実に4,500校もの大学が存在し、世界トップレベルの大学も多いアメリカ。そこから自分にぴったりの大学を見つけるのはたやすくありません。そこで本記事では、アメリカの大学の選び方から入学準備、さらに憧れのアイビーリーグのQ&Aまで、その情報を余すことなくお届けします!
前半は、教育コンサルタント・原田誠さんの監修で、大学入学を目指す生徒・そして保護者の皆さんへの手引きを紹介します。
01. アメリカの大学を知る
大学の区分
【執筆協力】
原田 誠さん 教育コンサルタント。 MACS Career & Education代表。 本誌で人気コラム「米国大学進学ガイダンス」を連載中。サンフランシスコ・ベイエリアを拠点に、中高生の進 学指導などを行う。 Webサイト |
①2年制と4年制
アメリカには、4年制大学だけでなく、2年制の大学も多数あります。2年制大学(特に州立)は一般的に「コミュニティー・カレッジ(Community Colege)」と呼ばれます。4年制の大学と比較して安価で、2年制大学に入学してから4年制大学に編入する学生もいます。この記事では主に4年制大学にスポットを当てますが、2年制大学も大きな役割を担っていることは覚えておくと良いでしょう。
②州立大学と私立大学
アメリカの高等教育をリードしてきたのは、アイビーリーグをはじめとする伝統的な私立大学です。これに対し、より多くの学生に教育の機会を与えるために作られたのが州立大学です。近年日本でも人気が高まっているリベラルアーツ・カレッジの多くは私立大学です。大規模で学部や専攻の種類が多いのが州立大学、少人数制で質の高い教育を提供するのが私立大学の特徴です。
③総合大学とリベラルアーツ・カレッジ
リベラルアーツ・カレッジは、幅広い教養の修得を重視した教育を行い、将来さまざまな分野で活躍できる人材を育てる大学です。世界に類を見ないユニークな教育システムで、幅広い学問領域を学んだ上で、専門分野も深く学べるところが、日本の大学の教養学部との大きな違いです。リベラルアーツ・カレッジの多くは総合大学と異なり大学院が併設されていないので、教授はより多くの時間を学部学生の指導に費やせます。
学費
学費の中で大きな割合を占めるのが「授業料(Tuition & Fees)」と「寮費・食費(Room & Board)」です。これ以外に、教科書代や交通費、医療保険の保険料などの費用がかかります。1年間大学で学ぶのに必要な費用の合計を「Cost of Attendance」と言い、各大学のウェブサイトには、一般的な学生のモデル金額が記載されています。
多くの学生は、グラントやスカラシップと呼ばれる奨学金を大学から得て進学します。アメリカの奨学金は全て返済不要の給付型なので、奨学金を獲得すれば、実際に負担する学費が下がります。 Cost of Attendanceから、大学から給付される奨学金の額を差し引いた金額を、「Net Price」と言います。 Net Priceは、各学生が1年間に実際に支払う費用を示す、最も重要な値です。
州立大学では、州内学生のCost of Attendanceは低めです。対して私立大学のCost of Attendanceは高額ですが、州立大学よりも奨学金が得やすいので、 Net Priceは大きく下がる場合が多いです。例えば、 Pomona CollegeのCost of Attendanceは、7万9,653ドルと高額ですが、ファイナンシャルエイドも学生一人当たりの5万ドル以上と高額なので、 Net Priceは州立大学と比べてもリーズナブルです。
奨学金の種類
メリットベースの奨学金
・学生個人の評価に対して給付される
・国籍や滞在資格に関わらず全学生対象
・数千ドル~学費全額免除まで金額はさまざま
ニードベースの奨学金
・家庭の所得が学費を負担するのに十分でないと判断された場合に、不足分の一部または全部を大学が負担する制度
・主として米国市民と永住者対象(一部の大学は外国人留学生にも給付)
タレントベースの奨学金
・音楽、美術、スポーツなど、学生の特別な能力に応じて給付
・国籍や滞在資格にかかわらず全学生対象
教育の特徴
①リベラルアーツ教育
アメリカの大学が注力するのが、リベラルアーツ教育。リベラルアーツ教育が目指すのは、あらゆる問題を総合的に判断できる能力であり、幅広い視野で物事を捉えて決断できる能力であり、また、さまざまなタイプの人々を納得させられるコミュニケーション能力でもあります。つまり、将来社会で活躍するのに必要なあらゆる能力を高めることがリベラルアーツ教育の目的です。
