子育てに関する法律

アメリカでは子育てに関する法律や常識が日本と異なります。 なかでも児童虐待に関する見方はかなり厳しいので、よく理解しておきましょう。 また、アメリカの学校は自由というイメージですが、実際にはさまざまな校則が存在します。

日本より厳しい児童虐待に対する認識

児童虐待には、肉体的、性的、精神的虐待、養育の拒否などがあります。
幼稚園児の親が子どもと一緒にシャワーを浴びるといった、日本では「虐待」とみなされないようなことが虐待になるので注意が必要です。なかでも特に気を付けたいのが児童遺棄です。短時間(5~10分)でも、家や車の中に子どもを残してその場を離れることは禁止されています。また、火事やガス漏れ、強盗などの緊急事態に的確な行動ができる年齢になるまでは、子ども一人で留守番をさせてはいけません(具体的に何歳までを「子ども」とするかは発育状況によっても異なるため、一概には言えません)。子どもが英語を話せない場合は、成長度合いにかかわらず、親の保護が必要です。英語が話せない子どもだけにしておくことは、留守番ができない子どもを放置したと見なされます。
アメリカでは子どもに体罰を与えることはしつけ/教育ではなく、暴力とみなされ、虐待行為として通報されます。人前で怒鳴ったり、子どもの前で親同士がけんかをしたりすることも心理的な威圧として虐待に含まれます。
なお、これらの虐待行為を知った場合は、警察や児童施設に通報(Child help National Child Abuse Hotline・☎1-800-422-4453)する義務があります。また、医療、教育関係者、児童福祉関連施設の職員など多くの専門職種の人たちが、職務上虐待の疑いがあると感じたら通報するよう法律で義務付けられています。
通報を受けると、24時間以内にソーシャルワーカーが家庭を訪問し、調査が行われます。例えば、うっかり子どもをお店で大きな声で叱っただけで通報され、調査を受けるというのは、日本人の教育慣習からすると納得いかないかもしれません。しかし、アメリカでは些細な行為でも、疑わしき行為は早いうちに調査し、深刻な問題が起こる前に虐待の芽は摘み取る、という文化が根付いていることを理解しなければなりません。調査の結果、子どもが危険にさらされている状況だと判断されると、保護され、両親は裁判所に出廷を命じられます。
裁判で児童虐待の事実があったと判断された場合は、虐待した者は、裁判所の警告や指示に従い、裁判所の指定の場所でカウンセリングを受けます。家族の間に第三者が入ることにより、互いに話し合い、関係を見直す機会になります。
なお、近年国際結婚の夫婦間で問題となっているのが子どもの連れ去りです。たとえ実子であっても、米国人の配偶者の同意を得ずに子どもを州外に連れ出したり、日本人の親が日本に連れて帰ると誘拐罪にされてしまいます。特に別居中だったり、離婚申請中の場合はこうした事情にも注意しましょう。

子どもの校則違反は保護者の責任に

学校に関する法律は、州の教育法に基づいて各学校区で指針が設けられ、それに沿って校則が決められています。校則は毎年見直され、年度の始まりには新しい校則のハンドブックなどが配られます。保護者は、校則や学校方針の通知には必ず確認のサインをします。サインをしたら、その内容に同意したことを意味しますので、子どもの校則違反は親の責任になり、知らなかったでは済みません。
校則を含めた学校のシステムに関する日本語での情報は、日系の非営利団体Japanese Educational Resource Center(www.jerc.org・☎310-3734888)が発行する『教育ハンドブック』を参考にするといいでしょう。同団体では、個別に教育相談も受け付けています。
また、1990年代初めに導入され、半ば以降全米に拡大した「ゼロ・トレランス」という生活指導方針も、日本とは大きく違うため注意が必要です。①銃刀および武器になり得る物(例えば鉛筆削り用のナイフ)、その模倣品、②暴力、③薬物・タバコ・アルコールの3項目の学内からの排除がこの方針の骨子です。学校生活に不適切な服装(ギャングスタイルの服装など)、人種差別用語やその他不適切な表現の使用を校則違反とする学校もあります。校則で禁止されている物を友人からもらい、それを持っていただけでも違反となります。
薬物に対しての校則も厳しく、常備薬や風邪薬でも届け出をしていなければ違法薬物とされることも。氏名や担当医の名前などを明記した薬を保護者が保健室に届け、生徒は保健室で飲むなどの細かいルールがあります。
銃を模したキーホルダーや昼食用のステーキナイフまでもが違反(後に処分は撤回されましたが)とみなされることもあり、学校によっては過剰と思うほど厳しく取り締まられることもあるため、細心の注意が必要です。
校則違反に対する処分には段階があり、暴力行為の場合、1回目は「親との面接、1~3日間の停学、程度によっては警察に通報」という処分が、3回目には「5日間の停学と学校区からの退学勧告、警察からの警告書」と厳しく罰せられます。アルコール類を含む違法薬物や武器の持ち込み、性的暴行、恐喝などは1回でも退学処分になることも。退学になると教育委員会が指定する教育機関に通います。
なお、The Asian American Drug Abuse Program(www.aadapinc.org・☎323-2936284)では、子どもの薬物乱用に対するプログラムがあり、日本人ソーシャルワーカーが日本語で対応してくれます。

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