アメリカの税金・会計疑問にお答えします

 

2017年の変更点

質問:2017年の個人の確定申告で、2016年と変わることはありますか?

税法は毎年調整が加えられているので、昨年と何が変わったかを確認するのはとても重要です。例えば累進課税のブラケットは毎年前後しており、2017年は、所得額によって適用される税率が2016年から一部変わっていますし、基礎控除の額も2017年では2016年より50ドル高い6350ドルが利用可能となっています。これらの小さな調整は主に物価スライド調整(COLA,Cost of Living Adjustment)と呼ばれるものになります。
 
2017年の申告から有効となる税関連の修正において、極端に大きなインパクトがあるものは存在しません。ただし、ソーラーパネルなどの設置に関する税制優遇が2016年末で終了するなど、17年の確定申告では利用できないクレジットがいくつかあります。もし、自分が利用する予定だったクレジットが2017年の確定申告でも有効かどうか心配な場合は、専門家に確認することをお勧めいたします。

ITIN

一方、税金とは直接関係ないものの、駐在員やその家族に関して、注意が必要なこともあります。Social Security Number(SSN)を取得できない人が税務を行う際に取得するIndividual Taxpayer Identifi cation Number(ITIN)は、15年に通過した法案により、有効期限が発生しています。取得時期により、新しくITINを取得するか、それとも既存のITINの更新作業が必要か変わってきますので、該当しそうな方は念のため専門家に確認することをお勧めいたします。

個人事業主

質問:我が社では、従業員に加え、フリーランスの方に報酬を支払っています。年末年始にすべきことはありますか?

Form 1099 Misc

気を付けなければならないのは、フリーランス、つまり個人事業主(Sole Proprietor)への報酬支払をまとめた、「Form 1099 Misc」の作成と発行が必要であることでしょう。このフォームは従業員に対する「Form W-2」と同等のもので、年間いくらを個人事業主に支払ったかを連邦税務当局と個人事業主本人に申告する書類です。
 
この書類が必要なのは、下記のいずれかの条件を満たした場合です。
① 年間600ドル以上の、個人事業主および弁護士・会計士などに対する対価の支払い
② 年間10ドル以上の印税、または著作権使用料の支払い
③ 年間10ドル以上の配当金、非課税利子収入の代わりに払うロイヤルティー、ブローカーへの支払い
④ 源泉徴収が済んでいない取締役への支払い
 
この際気を付けなければいけないのは、家賃の支払いも①に該当する可能性があることでしょう。物件管理会社に家賃を支払うなら問題ないのですが、個人の大家さんに支払う家賃はこれに該当します。上記4つに当てはまるかどうか判断が微妙な支払いもあると思いますので、その場合は専門家に問い合わせて確認したほうがよいでしょう。
 
また、今年から「Form 1099 Misc」を250枚以上発行する場合、電子申告が義務付けられるようになりました。今までのように、役所から白紙の「Form 1099 Misc」をもらってきて記入する…、という方法は通用しなくなったので、大量の「Form 1099 Misc」を発行する場合は注意が必要です。
 
このフォームの提出期限は例年2月末でしたが、今年はW-2と同じく18年1月末が提出期限です。まず、雇用した個人事業主のほか、取引先にもフォームが必要か確認しましょう。作成にはSSNやEIN(連邦法人番号)、住所などの情報が必要です。今年から未提出のペナルティーが厳格化していますから、早めの準備が大切です。
 
(2017年12月16日号掲載)

 

年末の節税

質問:2017年ももうすぐ終わってしまいますが、今からでも個人でできる節税の方法はありますか?

IRA

最も簡単に行えるものの一つは、個人年金プラン(Individual Retirement AccountもしくはArrangement)、通称IRAの利用でしょう。IRAには複数の種類がありますが、個人の節税によく使われるのはTraditional IRAです。年間、1人当たり5500ドル(50歳以上は6500ドル)を限度額として入金でき、それを所得控除として利用できます。課税所得をそのまま減らせるので、例えば、税率20%の人は単純計算で1100ドルの節税につながります。ただし、調整後総所得(Adjusted Gross Income)が一定額を超えると、所得控除として利用できる額は減額します。
 
Traditional IRAは、その名の通り、老後用の積立年金プランの一種で、ここからお金を引き出す際には、所得として課税対象になります。理屈としては、入金額分の税金支払いを将来に先送りすると考えれば良いでしょう。「結局、税金を支払わなければならないのか?」とはもっともな意見ですが、IRAから資金を引き出すのは、ほとんどの場合リタイア後となります。リタイア後は所得が減り、累進課税の税率が低くなる傾向にあるので、短期的・長期的に見て十分節税となり得ます。
 
一つ注意しなければならないのは、59.5歳前にIRA口座から引き出すと、引き出し額の10%という高額なペナルティーを支払わなければならない点です。ただし、死亡や障害、高額な医療費支払い、大学の学費や初回の住宅購入など特定用途が理由だと免除される場合があるので、引き出す前に専門家に相談すると良いでしょう。

寄付と株式

例年、確定申告で項目別控除(Itemized Deduction)を利用している場合、寄付も節税の一つです。ただし、寄付額の30~50%までしか控除が利用できない上、総額500ドル以上の寄付をすると証拠提示が要求されることもあります。
 
株式取引を行っている人は、こちらでも節税が行えます。2017年中に投資利益(キャピタルゲイン)の確定を行い、多額の利益が発生した場合、年内に含み損のある株式を売却して投資損失(キャピタルロス)の確定を行えば、課税対象となる利益を減らせます。結果的にキャピタルロスの方が多くなったとしても、最大3000ドルまでその他の収入と相殺でき、3000ドルを超えたロスは翌年以降に持ち越して他の収入と相殺することも可能です。
 
年末に株式を相殺する節税方法は普及していますが、簡単に税金をコントロールできないようにIRS(国税庁)も法律で対策を講じているので注意が必要です。

 

法人の違い

質問:資本金1万ドルで起業し、車のパーツの輸出入を始めます。どんな事業形態で登記すべきですか? ちなみに私は永住権を持っています。
 
個人事業より、法人化をお勧めします。個人事業は登記が不要で、法人に関わる手続きが不要な反面、ビジネスに関連して何らかの大きなトラブルがあった場合、その損失が全て個人に降りかかってきます。法人の場合は、いくつかの申告等が必要になりますが、もしもの時には会社を閉鎖させてあなた個人への被害を回避することが可能です。
 
法人にも複数の種類があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。残念ながら他と比べて全面的に有利な法人形態というものは存在しません。また、後から形態の変更は可能ですが、相応の手間がかかります。実際にどのような事業展開を行うかによって最適な形態が変わりますので、ビジネスの開始前にある程度具体的な展望を持ち、どの法人形態があなたのやりたいことに一番適しているのか、税務、法務さまざまな視点から考えていきましょう。
 
(2017年12月1日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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