②大学院
アメリカの大学院教育は、専門分野をより深く学習するためのプログラムです。多くの場合、独自研究に基づいた論文の作成と発表が求められます。学問を追求する一般の大学院(Graduate School)に対して、特定のキャリア・トレーニングを目的とした大学院はProfessional Schoolと呼ばれます。弁護士を目指す学生のための法科大学院(Law School)や医学を学ぶ医学大学院(Medical School)などがあります。
③編入学
コミュニティーカレッジから4年制の州立大学への編入学が非常に盛んです。学費の面で有利な場合が多い一方、リベラルアーツ教育をしっかり受けたい学生や、奨学金を利用して私立大学に進学したい学生には不向きなケースもあるので注意してください。
非永住学生の学校選択
駐在などで一時的にアメリカに滞在している学生にとって、アメリカの大学への進学は不利と考えるかもしれませんが、決してそうではありません。海外学生を積極的に受け入れるアメリカの多くの大学では、非永住学生は外国人留学生と同等のカテゴリーとしており、入学審査で有利になる場合が多いのです。
渡米して日が浅い学生は、英語力不足により高校の成績やSATなどのアドミッションテストの点数が低くなる場合もありますがその点も考慮されます。学力と英語力は分けて評価され、日本の学校の成績も学力評価として利用されます。
非永住学生が州立大学に進学する場合は、ビザに注意してください。親が非移民ビザを保持し、学生がその扶養家族として居住している場合は、21歳になると学生ビザに切り替える必要があります。入学時は州内学生の学費で進学できても、学生ビザに切り替わった時点で州外学生扱いとなり、学費が一気に跳ね上がります。非永住学生は、私立大学に奨学金を得て進学したほうが、州立大学に進学するよりも結果的に学費を抑えられることが多いです。
アメリカの大学生活について聞きました!
木邨直子さん
神戸市外国語大学 2020年卒業 2017~18年California State University Long Beachに留学 |
大学3~4年生の時、(日本の大学を通さない)、個人留学をしました。California State University Long Beachを選んだ決め手は、アメリカ文化とサーフィンを勉強できること。各セメスター4~5クラス(12単位)を取りました。一番楽しみにしていた「サーフィンとアメリカ文化」の他、「ホスピタリティー」「スペイン語」「アジアの食とアメリカ文化」「天文学」など、とにかく興味のあった授業をなるべくたくさん取りました。
授業のある日の、授業のない時間や放課後は、図書館で課題に取り組むことが多かったです。課題の量が半端ではなく、日付けが変わる頃まで課題!という日も珍しくありませんでした。ただ、授業の数自体は多くないので、友人と会ったり出かけたりと、時間の調整はしやすかったです。
休日はサーフィンをしたりディズニーランドに行ったり、長期の休みには国内外を旅行したりと、勉強とそれ以外とバランスの取れた生活が送れました。日本の大学との違いは、学生がとにかく積極的なこと。どんどん意見を言ったり、グループワークがたくさんあったり。時間にルーズというのも感じましたね(笑)。課題は大変だったし言葉の壁もありましたが、興味のある内容ばかりだったので頑張れました。
02. アメリカの大学を比べる・選ぶ
アメリカの大学は、それぞれ個性がはっきり出ており、自分との相性の見極めが非常に重要です。誰にでもフィットするオールマイティーな大学はありません。なるべく多くの大学を実際に訪問し、自分自身で判断してください。一部の大学は2020年の夏学期から、多くの大学は20年の秋学期からキャンパスツアーやアドミッションの説明会を再開します。遠方で訪問するのが難しい大学に対しては、アドミッションに直接連絡して、大学の特徴を詳しく教えてもらうことをお勧めします。大学を比較する際のポイントをまとめました。
①専攻分野
アメリカの大学は、進学してから専攻を変えたり、専攻を決めずに進学したりできるので、日本の大学を選ぶときのように、学部や学科を決めて大学を選ぶ必要はありません。アメリカの大学生は、在学中に平均2回以上専攻を変えると言われています。とはいえ、ある程度方向性が決まっていた方が、大学を絞りやすくなります。
