配当金の役割

株式の売買にはいくつかの方式があり、購入方法にも違いがあります。その日米での違いを説明すると共に、売却益や配当金の税金の支払いについて説明します。


配当金を控えて節税

近年の税法改正によって、キャピタルゲイン税率の最大税率が、15%から20%に、普通税率の最大税率も35%から39.6%に引き上げられました。加えて、高所得者に対しては3.8%のメディケア税が課せられるようになりました。税率がどんどん上がり、納税額も増えていく中で、無駄な税金は極力避けたいという思うのは当然です。
 

二重課税

企業の利益は、株式会社の場合、株主に配当金を出さない限り留保利益(Retained Earnings)として内部に溜まり続け、これらの利益には法人税が課せられます。その後、留保利益から配当金を出すと、受け取った株主に個人の所得税が課せられます。このように、法人の利益は個人に辿り着くまでに二度課税されることになり、これを二重課税と呼びます。
経営陣と株主が分離されているはその限りではありませんが、経営陣を少数の株主が兼ねている場合は、配当金を意図的に出さないことで株主の所得レベルが下がるため、節税が可能となります。
 

留保金に対する課税

留保金に対する税は、米国国税庁(Internal Revenue Service/IRS)からCコーポレーション(株式会社)に課される税金なので、Sコーポレーションといった他の法人形態には関係ありません。留保利益25万ドル以上(会計業やエンジニア等、何らかのプロフェッショナル・サービスを提供するような事業は15万ドル以上)のCコーポレーションに対しては15%課税されます。
例えば、2014年までの留保利益が20万ドル、15年の所得が40万ドルだとします。ここで配当金を出さなければ、15年の留保利益は60万ドル(20万ドル+40万ドル)となります。そうすると、15年の留保金課税対象額は、35万ドル(60万ドルー25万ドル)となり、15%の税率の、5万2500ドル(35万ドル×15%)が課税されます。
 

課税を回避するために

仕入れや給与など、運転資金で必要となった等、正当な理由があれば留保利益が25万ドルを超えても課税対象となりません。
毎月の取引額が留保利益を上回ったり、多くの従業員を抱えて、一回の給与が25万ドルを超える企業は、ある程度の留保利益を確保しておく必要があるでしょう。
それ以外では、事業の拡張計画などがある場合も正当な理由となります。配当金を出さない理由が二重課税を逃れることにないと証明することで、課税回避が可能となります。それらの証明には、事業拡大計画や備品の更新を検討した議事録や、その計画を示唆するEメールが残っていれば十分な証拠になります。しっかりと根拠資料を残しておくことで、課税される心配はほぼありません。
株主に留保利益を分配しないことに対する懲罰的課税は、IRSによる調査時に課税されますが、株主に対して定期的に配当金を支払い、留保利益を合理的な範囲内にとどめれば課税を回避できます。
なお、配当金を支払わないと、「二重課税を避けていた」とみなされ、IRSによる調査で不利に働く場合があります。
 
(2015年10月1日号掲載)

配当に対する課税

 

一般的に、投資家が企業に投資して利益を得るには、株式売買の差額による方法と、企業の株式を保有して配当を得る方法の2通りがあります。今回は、後者の配当に着目して解説します。
配当の支払い側は受け取り側に「Form 1099-DIV(配当所得)」を発行し、受け取り側は所得として確定申告する必要があります。適格配当、キャピタルゲイン配当、企業への配当における控除について見てみましょう。
 
通常、株式の売買において、株式の保有期間が1年未満の場合は所得税率、1年以上の場合はキャピタルゲイン税率が適用されます。保有期間は株式購入の翌日から数え始めます。
1年以上の保有によって適用されるキャピタルゲイン税率は、課税所得に対する所得税率が10%または15%の場合は0%、15~39.6%の場合は15%、39.6%以上の場合は20%となります。


適格配当(Qualified Dividends)

適格配当には、1年未満の保有であっても所得税率より低いキャピタルゲイン税率を使用します。
適格配当とみなされるには、配当決議の翌日を基点として、その60日前から開始される121日間のうち、61日間以上株式を保有していなければなりません。
 
例えば、2014年7月9日に株式購入、7月15日に配当決議、8月12日に株式売却をしたとします。その場合、株式の保有期間は7月10日から8月12日の34日間で、配当決議翌日から60日前の5月17日から始まる121日間のうち61日間を越えていないので適格配当にはあたりません(右下適格配当図中①)。
これに対して、前題と同条件で1カ月後の9月12日に株式を売却したとすると、保有期間が合計65日間となるので、適用配当とみなされ、キャピタルゲイン税率の対象となります(図中②)。


キャピタルゲイン配当

投資信託や不動産投資信託からの配当では、所有期間にかかわらず、キャピタルゲイン税率が適用されます。
実際に手元に入金されず、信託会社がキャピタルゲインを保持することがありますが、課税対象なので確定申告書作成時には気を付けなければなりません。


企業への配当

企業が受け取った配当の一部は税額控除の対象となります。企業の株式保有割合が全株式の20%未満の場合、配当金への控除率は70%、20%以上80%未満の場合は80%、80%以上の場合は100%が控除されます。
ただし、次の①~⑥からの企業へ対する配当は控除対象外です。①不動産投資信託(REIT)、②Section 501/521の非営利団体、③配当決議翌日の45日前から始まる91日間のうち46日未満保有(普通株)、④配当決議翌日の90日前から始まる181日間のうち91日未満保有(優先株)、⑤投資信託、⑥貯蓄貸付組合や相互貯蓄銀行などからの配当。
 
(2014年6月1日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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