビジネスオーナー側が直接指示・指導していれば、従業員とみなされます。
第2に、仕事上の経費の扱いも重要です。例えば、仕事で必要なコンピューターなど高額機材を自分で用意するなら、労働者は委託契約者とみなされやすくなりますが、支払った経費を会社が戻せば、従業員と考えられます。
最後の基準としては、契約書や福利厚生の有無、仕事内容が単発か継続かといった継続性や労働者側の提供する労働の重要性が考慮の対象となり、最終的には実態をもとに判断されます。

 

異なる事務手続き

こうした従業員と委託契約者の取り扱いの違いは、賃金を支払う際の事務手続きに影響を及ぼし、ビジネスオーナーの確定申告書や法人税、源泉徴収票にも影響が出てくるほか、労働者側の確定申告や所得税の支払い方法も異なってきます。最初は個人契約だったものが、途中で従業員として雇用されたケースやその逆などは特に気を付けてください。

 

正確な知識でリスクを回避

従業員の場合は、ビジネスオーナーが従業員からPayroll Taxを源泉徴収し、従業員に代わって連邦または州へ納税します。従業員は、雇い主から「Form W-2」が発行されると、それを基に確定申告の準備に入ります。
一方、委託契約者の場合は、ビジネスオーナーは契約者の給与から源泉徴収したり、従業員に支払うSocial SecurityなどPayroll Taxの一部を支払うことはありません。その代わり、契約者は四半期に一度、予定納税として、所得税や自営業者税を納めます。最終的な委託額は、翌年度の初めに業務を受注した会社から発行される「Form 1099-MISC」に明記されており、契約者はそれを基に確定申告の準備に入ります。
これらのルールを知ってさえいれば、会社も労働者も不要な納税や、税金の計算間違いなど余計なリスクを回避できます。人員を増やすことをお考えの際、新規採用か外部委託かを見極めるには人事関係の専門家に、給与関係については会計士に相談してはいかがでしょうか。
 
(2016年1月1日号掲載)

クレジットカードなどによる収入

昨今、趣味の延長のような気持ちでeBayやAmazon.comといったインターネット上の取引を利用し、収入を得ている 人も少なくないと思います。それに関連した税務書類は、きちんと確定申告で報告する必要があります。

「Form1099k」の役割

「Form1099k」は、クレジットカードで受け取った収入や、今まで特定することの難しかったPayPalなどのインターネット決済サービスを通して得た収入を正確に開示させる目的で2012年より導入されました。これにより、IRS(国税庁)は、個人または企業がインターネットオークションなどで得た収入を、簡単に特定できるようになりました。

「Form1099k」の対象者

「Form1099k」の受け取りには、二つのケースが考えられます。
一つ目は、クレジットカード会社を通して1年間で総額600ドル以上の支払いを受け取った場合です。「今まで『Form1099MISC』で申告していたクレジットカードでの収入はどうなるの?」と思う人もいらっしゃるかもしれませんが、その部分は「Form1099k」に移行されるので、二重に収入が申告されることはありません。
そして二つ目は、PayPalやGoogleWalletといったインターネット決済サービスを提供する会社を通して取引を行った場合で、1年間で①総額2万ドル以上受け取った、②200回以上の取引をしたという二つの条件を満たすと、「Form1099k」が発行されます。
上記の条件を満たさない場合でも、クレジットカード会社や、インターネット決済サービス会社からソーシャル・セキュリティー・ナンバーや雇用主番号(Employer Identification Number)など、個人情報の開示を求められるケースが増えてきており、当事務所でも、これについての問い合わせが増えています。
その情報の開示を怠った場合、「Form1099k」の対象となる販売額の28%を強制的に源泉徴収されます。これを避けるためには、求められた情報の開示しかありませんので、個人情報を要求された場合は、速やかに伝えましょう。

「Form1099k」の内容

前述の条件に当てはまる人には、クレジットカード会社やインターネット決済サービス会社から毎年1月頃に「Form1099k」が届きます。そこには、各月の取引額と年間の総取引額が表示されています。 確定申告においては、決済した会社の会計年度が年末の場合は年間の総取引額を、会計年度が3月など年の途中で切り替わる場合は各月ごとの取引額を記入します。

「Form1099k」の対策

「Form1099k」を受け取る可能性のある人に税金対策としてお勧めすることは、その収入を得るために使った支出をしっかりと帳簿につけておくことです。その結果、収入と支出を相殺でき、課税所得を低く抑えることで、余分な税金の支払いを避けられます。 最後に、「Form1099k」と関係のない取引をリストアップします。①クレジットカードなどを使ったATMからの引き出し、②クレジットカードに付属するチェックの使用、③ギフトカードなど特定の場所でしか使えない金券を得たとき、です。
「Form1099k」の導入は、IRSが特定している個人や企業の収入と、実際に得ている収入に大きな差があることが原因で開始されました。今後もIRSは、より多くの税収を得るために、より多くの策を講じてくるでしょう。
 
(2016年11月1日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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