大学を選ぶ際に、自分が専攻を希望している分野を強みとしているかどうかを重視する学生が多いですが、実はさほど重要ではないかもしれません。研究施設が充実していたり、高名な教授がいたりしても、その恩恵を受けるのは大学院生のみという場合も少なくありません。
小規模の大学などで、自分が希望する専攻がない場合は、大学が学生のために特別に専攻を用意してくれます。ただし、建築や映画など、専攻のある大学が限られている分野を希望する学生は、その専攻がある大学を選ぶ方が良いでしょう。
②教育システム
学習スタイルは一人ひとり異なります。自分にあった教育システムの大学で学べるかどうかで、学生の満足度は大きく異なります。
例えば、明確な学習目的を持ち、自主的に行動できる学生にとって、Core Curriculum(必修科目)の多い大学は時間の無駄と感じるかもしれません。そのような学生には、必修科目が少なく、一般教養科目を自由に選び、自分の強みや興味に応じて独自のカリキュラムを作れる大学が合っています。特にダブルメジャー(複数の主専攻)を目指す学生にとっては、必修科目が少ないことは極めて重要です。
同時に複数の学習を進めることが難しい学生には、 Colorado Collegeが採用するブロックプランが適しているかもしれません。このシステムでは、学生は常に一つのクラスだけを履修します。同時に複数の課題提出や期末試験が重なることがないので、学生は、自分のペースで落ち着いて学習に取り組むことができます。
③奨学金
大学選びにおける重要なポイントの一つです。希望する大学に合格したけれど、学費が払えずに断念するのは非常につらいので、そうならないような大学選びをすることが重要です。奨学金の獲得方法はさまざまです。学力や人物評価で差別化してメリットベースの奨学金を狙うのか、スポーツや音楽の才能を評価してもらってタレントベースの奨学金を狙うのか、ファイナンシャルニードをしっかりカバーしてもらうのか、など、戦略は一人ひとり異なります。大学によっても奨学金の扱いは異なるので、自分の強みや家庭の状況を考慮して、どのようなタイプの大学から奨学金が取りやすいのかをよく考えて、大学を選びましょう。
大学選びについて聞きました!
杉江文彦さん
University of California San Diego 2013年卒業 |
大学についてリサーチを始めたのは、9年生ぐらいからだったと思います。学年が進む中で、GPAやSATなどのスコアも見ながら、現実的に合格できそうな大学を選んでいきました。サンディエゴ出身なので、公立は州内のUCの大学を中心に、私立は州外の大学でいくつかピックアップしました。大学を調べるにあたっては、インターネット(NICHE)を使ったり、高校のキャリアセンターや卒業生に話を聞いたりしていました。実際に出願した大学は、UC系を複数と、キャンプに参加して印象が良かったアイビーリーグの大学、憧れから半分「記念受験」のように受けたところもあります。
8大学受けて3大学合格したのですが、その中で、ランキングが良かったこと、勉強以外のキャンパスライフ、費用のバランスなど総合的に判断してUniversity of California San Diegoに決めました。大学では結果的には経済を専攻しましたが、入学前は美術史に興味があり、「どの大学がどの専攻が強いか」はあまり重視していなかったですね。周りの友人たちも、「メディカルスクールを目指す」といった一部の子以外は、当時は専攻より大学のブランドやランキングを重視している子が多かったのではないかと思います。
03. 進学準備をする
日々の学習に注力する
大学のアドミッション(入学審査)で最も重視されるのは高校の成績です。高校4年間の成績全てが評価の対象となりますが、現実的にアドミッションで評価される最後の成績は11年生となります。また、アドミッションでは成績の動向を重視します。10〜11年生にかけて上昇傾向にある成績は高く評価されますから、11年生の成績は高校4年間の中で最も大切と言えます。
とはいえ、必ずしも全ての科目でAを目指す必要はありません。教科の得意・不得意は誰にでもありますし、学業以外にさまざまな活動に取り組んでいる高校生は、日々の学習にかけられる時間は限られています。大切なことは、自分にとって満足のいく成果を上げられるかどうかということです。
