日本への本帰国・永久帰国「日本の地方に暮らす」編

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老後は、生まれ育った日本で過ごしたい。そのためには、どこを生活拠点にするかを決める必要があります。 今回の特集では「、日本の地方で暮らす」というテーマで、そのメリット・デメリットをはじめ、アクティブシニア タウンの地方先進事例、移住の準備や心構え、そして、注目の地方自治体や物件・施設リストをご紹介します。

※本コンテンツは「ライトハウス・ロサンゼルス版2019年11月16日号」に掲載されました。

地方で暮らすメリット・デメリット

セカンドライフを日本で過ごしたいと考えている場合「どこに住むか」、 「どんなタイプの住まいを選ぶかが大きな鍵となります。「どこに住むか」は、アメリカに来る前に住んでいた都市や、自宅・実家がある街はもちろんですが、釣りなどの趣味を楽しむことができたり、常々住みたいと思っていた憧れの地だったり、また、将来を見据え介護サービス施設がある場所だったりと、選択肢はさまざまです。
 
そんな中、「地方に住む」というのも、選択肢の一つ。地方といっても、札 幌や福岡など、人口100万人以上の都市もあります。「地方の『都市』なら、例えば北九州市の場合、人口は約96万人。大企業が集まる産業都市で、エンターテインメントやレストランなどの娯楽は充実、空路や公共の交通網も発達しています。また、高知市は人口約70万人ですが、全国で最も病院の数が多いので、高齢者にとっては安心な医療環境と言えます(人口10万人あたり。2016年度「都道府県別統計とランキングで見る県民性」調べ第1位)」と話すのは、三菱総合研究所プラチナ社会センターで主席研究員/チーフプロデューサーを務める松田智生さんです。
 
便性が高く、大都市とあまり変わることのない生活を送ることができる地方 の「都市」は、デメリットがない上に、家賃などの生活コストは、東京に比べて安いのが特長。また、自治体によっては、地方移住支援制度が手厚く、住宅建築補助や、税金控除などを行っているところもあります。
 
さらに、地方の「田舎」の場合は、場所にもよりますが、比較的不動産の価格が安いため、庭付きの戸建てでも購入しやすいというメリットがあります。また、海や山などの自然が多ければ、空気がおいしい、地産の新鮮な食材が手に入る、温泉を自宅に引き入れることができるなど、都会では味わえない潤いのある日常生活が送れるのも魅力です。「ひどい花粉症から逃れるため、東京から沖縄県の宮古島に移住したシニアカップルもいます。健康面でのメリットも期待できるかもしれませんね」(松田さん)。
 
一方で「田舎」は、病院の数が少ない、公共の交通機関が少ないなどのデメ リットもあります。また町内会の行事に参加する必要があったり、大都市に比べて濃密な人間関係があったりするので、人付き合いが苦手な人には向いていないかもしれません。「意外なところでは、ゴミの分別問題があります。東京から地方に移住した際、『ゴミの分別が10種以上あり細か過ぎて度肝を抜かれた』『町内会の行事が多くて戸惑った』ということもあるそうです。事前のリサーチを行う際に、町内会や自治会についても調べておくと良いでしょう」(松田さん)。

担い手として活躍 日本版CCRC

近年、日本にも、アメリカのCCRC(Continuing Care Retirement Community)のようなアクティブシニアタウンが出てきています。現在、全国で約216の地方自治体が推進意向を、121団体が取り組み意向を示しており、その多くが地方にあるのです(平成30年10月1日現在)。5年ほど前に、地方創生の施策として注目され始めた日本版CCRCは、「生涯活躍のまち」と呼ばれ、地方創生の観点から、中高年齢者が希望に応じて地方や「まちなか」に移り住み、多世代の地域住民と交流しながら、健康でアクティブな生活を送ることができる地域づくりを目指すもの(内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務 局サイトより)。「さらに、必要に応じて医療・介護が受けることもできるので、老後も安心して住み続けられる場所として注目されているのです(松田さん)。
 
