
(2026年6月号掲載)
個人から企業へ
普及が進む生成AI
「Claude Mythos」は、極めて高いサイバーセキュリティー能力と推論能力を持つとされている。
|
今年も初夏となり、アメリカの各大学では卒業式の季節となった。著名人に名誉博士号を贈呈してインパクトのあるスピーチをしてもらう伝統は健在だ。だが、その一方で、新卒者の就職は困難を極めているという。ワシントン・ポスト紙の報道によれば、状況はリーマンショック直後に似た水準だという。原因はさまざまだが、主としてAIの影響が大きいと言われている。
実は新卒者の「就職氷河期」というのは、昨年、2025年から始まっている。AIが一気に実用段階となったのは、22年11月30日にChatGPTがリリースされてからだが、それから2年半の間に各企業はどんどん導入を進めた。例えば、25年の春頃からテレビの広告ちゅうちょでは「AI導入を躊躇している方へ」などという宣伝文句を掲げた大手コンサルのメッセージを多く目にするようになっていた。
一般市民の中では、例えばChatGPTや、グーグルのGeminiなどを便利に使うにしても、多くの場合は無料サービスの範囲内で済む。けれども、企業向けのサービスはどんどん有料になっており、しかも多くのAIは料金を払う以上に顕著な効果があり、明らかに若手の社員の代わりになっている。そんな中で、今最も話題となっている新型のAI「Claude Mythos」を開発したAnthropicのアモデイCEOは、現在の事務職の50%は消滅するという発言をして話題を呼んだ。同社は、法律事務のAI「Claude Cowork Legal」を発表したが、法曹資格のある人材並の能力があるという。一方で、「ChatGPT」の最新型5.5-Syberは「Claude Mythos」に追いついたとしている。
AIが浸透する中で
私たちができることは
そんな中で、今年、26年5月の新卒就活市場は、前年以上に事態が悪化している。多くの経済人は、これは一過性のものではなく、「一度、AIに代わられた職種は二度と人間に戻ってこない」と言っている。こうした動きを「新たな産業革命」という人も多い。ちなみに、University of Central Florida(UCF)の卒業式では、この「AIは産業革命」という発言を行った講演者には卒業生たちから盛大なブーイングが浴びせられたそうだ。
何とも激しい動きとなってきたが、在外邦人である私たちとしては、どのような見方をしていったらいいのだろうか。一つは、できるだけ正確な情報を日本に送ることだ。Anthropicの「Claude Mythos」に関しては、システムの脆弱性を突く能力が高いということで、政府からTVのワイドショーまで一斉に「怖い」という大合唱になった。けれども、プログラミング言語の誤りを発見するというのは、AIにとって最も得意な分野の一つだし、「Claude Mythos」のような脆弱性の指摘と修正を狙った製品は各社が開発中である。一つ新製品が出るたびに恐れて右往左往していては、とても時代に乗っていくことはできない。こうした中では、日々変わっていく状況を正確に知らせていく必要が増している。
2番目は、日本の対応方法についてだ。DXすら十分な活用ができずに遅れていた日本は、AIで一気に生産性を取り戻せるかもしれない。その一方で、著作権や正確性の観点からAIを拒絶してしまうかもしれない。正社員の解雇が難しい日本では、AIの影響は非正規雇用に来るかもしれないが、実務を非正規や協力会社に依存している中では、正社員だけではAIは使いこなせないなど、紆余曲折も起きそうだ。適切な実用化について、先行事例をどんどん伝えていくしかない。
3番目は、もしかしたらAI時代には日本文化の価値が見直されるかもしれないということだ。実務はAIに委ねられる時代、美意識、使い勝手、自然との共存など日本文化が持っている深さと確かさというのは、人間ならではの創造力の源泉になりうる。単純な知的労働が自動化する時代にこそ、深い日本文化の価値が輝くことは十分にある。日本発の「ユニコーン企業」が生まれるのなら、もしかしたら今がチャンスなのかもしれない。
|