難しいクラスに挑戦する
多くの高校では、AP(アドバンストプレイスメント)のコースが提供されています。APプログラムは、高校在学中に、大学のイントロレベルのカリキュラムが学べるプログラムです。また、APの代わりにIB(国際バカロレア)を提供する高校もあります。アメリカの大学はAPプログラムのような大学レベルの学習にチャレンジする高校生を、入学審査で高く評価します。例えば、USC(南カリフォルニア大学)のアドミッションの基準には、「APまたはIBのクラスが高校で提供されている場合は、履修すべきである」と明記されています。自分の得意科目や大学で目指す専攻に関わる科目でAPプログラムが提供されている場合は、ぜひチャレンジすることをお勧めします。
共通テストを受ける
ACTやSATなどの共通テストは、11年生の間に受けておきましょう。大学のアドミッションでは、テストスコアの堤出が必要な場合があり、その場合はACTまたはSATのスコアを堤出することになるからです。また、得意科目については、科目別テストであるSAT Subjectも受けておくと良いでしょう。SAT Subjectの提出を必須とする大学は少ないですが、そうでない大学でも任意で提出することは可能です。
なお、アドミッションにおける共通テストのスコアの重要度は決して高くなく、またテストオプショナル(スコアの堤出を要求しない)を採用する大学も増えています。例えば、UC(カリフォルニア大学)の各大学は、20年秋のアドミッションからテストオプショナルを採用し、段階的に共通テストを廃止する計画を発表しています。
アドミッションにおける学力評価の基本は、テストスコアではなく高校の成績です。テスト対策に時間を取り過ぎて、日々の学習に悪影響を及ぼすようでは本末転倒なので、テスト対策は効率的に準備を進めましょう。
アプリケーションに必要な書類
アメリカの大学のアドミッションは、基本的に書類審査です。受験生が記入して提出するアプリケーションフォームに加えて、高校の成績表やACT、SATなどのテストスコア、推薦状など、提出された書類を基に学生を総合的に評価します。アプリケーションで必要となる書類や試験は左の表の通りです。
コモンアプリケーション
アメリカの大学では、出願書類をオンラインで受け付けるのが一般的です。MITやGeorgetownのように大学が独自のアプリケーション・フォームを用意している場合もありますが、複数の大学で共通で利用できるアプリケーションサービスを採用する大学がほとんどです。中でも、最も多くの大学に採用されているサービスが「コモンアプリケーション(Common Application)」で、全米820校を含む約900の大学で入され、年間100万人以上の学生が利用しています。高校の成績やテストスコア、エッセー、推薦状の提出など、アプリケーションで必要な手続きのほとんどがこのプラットフォーム上で行えます。
コモンアプリケーション上で仕上げたエッセーは、採用する全ての大学に同じものを提出できます。7つのトピックから1つ選んで書くパーソナル・エッセーと、自由に書けるアディショナル・インフォメーションに加え、2020年秋のアドミッションでは「COVID-19 Question」が加わりましたが、現在はより広範な「Challenges and Circumstances」に変わり、パンデミックを含む「コミュニティの混乱」「家族の事情」「学習環境の制約」など、幅広い状況をここで説明できます。
アスリート学生のアドミッション
アメリカの大学はスポーツに力を入れているところが多く、NCAA(全米大学体育協会)の加入大学は1,000以上あります。NCAA加入大学は、それぞれの競技のレベルの高い順にディビジョンⅠ・Ⅱ・Ⅲに分かれます。Ⅰ・Ⅱの大学ではアスリートのための奨学金があり、Ⅲの大学でもメリット奨学金にアスリートとしての評価が加えられます。
大学でNCAAに所属してスポーツができるのは、全体のわずか6%程度という狭き門。個々に大学のコーチに連絡を取ることが第一歩です。自分のレベルを見極め、スポーツと勉学とのバランスなども考えながら、多くの大学に連絡を取ります。自分の成績や実際の動画などの資料、学習についての情報も併せて送ると良いでしょう。コーチの推薦がもらえたら、アスリートとして入学審査を受ける道が開かれます。
