定期給与とボーナス

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会社を営む際に切っても切り離せないものが経費です。中でも最大の割合を占めるといっても過言でないのが給与です。その中でも多くを占めるのが役員報酬です。他国と比べ、アメリカでは経営陣に多額の報酬を支払うことが多いのですが、その金額は何をもとにしているのでしょうか。
国税庁(IRS)によると、役員は被雇用者として扱われ「妥当な金額」の報酬を受け取る権利があります。では、一体いくらが「妥当な金額」なのでしょう。
実のところ、この金額の算出方法に関して正式な税法の制定はされていません。しかし、どういった要素をもとに算出すればいいのか、というガイドラインは過去のIRSとの係争をもとに公表されています。以下は、その一部です。
 
・会社に貢献できる能力や経験
・役職上の義務と責任・業務への貢献度
・過去に受け取った配当金・株主ではない社員に対する給与額
・過去のボーナスの支払い時期
・正式な報酬契約や書面上で指定した数式を使用
 
他に、同業他社の平均を取る方法もあります。実際の業績によって金額が上下する可能性はありますが、その数字に正当性があれば問題ありません。
1人が複数の役職を兼任していたり、会社にとって複数の大きな貢献を果たしたりしている場合にはそれに応じて高い役員報酬を受け取ることも可能だという判例が出ている一方、節度のある金額設定にする必要があるという判例も出ているので、どんな場合でも極端な金額は避けた方が無難です。

法人の確定申告

法人にはCコーポレーション(以下C-Corp)とSコーポレーション(以下S-Corp)の2種類があります。前者は法人所得に対する法人税と、そこからの配当に対して2回課税されるという二重課税の問題があります。
S-CorpはC-Corpのような配当金に税金がかかる二重課税の心配はありませんが、従業員のみならず株主(役員)に対しても妥当な給与を支払い、給与税を発生させる必要があります。
C-Corpはその年の収益で役員報酬の調整をすれば課税所得を低く抑えることが可能で、最終的に支払う税金を減らすことが可能です。
S-Corpは役員報酬の代わりに配当金を出せば各種給与税を削減できます。
どちらのケースも、ある程度の税金は必ず支払わなければならず、極端な役員報酬は脱税の疑いをかけられてしまうこともありますので、気を付けなければなりません。法人確定申告書「Form 1120,1120S」の1ページ目の経費記入欄には、給与と役員報酬を別々に記入するようになっていることからも、IRSがいかにこの数字に注意を払っているかがうかがえます。

ボーナス

会社によって方針は大きく違うと思いますが、その会社に多大な貢献をしたとみなされる役員には特別報酬が支払われることも多くあります。その場合も前述のガイドラインにのっとった適切な書類の準備が重要です。
例えば、経営状況や景気の影響によって業務の回転が遅い場合、一定レベルの運転資金を維持するために役員報酬を低く設定する場合もあります。また、会社設立直後などで収益が不安定な場合も同様です。これらのような特殊な状況下では、方針を定めた議事録を事前に文書として残しておけば、税務当局に追及された際に素早い対応が可能です。
 
(2014年9月1日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

 
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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