税率の低い州への引っ越し

アメリカでは、国税庁が徴収する連邦所得税に加えて、自治権を持つ各州も独自に所得税を徴収する仕組みになっています。そこで、税金の低い州へ引っ越す方も多いようです。


居住地の選択

IT技術の進歩に伴い、必ずしも職場に通える距離に住む必要はなくなりました。在宅勤務が可能な会社では、居住地を自分で選択することができるかもしれません。また、会社経営者や個人事業主であれば、状況に応じて居住地を選択することが可能です。居住地によって税率も多様なので、複数の選択肢がある場合、それぞれの税率を加味して選択肢を絞ってみてはいかがでしょうか。
一般的に大都市になればなるほど生活は便利になりますが、それに比例して税金も高くなる傾向にあります。一方、地方都市は税金面で優遇措置を取ることによって、他の地域から居住者を引き寄せるよう努力しています。
また、州によっては所得税率を下げたり、社会保障(Social Security)や年金プランからの収入を非課税にしたりして、定年後の退職者を優遇するところもあります。


州の所得税

多くの州では、所得が多くなるにつれて税率も高くなる「累進課税」を採用しています。中でもカリフォルニア州やハワイ州などは税率が高く、最高税率は10%を超えます。また、ミシガン州やマサシューセッツ州では税率が所得に関係なく、一定の「定額課税」を採用しており、どの州も5%前後の税率です。
一方で、所得税を徴収しない州もあります。有名なのはワシントン州、ネバダ州、テキサス州、フロリダ州ですが、アラスカ州、サウスダコタ州、ワイオミング州も非課税です。
郡(County)や市(City)によっては、州とは別に所得税を徴収する場所もあります。例えば、ニューヨーク市は州とは別に所得税を徴収します。ニューヨーク州という単位でみると、累進課税で最高8.82%とカリフォルニア州やハワイ州よりも低いですが、市の累進課税が最高3.5%なので合計10%を超えてしまいます。よって、税率を計算するときは、州だけではなく郡や市といった細部まで注意を払いましょう。


その他の税率

所得税以外にも家計を圧迫する税があります。退職後に他州で不動産を購入して移住しようと考えた場合、所得税が低くても固定資産税が高いのでは差し引きゼロになってしまう可能性もあります。所得税の低い州ではその穴埋めとして固定資産税が高い場合もあるので気を付けましょう。
州、郡、市によって異なる消費税も気になるところでしょう。オレゴン州やアラスカ州では消費税がゼロとなっています。


確定申告

所得の源泉が一つの州だけであれば単純ですが、転職・転勤で複数の州を源泉とした所得がある場合、それぞれの州に確定申告書を提出しなければなりません。アメリカは州それぞれの税法を制定しています。そのため、どの所得がどこで課税されるかを見極める必要があり、フォームの数も増えるので複雑な確定申告となります。
源泉は実際の居住地ではなく働いた場所によって決まります。例えば居住地はカリフォルニア州でも、3カ月間出張でニューヨーク州で働いた場合は、両方の州に申告書を提出しなければなりません。
 
(2015年6月16日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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