アドミッションで重要な書類や試験
①学校の成績
最も重要な書類。大学は、単にGPAだけで成績を評価するのではなく、どの高校のどの科目でどのような成績を取ったのかを精査して学力評価を行う。与えられた環境で努力していることが重要。右肩上がりの成績は高評価。
②エッセー
成績と並び非常に重要な書類。学生が、今までの人生をどのように生きてきて、どのように成長してきたのかを全体的に評価することで、将来性を見極めることが目的。共通のエッセーに加えて、大学が独自のエッセーを課す場合も多い。
③AP/IB
APコースの履修者は5月初旬にAPテストを受け、5から1までの5段階(5が最高)で評価される。アドミッションで評価されるためには3(できれば4)以上が必要。多くの大学で、単位として認定される。IBディプロマもアドミッションで高評価。
④ACT/SAT/SAT Subject Test
不要の大学が多いが、提出が必要な大学にはACTまたはSATのどちらかを提出する。SAT Subject Testは科目ごとに受けるテスト。STEM系の進学を目指す場合は、数学や科学のSAT Subject Testを提出すると効果的。
⑤推薦状
自分のことを良く知っている高校の先生に書いてもらう。大学により1通または2通必要。アプリケーションに書いた自分の強みを補強する内容の推薦状が効果的。大学により、追加の推薦状を提出することも可能。
⑥TOEFL(必要な場合のみ)
英語が母国語でない学生の英語力を測るテスト。ACTやSATの英語スコアで代用可能な場合もある。アメリカの高校に通っている場合は不要な場合が多いが、アドミッションが必要と判断した場合は要提出。IELTSで代用可。
アドミッションについて聞きました!
内田エイミー暖子さん
Torrance High School 12年生 2020年秋、Quinnipiac University入学予定 父:テッドさん、母:友来さん |
①ゴルフについて
友来さん:娘の暖子はアメリカ生まれで、この秋からコネチカット州にあるQuinnipiac University(以下、QU)に進学する予定です。ゴルフのスポーツ推薦でアドミッションを受けました。QUはゴルフのディビジョンⅠに所属する大学です。
暖子さん:ゴルフを始めたのは5歳ぐらいの時でした。家族がゴルフをしていたので、自然に始めた感じです。本気で練習をするようになったのは6年生ぐらいからで、その頃にはクラブに入ってレッスンを受けていました。
テッドさん:小中学生の時は、ゴルフを本格的にやるとなると、学校ではなく、学校外のクラブでやるのが中心です「South California PGA Junior Tour」というツアーは、ほぼ1年を通してやっているので、こういったツアーに参加するのが一般的です。
②大学の選び方について
暖子さん:高校に入ってからは、ゴルフのツアーに参加するといろいろな場所に行くので、その際に近くの大学に寄って見学していました。
テッドさん:この頃から、ディビジョンⅠかどうかは分からないけれども、どこかしらのレベルで、大学でもゴルフを続けられるだろうとは思っていました。ですから、ゴルフを続けながら、その後の成績次第でどのディビジョンの大学を選ぶかを含めて決めていこうと。10~11年生の間の夏で、ゴルフの成績が伸びて、PGAの「エリートツアー」というレベルの高いツアーに出られるようになったんです。そしてその頃から、現実的にディビジョンⅠの大学にも手が届くかな、と思うようになりました。
暖子さん:QUを知るきっかけになったのは、お友達のお父さんでした。その方がQUのコーチに私を紹介してくれて、コーチからオファーを頂いたんです。
友来さん:私はアメリカの大学アドミッションを経験していないので、こういった話を聞いて、親同士のつながりやコーチとのつながりというのが思った以上に大切なんだ、ということを知り、驚きました。
暖子さん:当時は、どんな大学がいいという好みは特になかったので、QUは大学がオファーをしてくれた、ということが大きな決め手でした。
テッドさん:ディビジョンⅠの大学というと、本当に「勉強よりスポーツ」「スポーツのために大学に行く」というようなところもあります。スポーツの時間を確保できるよう、専攻を指定されるような大学もあるのですが、QUは好きな専攻を選んでいいよ、と言ってくれたんです。
