アメリカの社会保障(Social Security)

アメリカの社会保障(Social Security)①

アメリカの社会保障を定年退職後の収入源として期待されている方も多いと思いますが、日本の年金問題と同様、アメリカの社会保障も先行きが不透明です。今回はアメリカの社会保障について解説します。

アメリカでは、10年(40四半期)以上、社会保障(Social Security)を納めれば社会保障が給付されます。2016年の社会保障委員会の発表によると、社会保障が現在の給付予定額の満額が支払われるのは2034年までで、それ以降の満額支払いは難しいとされています。しかし、将来的に給付金が0になるわけではなく給付予定額の75%は保障されるようです。

退職金制度の活用

社会保障の減額が見込まれるならば、他の収入も確保しておくべきでしょう。IRA(個人退職金口座)や401(k)(確定拠出年金)など、定年後の生活費確保のみならず、節税対策にもなる制度を利用してはいかがでしょうか。2017年、IRAは50歳未満は5500ドル、50歳以上は6500ドルの控除が、401(k)は50歳未満は1万8000ドル、50歳以上は2万4000ドルの控除が取れるので、節税効果も期待できます。しかし、両制度とも59.5歳までに引き出すとペナルティーが発生するというデメリットもあります。

社会保障の支払い・受給

アメリカ市民または居住者で雇用主から給与を受け取っている場合は給与の6.2%、個人事業主は純利益の12.4%を社会保障として支払わなければなりません(駐在員やF・Jビザの場合、支払わなくてもよい場合があります)。
 
社会保障の満期は表Aを参照してください。62歳から引き出すことも可能ですが、満期の支給額より低くなります。減額率は表Aの「減額」を参照してください。

繰延受給

アメリカの社会保障

一方、繰延受給には利子が発生します。生まれ年と利子の関係は表Bを参照してください。繰延受給は、受給開始する年齢から満期の年齢を差し引いた月数に図で示した月利を掛けた金額が生涯支払われ続けます。例えば、1945年8月生まれの人が、2018年3月より受給を開始するとします。1945年生まれは66歳が満期です。受給開始時の年齢73歳7カ月から66歳を引いた91カ月に、0.666%を掛けた数字、60.606%が利子です。仮に満期で月1000ドル受給予定だったとすると、繰延受給で毎月1606ドル6セントが支払われ続けます。
 
快適な定年退職後の生活には、在職中の収入の7~8割の収入が必要と言われていますが、社会保障のみではその40%程度にしか達しません。IRAや401(k)の活用も検討しましょう。
 
(2017年7月1日号掲載)

アメリカの社会保障(Social Security)②

社会保障は、社会保障税を支払っていた本人だけでなく、その配偶者や元配偶者、扶養している子どもにも受給する権利があります。今回は、社会保障税を支払っていた本人以外が受け取る社会保障について解説します

配偶者の受給

社会保障は、支払っていた本人と、その配偶者も受給できます。配偶者は本人の半額の受給権利があり、この権利は、配偶者が全く社会保障税を支払っていなくても発生します。もし、配偶者自身が社会保障税を納めていた場合、自身の権利と配偶者の権利のどちらか大きい額を受給できます。
 
配偶者の受給ルールは本人と同様で、62歳から早期受給が可能、満期年齢は生まれ年によって決まります。本人が社会保障の受給を開始していなければ、配偶者として社会保障を受給できませんが、本人が満期年齢に達して繰延受給(受給開始年齢を遅らせること)を選択していれば、本人が受給していなくても受給可能です。配偶者は繰延受給の利息が付かないので、満期を迎えたら受給の開始をお勧めします。一方、本人の社会保障の受け取り開始は、繰延受給で発生する利子を生かすため、70歳まで待つのも手です。

元配偶者の受給

以下の条件を全て満たす場合、元配偶者として社会保障を受給できます。
・受給開始時に未婚である。
・62歳以上である。
・社会保障税を納めた本人と10年以上の婚姻関係があった。
・離婚から2年以上経過している。
・自身で支払った社会保障を受け取っていない。
 
2人以上と婚姻関係があった場合、一番額の高いものを選択できます。元配偶者は配偶者と違い、62歳になれば本人が受給開始していなくとも、満額(本人の社会保障の半額)を受給できます。配偶者が62歳から受給する場合は、本人が受給開始していることが条件かつ減額されますから、元配偶者の方が好条件と言えるでしょう。

子どもの受給

 下記の条件を全て満たす子どもは、本人の社会保障の半額の受給権利があります。
・未婚である。
・扶養家族である。
・18歳以下である、または19歳で高校に通っている、または22歳になる前に障がいを持った。
 
社会保障は家庭単位で受給額に上限があり、一般的に本人の社会保障額の150~180%が上限です。例えば、本人と配偶者が満額受給している場合、その家庭は150%(本人100%+配偶者50%)受給していることになり、子どもは最大で本人の受給額の30%(180%-150%)まで受給できます。

受給時の税金

一般的に社会保障には税金がかかりませんが、受給時に一定額以上の収入があると課税対象となります。税額は確定申告時に、「総収入額+給付金額×1.5」で算出される数値で決まります。
 
申告ステータスが独身の場合、数値が2万5000~3万4000未満は給付金の50%に対して課税、3万4000以上は給付金の85%に対して課税されます。夫婦合算申告では、数値が3万2000~4万4000未満は給付金の50%に対して課税、4万4000以上は
給付金の85%対して課税されます。
 
高齢化に伴い、収入源のあるうちに、社会保障の受給可能年齢に達する方も多くいます。社会保障の受給開始時期は他の収入や支払う税額のバランスを考えて決めるといいでしょう。
 
(2017年7月16日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

「ここが知りたい米国税務・会計」のコンテンツ