日本版CCRCの先進事例の一つに、石川県の「シェア金沢」があります。シェア金沢」は、金沢の中心街から車で15分ほど離れた郊外にある社会福祉法人運営のコミュニティーです。「キーワードは多世代。約80名の入居者が住む高齢者住宅のほか、福祉・児童入所施設、大学生の住宅などが共存しています。さらに温泉やレストラン、カフェ、ドッグランなどは地元の人も利用できるので、子どもからシニアまでが住む〝ごちゃまぜ〞コミュニティーなのです」(松田さん)。シニアは、共同販売店で仕入れから運営までを行ったり、児童入所施設の見守りを担当したりすることもあり、コミュ ニティー内で活躍することができます。「コミュニティーの担い手として、シニアにも役割があり、やりがいや生きがいを持てる。約1万坪の広さを誇る多世代共助のコミュニティーを実現できたのは、地方ならでは。今後は、シニアだけが住むコミュニティーではなく、開放性が高く、地域とのつながりが強いCCRCが増えてくると思います」(松田さん)。

セカンドライフのための準備・行動・心構え

日本でのセカンドライフを実現するためには、綿密な準備と情報収集が欠かせません。まずはインターネットなどで、地方移住情報サイトや各自治体の「移住促進課」のサイトをチェックし、「どこに住むか」「どんなタイプの住まいを選ぶか」を大まかに決めておくと良いでしょう。
 
また、一時帰国を利用して、住んでみたい街や施設を訪ねてみることも大切です。「セカンドライフに必要なのは、〝3つの安心〞です。1つ目は〝カラダの安心〞で、良い病院はあるか、病院の場所や規模はどうか、持病があれば専門の医師がいるか、医療介護サービスはあるかなど。そして2つ目は〝オカネの安心〞で、生活コストはどうか、地元のスーパーで何を売っているか、価格帯はどの程度かなど、気に入った街を訪れる際は、観光目線ではなく、生活する上で重要なポイントを事前に確認しましょう。
 
移住は結婚と同じ。良いところも悪いところも受け入れる覚悟を持つつもりで。そして、可能であれば、まずは短期(1日〜2週間程度)、または 長期(2週間〜1カ月間)で、地方自治体の体験滞在サービスや『Airbnb』を利用して、実際に生活してみると良いですね。街を訪れた際の印象や直感も大切なのですが、いきなり移住してしまって後悔するケースもあるのです」(松田さん)。ここ数年は、移住支援制度の一環として、ツアーや体験滞在などを積極的に行っている地方自治体も増えており、例えば、無料の移住体験滞在施設「臼杵ハウス」を提供している大分県臼杵市などがあります。
 
「3つ目は〝ココロの安心〞で、セカンドライフを過ごす街で自分の生きがいや役割、そしてどうやって人とつながるかということを、きちんと考えておく必要があります。2018年、ロサンゼルスでセカンドライフについてのセミナーを開催した時、日本でのんびり老後を過ごしたいというよりも、誰かの役に立ちたいという人が圧倒的に多かったのです。自分がこれから何をしたいのか、何ができるのかを見つめる期間を設けることが必要です」。
 
充実したセカンドライフを送るには、学び続けることも大切だと話す松田さん。近年、日本では、シニアを対象にした大学が増えています。奈良シニア大学、長野県シニア大学、神戸シルバーカレッジなど、地方にも数多くあり、学費が安い上、学べる分 野も非常に幅広いのが特徴です。「アメリカに住んでいた方なら、シニア大学で学びつつ、その語学力を生かして外国人観光客のガイドを務めるという、まさに福沢諭吉の説く『半学半教』を体現することが可能でしょう」。

セカンドライフ3カ条

1. 事前のリサーチ、現地訪問など、入念な準備を行う。
2. カラダ・オカネ・ココロの安心を確保する。
3. 移住先での自分の役割を見つけ、やりがいや生きがいを持つ。

地方移住情報サイト

自治体クリップ
認定NPO法人 ふるさと回帰支援センター
全国移住ナビ 
JOIN 一般社団法人 移住・交流推進機構
生涯活躍のまち推進協議会

松田 智生さん

【取材協力】
主席研究員 チーフプロデューサー
松田 智生さん
株式会社三菱総合研究所 プラチナ社会センター
Webサイト:platinum.mri.co.jp
1966年東京生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。専門は高齢社会の地域活性化、アクティブシニア論。内閣府高齢社会フォーラム企画委員。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の地方創生x全世代活躍のまち検討会座長代理などを歴任。著書に「明るい逆参勤交代が日本を変える」「日本版CCRCがわかる本」がある。

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