暖子さん:特に西海岸の大学のほうが、「スポーツ優先!」という大学が多いように思います。
③勉強面について
暖子さん:Weighted GPAは4.5ぐらいでした。各学期に、APやHonorsクラスを1つか2つ取っていました。多い子だと、4つ、5つと取る子もいるのですが、ゴルフと両立するためには、2つぐらいというのはちょうどいい数だったと思います。
友来さん:試合に行く時にテキストを持っていって、車の中で勉強したりもしていましたね。
④入学後について
暖子さん:大学で楽しみにしているのは試合の遠征でいろいろなところに行けることです。
テッドさん:また、経済専攻を考えているのですが、「3+1」という、3年間でBachelor Degreeを取って4年目でMBAを取れるというプログラムがあり、それに挑戦しようかと話しています。
友来さん:今はとにかく新型コロナウイルスのこともあって、入学自体どうするか、1年延ばすかというのも考えているところです。
テッドさん:1年は他のカレッジに通う、というのもありかなと。
友来さん:そういったフレキシブルさがあるのは、アメリカの大学の良いところだなと感じています。
名前は知っているけど実態はよくわからない!?
「アイビーリーグ」を大解説!
Cornel University. Photo Credit: Lindsay France
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誰しも耳にしたことはあるであろう「アイビーリーグ」という名前。アメリカの中でも一流と言われる大学グループについて、プリンストン日本語学校主任で、弊誌でコラムを執筆する冷泉彰彦さんに、素朴な疑問をぶつけてみました。
※アイビーリーグは、東海岸にある次の8大学から成る大学グループ。創設年順に、ハーバード大学、イェール大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、コロンビア大学、ブラウン大学、ダートマス大学、コーネル大学。
Q1. 「アイビーリーグ」とは?
どのようにして形成されたのでしょう?
【執筆協力】
冷泉彰彦さん 東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒業。福武書店、ベルリッツ・インターナショナル社、ラトガース大学講師を歴任後、プリンストン日本語学校高等部主任。 弊誌でコラム「冷泉彰彦のアメリカの視点×ニッポンの視点」を連載中。 |
「リーグ」というのは「連盟」という意味で、実際この大学群の連盟があるんですね。学校連盟の本部はプリンストンにあります。成り立ちとしては、アメリカという国が作られる過程で、東海岸の大学の人たちが「大学教育をちゃんとやっていこうね」ということでだんだんと集まっていったんです。実は最初は9校あって、「ラドガース大学」という大学も入っていたんですが、ここは早い段階で州立化して脱退して、現在の8校は全て私立大学です。いずれも、もともと意識の高い学校として作られていたと言えます。特にハーバードやプリンストンは、人材育成という意味では初期からうまくいっていた学校です。
実は、ほとんどのアイビーの大学は1970年代までは男子校だったのす。それまでは結構保守的で、教育水準は高いけれども、お金持ちの子弟が多い「お坊ちゃん大学」という感じがありました。それが70年代から共学化され、世界中から留学生も受け入れるようになった。大学院レベルではそれ以前から行っていたのですが、特に学部の段階でも受け入れていこうと。その後90年代、冷戦が終わってグローバリズムが加速すると、国外、中でもアメリカの一流の大学を目指すというのは世界的な流れになりました。あとは、2000年頃のITバブルの崩壊を機に、学部の段階でいい大学に行くのがいいということで、志願者がどんどん増えていきました。そういう意味で、特に学部レベルでは1970年代以前と以後でアイビー大学は全く別物と言えます。
Q2. それぞれの大学の特徴を簡単に教えてください。
