居住者・非居住者・二重ステータスの場合の確定申告

米国市民や永住権保有者はもちろん、アメリカで一定の所得がある人は年に1度、確定申告(Tax Return)をしなければなりません。その際、自身が税法上の居住者(Resident)か非居住者(Non-Resident)かを把握していることは重要です。なぜなら、両者には申告しなければならない所得に大きな隔たりがあるからです。
非居住者の場合は、課税対象がアメリカでの所得に限定され、社会保障税(Social Security)を支払う必要がありません。一方居住者は、米国市民や永住権保有者と同じで、課税対象が全世界所得まで広がり、社会保障税も支払わなければなりません。
また、居住者と非居住者のどちらにも属する二重ステータス(Dual Status)の可能性もあります。例えば、年度の途中でアメリカに来る・離れる、頻繁に出入りする場合などです。
今回は、税法上の居住者と非居住者の判断方法、そして二重ステータスについて解説します。


居住者

居住者と判断されるためには、以下の永住権テスト、または実質滞在テストをクリアする必要があります。
 
◉永住権テスト
永住権保有者は、アメリカ滞在期間に関係なく、移民局が永住権を発行した時点で居住者とみなされます。そして、米国市民と同様の全世界所得の申告が義務付けられ、夫婦合算申告の選択権も付与されます。さらに、居住者のみに与えられる控除など多くのベネフィットを得ることが可能です。
 
◉実質滞在テスト
全世界所得を申告しなければならず、居住者とは、次のいずれかを満たす場合に申請可能です。①永住権所有者、②就労ビザを持ち、確定申告対象年度に31日以上滞米し、かつ過去3年間で合計183日以上滞在した。
滞在期間の183日の計算方法としては、滞在1年目は6日間、2年目は3日間、そして3年目は1日間を1日とみなし、3年間の合計滞在日数を算出します。例えば、13年の確定申告であれば、11年から13年にかけて滞在した場合、11年に120日、12年に360日、13年に100日滞在したとすると、120/6+360/3+100/1=240となるので、居住者扱いとなります。
ただし、永住権・実質滞在テストを満たさなくとも、次の条件全てを満たす場合は居住者として確定申告が可能です。①税務申告年に居住者でない(=非居住者)、②その前年度も居住者でない(=非居住者)、③実質滞在テストの結果、翌年は居住者である、④渡米初年度に31日以上米国に連続滞在している、⑤項目④が初入国から年末までの75%以上である。


非居住者

渡米・帰日初年度に実質滞在テストの居住者条件を満たさなかった場合やA、F、G、J、M、Qビザ保有者は、非居住者として扱われます。


二重ステータス

渡米初年度で居住者となる場合、または帰日初年度で非居住者となる場合などは、「その年は居住者だが全世界所得ではなくアメリカの所得のみを申告する」ことが認められています。例えば、永住権を取得した年は、取得前と取得後で非居住者と居住者という2つの身分に属していることになるので、この申告方法が選択可能になります。
他にも、前述にある滞米初年度の条件を満たす場合や183日以上滞在した場合は実質滞在テスト合格で居住者となりますが、それ以前は非居住者なので、二重ステータスを選択できます。アメリカの所得申告という利点の反面、項目別控除を使わなければならないために基礎控除を使えない、アメリカ所得のみの申告だが高税率な夫婦個別申告をする必要がある不利な面もあるので、色々な側面を加味して一番税金の少ない選択をするのが得策です。
 
(2014年5月16日号掲載)

税法上の居住者

 

旅行者感覚でのアメリカ滞在であっても、税法上居住者とみなされ、確定申告義務が発生することがあります。これを怠ると、脱税をしていることになるので要注意です。


アメリカの確定申告

アメリカで確定申告義務発生の有無は、滞在日数と滞在ステータスによって決められます。これらの情報を基に、滞在者が税法上のアメリカ居住者か非居住者に分類し、前者であれば海外源泉の所得も含めた全世界所得を、後者であればアメリカ源泉の所得のみを申告する必要があります。
非居住者はアメリカ源泉の所得申告のみで済みますが、一般的には源泉後の所得を支給されるので、少額の収入であれば実際には確定申告をしないことも多いです。対応法は、申告手数料と還付金などの兼ね合いから判断するべきでしょう。
 

実質滞在テスト

当年度に31日以上アメリカ滞在して、それを含む過去3年間で合計183日以上アメリカ滞在した場合は、税法上の居住者となります。
183日という日数は、単純に滞在日数を加算するだけではなく、当年度は1/1日、前年度は1/3日、前々年度は1/6日を1日と数えます。例えば2015年に100日、14年に360日、13年に120日滞在したとすると、100/1+360/3+120/6=240となり、居住者となります。
飛行機の乗り継ぎで、アメリカ滞在期間が24時間未満の場合や、健康上の理由でアメリカを離れることができなかった場合は含まれません。
 

滞在ステータス

●市民権と永住権
アメリカ市民権か永住権を1年のうち1日でも所有していれば、税法上の居住者とみなされ、全世界所得の申告をする義務が発生します。米国外に居住していても、毎年の申告義務は発生するので気を付けましょう。知らずに申告を怠ると、過去にさかのぼって申告書提出を求められます。
 
●ビザの種類
多種多様なビザが発行されているアメリカですが、次の滞在ステータスでは実質滞在テストを満たしても非居住者となります。
 
・A、Gビザで入国する外国政府の関連人員
・J、Qビザで入国する教員や研究員
・F、J、M、Qビザで入国する学生
・チャリティーイベント参加のために一時滞在するプロスポーツ選手
 
それに対してE、H、Lなどの滞在ステータスで、実質滞在テストを満たしていると居住者となり、全世界所得を申告しなければなりません。
 

特殊なBビザ

Bビザは商用や観光目的で発行され、有効期限は通常6カ月ですが、延長も可能です。もしこのビザによる滞在で、実質滞在テストを満たすと居住者と判断され、全世界所得の申告義務が発生します。就労ビザではないので、ソーシャルセキュリティー番号を申請することができず、タックスID(Individual Tax Identification Number)で代用することになります。
 

Form8840

度重なるアメリカ滞在や長期出張などで実質滞在テストを満たしても、Form8840で、当年度のアメリカ滞在が183日未満で税法上の居住地がアメリカ以外にあることを証明できれば、非居住者扱いにすることが可能です。これにより、アメリカ国外源泉の所得を申告する必要がなくなります。
 
(2015年8月1日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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