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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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タパスが流行ってます

ミスター世界(関根 正和)

最近、巷ではタパスが流行りのようだ。
以前はとても少なかったLAのスペイン料理の店も、今やずいぶん増えて、僕の知っている限りで30店ほどある。
 
タパス。つまり、小さいお皿の単品料理をいくつもとって、仲間といっしょにつまみながら、おしゃべりをしながら、ワインを飲む。
つまり、日本の居酒屋と同じコンセプトですね。
LAでこのスタイルが流行ったのは、どうも日系の居酒屋スタイルの店がまず認知され、そこからこのスペイン風居酒屋、つまりタパスも流行り出したような気がする。
 
でもスペインでは、タパスはもともとあるものだ。
スペイン、たとえばマドリッドで夕食をとろうと思って、9時近くとかにレストランに行くと、ドアに鍵がかかっている。

あれ、もう今日は店じまいしたのか、と思うと、じつはまだ開店していないのである。
だいたい9時に開店し、10時ごろまではまだ客もまばら、11時ごろがピークとなり、夜中の12時過ぎまで店はお客でいっぱいである。
スペインでこんなに遅い時間の夕食が習慣となっているのには、じつは秘密がある。

それがタパスなのだ。

仕事を終えたあとの6時や7時ごろから、ひとびとは街に散歩に出る。繁華街には大勢の友人どうしや夫婦が連れ立って、ウィンドショッピングをしながらそぞろ歩きをしている。
そして適宜、バルつまりワインバーに立ち寄り、ワインを何杯か飲みながら、立ち食いでタパスを食べる。つまり、アペタイザーだ。
これに時間をかけるから、必定、レストランに移ってメインの食事をする時間は、すごく遅くなる。

さて、タパスの代表的な料理は、というと、まずはトルティーリャ。
え? トルティーリャなんて料理と呼べるの? ただトウモロコシの粉を薄く延ばして焼いただけのものでしょ?
 
おっとどっこい、それはメキシコのはなしですね。スペインでは玉子焼きのことなのです。しかもジャガイモ入りで、結構しっかりした料理。
アサリのワイン煮なんかもあるのは日本の居酒屋と似てますね。
 
エビの鉄板焼き。これは非常にウマイです。マドリッドは海から遠いにもかかわらず、この手の海産物がやたらうまい。

オリーブ盛り合わせ、ミートボール、イカリングやベビーイカのまるごとフライ、ソーセージ、チーズ盛り合わせ、コロッケ、酢漬けアンチョビ、鱈の塩漬け、それにスペインの誇る生ハム…。
 
うーむ、思い出しているとスペインに飛んでいきたくなる。
LAにあるスペイン料理店では、メインコースやパエリャなどのゴハンものもタパスとして注文でき、ヘタするとパスタなんかもある。

パスタのタパスとしゃれたつもりかもしれないが、そういうことはスペインではない。あくまでもタパスはタパスなのだ。

でも日本の居酒屋風、タパスからパスタまで一軒ですんじゃうというのも、悪くはないですね。


(2009年4月1日号掲載)