私独自の言い方ですが、一つは「でっかいアイビー」「ちっちゃいアイビー」という分け方をしています。「でっかいアイビー」はコーネルとペンシルべニア。この2校はものすごく学生数が多いんです。極端に言うと、「ほんの少し他より入りやすい」。逆に、その中で良い成績を取って卒業するのはすごく大変です。入学してすぐの秋学期に「地獄に突き落とす」と言われていて(笑)、基礎の授業からかなり厳しいようです。ですから、この2大学で良い成績を取って卒業したとなれば、ハーバードやプリンストンに負けない価値があると言っていいと思います。
一方「ちっちゃいアイビー」はハーバード、プリンストン、イェールの3校。入る人数が少ないということもあり、やっぱり日本的な「偏差値」のような考え方、入る難しさでいくと、一段高いと言っていいと思います。良くも悪くもプライドが高くて、競争意識が強く、お互いのライバル意識も強い。世界的に有名なんですけれども、それだけの個性があります。
他の3校ですが、コロンビアは特殊で、マンハッタンの中にあって、アイビーでは珍しい都市型の大学なんですね。だから、ジャーナリズムなどの分野では圧倒的に強いです。ダートマスだけは「カレッジ」を名乗っている。小さな大学院もあるんですが。一番自然の中の大学という感じです。ニューハンプシャー州のハノーヴァーという街にあるんですが、少人数教育もやっていたり、卒業生たちのつながりもすごく強い学校です。ブラウンは医学部や、不思議とアート系が強かったり、有名人が進学したり、一部に非常に人気がある面白い大学ですね。
8大学それぞれに個性が強くて、ブランドを押し出している大学群と言えます。
Q3. アイビーリーグの中でも、「序列」はありますか?
Yale University. Photo Credit: Michael Marsland
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ハーバードと言えば、世界的にも有名で、大学の事情に詳しくない人でも知っていて、実際入る難しさで言えば一段上と言えます。入るのが難しい理由は二つあって、一つはとにかく世界中から優秀な学生を集めるというのがあって、留学生比率も高いし、国内でも競争率が高いと言えます。もう一つは、とにかく個性的な学生を集めるということを意識しているからという点です。
特にハーバード、プリンストン、イェールといった大学は、「ガリ勉優等生タイプ」をものすごく嫌うという傾向があります。「自分たちの大学に合格することを人生の目標にしてきたような人は絶対入れたくない」というのが非常に強いです。エッセーでも、いかにも優等生が書いたような、「非の打ち所がない」といったものを書く学生を嫌うんです。ですから、どこが一番偏差値が高いから、優等生が集まっているから、という単純な話でないのです。
学生がどの大学を選ぶかという点では、「自分が何をやりたいか」というところから決めていく人が、特に勉強熱心な人では多いです。そういう場合は、興味のある分野の専攻が強い大学を選んでいきます。だから例えば、「ハーバードに入れなかったからイェールに行こう」といった意味での序列はないと言っていいと思います。
Q4. 入学審査で特に重視されるポイントは何でしょうか?
一番重視されるのは高校の成績です。中でも、どんな科目を取っているかを見ますから、簡単なものばかりを取ってはだめなんです。貪欲に先へ先へ取っていく、そして成績を収めていく。もし、学校の先生との相性が悪くてたまたま一つだけ悪い点数を付けられてしまった、などというときは、エッセーなどでそのことを書けば大丈夫です。「1点でも高く」といった基準ではなく、多角的に見てくれますから。ただ、やっぱり一番大事なのは高校の成績ですね。
合格の判定にあたっては、それぞれ大学にアドミッションの専任スタッフがいて、願書とかをものすごく細かく見ていくわけです。それぞれ200年以上の歴史があって、どうやって入ってきた人が卒業してどうやって活躍したかを詳しく追跡して、方針を決めています。
各大学に共通しているのは、高校の勉強だけを一生懸命やっただけではなくて、将来社会に出て、本当の意味で知識人になっていく素質があるか、社会に貢献していくような頭脳になっていくかという点ですね。ベースになるのはやはり高校の成績であり、エッセーを書かせて考え方や個性を見て、それに加えて履歴書や推薦状を見て、面接もして、総合評価をしていくということ。日本でいうと大学受験より就職活動に近いと言えると思います。
Q5. アイビーリーグをはじめとする「一流」の大学に合格する学生に特徴はありますか?
