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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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くる日もくる日もクルフィを

ミスター世界(関根 正和)

このあいだ友人たちとインド料理を食べに行ったときのこと。
いろいろな料理を食べ終わったところで、
「インド料理には、どんなデザートがあるの?」という質問がでた。
「クルフィというアイスクリームの一種があるよ」と答えつつ、
僕は「そういえば、日本人はクルフィのことをあまり知らないな」と気がついた。

これはライトハウスにも書かなくっちゃ!
あの暑いインドのこと、冷たいクルフィはポピュラーなお菓子だ。
スタンドにもあるし、レストランのデザートとしても、どこの店にもおいてある。
アメリカのインド料理店でもしかり。
その晩、友人たちに勧めたピスタチオ・フレーバーのクルフィは、
みんなが「おいしいおいしい」と喜んで食べてくれた。
「でも、アイスクリームとはちょっとちがうね」。

そうです。なにがちがうのでしょう?
まずレシピからいくと、ミルクに砂糖を入れ、
煮詰めて半分かそれ以下の分量にしたあと、冷蔵庫で凍らせる。それだけだ。
ピスタチオやアーモンドなど、ナッツのペーストを混ぜたり、
イチゴ、マンゴー、リンゴ、オレンジ、アボカド、
さらにはカルダモンやサフランなどを溶かし込んだものなど、
フレーバーのバラエティーにもこと欠かない。
ミルクだけのクルフィに、上から溶かしたチョコレートやシロップなどをかけてもおいしい。

アイスクリームとちがうのは、まず、卵を使わないことだ。
これはベジタリアンの多いインドのことだから納得がいくだろう。
それから、凍らせるときにホイップしないこと。
ホイップすると空気が入り、フワッとした感じになるが、
クルフィはシャーベットのようにシャラシャラした爽やかな舌触りになり、
これがまた涼感をさらに増やす。

これ、じつはイタリアで「セミフレッド」と呼ばれるデザートとほぼおなじだ。
セミフレッドは、ジェラート(アイスクリーム)、ソルベット(シャーベット)とならぶ、
イタリア三大フローズン・デザートのひとつである(この三つしかないですけどね)。
日本人がイタリアに行くと、ジェラートとソルベットは食べる人が多いだろうが、
セミフレッドは知らないまま帰ってくる人が多いようだ。

ところがクルフィは、インドではアイスクリームやシャーベットよりもずっとポピュラーだから、
インドに旅行した日本人たちがはじめてこれに出会って、
しっかりはまっちゃって、毎日毎日食べることがあるようだ。
それでしっかりお腹をこわす。
インドのミルクは殺菌していないことが多いので、
ラッシー(ヨーグルトドリンク)もクルフィも、店によってはちょっとリスキーだ。
でもアメリカのインド料理店ならだいじょーぶ。ぜひトライしてみてください。

(2007年6月1日号掲載)


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