ある分野で明らかに卓越している、という部分は必要だと思いますね。ディベートで明らかに優秀だったとか、何か特殊な民族舞踊のコンテストで成績を残している人だとか、数学だと高校の時点でも大学レベルのものまで理解しているとか。一番歓迎されるのは、将来研究するテーマが見えている人ですね。おぼろげにでも、特にこういった道を歩みたいというのが見えている、というのが一番大事だと思います。
Q6. 入学を目指すには、高校生活でどんなことを意識するとよいでしょうか?
2種類あります。まず、どうしようもなく天才・秀才で、どうやっても入るだろうなという人はたまにいるんですね。そういう人は何をやっても入るのでいいんですが(笑)、数としては少数です。
そうではない、優秀だけど頑張らなければいけない人がアイビーのレベルに入るとなると、これは大変です。まず、現地校で難しい科目を取って、良い成績を取らなければいけない。SATなどの統一テストも満点に近い点数が必要です。それに加えて、スポーツ活動もほぼ必須ですね。アメリカのスポーツは季節モノなのですが、1年を通して何かしらのスポーツを続けていることが非常に大切です。体を動かして、目的意識を持って、リーダーシップを取っていく経験があるとないでは、その後が全く違ってくる、と考えているようです。スポーツをやっている人のほうが、時間の使い方のマネジメントや自分自身の体のケア、人間関係を含めたマネジメントができるという考えもあります。
加えて、特にアイビーの場合は芸術活動の経験も欲しいようです。典型的にはオーケストラですが、保護者にやらされていたと分かると絶対NGで(笑)、自分が好きでやることが大事です。クラシックでなければいけないわけではなくて、ジャズやロックでもいいでしょう。どうしてもアートのセンスがないなら、演劇部の大道具をやっていました、などと言うと「いいねー」と言われたりするみたいですね。とにかく大事なのは、生活の中に途切れなくアートならアート、スポーツならスポーツを取り入れて、コンスタントに続けていること、そしてそれを通じて人間的に成長しているか、を見ています。
Q7. 東海岸以外で、アイビーに匹敵するような大学はありますか?
同格、またはそれ以上と言われているものに、カルテック(California Institute of Technology)があります。非常に特殊な大学で、ポストドクターの研究所がメイン、そこに大学院、そしておまけのように学部が付いている。超エリートのすごい学校ですよ。
もう一つはスタンフォード。ここはアイビーと似ている部分もあるし、入る難しさはハーバード、プリンストン、イェールにも負けないと言えます。また、西海岸らしい多様性もあり、世界的にも存在感のある大学です。
そして、こちらは東海岸になりますけど、MIT(Massachusetts Instituteof Technology)。ハーバードはすぐ近くにあって研究者の交換など交流は盛んですが、校風はかなり違います。
「第2グループ」と言われるところを含め、アメリカの大学の上位20〜25校ぐらいは、どこも相当高い教育水準を誇っていると言えます。学生も自分の学校にすごく誇りを持っていて、「第2志望に入ってしまって残念」といった人はほとんどいないと思います。ですから「何が何でもアイビー」という選び方ではなく、少し違った個性を持った大学集団という認識がいいかもしれません。一方矛盾するようですが、アイビーはやはり魅力的な学生、教授がいて、カリキュラムがある。もし入れるなら、行く価値は十分あります!
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こちらもチェック!
アイビーリーグをはじめとするアメリカの大学について、もっと詳しく知りたいなら、冷泉さんの著書『アイビーリーグの入り方 ~アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)も、ぜひご一読を!



